スライム退治専門のさえないおっさんの冒険

守 秀斗

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第26話:時間は逆行出来ないんだぞ、俺の時代はもう終わってるけどな、リーダーは最初から始まってないじゃないすか

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 俺と相棒、二人組の冒険者パーティー。
 普段はスライム退治専門のしょぼいパーティーだ。

 いつも通り、スライム退治で一日が終わった。
 但し、今日はかなり沢山のスライムを退治した。

 ああ、疲れた。
 しかし、おかげで報酬もたくさんもらったので、相棒が少し浮かれている。

「ちょっと、隣の街の高級レストランでも行きませんか」
「何言ってるんだ。節約だ、節約」

「たまにはいいじゃないすか。この前、結構な豪勢な食事をとらなかったすか」
「いや、お前の事を思って言ってるんだぞ。宿屋の定食で充分だ」

 渋い顔の相棒を連れて、宿屋に帰る。
 夕食は、宿屋の食堂で安い定食だ。

「やれやれ。今日は随分と働いたのに、いつもの定食すか」
「そうだ。お前、貯金しろ、貯金。いっそ、政府の国債を買ったらどうだ」

「なんでそんなもの買うんすか」
「老後のためだよ。今のうちから少しずつでも金を貯めておけ」

「リーダーはそんなことしてたんすか」
「するわけないだろ」

「冒険者が老後の心配って、何か情けないっすよ。だいたい、国債を買う金が無いっす」
「さっき高級レストランへ行こうとしたじゃないか。その分、節約できたはずだ。今から備えておくんだ。いいか、人生とは厳しくつらいものなんだぞ」

「ちょっと、若者からするとおっさんの説教ほど聞いていて嫌なものはないんすけど。飯が不味くなりますよ。だいたい、明日の事なんてわからないっすよ。いつ死ぬかもわからないのに老後の心配なんてしなくていいっすよ」
「だからダメなんだ、お前には冒険者としての気構えが足りない……ってことはないか。うーん」

 冒険者なんて老後の事を考えない奴がやるもんだからなあ。
 俺も若い頃は先の事なんて全然考えなかった。

 そして、今やジリ貧生活。
 毎日、スライム退治で糊口をしのぐ生活だ。

 すると相棒が歌を歌う。

「男だったら~流れ矢の一つや二つ~いつも胸に刺さってる~ああ、運が悪けりゃ死ぬだけさ~♪」
「何だよ、その変な歌は。胸に矢が刺さったら死ぬだろ。運が悪いとか言ってる場合じゃないぞ」

「昔流行った歌らしいっす。俺っちはよく知らないすけど。なお、著作権の関係で少し変えましたっす。まあ、運が悪ければ死ねばいいんすよ」
「運が良く、いや、この場合は運が悪く長生きしたらどうすんだ。百歳まで生きちゃったらどうする。飢え死にが待ってるんだぞ」
「飢え死に上等じゃないすか」

 やれやれ。
 若い奴にいくら言っても無駄だな。

 だいたい、俺も何にも先の事を考えずに適当に過ごし、妄想だけしてたら、いつの間にかハゲの出腹のおっさんだもんな。

 そして、気が付けば自分の時代は終わっていたと思ってしまう。
 知っている有名冒険者も、皆、いつの間にか、老けているんだよな。
 そして、その有名冒険者を今の若い連中は全く知らない。

 ああ、若い奴がうらやましいよ。
 まだ時間は残ってるもんな。

「いいか、前にも同じような事を言ったが、時間は逆行出来ないんだぞ。俺の時代はもう終わってるけどな」
「リーダーは最初から始まってないじゃないすか」

「うるさいぞ。とにかくなるべく節約はしておけ」
「うぃっす」

 わかってるのか、こいつは。
 まあ、先のことはわからないけどなあ。

 さて、食事も終わって、二階の俺たちの定宿の部屋へと階段を上る。

「いいか、とにかく、人生は一度落ちると這い上がるのは大変なんだぞ」
「リーダーはずっと落ちたままじゃないすか」
「うるさいぞ」

 すると、二階へ到達しようした時に足が滑った。

「ヒエー!」

 俺はそのまま階段をズルズルと下がって一階までずり落ちてしまった。

「ちょっと、大丈夫すか、リーダー」
「ああ、腹が階段に打ち付けられて痛いが、ケガはしていないぞ」

「それにしても、時間は逆行出来ないすけど、階段は逆行出来るようっすね」
「うるさいぞ」

 ああ、それにしても痛い。

「いいか、こんなことが突然起きて、大ケガすることもあるんだぞ。そのために金を貯めとけって言ってるんだ。わかったな」
「へいへい、わかりましたっすよ。まあ、とりあえず、階段を逆行しないようにはしまっすね」

 ヘラヘラしている相棒。

「それにしても、リーダーは何の準備もしてなかったんすよね。これからどうするんすか」
「そりゃ、一発大逆転を狙ってるんだ、ドラゴン退治だ、魔王退治、それに美少女姫との出会いだ」

「またその話すか。止めといたほうがいいんじゃないすか。今からでも遅くないすよ。貯金したらどうすか」
「おっさんの俺にはもう時間が無いんだよ」

「運も全然無いような気がしまっすけどね」
「うるさいぞ」

 確かに、相棒の言う通りだ。
 今まで、何か大きい仕事を成功させたことなんて一度もない。

 いや、とにかく、何かしてみたい。
 このままでは死ねないぞ。

「よし、これからが勝負だ! 人生一発大逆転だ!」

 俺は勢いよく立ち上がる。

「ウォ!」
「どうしたんすか」

 先に二階に上っていた相棒がびっくりして戻ってくる。

「ううむ、例の腰痛だ」
「また、ぎっくり腰すか。人生一発大逆転はやめておけって神様のお告げじゃないすか。このままおとなしくしてた方がいいんじゃないすかね。もう、全く見込み無しっすね、可能性ゼロっすね」
「うるさいぞ」

 ああ、けど、相棒の言うとおり可能性はゼロなのだろうか。

 いや、たとえ一パーセントでも可能性が残っている限り、俺はそれにかけるぞ。
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