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第21話:あの扉はなんだ、掃除道具入れじゃないすか
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俺と相棒、二人組の冒険者パーティー。
仕事はいつもスライム退治ばかり。
そして、今日の仕事の場所は、村の真ん中辺りにある平屋建ての家の地下室だ。
普段はほとんど使っていなかったそうだ。
そしたら、いつの間にか、そこにスライムが何匹か発生したので退治してほしいとのこと。
俺たちの泊っている宿屋のすぐ近くだ。
いつものごとく、全然、冒険って感じじゃないな。
俺と相棒はだらだらと歩きながら、その家に向かう。
「つまらんなあ」
「つまらんすねえ」
「ああ、今日の仕事の場所で、突然、ドラゴンが現れないかなあ」
「そんな、平屋建ての家の地下室に何でドラゴンが現れるんすか」
「いや、悪い魔法使いの女がそこの地下室を根城にしていて、スライム退治に来た俺たちを自分を討伐しに来たと勘違いしてドラゴンを召喚するんだよ」
「だから、その職業『悪い魔法使い』の女が、何でこんな平和な村の家の地下室を根城にしてんすか」
「悪い奴はどこにいるかわからないってことを俺は言いたいのだ。冒険者ならいついかなる時でも周囲に目を配って、危険を察知して、慎重に行動していくものだ」
「慎重に行動してたら、腹が出ちゃったんすか、リーダーは」
「そんなことあるわけないだろ」
また、いつものごとく下らん会話をしながら、歩いているとすぐに目的の家に着いた。
「全然、職業『悪い魔法使い』の女が居そうな雰囲気が全くしない普通の家じゃないすか」
「いや、油断はするな……って、普通の家だな」
ああ、今日もまたつまらんスライム退治で終わりか。
俺が家の扉をノックすると、この家の主人が出てきた。
「いやあ、すみません。地下室は物置だったんですけど、ほとんど入ってなかったんですよ。それで、最近になって、他の場所へ引っ越すことになったので、地下室に入ったらスライムがいたんです」
「わかりました。すみやかに退治します」
「ありがとうございます。後、私は用事があるので、ちょっと小一時間ほど外出します」
さて、俺たちは地下室へ入る。
単なる地下室だ。
ほとんど、物は置いていないな。
そして、スライムが何匹かいた。
バシッ、バシッ、バシッ!
あっという間に倒す。
「ああ、つまらんなあ」
「職業『悪い魔法使い』の女が出てきたら面白かったんすけどねえ」
「そんなことあるわけないだろ」
「何言ってんすか、リーダーが言い出したんじゃないすか」
「そうだったな」
さて、一階へ戻ろうかと思って、ふと地下室の奥を見る。
あれ、不審な扉があるぞ。
「おい、あの扉はなんだ」
「さあ、掃除道具入れか何かじゃないすか」
「ふむ、もしかしたら、あの扉の中にもスライムが潜んでいるかもしれん。そうだとすると退治しないといかんな。何事も仕事は完璧にするのが俺のモットーだ」
「何事も完璧にするなら、もっと痩せてほしいっすね」
「うるさいぞ。とにかく仕事は真面目にやるぞ」
「うぃっす」
下らん会話をしながら、俺と相棒はその扉に近づく。
壁に三つ扉がある。
相棒が一つの扉を開けようとしたが、俺は待ったをかけた。
「おい、待て。変な書き込みがあるぞ」
三つ扉が並んでいるのだが、真ん中の扉に文字が書いてある。
……………………………………………………
この三つの扉には、それぞれ、ドラゴン、美少女、スライムが入っている。開けられるのは一つだけだ。勇気のあるものは開けてよい。勇気のないものは直ちにここから去れ。
……………………………………………………
「おい、昔、ある国で罪人が二つの洞窟を選択しろって王様に言われる話を思い出したぞ。確か、片方の洞窟は飢えたライオン、もう一方は美女軍団と豪華な料理。迷いに迷った罪人は、結局、その場で頭がおかしくなってしまうって話だ」
「でも、ここには三つの扉がありますよ」
「まあ、どうでもいいや、その話は。それに、俺としては、ドラゴン、美少女、スライム、全部まとめてかかって来いって感じだぞ。おお、これこそ冒険ではないか」
「ちょっと、なに浮かれてんすか。イタズラに決まってんじゃないすか。何で、こんな場所にドラゴンがいるんすか」
「だから、悪い魔法使いの女が召喚したんだよ」
「さっきはそんなことあるわけないだろとか言ってたじゃないすか。だいたい、この汚い殴り書きのような字は子供のイタズラとしか思えないすよ」
「いや、ドラゴン退治だ、美少女が待ってるんだ!」
「つーか、この扉のドアノブ、ほこりまみれっすよ。何年も開けてないんじゃないすか。中の美少女もおばあさんになってますよ」
「うるさいぞ。イタズラなら、それはそれで別に開けてもいいじゃないか、中は空っぽだろ」
「まあ、そうすけどねえ」
「と言うわけで、全部開けるぞ」
「あれ、ひとつだけってことじゃないすか」
「イタズラ書きなんだから、どうでもいいだろ」
「何なんすか。リーダーは、結局、全然この書き込みを信じてないんじゃないすか」
「まあ、さすがに俺もここにドラゴンはいるとは思わんよ。いつも通りにやって、お前を面白がせただけだ」
「全然面白くないすけど。仕事は真面目にやるもんすよ」
「わかってるぞ。まあ、とにかく開けるぞ」
一番左の扉を開けた。するとスライムが飛び出てきた。
「おっと!」
バシッ!
