スライム退治専門のさえないおっさんの冒険

守 秀斗

文字の大きさ
28 / 162

第28話:よし!決めたぞ、え?清掃員になるんすか

しおりを挟む
 俺と相棒、二人組の冒険者パーティー。
 普段はスライム退治専門のしょぼいパーティーだ。

 さて、今日もいつもと変わらぬスライム退治を終えて、相棒と宿屋の二階の部屋に戻る。
 さて、ベッドの上でくつろごうとしたら、もよおしてしまった。

「ちょっと、便所へ行ってくる」

 相棒に声をかけると、俺は部屋を出て共同便所へ向かう。
 すると、便所の入口に「清掃中」の掲示板が立っていた。

 やれやれ。
 俺の人生は何かしようとすると邪魔が入るんだよな。

 仕方ない。
 一階の便所へ行こうとして、ふと清掃員の顔を見る。
 あれ、この人は。

「おお、久しぶりじゃないか」

 向こうから声をかけてきた。

「どうも、こんにちは」

 この男性は、その昔、ちょっと知っていた先輩剣士だ。
 しかし、俺より何倍も優秀な冒険者で、随分お金を稼いでいた印象があったのだが。
 何で、こんな安宿で便所掃除なんてしているんだ。

 すると、その元冒険者で今は清掃員の男がニヤリと笑った。

「お、その表情は何で便所の清掃員なんかしてるんだって考えてるんだろ」
「えーと、まあ、そうですね。あなたはけっこうお金持ちの印象があったんですけど」
「金持ちにはなったけど散財しまくって、おまけに株の投資で大失敗してさあ。金が無くなって、おまけにケガして冒険者も廃業。今や、清掃員さ」

 うーん、けっこう有名な冒険者だったのだが、今や、清掃員か。
 けど、意外と本人は元気そうだな。

「あのー、何て言いますか、清掃員って楽しいですか」
「ああ、楽しいぞ。変なモンスター相手に剣を振り回すのは飽きたよ。それにこれも立派な仕事だぞ」

 うーん、負け惜しみではないかと俺は思ったのだが、その元剣士はあんまり気にしていないようだ。
 やたら、昔の話をしてくる。

「俺の知り合いはほとんどモンスターにやられたよ。やっぱり長生きした方が勝ちだと思うんだけどな」
「はあ、そうですか……」

 まあ、清掃員も立派な仕事ではあるが、スライム退治よりもさらに退屈な感じがしてくるなあ。

「あんたは仕事の方はうまくいってるのか」
「いえ、うまくいってないですね。スライム退治ばっかりですね」

「でも、死ぬ危険はあんまりなさそうだな」
「まあ、そうですけどね」

「人生は先の事なんてわからないが、やはり生きてる方が勝ちだと思うんだ。まあ、いつかは死ぬけどな」
「そうですね。じゃあ、清掃のほう頑張ってください」
「おう、あんたもスライム退治を頑張ってくれよな」

 俺は一階に下りて便所で用を足し、部屋に戻る。
 ベッドにつまらなそうに横になっている相棒に聞いてみた。

「おい、お前は便所掃除とスライム退治って、どっちが面白いと思う」
「何でそんなこと聞くんすか」

 俺は便所で会った元冒険者のことを相棒に話した。

「うーん、スライム退治もつまらないすけど。でも、やっぱり清掃員よりスライム退治の方が面白いと思いますよ。まあ、清掃員の方が安定していて、危険もないですけど」
「そうだよなあ。けど、俺たちもいつ大ケガして、清掃員になるかもしれないぞ」

「それはそれでいいんじゃないすか」
「お前、野望ってものがないのか、若いのに」
「適当に暮らせればいいんすよ」

 ヘラヘラ笑う相棒。

「そういうところがダメなんだ。お前は冒険者としての気構えに欠けているぞ」
「しかし、スライム退治を毎日やってるのも、まあ、気楽ではありますよ」

「でもなあ、それで人生終わりってのも、何と言うか、つまらんと言うか」
「でも、ほとんどの人は毎日、同じ仕事をして年を取って、まあ、最後は死んでいくってことじゃないすかねえ」

