陰キャの陰キャによる陽に限りなく近い陰キャのための救済措置〜俺の3年間が青くなってしまった件〜

136君

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イツモノ

夏の始まり

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 ジリジリとした暑さの中、元気なのはさっきからずっと鳴いている蝉と、

「夏だ!夏休みだ!」

きいだけだろう。

「なんできいはそんなけ元気なん?」
「いや~、夏休み楽しみだなぁ~って。この期間で色んなことがあって、ぐへへになって、夏休み明け来る人たちもおるやろ?そういうの楽しいなって。」
「まぁ、一理あるかもしれんけど、その『ぐへへ』ってなんかおっさんみたいやからやめときなよ。」

桜と並んで歩く姿は、この前のへばっていた影もない。ただ、この暑さを楽しんでいるように見える。

「久志は、さっきから喋ってないけど大丈夫?」
「いや、今気抜いたら溶けるから我慢してるだけ。ダイジョウブダイジョウブ。」
「なら良かった。」
「良かねぇよ。」

気づけば、奏と楓との合流地点まで来ていたらしい。今日は2人が先に待っていた。

「ういーす!」
「よっす!」
「おはよ、2人とも。暑い中ありがとね。」
「大丈夫、日陰に入ってたから。」

ニシシと笑う楓。暑さに慣れているのか、その笑顔は眩しかった。

 駅までの裏道に入って、日陰が増える。住宅街を突っ切る道になっているからだ。

「んで、Qは何見てんだ?」
「まぁ、見とけ。きいが面白いから。」

ほかの2人より10cmほど身長が小さいきいは、なんかぴょこぴょこしながら喋ってる。しかも、桜にだいぶ近い距離で。たまにバランスを崩して桜にもたれ掛かるものだから、押し返されている。

「なんか無理して頑張ってる幼稚園児見てるみたい。」
「だろ。」

そんな話をしていたら、踏切の音が聞こえてくる。

「走るぞ。」
「おう。」
「待って2人とも。」
「じゃあお先!」
「ちょっと桜!」
「私も行くね!」
「楓~!」

きいだけが取り残される感じで走り始めた。結局電車には全員間に合った。

 香里園の改札を出ると、すぐ目の前に音羽とカレンがいた。

「おはよ。」
「おはようさん!」

こんなに暑いのに、音羽は絶対領域だ。暑くないのか。暑くないんだろう。

「暑っついね~。」

暑いなら、楓を見習ってくれ。倒れられたらこっちが困るから。

「なら、スカート上げちゃえばええのに。」

そう言いながら楓がスカートに手をかけた瞬間、べしっと鈍い音が響く。

「なんかいつもよりつよぉい」
「なんでだろうね。」

これからは気にしないようにしよう。

 駅を出たら、また突き刺すような日差しに耐える時間のスタートだ。

「あれ?楓ちょっと大きくなった?」
「ほんとだ、ちょっとね。」
「うん、ちょっとだけそんな気する。」
「奏っち!そんな気する?」
「ごめん、そんな目で見る気もなかったわ。いつまでもガキンチョや思うてたから。」
「奏、あとでマジビンタ。」
「絶対、影響されてるよな。」
「おおっ、カレンも分かる口か?」
「Qもか!おい、奏!そこは『マ…マジビンタ?』って言うところだぞ!」
「あーあ、オタク始まった!」

今年の夏も、こいつらとなら。
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