スライム退治専門のさえないおっさんの冒険

守 秀斗

文字の大きさ
119 / 162

第119話:すり鉢でグルグルと周っているのを見ていると、リーダーの人生を象徴してますね、同じ事の繰り返しで誰も興味を持ちませんよ、うるさいぞ

しおりを挟む
 俺と相棒、二人組の冒険者パーティー。
 普段はスライム退治専門のしょぼいパーティーだ。

 そして、今は宿屋の屋根裏に猫と住んでいる。

「俺は張り切っているぞ」
「猫のエサ代がほしいんすかね」

「そうなんだな。今や、猫が俺の生き甲斐になりつつあるなあ」
「何だか、ホント引退老人って感じっすね、リーダーは。でも、ハゲデブブサイクの歯抜け、肩こり腰痛膝痛、リュウマチで慢性膵炎ともう身体はボロボロ。冒険者ギルドも相手にしてくれないんじゃないすかね」
「うるさいぞ。とにかくこれも猫のためだ。もう仕事はなんでもいいぞ」

 俺は宿屋で借りた手押し車で体を支えながらギルドを目指す。

「もう老人すね、その格好」
「まあ、念のためだ。また、突然ぎっくり腰になるかもしれないからなあ」

 そんなわけで、ギルドへ到着。
 そして、いつものようにスライム退治の仕事をくれた。

「やれやれ。またスライム退治か」
「リーダー、仕事は何でもいいって言ってなかったすか、さっき」

「まあ、そうなんだけどさあ、清掃でもいいからダンジョン巡りとかしたいよなあ。何だよ、この指定された場所は。村の近くのすり鉢状の子供の遊び場って、やる気が起こらないぞ。ちっとも冒険してない」
「しょうがないんじゃないすか。その手押し車を押してる姿を見たら、ダンジョン探索なんて無理ですよ」
「そうだよなあ。やれやれ」

 さて、村の近くの子供の遊び場にやって来た。

「ここはサンドイーターの穴っすね」
「なんだよ、サンドイーターって」

「蟻地獄のモンスターっすね。その穴って設定すね。ただのすり鉢状の穴っすけど」
「おいおい、まだ、例のドラゴンテーマパークを開催してるのか、村役場は」

「かなりの赤字なんで、やめるわけにはいかないみたいっすね」
「しょうがねーなー。人生はなあ、損切が大事なんだぞ。あきらめ時が肝心なんだ。このままずるずると下らないテーマパークを続けていると村が破産するんじゃないのか」

「損切出来なくて、ずるずると情けない人生を送っているリーダーの言葉は重みがありますね」
「うるさいぞ」

 しかし、相棒の言うとおり、あきらめないでいたら、身体はボロボロでしている事と言えばスライム退治ばかりだ。やれやれ。

「さて、スライムはどこだ。お、すり鉢の底にいっぱいいるなあ」
「じゃあ、さっさと退治しますかね」
「おう、いくぞ」

 俺は颯爽とすり鉢状になった斜面を滑り落ちる。

「覚悟しろ、スライム!」

 バシッ! バシッ! バシッ! バシッ! バシッ!

「ふう、あっさりとやっつけたな」
「まあ、相手はスライムですからね」

 しかし、今日はけっこうな数を倒した。
 これで猫缶をかなり買えるぞ。

 さて、宿屋の屋根裏に帰ろうとして、俺は気づいた。

「おい、これは子供の遊び場だろ。でも、階段がないぞ」
「ああ、遠心力を使って、斜面を登るんすよ」

 相棒がサササとすり鉢をグルグルと走って行く。
 少しずつ上がって、地上に降り立つ。

「こんな感じっすね」
「おお、そうやって登るのか」

 俺もすり鉢状態の斜面を走る。グルグル周るが、途中で滑ってしまう。

「おい、これ斜面が急すぎて、登れないじゃないか」
「子供でも簡単に登ってましたけどねえ。リーダーは冒険者としての気構えが足りないんじゃないすか」
「うるさいぞ。こうなったらまっすぐに走って登ってやる」

 俺は一直線に斜面を登ろうとする。
 しかし、急こう配なんで、途中までしか登れない。
 ズルズルと下がってしまう。

「だらしがないっすねえ。ロープを伸ばしますから掴まってくれますかね」
「うるさいぞ。こうなったら自力で登るまで待ってろ。お前のやった正攻法でグルグル周って地上まで登ってやる」