「そうなんだがなあ。少しは輝きたいと思わないのか」
「だから、それはごく一部の人じゃないすかね。俺っちはスライム退治で充分すよ。まあ、リーダーのように出腹にはならないよう注意しまっすけどねえ」
「うるさいぞ。出腹は関係ないだろ」

 俺が例によって相棒に文句を言ってると、なんだか廊下で騒ぎが起きている。
 何が起こったのかと廊下に出ると、あの元剣士が運ばれていく。

「どうしたんだ」
「この人、便所で滑って、思いっ切り頭を打ったんですよ」

 宿屋の従業員が教えてくれた。

「うーん、先程までは元気だったのに」
「人生、何が起きるかわかりませんすね」

……………………………………………………

 そして、数日後、その元剣士が死んだことがわかった。

「うーん、人生先の事なんて本当にわからない、生きてる方が勝ちと言っていたが、まさか、その直後死んでしまうとは」
「あの便所、床が滑りやすいんすよ。俺っちも転んだことがありますから。でも、本人は満足じゃないすか」

「何でそう思うんだ」
「そりゃ、冒険者としてけっこう成功して、大儲けして、好き勝手な事したんでしょ。最後は失敗したけど、それまでは随分楽しんだんだから」

 そうだよなあ、有名冒険者としてモテモテ、うまいもん食って、人生楽しんだんだ。
 俺とは大違いだ。

「よし! 決めたぞ」
「え? なんすか、清掃員になるんすか」

「違うぞ、大冒険するんだ。人生大逆転だ」
「また、それっすか。やめたほうがいいっすよ」

「あの元剣士は人生楽しんだんだ。俺はちっとも楽しんでない。これから楽しんでやるぞ」
「無理じゃないすか。大ケガして清掃員、いや、案外、明日にでも便所で転んで頭打って、あの元剣士のようにあの世に逝くのがリーダーに合ってますよ」
「うるさいぞ」

 そう、大冒険をするんだ、かかって来いドラゴン、魔王、そして、ようこそ美少女。
 やっぱりこれしかないと俺は思うのであった。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

日本国 召喚獣管理省 関東庁 召喚獣総合事案即応科。

wakaba1890
ファンタジー
召喚獣。 それは向こう側とされる所から、10歳を迎えた日本人の子供の下に召喚されるモンスターのことである。 初代天皇・神武天皇が日本を建国した際に書かれた絵画には彼は金鵄と呼ばれる金色に輝く鵄(とび)と契約したのが原初となっている。 そして、縄文、弥生、古墳、飛鳥、平安、戦国時代から近代から今に至るまで、時代を動かしてきた人物の側には確かに召喚獣は介在していた。 また、奇妙な事に、日本国に限り、齢10歳を迎えた日本在住の日本人にのみ体のどこかから多種多様な紋章が発現し、当人が念じると任意の場所から召喚陣が現れ、人ならざるモンスターを召喚される。 そして、彼らモンスターは主人である当人や心を許した者に対して忠実であった。 そのため、古来の日本から、彼ら召喚獣は農耕、治水、土木、科学技術、エネルギー、政治、経済、金融、戦争など国家の基盤となる柱から、ありとあらゆる分野において、今日に至るまで日本国とアジアの繁栄に寄与してきた。 そして、建国から今まで、国益の基盤たる彼ら数万種類以上をも及ぶ召喚獣を取り締まり管理し、2600年以上と脈々と受け継がれてきた名誉ある国家職がーーーーー国家召喚獣管理官である。

