スライム退治専門のさえないおっさんの冒険

守 秀斗

文字の大きさ
118 / 162

第118話:猫缶を買わなくてはいかん、俺はやる気を出しているぞ、目的は猫のエサ代すか、ドラゴン退治から、えらくせせこましくなりましたっすね

しおりを挟む
「ニャー、ニャー」
「ニャー、ニャー」

「ニャー、ニャー、ニャー」
「ニャー、ニャー、ニャー」

 猫を抱き上げて可愛がる俺。
 相棒が渋い顔をしている。

「ちょっと、リーダー、また猫と遊んでいるんすか」
「おう、もうかわいくてしかたがないぞ、おー、よしよし」
 
 俺と相棒、二人組の冒険者パーティー。
 普段はスライム退治専門のしょぼいパーティーだ。

 今は宿屋の屋根裏に猫と一緒に住んでいる。

「で、屋根から落ちて打った腰の具合はどうなんすかね」
「ううむ、まだ調子が悪いな」

「リーダーも、屋根から落ちた時に華麗に一回転して着地したその子猫に冒険者としての心構えを教えてもらったほうがいいんじゃないすかね」
「うるさいぞ」

「じゃあ、今日は一日休んでくれますかね、腰を治すために。俺っちはスライム退治に行ってきますよ」
「おう、すまんな」

 俺は日がな一日、屋根裏で猫と遊んで過ごす。
 窓を開けると涼しい風が入ってくる。
 今日は夏も終わり、気温もちょうどいいくらいだ。

 猫じゃらしを使って、猫と遊ぶ。
 猫が飛び跳ねて、猫じゃらしと遊んでいるのを見ると、心が落ち着いてくるなあ。

 いやあ、すっかりいい気分だな。
 すると、猫が鳴く。

「ニャー、ニャー」

 お、これはエサがほしいんだな。
 俺は猫缶を出してやる。

 中身をバクバク食べて、その後、眠くなったのか昼寝をする猫。
 その昼寝をする姿もかわいいんだな。

 俺の方は食堂から貰って来たパンの耳を食べる。
 しょぼい食事だな。

 しかし、猫を見ていると、やはりリラックスしてくる。
 気分がいいぞ、猫癒し効果だな。

 このまま猫と一緒にだらだらと暮らしたいものだ。
 なんてことを考えてる俺はもう人生を引退してしまったのか。

 傍から見るとすっかり社会的な生活を終えた老人だな。
 それはまずいな。

 それに、猫缶を買う金を稼がねばならんからなあ。

 さて、腰の痛みも和らいできた。
 明日から仕事に行くか。

 でも、今日は一日ゆっくりとしているぞ。
 ああ、眠くなった。

 俺も昼寝だ。
 そのまま、屋根裏に寝っ転がって寝る。

……………………………………………………

 気が付くとだいぶ時間が立っている。
 お、猫はどこだ。

 おお、すぐ近くにいる。
 俺は猫に声をかける。

「ニャー」

 しかし、猫は俺の声掛けに反応しない。
 おかしいなあ、いつもはすぐに「ニャー」と返事をしてくれるのに。

 おっと、なんだか一点を見ているぞ、何を見ているんだ。
 しかし、猫が見ている先には何もいないぞ。

「おい、猫よ、何を見ているのだ」

 しかし、猫はまた何の反応も無い。
 ただ、じっと一点を見ている。

 まさか、魔物か。
 人間の目では見えない魔物かモンスターがこの屋根裏に潜んでいるのではないか。

 俺は急に緊張してきた。
 剣の柄を掴む。

 いつモンスターが襲ってくるかもしれない。
 猫の視線の先を見る。

 何もいない。
 いや、人間の目では見えないモンスターではないか。

 じりじりとしてくるぞ。
 額に汗が浮かぶ。

 よし、俺は目を瞑る。
 ここは冒険者としての勘を働かせるしかない。

 心眼戦法だ。
