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ミカヅキ
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桜の作ってくれたうどんを食べて、少し動けるようになった。
「ホテルはどうしたん?」
「チェックアウトしてきた。今日帰るつもりやったから。」
「でも、その体で電車に乗せんのはちょっと嫌やな。」
桜は困ったような顔を見せる。今から探す手もあるが、今は年末。どこも混みあっているだろう。
「とりあえず、今日は泊まっていきなよ。」
「いいん?」
「いいよね?お母さん。」
「いいよ。それくらい。」
どこからどう見てもそれくらいって感じではないんだが、この季節に野宿するのは無理だからお言葉に甘えさせてもらおう。
いつの間にか日も落ちていて、外はすっかり暗くなっている。
「コンビニ行くけど、来る?」
「行くわ。ちょっと待ってて。」
俺は着てきたジャンパーに身を包んで、外に出た。
この辺りはコンビニも少なく、1番近いところでこの数日間行っていた駅の少し向こうのところ。商店街を抜けて、そのまま歩いていくと、コンビニと今日の朝まで使っていたカフェが見えた。
俺たちはそれぞれ、今日の晩のカップ麺を購入する。外に出て空を見上げた。
「やっぱり大阪とは違うな。」
「そりゃそうでしょ。何せ人がいないし、街灯も少ない。」
スタスタと雪に足跡を残して歩いていく桜の後ろを歩く。どこかよそよそしくて、いつもの桜と全くの別人みたいだ。
商店街に戻ってきて、さらに奥へ。おそらく2人でしっかり話せるのも、これが最後なんだろう。
「本当に、帰ってくる気はないんだな。」
海沿いを右に曲がって、アパートが見え始めたくらいでそう言う。我ながら卑怯なやつだ。
「うん。そうだよ。だって私には帰る権利がない。」
「本心を言えよ…」
「は?」
「桜が帰りたいか、帰りたくないか聞いてんねん!権利?そんなこと知らんわ。勝手に自分で決めつけて、勝手に納得して、そんなことを聞いてるんやねぇ!お前の気持ちを聞いてんねん!」
気づけばまくし立てるように喋っていた。桜にはまだ見せたことのない俺の1面。この際、全部さらけ出してやろうと決めたのだ。
「私が帰ってきたら、迷惑やろ?」
「んなもん、コレ見たら全部分かる!」
俺はスマホを取り出す。その手は桜に止められた。
「いいよ。知ってるから。あの歌詞のこと。」
「なら何でその結論になるねん。」
「それは…」
〇〇〇〇〇
「それは…」
その先の言葉が繋がらない。みんなが私のことを認めてないって思わないといけなかったから。
夢を見るのは怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。
〇〇〇〇〇
桜は口ごもったまま、下を向く。こんなに弱い桜を見るのは初めてだな。
「なら、俺から全部言ってやる。桜がいなくなってから、俺の生活は全部変わった。何も手につかなくなったし、学校をサボることもあった。食べ物は喉を通らないし、十分に寝ることも出来ない。歩けば頭がふわふわして、すぐ転けちまう。そんな感じだった。」
「………」
「人の心ってのはジェンガみたいなものなんだと思う。大事なところが1個でも欠けたら、全部崩れる。その1個が、俺にとっての桜なんだ。」
「………」
「こんなことを言うのは正直恥ずい。だけど、全部言うって言ったからには、言わないといけない。」
「………」
「俺は桜の隣にいたい。桜が俺の隣にいてほしい。どんな弱みも全部見せあって、どんな間違いも一緒に背負いたい。」
「……ばか。」
桜は買ったカップ麺をその場に投げ捨てて、俺の方に来る。
「そんなこと言われたら、帰りたくない理由が無くなるやん。」
桜は泣いていた。弱く、儚く。周りには誰もいなくて、ただ打ち寄せる波が響いている。そんな中、雪に降られて街灯に照らされている桜は綺麗だ。
「俺たちはさ、所詮弱い生き物なんだ。繋がりを求めてもすぐに切れてしまう。俺たちにとっての繋がりは結局あの家。あそこなんだ。だから、帰ってきてくれないか。」
「ねぇ、ちゃんと言葉にしてよ。こうやって。」
桜は俺に抱きついてくる。ちょうど雪が溶けかけて、凍ってしまっているところに立っていたからか、俺は足を滑らせて、そのまま倒れてしまった。
それでも桜は体勢を変えて、馬乗りになる。そして、笑った。
