スライム退治専門のさえないおっさんの冒険

守 秀斗

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第136話:コタツ砦の防壁を増やしたのだ、モンスターが襲ってきても、この三重の盾で防御できるぞ、何をわけのわからないことを言ってるんすか

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 俺と相棒、二人組の冒険者パーティー。
 普段はスライム退治専門のしょぼいパーティーだ。

 そして、今は宿屋の屋根裏に猫と住んでいる。

 朝。ううむ、だいぶ寒くなってきたなあ。

 コタツに入っているので体は温かいのだが、顔面が寒い。
 このままコタツに入っていたいのだがなあ。
 
 さて、起きるかとコタツから這い出ようとする。

「ウォ!」

 背中が痛い。

「どうしたんすか、リーダー」
「いや、背中が痛くてな。体もガチガチだ。固まってるぞ」

「そりゃ、コタツで温かく寝ていても、床は木の板ですからね。その上に寝っ転がってるんすからね。宿泊部屋のベッドとは違いますよ」
「ふーむ、考えてみれば、そうだよな。よし、宿屋の主人に言って、捨てる布団が無いか聞いてくる」

「あれ、今日の仕事はどうするんすか」
「お前、行って来てくれ。俺はコタツ砦の強化で忙しい。何事も出発点が大事なのだ。まずは寝場所ちゃんと確保するのが冒険者なのだ」
「しょうがないっすねえ」 

 あきれ顔の相棒が外に出ていく。
 まあ、正直、体の調子が悪いってのもあるけどな。
 寒い外に出る気がせん。

 さて、宿屋の主人のとこへ行くと、もう廃棄する布団や枕があるらしい。それを貰ってくる。
 ついでに廃材やらもいくつか貰った。

 そのペラペラの布団をひいて、その上にコタツを置く。
 うむ、なかなか具合が良い。
 床の木の板の冷たさが防げる。

 さて、ついでに廃材の板をつなぎ合わせる。
 今までもこのコタツを二重に衝立で囲っていたのだが、それでも寒い。

 なので、もう一回り、衝立で囲むことにした。
 これで寒さをしのげればいいのだが。

 けっこう時間がかかったが、我がコタツ砦は今や三重の防壁に囲まれているぞ。

 他にも小さいコンロ。
 これでお茶を温める。

 ついでにサボテンを置く。
 観葉植物だ。

 これも廃棄するのを貰ってきたのだ。
 コタツの上に置く。

 なかなかにぎやかになってきたな、我がコタツ砦も。

 温かいお茶を飲んで和む。
 おっと、猫がやって来た。

 俺はコタツで横になりながら、猫じゃらしで猫と遊ぶ。
 すると、相棒が帰ってきた。

「何すか、これ。衝立が増えているじゃないすか」
「うむ、コタツ砦の防壁を増やしたのだ。これで、モンスターが襲ってきても、この三重の盾で防御できるぞ」

「何をわけのわからないことを言ってるんすか。浮浪者ハウスが大きくなっただけじゃないすか。だいたい、この三重の衝立なんて、この宿屋のおとなしい主人でも簡単に突破出来るじゃないすか」
「うるさいぞ。モンスター軍団に囲まれた砦にこもった冒険者になりきっているというのに」

「子供の遊びっすかね。リーダーの頭は子供時代の冒険者ごっこから成長してないんじゃないすか」
「うるさいぞ。とにかく、多少は寒さがしのげるだろ」

 そして、相棒がコタツに入ってくる。

「この下にしいた布団、ペラペラっすね」
「でも、木の板よりはマシだろ。枕も貰ってきたぞ。これもペラペラだけどな。ところで今日はどれくらいスライム退治をしたんだ」

「ゼロっすね。スライムが出なかったんすよ」
「ゼロ匹かよ。だらしないなあ」

「コタツでぬくぬくしながら、猫と遊んでた歯抜けのハゲデブブサイクのおっさんに文句言われたくないすよ」
「うるさいぞ」

「しょうがないから山菜取りっす。でも、かなり少なくなってきたっすね」
「もう冬だからなあ」

「もうジリ貧っすよ。リーダーもちゃんと冒険したらどうすかね。こんな冒険者ごっこしてないで」
「うるさいぞ。お前もそう言いながら、コタツに頭まで入っているじゃないか」

「寒かったから、体を温めているんすよ」
「腹が減った。採取してきた山菜を煮てきてくれないか」
「しょうがないすねえ」

 やれやれと言った感じの相棒。
 下の食堂に行った。

 ああ、でも寒いとやる気が出ないんだよなあ。

 コタツでだらんと横になる。
 俺は目を瞑る。

 ああ、極楽、極楽。

 すると、突然、顔面に重いものが落ちてきた。おまけにトゲトゲが刺さった。
 何者かの攻撃を受けたぞ。

「ウォ!」

 よく見えないぞ。俺がドタバタしていると、相棒がそれをどけてくれた。

「おお、何かモンスターが襲ってきたぞ」
「何をまたバカなことを言ってんすか。呆け老人すかね。猫が衝立を蹴って、それが倒れてきただけっすよ。このハゲデブブサイク、寝てないで、さっさとエサをよこせって感じっすかね」
「おお、そうか。まあ、猫のしたことなんで許してやる」

「そんなことよりも、衝立をモンスターと間違ってしまう冒険者のおっさんの話なんて誰も興味持ちませんよ。おまけにサボテンのとげで顔面が血だらけっすよ」
「うーん、まあ、明日からちゃんと行動しよう」

 そういうわけで、衝立を立て直した後、山菜料理をいただく。

「しかし、味気ないなあ、この人生」
「この砦が出発点とか言ってたじゃないすか。でも、出発点じゃなくて、終の棲家、いや、棺桶って感じっすね、ハゲデブブサイクのリーダーにとって」
「うるさいぞ。しかし、今日も下らない時間を過ごしてしまったと思うなあ」

「リーダーに興味を持っていた人も、今の体たらくを見ると、時間の無駄をしたなあと思ってますよ」
「うるさいぞ」

 でも、寒いとやる気が出ないな。
 みんなもそうだろ。
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