陰キャの陰キャによる陽に限りなく近い陰キャのための救済措置〜俺の3年間が青くなってしまった件〜

136君

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キザムノ

意地④

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 高校生活の引退レース。4×100mメドレーリレー決勝。上手くいけば入賞できる。

 3日間の戦いで体はボロボロ。疲労もそこら中に感じるし、個人の100m自由形は決勝に残れなかった。あと残っているのはこのメドレーリレーだけだ。

「あっちは上げれるよな?」
「予選はボロボロやったから流石にな。」

第1泳者の高積晃。クラスも同じで、俺と同じく今日で引退する。

「慎二は?」
「もう知らん。体壊しても引退やし。」

第2泳者の栗栖慎二。こちらも俺と同じで今日で引退。中央大会、近畿大会と一緒に戦ったメンバーだ。

「永ちゃんは?」
「有輝と変わって、あんなタイム出るか分からんから怖いけど、楽しみやな。」

第3泳者の永穂大和。有輝から変わって、決勝だけリレーに出場する。中学時代からの友達だ。

「大翔は?」
「……やるよ。」

第4泳者は俺、太地大翔。一応このチームのエースと位置づけられているが、俺はそんな器じゃないと思っている。

 水着に着替えながら、ふと思った。もうこんなに落ち着いてリレーに出ることはないんじゃないかと。大学になったら、俺が出れるって保証もないし、出たとしても緊張感はこれよりすごいと思う。

「なんか大翔、楽しそうやな。」
「そうか?」
「めっちゃ楽しそう。」
「中央のときと顔が全然違う。」

頬を触ってみてもそんな感じがしない。ただの気のせいだろう。

 ちょうど着替え終わったときに、加太がガウンを持ってきた。

『ありがとう!』
「いいっすよ。」

観客席の方からは、女子のB決勝の応援の声が聞こえてくる。会場のボルテージは最高だ。

「俺、終わったら向こうで待ってるんで。」

加太のその言葉に俺たちは振り向いた。『向こう』というのは、表彰台に近い方のスタンド。つまり、写真撮影がしやすいところだ。

「行けるか分からんやろ。」

あっちがそう言う。その通りだ。俺たちは予選8位通過。表彰されるギリギリのラインだ。もしも他校が俺たちよりも更に上げてきたら、表彰されない可能性も十二分にある。それでも、加太は

「信じてるんで。」

その目は、信頼と希望で満ちていた。そうだ。加太は短距離が弱い。だから、短距離が速い俺たちに、その夢を、リレーで表彰される夢を託すのは普通だ。

「任せとけ。」

自然とその言葉が零れた。

「俺たちならできる。」
「絶対、賞状持って帰るぞ!」
「安心して向こうで待っとけ!」

 ガウンに腕を通す。真っ白なガウン。何回も着たガウン。もう着ることのないガウン。何度も一緒に戦ってきたガウン。何度も、俺たちを繋いでくれたガウン。

 ふぅ~と息を吐いて、戦いの場に歩き始めた。
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