46 / 774
サマバケ
DAY9
しおりを挟む
今日もまた、ラクタプドームに来ている。高校対抗2日目。俺は昼過ぎの100mバタフライに出場する。今日は少し早めに来て、入り口前のスペースで軽く体を動かしている。
「奏、呼吸やる?」
「いや、いいや。楓、ありがとう。」
少しずつ体を温めて、集合の時間になった。部長が形式的な挨拶だけして、解散する。荷物を持って入場の列に並んだ。
「今日は負けねぇからな。」
横に並んだのは、昨日戦った白野倫也。今日も同じ種目に出る。
「ハハッ!フラグ立ててくれてありがとう。」
「チッ、圧勝してやる。」
ちなみにベストタイムはほぼ変わらない。どちらかがペース配分を失敗したら負けるし、成功したら勝てる。トモは前半型だから足くらいにつけといたら後半で抜けるだろうと予想している。まぁ、そのときによるが。
入り口に続々と人が入っていく。学校名がコールされてから入るルールなので、うちの学校はあとの方に入った。
昨日と同じようにアップをする。メインプールで心拍数をあげて、アッププールで泳ぎを整える。早めにアップをやめてスタンドに戻った。
「楓、俺って何レーン?」
「3の6。トモの隣。最高だね。」
「最高というか、最悪というか。負けたらその場で煽られるじゃねぇか。」
「勝ったらいいだけでしょ。」
「簡単に言うな。あいつの波乗りにくいから、後半に仕掛けにくいんだよ。」
夏休みの宿題を片付けながら答える。試合までは3時間ちょいあるから、まだストレッチはしなくていいだろう。会場に流れている音楽を聴きながら、古文の予習を進めていく。
気がつけばもう1時間前。俺はスタンド裏に行ってストレッチを始めた。裏にはトモがもう居た。
「随分と余裕だな。」
「俺にしては早めに来た方だぞ。」
俺はイヤホンを耳に突っ込み、昨日と同じプレイリストを聴きながら、ストレッチを始める。肩が潰れたらバタフライは死ぬので、肩周りを重点的にする。昨日の疲れはほぼなく、昨日よりも調子が良さそうだ。
試合前30分。昨日と同じ水着を履く。乾きやすいので、濡れていない。ぴっちりとした締めつけを太ももに感じながら。アナウンスを待つ。
アナウンスがあって、召集所に向かう。気持ちはだいぶ乗っている。だからこそ油断しないように。そう自分に言い聞かせて、キャップを被った。
試合前1分。いつものルーティーンを始める。頭の中で何かが爆ぜたように、周りの音が聞こえなくなり、スイッチが入ったことが分かる。7レーンにいるトモも同じ。一切こちらのことは気にせずに、ただ笛を待つ。
長い笛があって、俺はスタート台に上がった。この景色はずっと変わらない。ただ水の流れる音がかすかに聞こえてくる。透明な水はライトを反射して光り続ける。目線は自分のつま先の少し前。短い笛で飛び出した。
浮き上がり一掻き目は呼吸をしない。二掻き目も。三掻き目でようやく呼吸をして、自分の位置を確認する。我ながらいいスタートだと思っても、前半型の選手には劣る。今でだいたいつま先の辺り。秒数にすると1秒差程だろうか。また頭を水に突っ込み、次の呼吸の時にはさらに差が開いていた。ここで焦ると後半まで体力が持たない。俺は控えることにした。
ターンの時にはおそらく3~4秒差が開いていたと思う。おそらく9番目。ベッタ2でターンして、後半に入る。
まず一掻き目で1人を抜き去る。そこから12.5mラインを通過する時には前には4人いた。4、5レーンの人と、隣にいるトモ。全員、呼吸の時に普通に見えるくらいだから、結構な差があるはずだ。俺はもう1つギアを上げる。
25mラインを過ぎた時、4レーンの人が落ちていくのが見えた。あと2人。俺はここまで溜めていた脚の力を使ってさらに加速する。トモのつま先の辺りまで追いついた。急に楽しくなり始めて、残り12.5mでまた加速。ついていけなくなったトモを颯爽と抜き去り、2位でゴールした。
「フラグ回収、あざます。」
「黙れ!後半だけ上げやがって。後ろから抜くのがそんなに楽しいか?」
「うん、めちゃくちゃ楽しい。」
勝ち負けを気にせずにレース後はいつも仲良く喋っている。今日もまた。軽くダウンを泳いで、2人とも、顧問に呼び止められる。
「白野は後半、バテたな?」
「はい!バテました!」
「自慢じゃないぞ。んで、加太は前半流したと。」
「流したんじゃなくて見ていただけです。」
「加太は前半もっと突っ込め!体力はあるんだから。白野は後半バテるな!次も期待してるぞ。」
「「はい!」」
顧問に一礼して、更衣室に入る。ジャージに着替えてスタンドに戻ると、先輩たちが俺たちに集まってきた。
「白野惜しかったぞ!」
「加太、悪いやつだな!」
何か嬉しくなって、そのまま話し込んだことは覚えている。何を話したかまでは覚えていないけど。
「奏、呼吸やる?」
「いや、いいや。楓、ありがとう。」
少しずつ体を温めて、集合の時間になった。部長が形式的な挨拶だけして、解散する。荷物を持って入場の列に並んだ。
「今日は負けねぇからな。」
横に並んだのは、昨日戦った白野倫也。今日も同じ種目に出る。
「ハハッ!フラグ立ててくれてありがとう。」
「チッ、圧勝してやる。」
ちなみにベストタイムはほぼ変わらない。どちらかがペース配分を失敗したら負けるし、成功したら勝てる。トモは前半型だから足くらいにつけといたら後半で抜けるだろうと予想している。まぁ、そのときによるが。