 以前、目を瞑ったまま、木に化けるモンスターのトレントを倒したことがある。

 お、何やら気配がしてきたぞ。

 俺はそっと猫を見る。
 猫がまた別の方向を見た。

 屋根裏の出入口。
 まさか、モンスターが近づいてきたのでは。

 俺はまた目を瞑る。
 お、何かやって来るぞ。

 ガサガサと音がする。
 シーフの相棒はこんな音は出さない。

 すると、出入口の蓋が開いた音がする。

「モンスター、覚悟!」

 俺は剣を振る。

「うわあ!」

 あれ、相棒の声だ。
 目を開けると、植物がちらばってる。

「おいおい、どうしたんだよ」
「どうしたもないすよ。何、屋根裏で剣を振ってるんすか、危ないっすよ」

「いや、今、モンスターと戦っていたのだ」
「何のモンスターですか」

 俺は猫が一点をじっと見ていたのを相棒に話す。

「何すか、それ。アホらしいっすね。多分、空中に浮かんでたホコリを見てただけっすよ。人間が気付かないそういう微細な動きに猫は反応するんですよ」
「そうなのか。それにしてはじっと見ていたんだがなあ、まるで魔物か幽霊が居るような感じがしたぞ」

「もう、すっかり呆け老人すね、リーダーは。呆けて、猫と暮らすのもいいすけど、剣を振り回すのはやめてほしいっすね」
「面目ない。ところで、この植物はなんだ」
「山菜っすよ。スライム退治の仕事は取れなかったんす。だから、袋一杯に取ってきたんすけど、リーダーが剣を振るから袋がちぎれちゃいましたよ」

 うむ、だからガサガサと音がしたのか。

「しかし、スライム退治の仕事が取れなかったということは、報酬は無しか」
「そうすね。まあ、当分、この山菜で食いつなげますけど」

「いや、猫缶を買わなくてはいかん。明日から、俺も冒険に行くぞ。しっかりと稼がねばいかん。俺はやる気を出しているぞ」
「まあ、やる気を出すのはいいですけど、目的は猫のエサ代すか。ドラゴン退治と美少女姫救出から、えらく目的がせせこましくなりましたっすね」
「うるさいぞ。まだ、ドラゴン退治もあきらめてないぞ」

 とは言え、やはり猫の方が心配になる俺はすっかり老人だなあとも思ってしまう。
 これではいかんなあ。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

日本国 召喚獣管理省 関東庁 召喚獣総合事案即応科。

wakaba1890
ファンタジー
召喚獣。 それは向こう側とされる所から、10歳を迎えた日本人の子供の下に召喚されるモンスターのことである。 初代天皇・神武天皇が日本を建国した際に書かれた絵画には彼は金鵄と呼ばれる金色に輝く鵄(とび)と契約したのが原初となっている。 そして、縄文、弥生、古墳、飛鳥、平安、戦国時代から近代から今に至るまで、時代を動かしてきた人物の側には確かに召喚獣は介在していた。 また、奇妙な事に、日本国に限り、齢10歳を迎えた日本在住の日本人にのみ体のどこかから多種多様な紋章が発現し、当人が念じると任意の場所から召喚陣が現れ、人ならざるモンスターを召喚される。 そして、彼らモンスターは主人である当人や心を許した者に対して忠実であった。 そのため、古来の日本から、彼ら召喚獣は農耕、治水、土木、科学技術、エネルギー、政治、経済、金融、戦争など国家の基盤となる柱から、ありとあらゆる分野において、今日に至るまで日本国とアジアの繁栄に寄与してきた。 そして、建国から今まで、国益の基盤たる彼ら数万種類以上をも及ぶ召喚獣を取り締まり管理し、2600年以上と脈々と受け継がれてきた名誉ある国家職がーーーーー国家召喚獣管理官である。

