スライム退治専門のさえないおっさんの冒険

守 秀斗

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第137話:満身創痍っすね、おまけにハゲデブブサイク、でも闘病日記の方がまだ興味を持たれるかもしれませんすね、ハゲデブブサイクは関係ないだろ

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 俺と相棒、二人組の冒険者パーティー。
 普段はスライム退治専門のしょぼいパーティーだ。

 そして、今は宿屋の屋根裏に猫と住んでいる。

 相棒の腕も治ったし、俺も剣を研ぎなおした。折れた剣も短剣に仕立て直した。
 いつまでも、コタツでぬくぬくとしていてもどうしようもないので、冒険者ギルドに行くことにした。

 よし、心機一転だ! 
 何か刺激的な冒険が待っている気がするのだ。

 意気揚々と冒険者ギルドに行く。
 で、スライム退治を依頼される。

「ああ、つまらんなあ、マンネリだぞ」
「仕事があるだけ、マシじゃないすかね」
「そうだけどなあ」

 場所は村の近くの野原。
 そこかしこにスライムがいる。

 簡単な仕事だな。
 そぼそぼとスライムを退治していく俺。

「おっと」

 左目にゴミが入った。目を瞑る。そこで異変に気が付いた。

「おい、ちょっと来てくれ」
「どうしたんすか」

 俺は右目を瞑り、左目だけ開ける。

「俺の左に立ってくれないか」
「なんすかね」

 俺の左に立っている相棒は見える。そこで、今度は左目を瞑り、右目を開ける。

「俺の右に立ってくれ」
「なんなんすか」

 右に立っている相棒が見えない。

「おい、お前が見えないぞ」

 そこで、相棒が俺の右目をしげしげと見る。

「あれ、目が変ですよ、診療所にいったらどうすかね。スライム退治は俺っちにまかせて」

……………………………………………………

 診療所に行った結果、診断は『緑内障』。
 視野が欠損する病気だ。
 そして、いつかは失明。

 俺はがっかりして、宿屋の屋根裏部屋に帰る。

「左目は大丈夫なんすか」
「うむ、左目は大丈夫なんだがなあ。右目はいつの間にか視野が欠損していたんだ。半分くらいしか見えない。これはもとに戻らないようだな。目薬貰ってきたけどさあ」

「いつからっすか。気が付かなかったんすかね」
「わからん。左目が病気の右目をカバーするみたいだなあ」

「やれやれ。もう、リーダーは満身創痍っすね。緑内障にリュウマチ、慢性膵炎、夜間頻尿、ED、腰痛膝痛肘痛、歯抜け、おまけにハゲデブブサイクと。もう、人生終わってますね。でも、コタツ爺さんの猫日記より闘病日記の方がまだ興味を持たれるかもしれませんすね」
「うるさいぞ。ハゲデブブサイクは関係ないだろ」

 ああ、どんどん体が壊れていく、これが生きるということなのか。
 つらいことばかりだ。

「このまま目が見えなくなったら、本当に終わりだな」
「盲目の剣士ってのもいますけど、リーダーには無理っすね」
「そうだよなあ。ああ、もうやる気をなくしたぞ」

 俺は屋根裏部屋でコタツに入ってゴロリと寝込む。

「元気だしてくださいっすよ。左目は健康なんすよね。右目も完全に見えなくなったわけじゃないすよね」
「まあ、そうだがなあ」

 でも、やる気が起こらん。
 すっかりふて寝をする俺。

「大丈夫すかねえ。このままコタツに入ったまま孤独死もありますよ」
「うむ、そうなるかもしれないなあ」
「ちょっと、ホントに大丈夫すか。そうだ、リーダーには必殺の技があるじゃないすか、心眼を使うって方法」

 そう言えば、目を瞑って、木に化けるモンスターのトレントを倒したことがあるなあ。

「そう、例え目が見えなくなっても、俺は冒険者なのだ」
「そうすよ。頑張ってくださいよ」

 うむ、俺は体を起こす。半身はコタツに入れたままだがな。

 そして、目を瞑る。真っ暗闇だ。
 いずれはこうなってしまうのだろうか。

 おっと、何者かが近づいてくる。
 モンスターが近づいてきたのだ!

「うわ!」

 思わず、目を開ける。
 すると、猫が右から近づいてきた。

「何だ、猫か」
「猫にビビってるんすかね、心眼も役には立たないすね。やっぱり孤独死っすか」
「うむ、そうかもしれん」

「あれ、本当に元気ないすねえ。ほら、猫も、このハゲデブブサイクのおっさん、元気出せって言ってますよ。後、さっさと猫缶を開けろって」
「そうだな、まだ左目は全然健康だ。俺は頑張るぞ」

 そう言いながら、猫に猫缶を開けてやる。
 猫を見ながら、すっかり和んでしまう。

 猫が食べ終わった後、猫じゃらしで猫と遊ぶ。
 ああ、楽しいなあ。

「ちょっと、リーダー、多少は元気が出たようすけど、猫と遊んでいるだけっすね」
「まあ、そうだな」

「結局、猫爺さんの猫日記すか。もう、誰も興味は持ってくれないっすね」
「うるさいぞ。俺のドラゴン退治への冒険の旅は、今、始まったのだ」
「全然、始まってないじゃないすか」

「とにかくやる気は出たのだ。でも、今日の仕事は終わった。じゃあ、コタツで寝るんで」
「しょうがないすねえ」

 相棒もコタツで横になる。

「何だよ、お前も全然やる気ないじゃないか」
「やる気ないのは昔からっすねえ」

 しょうがない奴だな。
 でも、俺も似たようなもんだ。

 コタツで横になる俺。
 でも、人生なんとかなると思い込む。

「そう挑戦してやるぞ、ドラゴン退治に。人生最大の失敗とは挑戦しないことだ!」

 俺はわめくが、相棒はしらけている。

「何の挑戦もしてないじゃないすか。リーダーのドラゴン退治なんて、挑戦するんじゃなくて、単なる妄想っすよ」
「うるさいぞ」

「だいたい、コタツに入ってぬくぬくとしながらわめいても、誰も聞きませんって」
「そうだよなあ」

「何すか、もうオチもない人生すね。落ちていくばかりのリーダー。やはり孤独死すかね」
「うるさいぞ」

 しかし、ますますやる気をなくしていく。
 しょうもない人生だ。
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