俺はすばやく剣を振ってスライムを倒す。
「おお、ちゃんとスライムが出てきたぞ。と言うことは、他の扉には美少女とドラゴンがいるのではないか」
俺は思わず興奮する。
「やっぱり、これは大冒険の始まりではないか」
「ちょっと、また急に妄想モードに反転すか、本気じゃないでしょうねえ」
「いや、もしかしたらってことがあるぞ」
「ないすよ」
すっかりしらけてる相棒。
「たまたま、スライムが潜り込んでただけじゃないすか」
「うるさいぞ。とにかく、美少女かドラゴンか」
俺は慎重に扉を開けることにした。
真ん中の扉を開ける。
ゆっくりと開けるが、中は空っぽだった。
「ほら、何もいないじゃないすか」
「うーむ、やっぱりイタズラかあ」
「当たり前っすよ」
まあ、そうだろうなあ。
でも、一応、中を覗いて点検する。
スライムもいないなと思ってたら、いきなり上から何かが落ちてきた。
「うわ!」
思わず落ちて来たものを剣で斬ってしまった。
そして、埃まみれになる俺。
よく見ると落ちてきたのはドラゴン。
しかし、ドラゴンの人形だ。
「何だよ、これ」
「だから、イタズラじゃないすか」
相棒は一番右の扉を開ける。
すると、美少女が落ちてきた。
これも人形だけど。
小さい女の子がお人形遊ぶで使うようなものだ。
「やれやれ。結局、イタズラかあ」
「でも、何すかね、このイタズラは」
そんなところにこの家の主人が帰ってきた。
「いやあ、すっかり退治していただいたようですね。ありがとうございました」
「あの、スライムは全部退治したんすけど、この扉を開けたら、人形が落ちてきたんすけど」
相棒がドラゴン人形と少女人形を見せる。
すると、びっくりする主人。
「これ、どこにあったんですか」
「この扉の中の上ですね。どうも扉を開けると上から落ちてくる仕掛けみたいっすけど」
家の主人が説明してくれた。
「子供の頃、友達と遊びでこの仕掛けを作ったんですけどね。でも、その後、すっかり忘れていましたよ。この少女人形は妹が大事にしていたものですね」
「大事にしていたんすか。じゃあ、今、渡したら懐かしがって喜ぶんじゃないすか」
「いや、妹は若くして病気で亡くなっているんですよ。ああ、懐かしいなあ……」
主人が人形を触りながら、なんだか感慨深い表情をしている。
「とにかく、見つけてくれてありがとうございました。この人形は妹のお墓にお供えでもしようかと思います」
「ところで、ドラゴン人形は壊してしまったんすけど」
「ああ、こっちは別にいいですよ。私が子供の頃、遊んでいたもので、もう必要ないですから」
……………………………………………………
俺と相棒は宿屋に戻る。
「あの主人、勝手に妹さんの人形を遊びに使って、おまけにどこに置いたか忘れてしまって、ずいぶん妹さんに怒られたみたいっすね」
「うむ、生きていれば、今、妹に渡せば笑い話になったのだがなあ。もう、お亡くなりになっているとは残念だなあ」
「しかし、今回は俺っちらにはふさわしくないしみじみとする話でしたね」
「うむ、でも、あの人形をお墓に供えることで少しは妹さんの供養になったのではないか」
すると、突然、相棒が声をあげる。
「あ、しまった」
「どうした」
「あのドラゴン人形の方は捨てちゃうみたいっすね。貰ってくればよかったすね」
「なんでだよ」
「出腹が膨れすぎて死んだリーダーのお墓にそえてやろうかと思いましてね」
「おい、俺はまだ死んでないぞ。それに、まだ大冒険してないぞ。俺が死ぬのはそれからだ」
「冗談すよ」
ヘラヘラ笑う相棒。
しかし、俺はまだ諦めてないぞ。
そう、必ずドラゴン退治をしてやるぞ。
人形じゃなくて。
仕事はいつもスライム退治ばかり。
そして、今日の仕事の場所は、村の真ん中辺りにある平屋建ての家の地下室だ。
普段はほとんど使っていなかったそうだ。
そしたら、いつの間にか、そこにスライムが何匹か発生したので退治してほしいとのこと。
俺たちの泊っている宿屋のすぐ近くだ。
いつものごとく、全然、冒険って感じじゃないな。
俺と相棒はだらだらと歩きながら、その家に向かう。
「つまらんなあ」
「つまらんすねえ」
「ああ、今日の仕事の場所で、突然、ドラゴンが現れないかなあ」
「そんな、平屋建ての家の地下室に何でドラゴンが現れるんすか」
「いや、悪い魔法使いの女がそこの地下室を根城にしていて、スライム退治に来た俺たちを自分を討伐しに来たと勘違いしてドラゴンを召喚するんだよ」