 俺は意地になって、すり鉢から抜け出そうとする。
 しかし、何度やっても、もう少しで地上ってとこで、ズルズルと落ちてしまう。

 ああ、若い頃なら、こんな斜面、あっと言う間に登れたんだけどなあ。
 年は取りたくないもんだ。

 延々とグルグルすり鉢状の斜面を周って走る。
 しかし、こりゃ、ダメだ。
 疲れてきたぞ。

「ウォ!」

 また腰にきた。
 そのままゴロゴロと底までずっこける。

 もう、あきらめたぞ。
 人生あきらめが肝心だ。

「おい、だめだあ、ロープで引っ張ってくれ」

 しかし、相棒の返事がない。
 え、見捨てられたのか。

「おーい、聞こえないのか」
「……あ、すんません、昼寝してましたよ。なかなかリーダーが登ってこないんで。それで歯抜けのハゲデブブサイクのおっさんが、ただひたすらグルグルと周って走っているのを見ていたら眠くなってしまったすよ。一種の催眠効果ですかね」

「おい、仕事中に昼寝とは冒険者としての気構えに欠けているぞ」
「リーダーもその出腹のおかげで登れないんじゃないすか。その出腹は冒険者としての気構えに欠けてるっすね」

「うるさいぞ。とにかく引っ張りあげてくれ」
「うぃっす」

 相棒が下ろしたロープに掴まって、引っ張り上げられる。

「重いっすねえ、リーダーは。最近は山菜料理ばっかなのに、その腹の脂肪、何とかならないんすか」
「出腹を引っ込めるのはドラゴン退治より難しいんだ」
「何を下らないこと言ってんすか。前にも同じ事言ってましたっすね」

 相棒に嫌味を言われる。
 やれやれ。
 やっと地上へ戻る。

「それにしても、すり鉢でグルグルと周っているリーダーを見ていると、何だか、リーダー本人の人生を象徴しているようにも思えたっすよ。ずっと同じことやってるだけ。全然、成長しないまま、結局、底に転がり落ちると。もう、リーダーの人生は同じ事の繰り返しで、ただ落ちていくだけ。誰も興味を持たないんじゃないすかね」
「うるさいぞ」

 しかし、確かに相棒の言う通りだな。
 しょぼくれた下らん人生だ。

「でも、今の俺は変わったのだ」
「何が変わったんすか」

「猫が待ってるだろ。それだけでも、生きている気がするんだな」
「猫のおかげで多少はやる気が出たようすね。でも、腹は出ないように引っ込めてくださいすよ」
「うるさいぞ」

 しかし、今日はそれなりに仕事をしたぞ。
 猫缶を買って、意気揚々と宿屋の屋根裏に帰る俺であった。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

日本国 召喚獣管理省 関東庁 召喚獣総合事案即応科。

wakaba1890
ファンタジー
召喚獣。 それは向こう側とされる所から、10歳を迎えた日本人の子供の下に召喚されるモンスターのことである。 初代天皇・神武天皇が日本を建国した際に書かれた絵画には彼は金鵄と呼ばれる金色に輝く鵄(とび)と契約したのが原初となっている。 そして、縄文、弥生、古墳、飛鳥、平安、戦国時代から近代から今に至るまで、時代を動かしてきた人物の側には確かに召喚獣は介在していた。 また、奇妙な事に、日本国に限り、齢10歳を迎えた日本在住の日本人にのみ体のどこかから多種多様な紋章が発現し、当人が念じると任意の場所から召喚陣が現れ、人ならざるモンスターを召喚される。 そして、彼らモンスターは主人である当人や心を許した者に対して忠実であった。 そのため、古来の日本から、彼ら召喚獣は農耕、治水、土木、科学技術、エネルギー、政治、経済、金融、戦争など国家の基盤となる柱から、ありとあらゆる分野において、今日に至るまで日本国とアジアの繁栄に寄与してきた。 そして、建国から今まで、国益の基盤たる彼ら数万種類以上をも及ぶ召喚獣を取り締まり管理し、2600年以上と脈々と受け継がれてきた名誉ある国家職がーーーーー国家召喚獣管理官である。

