435 / 774
ミカヅキ
杠葉
しおりを挟む
目が覚めると知らない天井だった。
「起きた?なら良かった。」
視線を横に移動させると、桜の顔があった。
「俺は何でここに?」
「すぐそこで倒れてて、ちょっと熱があったから寝かせてただけ。今はもう無さげだけど。何か食べる?」
「ああ、よろしく。」
重たい身体を起こす。時間は夕方の4時。軽く6時間くらい寝ていたようだ。荷物はすぐ近くに置いてくれていて、その横にはタオルも置いてある。
周りを見渡せばここがどこかすぐに分かった。桜の今の家だ。普通のアパートの一室、そこに俺は寝かされていた。
桜が作ってくれている間に、誰かが部屋に入ってきた。雰囲気は桜、だけど全くの別人だ。
「えっと…あなたは?」
「桜をありがとね。」
俺の質問に答えることなく、その女の人は言う。床に座って、手に持っているビールを飲み始めた。
「あんたが桜を居候させてくれてたんでしょ?そのことに感謝してるのよ。私は有田杠葉。桜の母親よ。」
その名前には見覚えがあった。あのはがきに書いていた名前だ。
「いえいえ、こちらこそ助けて貰ってばっかりで、今じゃ生活するのもやっとですよ。」
「冗談が上手いなぁ。私は君のことをそこそこ生活力のある男だと見た。どう?間違ってる?」
「まぁ、ギリギリ生活出来てるんでね。」
目の前の初対面の相手に少したじろぎながらも、できる限りの笑顔を作って話す。
「それで、何でここに来た?」
杠葉さんのトーンが少し下がった。それは怒りなのか何なのか分からない。が、ただ単なる疑問ではないのが分かった。
「連れ戻しに来ました。」
「何のために?」
「何のためって言われても…」
「そこが即答できるやつじゃないとね。」
呆れたように後ろに手をつき、ビールをまた1口。「何のため」って聞かれても全く何も思い浮かばなかった。約束?いや、そんな感じじゃない。もっと重要な何か。
「エゴのためですかね。」
ボソッと呟くように言う。何でこの答えが出たのか分からない。でも、思いついたのがこれだった。
「君、面白いね。」
少し驚いたような顔をしたあと、杠葉さんはそう言う。「桜のため」とかそんな綺麗なことを言うと思っていたのだろう。そんなのは自惚れだ。桜のためになることなんか、桜にしか分からないのだ。
「別に私はええよ。桜が納得するんなら。」
杠葉さんはビールを最後まで飲みきり、缶の縁をなぞりながら言う。
「なら、あと1つだけ。もし桜が嫌と言ったら?」
「言いたいことだけ全部言って帰ります。」
「起きた?なら良かった。」
視線を横に移動させると、桜の顔があった。
「俺は何でここに?」
「すぐそこで倒れてて、ちょっと熱があったから寝かせてただけ。今はもう無さげだけど。何か食べる?」
「ああ、よろしく。」
重たい身体を起こす。時間は夕方の4時。軽く6時間くらい寝ていたようだ。荷物はすぐ近くに置いてくれていて、その横にはタオルも置いてある。
周りを見渡せばここがどこかすぐに分かった。桜の今の家だ。普通のアパートの一室、そこに俺は寝かされていた。
桜が作ってくれている間に、誰かが部屋に入ってきた。雰囲気は桜、だけど全くの別人だ。
「えっと…あなたは?」
「桜をありがとね。」
俺の質問に答えることなく、その女の人は言う。床に座って、手に持っているビールを飲み始めた。
「あんたが桜を居候させてくれてたんでしょ?そのことに感謝してるのよ。私は有田杠葉。桜の母親よ。」
その名前には見覚えがあった。あのはがきに書いていた名前だ。
「いえいえ、こちらこそ助けて貰ってばっかりで、今じゃ生活するのもやっとですよ。」
「冗談が上手いなぁ。私は君のことをそこそこ生活力のある男だと見た。どう?間違ってる?」
「まぁ、ギリギリ生活出来てるんでね。」
目の前の初対面の相手に少したじろぎながらも、できる限りの笑顔を作って話す。
「それで、何でここに来た?」
杠葉さんのトーンが少し下がった。それは怒りなのか何なのか分からない。が、ただ単なる疑問ではないのが分かった。
「連れ戻しに来ました。」
「何のために?」
「何のためって言われても…」
「そこが即答できるやつじゃないとね。」
呆れたように後ろに手をつき、ビールをまた1口。「何のため」って聞かれても全く何も思い浮かばなかった。約束?いや、そんな感じじゃない。もっと重要な何か。
「エゴのためですかね。」
ボソッと呟くように言う。何でこの答えが出たのか分からない。でも、思いついたのがこれだった。
「君、面白いね。」
少し驚いたような顔をしたあと、杠葉さんはそう言う。「桜のため」とかそんな綺麗なことを言うと思っていたのだろう。そんなのは自惚れだ。桜のためになることなんか、桜にしか分からないのだ。
「別に私はええよ。桜が納得するんなら。」
杠葉さんはビールを最後まで飲みきり、缶の縁をなぞりながら言う。
「なら、あと1つだけ。もし桜が嫌と言ったら?」