シスターヴレイヴ!~上司に捨て駒にされ会社をクビになり無職ニートになった俺が妹と異世界に飛ばされ妹が勇者になったけど何とか生きてます~

尾山塩之進
ファンタジー
鳴鐘 慧河(なるがね けいが)25歳は上司に捨て駒にされ会社をクビになってしまい世の中に絶望し無職ニートの引き籠りになっていたが、二人の妹、優羽花(ゆうか)と静里菜(せりな)に元気づけられて再起を誓った。 だがその瞬間、妹たち共々『魔力満ちる世界エゾン・レイギス』に異世界召喚されてしまう。 全ての人間を滅ぼそうとうごめく魔族の長、大魔王を倒す星剣の勇者として、セカイを護る精霊に召喚されたのは妹だった。 勇者である妹を討つべく襲い来る魔族たち。 そして慧河より先に異世界召喚されていた慧河の元上司はこの異世界の覇権を狙い暗躍していた。 エゾン・レイギスの人間も一枚岩ではなく、様々な思惑で持って動いている。 これは戦乱渦巻く異世界で、妹たちを護ると一念発起した、勇者ではない只の一人の兄の戦いの物語である。 …その果てに妹ハーレムが作られることになろうとは当人には知るよしも無かった。 妹とは血の繋がりであろうか? 妹とは魂の繋がりである。 兄とは何か? 妹を護る存在である。 かけがいの無い大切な妹たちとのセカイを護る為に戦え!鳴鐘 慧河!戦わなければ護れない!

通販で買った妖刀がガチだった ~試し斬りしたら空間が裂けて異世界に飛ばされた挙句、伝説の勇者だと勘違いされて困っています~

日之影ソラ
ファンタジー
ゲームや漫画が好きな大学生、宮本総司は、なんとなくネットサーフィンをしていると、アムゾンの購入サイトで妖刀が1000円で売っているのを見つけた。デザインは格好よく、どことなく惹かれるものを感じたから購入し、家に届いて試し切りをしたら……空間が斬れた!  斬れた空間に吸い込まれ、気がつけばそこは見たことがない異世界。勇者召喚の儀式最中だった王城に現れたことで、伝説の勇者が現れたと勘違いされてしまう。好待遇や周りの人の期待に流され、人違いだとは言えずにいたら、王女様に偽者だとバレてしまった。  偽物だったと世に知られたら死刑と脅され、死刑を免れるためには本当に魔王を倒して、勇者としての責任を果たすしかないと宣言される。 「偽者として死ぬか。本物の英雄になるか――どちらか選びなさい」  選択肢は一つしかない。死にたくない総司は嘘を本当にするため、伝説の勇者の名を騙る。

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ

ちかず
ファンタジー
久しぶりの早帰りの金曜日の夜(但し、矢作基準)ラッキーの連続に浮かれた矢作の行った先は。 見た事のない空き地に1人。異世界だと気づかない矢作のした事は? 異世界アニメも見た事のない矢作が、自分のスキルに気づく日はいつ来るのだろうか。スキル【備蓄】で異世界に騒動を起こすもちょっぴりズレた矢作はそれに気づかずマイペースに頑張るお話。 鈍感な主人公が降り注ぐ困難もナンノソノとクリアしながら仲間を増やして居場所を作るまで。

幼馴染達と一緒に異世界召喚、だけど僕だけ別な場所に飛ばされた先は異世界の不思議な無人島だった。

アノマロカリス
ファンタジー
よくある話の異世界召喚… スマホのネット小説や漫画が好きな少年、洲河 愽(すが だん)。 いつもの様に幼馴染達と学校帰りの公園でくっちゃべっていると地面に突然魔法陣が現れて… 気付くと愽は1人だけ見渡す限り草原の中に突っ立っていた。 愽は幼馴染達を探す為に周囲を捜索してみたが、一緒に飛ばされていた筈の幼馴染達は居なかった。 生きていればいつかは幼馴染達とまた会える! 愽は希望を持って、この不思議な無人島でサバイバル生活を始めるのだった。 「幼馴染達と一緒に異世界召喚、だけど僕の授かったスキルは役に立つものなのかな?」 「幼馴染達と一緒に異世界召喚、だけど僕は幼馴染達よりも強いジョブを手に入れて無双する!」 「幼馴染達と一緒に異世界召喚、だけど僕は魔王から力を授かり人類に対して牙を剥く‼︎」 幼馴染達と一緒に異世界召喚の第四弾。 愽は幼馴染達と離れた場所でサバイバル生活を送るというパラレルストーリー。 はたして愽は、無事に幼馴染達と再会を果たせるのだろうか?

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

処理中です...