スライム退治専門のさえないおっさんの冒険

守 秀斗

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第2話:ドラゴン退治とはすごいなあ、すごいっすね

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「すごいなあ」
「すごいっすね」

 今、俺たちは森の端っこにいる。
 森を出ると広々とした荒れ地があるのだが。

 そこにドラゴンが出現した。
 すごくでかい。

 おまけに、どんな種類のドラゴンか知らんが身体全体に鎧をつけている。
 あんまり見かけないドラゴンだな。

 まあ、ドラゴンを実際に見たのは初めてなんだがな。
 今まで見たドラゴンはモンスター図鑑のイラストだけだ。

 そして、その前に立ちはだかる冒険者パーティー。

「かっこいいなあ」
「かっこいいっすね」

 五人の冒険者たち。
 どうやら剣士、ウォリアー、魔法使い、弓使い、クレリックみたいだな。
  
「なかなかバランスのとれたパーティーのようだな」
「俺っちら二人組のしょぼいパーティーとはえらい違いっすね。リーダーは冴えない中年男の剣士、おいらはシーフの二人組ですからね」

「おい、冴えないは余計だろ」
「おっと、すんません。おいらは正直者なんで」

 ふざけんな!
 と言いたいところであるが冴えないというのは事実ではある。

 そして、相棒のシーフ。
 こいつも顔がイケメンってとこ以外は冴えない奴だ。

 今、ドラゴンと対峙している五人の冒険者たちからは何かオーラのようなものが見えるようだ。

 剣士、ウォリアー、弓使いは男性。
 魔法使い、クレリックは女性。

 全員、若くて美男美女。
 羨ましい。
 若いってのいいなあ。

「なんつーか、同じ冒険者と名乗るのが恥ずかしくなってきますね」
「そんな卑下する必要はないぞ。俺たちも冒険者ギルドに登録された立派な冒険者だろ」

「けど、今日の依頼はスライム退治っすよ。ドラゴンとはえらい違いっすね」
「スライム退治も立派な仕事だぞ」

 俺たちがお喋りをしていると、とりあえず弓使いが矢を発射。
 おお、見事、鎧が防御できないドラゴンの片方の目に刺さった。

 ドラゴンが怒りだし、口から炎を五人の冒険者たちに向けて吐いた。
 その炎を魔法使いがどんな魔法か知らんが、バリアーを使って防いでいる。

 その隙にウォリアーが横から突進、ドラゴンの足めがけてバカでかい斧を振った。
 しかし、ドラゴンが着ている鎧にはじかれる。

 ウォリアーがドラゴンに踏みつぶされそうになる。
 そこへ剣士が危うくウォリアーを助けた。

「いやあ、なかなか手に汗握る展開だなあ」
「俺っちらは手に汗握るどころか乾いてばっかですからね」
「まあ、スライム相手じゃあ、どうしようもないだろ」

 剣士が今度はドラゴンへ立ち向かう。
 しかし、ドラゴンが着ている鎧には剣も歯が立たないようだ。

 そうこうしているうちに炎を防いでいた魔法使いのバリアーが縮小していく。
 魔力が足りなくなってきたようだ。

 弓使いがドラゴンの炎にやられて火が点いた。
 地面を転げまわる弓使い。
 クレリックがその弓使いを何とか治癒魔法で助けている。

「うーん、苦戦しているようっすね」
「じゃあ、お前、加勢しに行ってこいよ」
「おいらが行っても邪魔になるだけっすよ」

 五人組はバラバラに素早く動いて、ドラゴンを翻弄している。
 作戦としては悪くないかな。

「けど、一度はドラゴンと戦ってみたいもんだなあ」
「じゃあ、リーダー、加勢に行ってきたらどうすか」
「俺が加勢しても、かえって邪魔になるだけだよ」

 ドラゴンは五人組の冒険者たちを攻撃しようとしているが、いまいち動作がのろい。
 重い鎧をかぶっているためだろうか。

「しかし、なんか情けないっすね、俺っちらたち。せっかくドラゴンが出現したのに見ているだけなんて」
「しょうがないだろ、依頼はスライム退治なんだから」

 しかし、俺も冒険者を始めたころは、いつかはドラゴンを退治して英雄になるつもりだったのになあ。
 今や、しがないスライム退治で糊口をしのぐ有様だ。

 おっと、ドラゴンが体を動かして長い尻尾をグルッと回転させた。
 五人の冒険者たちが吹っ飛ばされた。
 全員、地面に倒れている。

「あ、やばいっすよ」
「うーん、これはやばい」

「助けにいきましょうか」
「助けると言ってもなあ、俺たちの武器であのドラゴンが着用している鎧は何ともならんぞ」

 しかし、あの冒険者パーティーを見捨てるわけにはいかない。
 俺は考える。
 これはドラゴンの目を狙うしかないんじゃないかな。

 しかし、ドラゴンもすでに片目をやられたんで警戒しているだろう。
 何か良い方法はないだろうか。

 すると、突然、相棒が悲鳴をあげた。

「ウヒャ、スライムが俺の背中に飛び掛かってきたっす、リーダー助けてくださいよ」
「しょうがねえなあ」

 俺は剣で、相棒の首あたりにいるスライムを軽く叩く。
 あっさりとやっつけた。

 ん? あのかっこいい冒険者たちが俺たちの方を指差して何か話しているぞ。
 どうしたんだ?

 ウォリアーと弓使いがドラゴンの前に出ておびき寄せようとしている。
 そして、魔法使いが何か呪文を唱えた。

 おお、剣士が空中を高々と飛んだ、魔法の威力か。
 カッコいいぞ。
 漫画みたい。

 そして、ドラゴンの首の後ろあたりに着地。
 剣をドラゴンに突き刺した。

 ドラゴンが絶叫をあげながらドスン! と倒れる。
 周辺が地響きで揺れた。

 どうやら首のあたりに鎧の隙間があったようだ。
 そこを狙ったらしい。

「すごいなあ」
「すごいっすね」

 五人の冒険者たちがドラゴンの死骸の前で喜んでいる。
 なかなか面白い見世物だったな。

「さあ、スライム退治に戻るか」
「そうっすね」

 すると五人の冒険者たちのリーダーらしい剣士がこっちへにこやかな笑顔で近づいてくる。

「いやあ、助けてくれてありがとうございました」

 なぜかお礼を言われた。

「あの珍しいドラゴンの鎧の弱点が首にあることを教えてくれるとは、かなりのベテランとお見受けしますが」
「はあ」

 どうも勘違いしているようだ。
 単に相棒に襲いかかったスライムを叩いただけなのだが。

 それに、まあ、ベテランだけどさ。
 スライム退治の。

「恩に着ます。もし、また会うときは一緒に冒険しましょう」

 そう言って丁寧に頭を下げて立ち去る若者冒険者たちのリーダー。
 
「なかなか、さわやかな奴だったすね。あういうのが出世するんだろうなあ」

 相棒がつぶやく。
 考えてみれば、俺があの剣士くらいのころはまだ若く生意気でどうしようもない奴だったな。
 自分の実力もしらずに無茶な冒険ばっかりしていた。

 そして、いつの間にかおっさんになっていた。

 いや、俺はまだ死んでない。
 いつかはドラゴンを退治してやる。

 そう思いながらスライム退治を続ける俺であった。
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