入り口に続々と人が入っていく。学校名がコールされてから入るルールなので、うちの学校はあとの方に入った。
昨日と同じようにアップをする。メインプールで心拍数をあげて、アッププールで泳ぎを整える。早めにアップをやめてスタンドに戻った。
「楓、俺って何レーン?」
「3の6。トモの隣。最高だね。」
「最高というか、最悪というか。負けたらその場で煽られるじゃねぇか。」
「勝ったらいいだけでしょ。」
「簡単に言うな。あいつの波乗りにくいから、後半に仕掛けにくいんだよ。」
夏休みの宿題を片付けながら答える。試合までは3時間ちょいあるから、まだストレッチはしなくていいだろう。会場に流れている音楽を聴きながら、古文の予習を進めていく。
気がつけばもう1時間前。俺はスタンド裏に行ってストレッチを始めた。裏にはトモがもう居た。
「随分と余裕だな。」
「俺にしては早めに来た方だぞ。」
俺はイヤホンを耳に突っ込み、昨日と同じプレイリストを聴きながら、ストレッチを始める。肩が潰れたらバタフライは死ぬので、肩周りを重点的にする。昨日の疲れはほぼなく、昨日よりも調子が良さそうだ。
試合前30分。昨日と同じ水着を履く。乾きやすいので、濡れていない。ぴっちりとした締めつけを太ももに感じながら。アナウンスを待つ。
アナウンスがあって、召集所に向かう。気持ちはだいぶ乗っている。だからこそ油断しないように。そう自分に言い聞かせて、キャップを被った。
試合前1分。いつものルーティーンを始める。頭の中で何かが爆ぜたように、周りの音が聞こえなくなり、スイッチが入ったことが分かる。7レーンにいるトモも同じ。一切こちらのことは気にせずに、ただ笛を待つ。
長い笛があって、俺はスタート台に上がった。この景色はずっと変わらない。ただ水の流れる音がかすかに聞こえてくる。透明な水はライトを反射して光り続ける。目線は自分のつま先の少し前。短い笛で飛び出した。
浮き上がり一掻き目は呼吸をしない。二掻き目も。三掻き目でようやく呼吸をして、自分の位置を確認する。我ながらいいスタートだと思っても、前半型の選手には劣る。今でだいたいつま先の辺り。秒数にすると1秒差程だろうか。また頭を水に突っ込み、次の呼吸の時にはさらに差が開いていた。ここで焦ると後半まで体力が持たない。俺は控えることにした。
ターンの時にはおそらく3~4秒差が開いていたと思う。おそらく9番目。ベッタ2でターンして、後半に入る。
まず一掻き目で1人を抜き去る。そこから12.5mラインを通過する時には前には4人いた。4、5レーンの人と、隣にいるトモ。全員、呼吸の時に普通に見えるくらいだから、結構な差があるはずだ。俺はもう1つギアを上げる。
25mラインを過ぎた時、4レーンの人が落ちていくのが見えた。あと2人。俺はここまで溜めていた脚の力を使ってさらに加速する。トモのつま先の辺りまで追いついた。急に楽しくなり始めて、残り12.5mでまた加速。ついていけなくなったトモを颯爽と抜き去り、2位でゴールした。
「フラグ回収、あざます。」
「黙れ!後半だけ上げやがって。後ろから抜くのがそんなに楽しいか?」
「うん、めちゃくちゃ楽しい。」
勝ち負けを気にせずにレース後はいつも仲良く喋っている。今日もまた。軽くダウンを泳いで、2人とも、顧問に呼び止められる。
「白野は後半、バテたな?」
「はい!バテました!」
「自慢じゃないぞ。んで、加太は前半流したと。」
「流したんじゃなくて見ていただけです。」
「加太は前半もっと突っ込め!体力はあるんだから。白野は後半バテるな!次も期待してるぞ。」
「「はい!」」
顧問に一礼して、更衣室に入る。ジャージに着替えてスタンドに戻ると、先輩たちが俺たちに集まってきた。
「白野惜しかったぞ!」
「加太、悪いやつだな!」
何か嬉しくなって、そのまま話し込んだことは覚えている。何を話したかまでは覚えていないけど。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。
たかなしポン太
青春
僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。
助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。
でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。
「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」
「ちょっと、確認しなくていいですから!」
「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」
「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」
天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。
異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー!