「だから、その職業『悪い魔法使い』の女が、何でこんな平和な村の家の地下室を根城にしてんすか」
「悪い奴はどこにいるかわからないってことを俺は言いたいのだ。冒険者ならいついかなる時でも周囲に目を配って、危険を察知して、慎重に行動していくものだ」
「慎重に行動してたら、腹が出ちゃったんすか、リーダーは」
「そんなことあるわけないだろ」
また、いつものごとく下らん会話をしながら、歩いているとすぐに目的の家に着いた。
「全然、職業『悪い魔法使い』の女が居そうな雰囲気が全くしない普通の家じゃないすか」
「いや、油断はするな……って、普通の家だな」
ああ、今日もまたつまらんスライム退治で終わりか。
俺が家の扉をノックすると、この家の主人が出てきた。
「いやあ、すみません。地下室は物置だったんですけど、ほとんど入ってなかったんですよ。それで、最近になって、他の場所へ引っ越すことになったので、地下室に入ったらスライムがいたんです」
「わかりました。すみやかに退治します」
「ありがとうございます。後、私は用事があるので、ちょっと小一時間ほど外出します」
さて、俺たちは地下室へ入る。
単なる地下室だ。
ほとんど、物は置いていないな。
そして、スライムが何匹かいた。
バシッ、バシッ、バシッ!
あっという間に倒す。
「ああ、つまらんなあ」
「職業『悪い魔法使い』の女が出てきたら面白かったんすけどねえ」
「そんなことあるわけないだろ」
「何言ってんすか、リーダーが言い出したんじゃないすか」
「そうだったな」
さて、一階へ戻ろうかと思って、ふと地下室の奥を見る。
あれ、不審な扉があるぞ。
「おい、あの扉はなんだ」
「さあ、掃除道具入れか何かじゃないすか」
「ふむ、もしかしたら、あの扉の中にもスライムが潜んでいるかもしれん。そうだとすると退治しないといかんな。何事も仕事は完璧にするのが俺のモットーだ」
「何事も完璧にするなら、もっと痩せてほしいっすね」
「うるさいぞ。とにかく仕事は真面目にやるぞ」
「うぃっす」
下らん会話をしながら、俺と相棒はその扉に近づく。
壁に三つ扉がある。
相棒が一つの扉を開けようとしたが、俺は待ったをかけた。
「おい、待て。変な書き込みがあるぞ」
三つ扉が並んでいるのだが、真ん中の扉に文字が書いてある。
……………………………………………………
この三つの扉には、それぞれ、ドラゴン、美少女、スライムが入っている。開けられるのは一つだけだ。勇気のあるものは開けてよい。勇気のないものは直ちにここから去れ。
……………………………………………………
「おい、昔、ある国で罪人が二つの洞窟を選択しろって王様に言われる話を思い出したぞ。確か、片方の洞窟は飢えたライオン、もう一方は美女軍団と豪華な料理。迷いに迷った罪人は、結局、その場で頭がおかしくなってしまうって話だ」
「でも、ここには三つの扉がありますよ」
「まあ、どうでもいいや、その話は。それに、俺としては、ドラゴン、美少女、スライム、全部まとめてかかって来いって感じだぞ。おお、これこそ冒険ではないか」
「ちょっと、なに浮かれてんすか。イタズラに決まってんじゃないすか。何で、こんな場所にドラゴンがいるんすか」
「だから、悪い魔法使いの女が召喚したんだよ」
「さっきはそんなことあるわけないだろとか言ってたじゃないすか。だいたい、この汚い殴り書きのような字は子供のイタズラとしか思えないすよ」
「いや、ドラゴン退治だ、美少女が待ってるんだ!」
「つーか、この扉のドアノブ、ほこりまみれっすよ。何年も開けてないんじゃないすか。中の美少女もおばあさんになってますよ」
「うるさいぞ。イタズラなら、それはそれで別に開けてもいいじゃないか、中は空っぽだろ」
「まあ、そうすけどねえ」
「と言うわけで、全部開けるぞ」
「あれ、ひとつだけってことじゃないすか」
「イタズラ書きなんだから、どうでもいいだろ」
「何なんすか。リーダーは、結局、全然この書き込みを信じてないんじゃないすか」
「まあ、さすがに俺もここにドラゴンはいるとは思わんよ。いつも通りにやって、お前を面白がせただけだ」
「全然面白くないすけど。仕事は真面目にやるもんすよ」
「わかってるぞ。まあ、とにかく開けるぞ」
一番左の扉を開けた。するとスライムが飛び出てきた。
「おっと!」
バシッ!