「ずっと一緒にいよ。久志。」
桜は俺の顔に近づいてくる。俺はそれを受け入れた。
「ホテルはどうしたん?」
「チェックアウトしてきた。今日帰るつもりやったから。」
「でも、その体で電車に乗せんのはちょっと嫌やな。」
桜は困ったような顔を見せる。今から探す手もあるが、今は年末。どこも混みあっているだろう。
「とりあえず、今日は泊まっていきなよ。」
「いいん?」
「いいよね?お母さん。」
「いいよ。それくらい。」
どこからどう見てもそれくらいって感じではないんだが、この季節に野宿するのは無理だからお言葉に甘えさせてもらおう。
いつの間にか日も落ちていて、外はすっかり暗くなっている。
「コンビニ行くけど、来る?」
「行くわ。ちょっと待ってて。」
俺は着てきたジャンパーに身を包んで、外に出た。
この辺りはコンビニも少なく、1番近いところでこの数日間行っていた駅の少し向こうのところ。商店街を抜けて、そのまま歩いていくと、コンビニと今日の朝まで使っていたカフェが見えた。
俺たちはそれぞれ、今日の晩のカップ麺を購入する。外に出て空を見上げた。
「やっぱり大阪とは違うな。」
「そりゃそうでしょ。何せ人がいないし、街灯も少ない。」
スタスタと雪に足跡を残して歩いていく桜の後ろを歩く。どこかよそよそしくて、いつもの桜と全くの別人みたいだ。
商店街に戻ってきて、さらに奥へ。おそらく2人でしっかり話せるのも、これが最後なんだろう。
「本当に、帰ってくる気はないんだな。」
海沿いを右に曲がって、アパートが見え始めたくらいでそう言う。我ながら卑怯なやつだ。
「うん。そうだよ。だって私には帰る権利がない。」
「本心を言えよ…」
「は?」
「桜が帰りたいか、帰りたくないか聞いてんねん!権利?そんなこと知らんわ。勝手に自分で決めつけて、勝手に納得して、そんなことを聞いてるんやねぇ!お前の気持ちを聞いてんねん!」
気づけばまくし立てるように喋っていた。桜にはまだ見せたことのない俺の1面。この際、全部さらけ出してやろうと決めたのだ。
「私が帰ってきたら、迷惑やろ?」
「んなもん、コレ見たら全部分かる!」
俺はスマホを取り出す。その手は桜に止められた。
「いいよ。知ってるから。あの歌詞のこと。」
「なら何でその結論になるねん。」
「それは…」
〇〇〇〇〇
「それは…」
その先の言葉が繋がらない。みんなが私のことを認めてないって思わないといけなかったから。
夢を見るのは怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。
〇〇〇〇〇
桜は口ごもったまま、下を向く。こんなに弱い桜を見るのは初めてだな。
「なら、俺から全部言ってやる。桜がいなくなってから、俺の生活は全部変わった。何も手につかなくなったし、学校をサボることもあった。食べ物は喉を通らないし、十分に寝ることも出来ない。歩けば頭がふわふわして、すぐ転けちまう。そんな感じだった。」
「………」
「人の心ってのはジェンガみたいなものなんだと思う。大事なところが1個でも欠けたら、全部崩れる。その1個が、俺にとっての桜なんだ。」
「………」
「こんなことを言うのは正直恥ずい。だけど、全部言うって言ったからには、言わないといけない。」
「………」
「俺は桜の隣にいたい。桜が俺の隣にいてほしい。どんな弱みも全部見せあって、どんな間違いも一緒に背負いたい。」
「……ばか。」
桜は買ったカップ麺をその場に投げ捨てて、俺の方に来る。
「そんなこと言われたら、帰りたくない理由が無くなるやん。」
桜は泣いていた。弱く、儚く。周りには誰もいなくて、ただ打ち寄せる波が響いている。そんな中、雪に降られて街灯に照らされている桜は綺麗だ。
「俺たちはさ、所詮弱い生き物なんだ。繋がりを求めてもすぐに切れてしまう。俺たちにとっての繋がりは結局あの家。あそこなんだ。だから、帰ってきてくれないか。」
「ねぇ、ちゃんと言葉にしてよ。こうやって。」
桜は俺に抱きついてくる。ちょうど雪が溶けかけて、凍ってしまっているところに立っていたからか、俺は足を滑らせて、そのまま倒れてしまった。
それでも桜は体勢を変えて、馬乗りになる。そして、笑った。
「ずっと一緒にいよ。久志。」
桜は俺の顔に近づいてくる。俺はそれを受け入れた。
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