シスターヴレイヴ!~上司に捨て駒にされ会社をクビになり無職ニートになった俺が妹と異世界に飛ばされ妹が勇者になったけど何とか生きてます~

尾山塩之進
ファンタジー
鳴鐘 慧河(なるがね けいが)25歳は上司に捨て駒にされ会社をクビになってしまい世の中に絶望し無職ニートの引き籠りになっていたが、二人の妹、優羽花(ゆうか)と静里菜(せりな)に元気づけられて再起を誓った。 だがその瞬間、妹たち共々『魔力満ちる世界エゾン・レイギス』に異世界召喚されてしまう。 全ての人間を滅ぼそうとうごめく魔族の長、大魔王を倒す星剣の勇者として、セカイを護る精霊に召喚されたのは妹だった。 勇者である妹を討つべく襲い来る魔族たち。 そして慧河より先に異世界召喚されていた慧河の元上司はこの異世界の覇権を狙い暗躍していた。 エゾン・レイギスの人間も一枚岩ではなく、様々な思惑で持って動いている。 これは戦乱渦巻く異世界で、妹たちを護ると一念発起した、勇者ではない只の一人の兄の戦いの物語である。 …その果てに妹ハーレムが作られることになろうとは当人には知るよしも無かった。 妹とは血の繋がりであろうか? 妹とは魂の繋がりである。 兄とは何か? 妹を護る存在である。 かけがいの無い大切な妹たちとのセカイを護る為に戦え!鳴鐘 慧河!戦わなければ護れない!

通販で買った妖刀がガチだった ~試し斬りしたら空間が裂けて異世界に飛ばされた挙句、伝説の勇者だと勘違いされて困っています~

日之影ソラ
ファンタジー
ゲームや漫画が好きな大学生、宮本総司は、なんとなくネットサーフィンをしていると、アムゾンの購入サイトで妖刀が1000円で売っているのを見つけた。デザインは格好よく、どことなく惹かれるものを感じたから購入し、家に届いて試し切りをしたら……空間が斬れた!  斬れた空間に吸い込まれ、気がつけばそこは見たことがない異世界。勇者召喚の儀式最中だった王城に現れたことで、伝説の勇者が現れたと勘違いされてしまう。好待遇や周りの人の期待に流され、人違いだとは言えずにいたら、王女様に偽者だとバレてしまった。  偽物だったと世に知られたら死刑と脅され、死刑を免れるためには本当に魔王を倒して、勇者としての責任を果たすしかないと宣言される。 「偽者として死ぬか。本物の英雄になるか――どちらか選びなさい」  選択肢は一つしかない。死にたくない総司は嘘を本当にするため、伝説の勇者の名を騙る。

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ

ちかず
ファンタジー
久しぶりの早帰りの金曜日の夜(但し、矢作基準)ラッキーの連続に浮かれた矢作の行った先は。 見た事のない空き地に1人。異世界だと気づかない矢作のした事は? 異世界アニメも見た事のない矢作が、自分のスキルに気づく日はいつ来るのだろうか。スキル【備蓄】で異世界に騒動を起こすもちょっぴりズレた矢作はそれに気づかずマイペースに頑張るお話。 鈍感な主人公が降り注ぐ困難もナンノソノとクリアしながら仲間を増やして居場所を作るまで。

幼馴染達と一緒に異世界召喚、だけど僕だけ別な場所に飛ばされた先は異世界の不思議な無人島だった。

アノマロカリス
ファンタジー
よくある話の異世界召喚… スマホのネット小説や漫画が好きな少年、洲河 愽(すが だん)。 いつもの様に幼馴染達と学校帰りの公園でくっちゃべっていると地面に突然魔法陣が現れて… 気付くと愽は1人だけ見渡す限り草原の中に突っ立っていた。 愽は幼馴染達を探す為に周囲を捜索してみたが、一緒に飛ばされていた筈の幼馴染達は居なかった。 生きていればいつかは幼馴染達とまた会える! 愽は希望を持って、この不思議な無人島でサバイバル生活を始めるのだった。 「幼馴染達と一緒に異世界召喚、だけど僕の授かったスキルは役に立つものなのかな?」 「幼馴染達と一緒に異世界召喚、だけど僕は幼馴染達よりも強いジョブを手に入れて無双する!」 「幼馴染達と一緒に異世界召喚、だけど僕は魔王から力を授かり人類に対して牙を剥く‼︎」 幼馴染達と一緒に異世界召喚の第四弾。 愽は幼馴染達と離れた場所でサバイバル生活を送るというパラレルストーリー。 はたして愽は、無事に幼馴染達と再会を果たせるのだろうか?

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

処理中です...