「言いたいことだけ全部言って帰ります。」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
フラレたばかりのダメヒロインを応援したら修羅場が発生してしまった件
遊馬友仁
青春
校内ぼっちの立花宗重は、クラス委員の上坂部葉月が幼馴染にフラれる場面を目撃してしまう。さらに、葉月の恋敵である転校生・名和リッカの思惑を知った宗重は、葉月に想いを諦めるな、と助言し、叔母のワカ姉やクラスメートの大島睦月たちの協力を得ながら、葉月と幼馴染との仲を取りもつべく行動しはじめる。
一方、宗重と葉月の行動に気付いたリッカは、「私から彼を奪えるもの奪ってみれば?」と、挑発してきた!
宗重の前では、態度を豹変させる転校生の真意は、はたして―――!?
※本作は、2024年に投稿した『負けヒロインに花束を』を大幅にリニューアルした作品です。
久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
学園のアイドルに、俺の部屋のギャル地縛霊がちょっかいを出すから話がややこしくなる。
たかなしポン太
青春
【第1回ノベルピアWEB小説コンテスト中間選考通過作品】
『み、見えるの?』
「見えるかと言われると……ギリ見えない……」
『ふぇっ? ちょっ、ちょっと! どこ見てんのよ!』
◆◆◆
仏教系学園の高校に通う霊能者、尚也。
劣悪な環境での寮生活を1年間終えたあと、2年生から念願のアパート暮らしを始めることになった。
ところが入居予定のアパートの部屋に行ってみると……そこにはセーラー服を着たギャル地縛霊、りんが住み着いていた。
後悔の念が強すぎて、この世に魂が残ってしまったりん。
尚也はそんなりんを無事に成仏させるため、りんと共同生活をすることを決意する。
また新学期の学校では、尚也は学園のアイドルこと花宮琴葉と同じクラスで席も近くなった。
尚也は1年生の時、たまたま琴葉が困っていた時に助けてあげたことがあるのだが……
霊能者の尚也、ギャル地縛霊のりん、学園のアイドル琴葉。
3人とその仲間たちが繰り広げる、ちょっと不思議な日常。
愉快で甘くて、ちょっと切ない、ライトファンタジーなラブコメディー!
※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。
キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。
たかなしポン太
青春
僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。
助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。
でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。
「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」
「ちょっと、確認しなくていいですから!」
「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」
「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」
天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。
異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー!
※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。
※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。
プール終わり、自分のバッグにクラスメイトのパンツが入っていたらどうする?
九拾七
青春
プールの授業が午前中のときは水着を着こんでいく。
で、パンツを持っていくのを忘れる。
というのはよくある笑い話。
友達の妹が、入浴してる。
つきのはい
恋愛
「交換してみない?」
冴えない高校生の藤堂夏弥は、親友のオシャレでモテまくり同級生、鈴川洋平にバカげた話を持ちかけられる。
それは、お互い現在同居中の妹達、藤堂秋乃と鈴川美咲を交換して生活しようというものだった。
鈴川美咲は、美男子の洋平に勝るとも劣らない美少女なのだけれど、男子に嫌悪感を示し、夏弥とも形式的な会話しかしなかった。
冴えない男子と冷めがちな女子の距離感が、二人暮らしのなかで徐々に変わっていく。
そんなラブコメディです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる