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第28話:よし!決めたぞ、え?清掃員になるんすか
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俺と相棒、二人組の冒険者パーティー。
普段はスライム退治専門のしょぼいパーティーだ。
さて、今日もいつもと変わらぬスライム退治を終えて、相棒と宿屋の二階の部屋に戻る。
さて、ベッドの上でくつろごうとしたら、もよおしてしまった。
「ちょっと、便所へ行ってくる」
相棒に声をかけると、俺は部屋を出て共同便所へ向かう。
すると、便所の入口に「清掃中」の掲示板が立っていた。
やれやれ。
俺の人生は何かしようとすると邪魔が入るんだよな。
仕方ない。
一階の便所へ行こうとして、ふと清掃員の顔を見る。
あれ、この人は。
「おお、久しぶりじゃないか」
向こうから声をかけてきた。
「どうも、こんにちは」
この男性は、その昔、ちょっと知っていた先輩剣士だ。
しかし、俺より何倍も優秀な冒険者で、随分お金を稼いでいた印象があったのだが。
何で、こんな安宿で便所掃除なんてしているんだ。
すると、その元冒険者で今は清掃員の男がニヤリと笑った。
「お、その表情は何で便所の清掃員なんかしてるんだって考えてるんだろ」
「えーと、まあ、そうですね。あなたはけっこうお金持ちの印象があったんですけど」
「金持ちにはなったけど散財しまくって、おまけに株の投資で大失敗してさあ。金が無くなって、おまけにケガして冒険者も廃業。今や、清掃員さ」
うーん、けっこう有名な冒険者だったのだが、今や、清掃員か。
けど、意外と本人は元気そうだな。
「あのー、何て言いますか、清掃員って楽しいですか」
「ああ、楽しいぞ。変なモンスター相手に剣を振り回すのは飽きたよ。それにこれも立派な仕事だぞ」
うーん、負け惜しみではないかと俺は思ったのだが、その元剣士はあんまり気にしていないようだ。
やたら、昔の話をしてくる。
「俺の知り合いはほとんどモンスターにやられたよ。やっぱり長生きした方が勝ちだと思うんだけどな」
「はあ、そうですか……」
まあ、清掃員も立派な仕事ではあるが、スライム退治よりもさらに退屈な感じがしてくるなあ。
「あんたは仕事の方はうまくいってるのか」
「いえ、うまくいってないですね。スライム退治ばっかりですね」
「でも、死ぬ危険はあんまりなさそうだな」
「まあ、そうですけどね」
「人生は先の事なんてわからないが、やはり生きてる方が勝ちだと思うんだ。まあ、いつかは死ぬけどな」
「そうですね。じゃあ、清掃のほう頑張ってください」
「おう、あんたもスライム退治を頑張ってくれよな」
俺は一階に下りて便所で用を足し、部屋に戻る。
ベッドにつまらなそうに横になっている相棒に聞いてみた。
「おい、お前は便所掃除とスライム退治って、どっちが面白いと思う」
「何でそんなこと聞くんすか」
俺は便所で会った元冒険者のことを相棒に話した。
「うーん、スライム退治もつまらないすけど。でも、やっぱり清掃員よりスライム退治の方が面白いと思いますよ。まあ、清掃員の方が安定していて、危険もないですけど」
「そうだよなあ。けど、俺たちもいつ大ケガして、清掃員になるかもしれないぞ」
「それはそれでいいんじゃないすか」
「お前、野望ってものがないのか、若いのに」
「適当に暮らせればいいんすよ」
ヘラヘラ笑う相棒。
「そういうところがダメなんだ。お前は冒険者としての気構えに欠けているぞ」
「しかし、スライム退治を毎日やってるのも、まあ、気楽ではありますよ」
「でもなあ、それで人生終わりってのも、何と言うか、つまらんと言うか」
「でも、ほとんどの人は毎日、同じ仕事をして年を取って、まあ、最後は死んでいくってことじゃないすかねえ」
「そうなんだがなあ。少しは輝きたいと思わないのか」
「だから、それはごく一部の人じゃないすかね。俺っちはスライム退治で充分すよ。まあ、リーダーのように出腹にはならないよう注意しまっすけどねえ」
「うるさいぞ。出腹は関係ないだろ」
俺が例によって相棒に文句を言ってると、なんだか廊下で騒ぎが起きている。
何が起こったのかと廊下に出ると、あの元剣士が運ばれていく。
「どうしたんだ」
「この人、便所で滑って、思いっ切り頭を打ったんですよ」
宿屋の従業員が教えてくれた。
「うーん、先程までは元気だったのに」
「人生、何が起きるかわかりませんすね」
……………………………………………………
そして、数日後、その元剣士が死んだことがわかった。
「うーん、人生先の事なんて本当にわからない、生きてる方が勝ちと言っていたが、まさか、その直後死んでしまうとは」
「あの便所、床が滑りやすいんすよ。俺っちも転んだことがありますから。でも、本人は満足じゃないすか」
「何でそう思うんだ」
「そりゃ、冒険者としてけっこう成功して、大儲けして、好き勝手な事したんでしょ。最後は失敗したけど、それまでは随分楽しんだんだから」
そうだよなあ、有名冒険者としてモテモテ、うまいもん食って、人生楽しんだんだ。
俺とは大違いだ。
「よし! 決めたぞ」
「え? なんすか、清掃員になるんすか」
「違うぞ、大冒険するんだ。人生大逆転だ」
「また、それっすか。やめたほうがいいっすよ」
「あの元剣士は人生楽しんだんだ。俺はちっとも楽しんでない。これから楽しんでやるぞ」
「無理じゃないすか。大ケガして清掃員、いや、案外、明日にでも便所で転んで頭打って、あの元剣士のようにあの世に逝くのがリーダーに合ってますよ」
「うるさいぞ」
そう、大冒険をするんだ、かかって来いドラゴン、魔王、そして、ようこそ美少女。
やっぱりこれしかないと俺は思うのであった。
普段はスライム退治専門のしょぼいパーティーだ。
さて、今日もいつもと変わらぬスライム退治を終えて、相棒と宿屋の二階の部屋に戻る。
さて、ベッドの上でくつろごうとしたら、もよおしてしまった。
「ちょっと、便所へ行ってくる」
相棒に声をかけると、俺は部屋を出て共同便所へ向かう。
すると、便所の入口に「清掃中」の掲示板が立っていた。
やれやれ。
俺の人生は何かしようとすると邪魔が入るんだよな。
仕方ない。
一階の便所へ行こうとして、ふと清掃員の顔を見る。
あれ、この人は。
「おお、久しぶりじゃないか」
向こうから声をかけてきた。
「どうも、こんにちは」
この男性は、その昔、ちょっと知っていた先輩剣士だ。
しかし、俺より何倍も優秀な冒険者で、随分お金を稼いでいた印象があったのだが。
何で、こんな安宿で便所掃除なんてしているんだ。
すると、その元冒険者で今は清掃員の男がニヤリと笑った。
「お、その表情は何で便所の清掃員なんかしてるんだって考えてるんだろ」
「えーと、まあ、そうですね。あなたはけっこうお金持ちの印象があったんですけど」
「金持ちにはなったけど散財しまくって、おまけに株の投資で大失敗してさあ。金が無くなって、おまけにケガして冒険者も廃業。今や、清掃員さ」
うーん、けっこう有名な冒険者だったのだが、今や、清掃員か。
けど、意外と本人は元気そうだな。
「あのー、何て言いますか、清掃員って楽しいですか」
「ああ、楽しいぞ。変なモンスター相手に剣を振り回すのは飽きたよ。それにこれも立派な仕事だぞ」
うーん、負け惜しみではないかと俺は思ったのだが、その元剣士はあんまり気にしていないようだ。
やたら、昔の話をしてくる。
「俺の知り合いはほとんどモンスターにやられたよ。やっぱり長生きした方が勝ちだと思うんだけどな」