俺はすばやく剣を振ってスライムを倒す。
「おお、ちゃんとスライムが出てきたぞ。と言うことは、他の扉には美少女とドラゴンがいるのではないか」
俺は思わず興奮する。
「やっぱり、これは大冒険の始まりではないか」
「ちょっと、また急に妄想モードに反転すか、本気じゃないでしょうねえ」
「いや、もしかしたらってことがあるぞ」
「ないすよ」
すっかりしらけてる相棒。
「たまたま、スライムが潜り込んでただけじゃないすか」
「うるさいぞ。とにかく、美少女かドラゴンか」
俺は慎重に扉を開けることにした。
真ん中の扉を開ける。
ゆっくりと開けるが、中は空っぽだった。
「ほら、何もいないじゃないすか」
「うーむ、やっぱりイタズラかあ」
「当たり前っすよ」
まあ、そうだろうなあ。
でも、一応、中を覗いて点検する。
スライムもいないなと思ってたら、いきなり上から何かが落ちてきた。
「うわ!」
思わず落ちて来たものを剣で斬ってしまった。
そして、埃まみれになる俺。
よく見ると落ちてきたのはドラゴン。
しかし、ドラゴンの人形だ。
「何だよ、これ」
「だから、イタズラじゃないすか」
相棒は一番右の扉を開ける。
すると、美少女が落ちてきた。
これも人形だけど。
小さい女の子がお人形遊ぶで使うようなものだ。
「やれやれ。結局、イタズラかあ」
「でも、何すかね、このイタズラは」
そんなところにこの家の主人が帰ってきた。
「いやあ、すっかり退治していただいたようですね。ありがとうございました」
「あの、スライムは全部退治したんすけど、この扉を開けたら、人形が落ちてきたんすけど」
相棒がドラゴン人形と少女人形を見せる。
すると、びっくりする主人。
「これ、どこにあったんですか」
「この扉の中の上ですね。どうも扉を開けると上から落ちてくる仕掛けみたいっすけど」
家の主人が説明してくれた。
「子供の頃、友達と遊びでこの仕掛けを作ったんですけどね。でも、その後、すっかり忘れていましたよ。この少女人形は妹が大事にしていたものですね」
「大事にしていたんすか。じゃあ、今、渡したら懐かしがって喜ぶんじゃないすか」
「いや、妹は若くして病気で亡くなっているんですよ。ああ、懐かしいなあ……」
主人が人形を触りながら、なんだか感慨深い表情をしている。
「とにかく、見つけてくれてありがとうございました。この人形は妹のお墓にお供えでもしようかと思います」
「ところで、ドラゴン人形は壊してしまったんすけど」
「ああ、こっちは別にいいですよ。私が子供の頃、遊んでいたもので、もう必要ないですから」
……………………………………………………
俺と相棒は宿屋に戻る。
「あの主人、勝手に妹さんの人形を遊びに使って、おまけにどこに置いたか忘れてしまって、ずいぶん妹さんに怒られたみたいっすね」
「うむ、生きていれば、今、妹に渡せば笑い話になったのだがなあ。もう、お亡くなりになっているとは残念だなあ」
「しかし、今回は俺っちらにはふさわしくないしみじみとする話でしたね」
「うむ、でも、あの人形をお墓に供えることで少しは妹さんの供養になったのではないか」
すると、突然、相棒が声をあげる。
「あ、しまった」
「どうした」
「あのドラゴン人形の方は捨てちゃうみたいっすね。貰ってくればよかったすね」
「なんでだよ」
「出腹が膨れすぎて死んだリーダーのお墓にそえてやろうかと思いましてね」
「おい、俺はまだ死んでないぞ。それに、まだ大冒険してないぞ。俺が死ぬのはそれからだ」
「冗談すよ」
ヘラヘラ笑う相棒。
しかし、俺はまだ諦めてないぞ。
そう、必ずドラゴン退治をしてやるぞ。
人形じゃなくて。
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