※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。
※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。
フラレたばかりのダメヒロインを応援したら修羅場が発生してしまった件
遊馬友仁
青春
校内ぼっちの立花宗重は、クラス委員の上坂部葉月が幼馴染にフラれる場面を目撃してしまう。さらに、葉月の恋敵である転校生・名和リッカの思惑を知った宗重は、葉月に想いを諦めるな、と助言し、叔母のワカ姉やクラスメートの大島睦月たちの協力を得ながら、葉月と幼馴染との仲を取りもつべく行動しはじめる。
一方、宗重と葉月の行動に気付いたリッカは、「私から彼を奪えるもの奪ってみれば?」と、挑発してきた!
宗重の前では、態度を豹変させる転校生の真意は、はたして―――!?
※本作は、2024年に投稿した『負けヒロインに花束を』を大幅にリニューアルした作品です。
学園のアイドルに、俺の部屋のギャル地縛霊がちょっかいを出すから話がややこしくなる。
たかなしポン太
青春
【第1回ノベルピアWEB小説コンテスト中間選考通過作品】
『み、見えるの?』
「見えるかと言われると……ギリ見えない……」
『ふぇっ? ちょっ、ちょっと! どこ見てんのよ!』
◆◆◆
仏教系学園の高校に通う霊能者、尚也。
劣悪な環境での寮生活を1年間終えたあと、2年生から念願のアパート暮らしを始めることになった。
ところが入居予定のアパートの部屋に行ってみると……そこにはセーラー服を着たギャル地縛霊、りんが住み着いていた。
後悔の念が強すぎて、この世に魂が残ってしまったりん。
尚也はそんなりんを無事に成仏させるため、りんと共同生活をすることを決意する。
また新学期の学校では、尚也は学園のアイドルこと花宮琴葉と同じクラスで席も近くなった。
尚也は1年生の時、たまたま琴葉が困っていた時に助けてあげたことがあるのだが……
霊能者の尚也、ギャル地縛霊のりん、学園のアイドル琴葉。
3人とその仲間たちが繰り広げる、ちょっと不思議な日常。
愉快で甘くて、ちょっと切ない、ライトファンタジーなラブコメディー!
※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。
久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
みんなの女神サマは最強ヤンキーに甘く壊される
けるたん
青春
「ほんと胸がニセモノで良かったな。貧乳バンザイ!」
「離して洋子! じゃなきゃあのバカの頭をかち割れないっ!」
「お、落ちついてメイちゃんっ!? そんなバットで殴ったら死んじゃう!? オオカミくんが死んじゃうよ!?」
県立森実高校には2人の美の「女神」がいる。
頭脳明晰、容姿端麗、誰に対しても優しい聖女のような性格に、誰もが憧れる生徒会長と、天は二物を与えずという言葉に真正面から喧嘩を売って完膚なきまでに完勝している完全無敵の双子姉妹。
その名も『古羊姉妹』
本来であれば彼女の視界にすら入らないはずの少年Bである大神士狼のようなロマンティックゲス野郎とは、縁もゆかりもない女の子のはずだった。
――士狼が彼女たちを不審者から助ける、その日までは。
そして『その日』は突然やってきた。
ある日、夜遊びで帰りが遅くなった士狼が急いで家へ帰ろうとすると、古羊姉妹がナイフを持った不審者に襲われている場面に遭遇したのだ。
助け出そうと駆け出すも、古羊姉妹の妹君である『古羊洋子』は助けることに成功したが、姉君であり『古羊芽衣』は不審者に胸元をザックリ斬りつけられてしまう。
何とか不審者を撃退し、急いで応急処置をしようと士狼は芽衣の身体を抱き上げた……その時だった!
――彼女の胸元から冗談みたいにバカデカい胸パッドが転げ落ちたのは。
そう、彼女は嘘で塗り固められた虚乳(きょにゅう)の持ち主だったのだ!
意識を取り戻した芽衣(Aカップ)は【乙女の秘密】を知られたことに発狂し、士狼を亡き者にするべく、その場で士狼に襲い掛かる。
士狼は洋子の協力もあり、何とか逃げることには成功するが翌日、芽衣の策略にハマり生徒会に強制入部させられる事に。
こうして古羊芽衣の無理難題を解決する大神士狼の受難の日々が始まった。
が、この時の古羊姉妹はまだ知らなかったのだ。
彼の蜂蜜のように甘い優しさが自分たち姉妹をどんどん狂わせていくことに。
※【カクヨム】にて編掲載中。【ネオページ】にて序盤のみお試し掲載中。【Nolaノベル】【Tales】にて完全版を公開中。
イラスト担当:さんさん
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗@オートスキル第1巻発売中
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる