スライム退治専門のさえないおっさんの冒険

守 秀斗

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第147話:モンスター退治よりつらくなってきたぞ、掃除する部屋が多すぎる、腰が痛くなってきた、だらしがないっすねえ、歯抜けのリーダーは

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 俺と相棒、二人組の冒険者パーティー。
 普段はスライム退治専門のしょぼいパーティーだ。

 そして、今は宿屋の屋根裏に猫と住んでいる。

 朝。

「うーん、うーん」
「どうしたんすか、リーダー」

「腰が痛い。この前、子供を陥没した穴から助けただろ。その時、腰を痛めた」
「あんな小さい子供を担いだだけで、腰痛すかね」

「しょうがないだろ。元々、腰は悪かったんだ」
「そんなんで、ドラゴン退治なんて、出来るんすかね。おまけに頻尿、リュウマチ持ちの爺さんなんすから」
「うるさいぞ」

「で、休むんすかね」
「いや、仕事に行くぞ」

「ありゃ、いつもならさぼるくせに」
「いつもさぼっているわけではない。慢性の病気を多くかかえているが、多少は体を動かした方がいいようだしな」

 そんなわけで、手押し車で体を支えて冒険者ギルドに行く。

「そんなボロボロの体でドラゴン退治を依頼されたら、どうすんすか。一発でドラゴンの足で踏みつぶされて終わりっすよ」
「ドラゴン退治なんてありえないだろ」

「なんなんすかね。いつもはドラゴン退治だ、美少女姫だ、とか何だかわめいているハゲデブブサイクのリュウマチ持ちの爺さんのくせに」
「うるさいぞ。お前だって、そんなこと依頼されるわけないって、わかってるだろ」

 で、依頼されたのが、清掃。

「やれやれ、また清掃か。しかし、今日は清掃でいいや。腰も痛いしな」
「でも、変な依頼っすね。『清掃(モンスターも)』って、どういうことですかね」

「あの、性格の悪いギルドの主人がふざけたんじゃないか。お前らがよくやっているスライム退治なんて清掃みたいなもんだって言いたいんじゃないのか」
「あの主人、性格は悪くないすよ」

「顔は怖いぞ」
「リーダーよりはやさしい顔はしてますけどね」
「うるさいぞ」

 さて、下らん会話をしながら、現場に到着。
 村から少し離れた場所。
 大きい屋敷だ。

「すげー、豪邸だなあ」
「そうすね」

 豪華な扉を叩くと、老人が出てきた。

「いやあ、申し訳ないねえ、清掃なんて頼んで。おまけに変なモンスターが出るんだよ」
「何、モンスターが実際に出るんですか」

 ちょっと、張り切る俺。

「部屋の隅っこに現れるんだがねえ」
「で、どんな被害があったんですか」
「いや、特に何もないんじゃがのう」

 俺は相棒にささやく。

「何を言っているんだ、この爺さん。呆けたのか」
「失礼っすよ。呆けてるのはお互い様じゃないすかね、リーダーは」

「うるさいぞ」
「とにかく清掃しますか」

 まあ、依頼されたんだから、仕方がない。

「それにしても、そこら中、散らかっているなあ」

 豪邸なんだが、中はやたらゴミが散らばっているぞ。
 すると、老人が俺のつぶやきを聞いたのか、理由を教えてくれた。

「以前はお手伝いさんが大勢いたんですがなあ。執事に財産を持ち逃げされて、親族にも見捨てられて、今は一人暮らしなんじゃよ。腰痛で、わし一人では清掃もままならん。食事も宅配じゃよ」

 そういうことか。腰痛と聞いて、同病相憐れむってわけで、俺は老人に同情した。

「では、清掃を開始しますんで」
「お願いするよ。わしは二階の部屋で寝ているから」

 そんなわけで、相棒と一緒に各部屋を掃除する。

「部屋は豪華だけど、何にもないなあ」
「以前は貴重な品々があったんじゃないすかね。それを売り払ったって感じすかね」

 そぼそぼと清掃をする俺と相棒。

「おっと」
「どうしたんすか」

「うむ、気配を感じたぞ。モンスターがいるぞ」
「なんすかね。この家にスライムでも紛れ込んでんすかね」

「いや、スライムではない。長年モンスターと戦ってきた俺は感じるぞ」
「リーダーは尿意を感じただけじゃないすかね。また便所に行きたいだけじゃないすか」
「うるさいぞ。おっと、そこだ!」

 俺は薄暗い部屋の隅を剣で指し示す。

「あれ、変な奴がいますよ、リーダー。全身ホコリまみれ。こいつは危険なんすか」

 相棒がナイフを構えるが、俺はがっかりとする。

「やれやれ。これはつまらんモンスターだ。ホコリゴーレムだ」
「何すか、それ。俺っちは初めてっすね」
「まあ、珍しいと言えば珍しいモンスターなんだがなあ」

 俺はフッと息をモンスターに吹きかける。
 すると、あっさりバラバラになるモンスター。

「ええ、もう倒しちゃったんすか」
「そうだよ。風が吹いてもバラバラになって終わりだな」

「人畜無害なんすか」
「そうだなあ。咳やくしゃみの原因になるくらいだな」

「なんだか冴えないモンスターすね。冴えないリーダーの人生みたいっすね」
「うるさいぞ。まあ、清掃しないと出てくるんだな。こいつを倒しても、スライム退治の百分の一くらいしか報酬が出ないぞ、やれやれ」

「清掃の方がよっぽどお金になるじゃないすか」
「そうだな」

「もうハゲデブブサイクのリーダーは清掃員になったらどうすかね」
「うるさいぞ」

「でも、依頼はあってましたっすね。『清掃(モンスターも)』っての」
「そうだなあ。しかし、つまらん」

「腰痛だからいいんじゃないすかね」
「まあ、そうだな」

 その後も掃除を続ける。豪邸なんで、やたら部屋だけは多い。

「おい、モンスター退治よりつらくなってきたぞ。掃除する部屋が多すぎる。腰が痛くなってきた」
「だらしがないっすねえ、歯抜けのリーダーは」
「うるさいぞ」

 ああ、年は取りたくないものだと何度も考えてしまう。
 やっと終わった。

 老人へ業務終了の挨拶にいく。
 ついでに、ホコリゴーレムが出現したことと清掃人を雇ったらどうかと助言したんだが。

「いやあ、ご苦労さん。でも、もう金がほとんどないんじゃよ。固定資産税も払わなくてはいけないからなあ」

……………………………………………………

 屋根裏部屋に戻る俺と相棒。

「おい、固定資産税とはなんだ」
「家を持っていると税金を払う必要があるんすよ」

「あれ、家を買ったときに税金は払ってるんじゃないのか」
「それ以外に、毎年払うんすよ。で、その家を売って利益が出たら、また税金。子供とかに相続してもまた税金取られますね」

「ひどいな、それ。税金ばっかり取りやがって。この我がコタツ砦にも税金がかかるんじゃないのか」
「何をバカなことを言ってんすかね。こんな屋根裏部屋の浮浪者ハウスに税金はかからんすよ」

「でも、政府の連中は魔王よりひどいことをしてるなあ。実は政府の連中は魔王の手先なんじゃないのか」
「それなら、大勢の冒険者で討伐すればいいんすけどね。でも、これは法律で決まってるんすよ。変えるのは難しいっすね。何人冒険者が集まっても無理っすね」

「なんでもかんでも税金取るのかよ、ひどいな。ああ、疲れたぞ。俺はコタツで寝る。もし、ドラゴンを退治して、大金持ちになっても税金ばっかり取られて、最後はあの老人みたいに悲惨なことになるぞ」
「でも、浮浪者税とか出来るかもしれないっすよ」

 ニヤニヤ笑う相棒。

「おいおい、やめてくれよ。こっちは山菜料理でしのいでいるってのに」
「まあ、そんなことはないでしょうけどねえ」

 だいたい、俺は浮浪者ではない、まだ冒険者だぞ。
 腰痛持ちだけどな。
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