シスターヴレイヴ!~上司に捨て駒にされ会社をクビになり無職ニートになった俺が妹と異世界に飛ばされ妹が勇者になったけど何とか生きてます~

尾山塩之進
ファンタジー
鳴鐘 慧河(なるがね けいが)25歳は上司に捨て駒にされ会社をクビになってしまい世の中に絶望し無職ニートの引き籠りになっていたが、二人の妹、優羽花(ゆうか)と静里菜(せりな)に元気づけられて再起を誓った。 だがその瞬間、妹たち共々『魔力満ちる世界エゾン・レイギス』に異世界召喚されてしまう。 全ての人間を滅ぼそうとうごめく魔族の長、大魔王を倒す星剣の勇者として、セカイを護る精霊に召喚されたのは妹だった。 勇者である妹を討つべく襲い来る魔族たち。 そして慧河より先に異世界召喚されていた慧河の元上司はこの異世界の覇権を狙い暗躍していた。 エゾン・レイギスの人間も一枚岩ではなく、様々な思惑で持って動いている。 これは戦乱渦巻く異世界で、妹たちを護ると一念発起した、勇者ではない只の一人の兄の戦いの物語である。 …その果てに妹ハーレムが作られることになろうとは当人には知るよしも無かった。 妹とは血の繋がりであろうか? 妹とは魂の繋がりである。 兄とは何か? 妹を護る存在である。 かけがいの無い大切な妹たちとのセカイを護る為に戦え!鳴鐘 慧河!戦わなければ護れない!

通販で買った妖刀がガチだった ~試し斬りしたら空間が裂けて異世界に飛ばされた挙句、伝説の勇者だと勘違いされて困っています~

日之影ソラ
ファンタジー
ゲームや漫画が好きな大学生、宮本総司は、なんとなくネットサーフィンをしていると、アムゾンの購入サイトで妖刀が1000円で売っているのを見つけた。デザインは格好よく、どことなく惹かれるものを感じたから購入し、家に届いて試し切りをしたら……空間が斬れた!  斬れた空間に吸い込まれ、気がつけばそこは見たことがない異世界。勇者召喚の儀式最中だった王城に現れたことで、伝説の勇者が現れたと勘違いされてしまう。好待遇や周りの人の期待に流され、人違いだとは言えずにいたら、王女様に偽者だとバレてしまった。  偽物だったと世に知られたら死刑と脅され、死刑を免れるためには本当に魔王を倒して、勇者としての責任を果たすしかないと宣言される。 「偽者として死ぬか。本物の英雄になるか――どちらか選びなさい」  選択肢は一つしかない。死にたくない総司は嘘を本当にするため、伝説の勇者の名を騙る。

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ

ちかず
ファンタジー
久しぶりの早帰りの金曜日の夜(但し、矢作基準)ラッキーの連続に浮かれた矢作の行った先は。 見た事のない空き地に1人。異世界だと気づかない矢作のした事は? 異世界アニメも見た事のない矢作が、自分のスキルに気づく日はいつ来るのだろうか。スキル【備蓄】で異世界に騒動を起こすもちょっぴりズレた矢作はそれに気づかずマイペースに頑張るお話。 鈍感な主人公が降り注ぐ困難もナンノソノとクリアしながら仲間を増やして居場所を作るまで。

幼馴染達と一緒に異世界召喚、だけど僕だけ別な場所に飛ばされた先は異世界の不思議な無人島だった。

アノマロカリス
ファンタジー
よくある話の異世界召喚… スマホのネット小説や漫画が好きな少年、洲河 愽(すが だん)。 いつもの様に幼馴染達と学校帰りの公園でくっちゃべっていると地面に突然魔法陣が現れて… 気付くと愽は1人だけ見渡す限り草原の中に突っ立っていた。 愽は幼馴染達を探す為に周囲を捜索してみたが、一緒に飛ばされていた筈の幼馴染達は居なかった。 生きていればいつかは幼馴染達とまた会える! 愽は希望を持って、この不思議な無人島でサバイバル生活を始めるのだった。 「幼馴染達と一緒に異世界召喚、だけど僕の授かったスキルは役に立つものなのかな?」 「幼馴染達と一緒に異世界召喚、だけど僕は幼馴染達よりも強いジョブを手に入れて無双する!」 「幼馴染達と一緒に異世界召喚、だけど僕は魔王から力を授かり人類に対して牙を剥く‼︎」 幼馴染達と一緒に異世界召喚の第四弾。 愽は幼馴染達と離れた場所でサバイバル生活を送るというパラレルストーリー。 はたして愽は、無事に幼馴染達と再会を果たせるのだろうか?

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

処理中です...