「はあ、そうですか……」
まあ、清掃員も立派な仕事ではあるが、スライム退治よりもさらに退屈な感じがしてくるなあ。
「あんたは仕事の方はうまくいってるのか」
「いえ、うまくいってないですね。スライム退治ばっかりですね」
「でも、死ぬ危険はあんまりなさそうだな」
「まあ、そうですけどね」
「人生は先の事なんてわからないが、やはり生きてる方が勝ちだと思うんだ。まあ、いつかは死ぬけどな」
「そうですね。じゃあ、清掃のほう頑張ってください」
「おう、あんたもスライム退治を頑張ってくれよな」
俺は一階に下りて便所で用を足し、部屋に戻る。
ベッドにつまらなそうに横になっている相棒に聞いてみた。
「おい、お前は便所掃除とスライム退治って、どっちが面白いと思う」
「何でそんなこと聞くんすか」
俺は便所で会った元冒険者のことを相棒に話した。
「うーん、スライム退治もつまらないすけど。でも、やっぱり清掃員よりスライム退治の方が面白いと思いますよ。まあ、清掃員の方が安定していて、危険もないですけど」
「そうだよなあ。けど、俺たちもいつ大ケガして、清掃員になるかもしれないぞ」
「それはそれでいいんじゃないすか」
「お前、野望ってものがないのか、若いのに」
「適当に暮らせればいいんすよ」
ヘラヘラ笑う相棒。
「そういうところがダメなんだ。お前は冒険者としての気構えに欠けているぞ」
「しかし、スライム退治を毎日やってるのも、まあ、気楽ではありますよ」
「でもなあ、それで人生終わりってのも、何と言うか、つまらんと言うか」
「でも、ほとんどの人は毎日、同じ仕事をして年を取って、まあ、最後は死んでいくってことじゃないすかねえ」
「そうなんだがなあ。少しは輝きたいと思わないのか」
「だから、それはごく一部の人じゃないすかね。俺っちはスライム退治で充分すよ。まあ、リーダーのように出腹にはならないよう注意しまっすけどねえ」
「うるさいぞ。出腹は関係ないだろ」
俺が例によって相棒に文句を言ってると、なんだか廊下で騒ぎが起きている。
何が起こったのかと廊下に出ると、あの元剣士が運ばれていく。
「どうしたんだ」
「この人、便所で滑って、思いっ切り頭を打ったんですよ」
宿屋の従業員が教えてくれた。
「うーん、先程までは元気だったのに」
「人生、何が起きるかわかりませんすね」
……………………………………………………
そして、数日後、その元剣士が死んだことがわかった。
「うーん、人生先の事なんて本当にわからない、生きてる方が勝ちと言っていたが、まさか、その直後死んでしまうとは」
「あの便所、床が滑りやすいんすよ。俺っちも転んだことがありますから。でも、本人は満足じゃないすか」
「何でそう思うんだ」
「そりゃ、冒険者としてけっこう成功して、大儲けして、好き勝手な事したんでしょ。最後は失敗したけど、それまでは随分楽しんだんだから」
そうだよなあ、有名冒険者としてモテモテ、うまいもん食って、人生楽しんだんだ。
俺とは大違いだ。
「よし! 決めたぞ」
「え? なんすか、清掃員になるんすか」
「違うぞ、大冒険するんだ。人生大逆転だ」
「また、それっすか。やめたほうがいいっすよ」
「あの元剣士は人生楽しんだんだ。俺はちっとも楽しんでない。これから楽しんでやるぞ」
「無理じゃないすか。大ケガして清掃員、いや、案外、明日にでも便所で転んで頭打って、あの元剣士のようにあの世に逝くのがリーダーに合ってますよ」
「うるさいぞ」
そう、大冒険をするんだ、かかって来いドラゴン、魔王、そして、ようこそ美少女。
やっぱりこれしかないと俺は思うのであった。
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