スライム退治専門のさえないおっさんの冒険

守 秀斗

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第29話:これは確かに幽霊が出そうな雰囲気な場所だな、先入観は持たない方がいいんじゃないすかね

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 冒険者ギルドで暴れる俺。
 相棒に抑えられる。

「ちょっと、落ち着いて下さいよ、リーダー!」
「しかしなあ、毎回毎回スライム退治ばかり。少しは他の仕事をくれよ!」

 ギルドの主人に文句を言う。
 しかし、ギルドの主人の答えは冷たい。

「あんたらの実力じゃあ、スライム退治くらいだよ、依頼できるのは」
「ふざけんな。おい、他に何かないのかよ。せめて、ゴブリン程度でも相手にしたいぞ」

 うるさいなあって顔をするギルドの主人。
 台帳をパラパラとめくる。

「うーん、この案件はどうだ。幽霊の調査だ」
「なに、相手は幽霊か」

 スライム退治よりは面白いのではと俺は思った。

「どんな内容だ」
「荒れ地に幽霊が現れるって連絡が来てるんだ。周辺の住民が気味悪がっているようだな。正体を明らかにしてくれって依頼だ。実はその荒れ地は村役場がドラゴンテーマパークを設置する予定なんだがな」

「なんだ、そのドラゴンテーマパークってのは」
「村役場が計画しているんだ。ドラゴンをテーマにいろんな催し物をするみたいだな。で、その予定場所のひとつに幽霊が現れたってわけだ」

「おい、その幽霊はこの前みたいに森の中の浮浪者じゃないだろうな」
「いや、浮浪者とかではないが、よくわからないみたいだな。もしかしたら、何もいないかもしれない。まあ、何もいなければ、それはそれで報酬は出すぞ。とりあえず調査の依頼だな」

……………………………………………………

 冒険者ギルドを出ると相棒が俺に言った。

「いつも通りのスライム退治の方がいいんじゃないすか。なにか全然危険でないものを幽霊と見間違えたんじゃないすかね。単なる古い木とかを」

 確かにスライム退治の方が確実に報酬は入る。

「いや、俺は冒険したいのだ。この幽霊退治がきっかけで大冒険になるかもしれんぞ」
「可能性は低そうですけどねえ」

「それに、これは調査依頼だ。何もいなくても、一応、報酬はもらえるんだぞ」
「まあ、そこんところはけっこうおいしい仕事っすね」

 そんなわけで、ギルドに依頼された場所に俺と相棒は向かった。

 村からはそんなに離れていない場所。
 しかし、土地は荒れていて、人は住んでいない。

 曇った空、霧。
 寒々とした光景。

「何だか、夏だと言うのに陰鬱な気分になる雰囲気がする土地だなあ」
「リーダーの人生を象徴しているようっすね」

「うるさいぞ。しかし、これは確かに幽霊が出そうな雰囲気がする場所だ」
「そう言う、先入観は持たない方がいいんじゃないすかね」
「うむ、それもそうだな。とにかく、一晩、見張れって依頼だ」

 俺たちは、近くの木の下に陣取る。
 
「しかし、幽霊が出るっていっても、別に悪さはしないんすよねえ」
「そういう報告は聞いている。しかし、例のドラゴンテーマパークとやらをするのに幽霊が出たらまずいだろ」

 さて、日が落ちてきた。
 辺りが真っ暗になる。

 俺たちはランプに火を灯す。
 一泊だけなので、テントなどは持ってこなかった。

 このまま野宿だ。
 幸い、雨とかは降る気配はない。

「ふわあ~」

 相棒が大あくびをする。

「おい、しっかり見張ってろよ。仕事中だぞ。お前にはやはり冒険者としての気構えが……」
「欠けてますねえ。でも、幽霊なんて出ないんじゃないすか」

「そういうところがダメなんだ。ちゃんと、常に周囲に目を配る、これが冒険者だ」
「ついでにその出腹にも、目を配ってほしかったすねえ」
「うるさいぞ。出腹は関係ない」

 さて、俺と相棒がいつものようにくだらん会話をしていると、すでに深夜。

「これは何も出ないんじゃないすかね」

 のんびりとしている相棒だが、俺は気づいた。
 何やら青い色の霧のようなものが漂ってくる。

「あれ、おかしいっすね」
「うむ、あれが幽霊か」

 その霧が漂って来たかと思うと、黒いローブを着た青白い男が現れた。
 すわ、あれが幽霊、いや、なにかのモンスターか。
 しかし、モンスターと言うよりは魔法使いのような感じもするぞ。

「おっと、今回は俺っちらには珍しくマジな展開っすね」

 相棒が武器のナイフを取り出す。
 俺も剣を握りしめて構えた。

「おい、油断はするなよ」
「うぃっす」

 そのローブを着た男が近づいてくる。
 俺はそいつに呼びかける。

「おい、止まれ」

 すると、その男は立ち止まった。
 俺は声をかける。

「お前は何者だ。ここで何をしている」

 その男は無表情で答える。

「私は人間の魂を慰めるあの世からの使いだ」
「何、魂を慰めるだと」

「お前たちはここがどのような場所か知っているのか」
「いや、単なる農地には向かない荒れ地だとしか聞いてないぞ」

 その黒いローブを着た男は少し顔をしかめる。

「大昔、この場所で大津波が起きて、たくさんの人が死んだのだ。それを知っているのか」
「津波? しかし、ここは海からかなり離れている場所だぞ」
「そう、だから皆、安心していて、逃げ遅れたのだ。ここには大勢の死者の魂がいまだに癒されずに残ったままだ。それなのに、お前たち人間たちは、ここでお遊びの行事を開こうとしているようだな。だから、私が来たのだ。この場所でそのようなことをするのはやめろ」

 うーん、この幽霊だか魔法使いだかよくわからないが、話を聞くと悪いモンスターなどとは違うようだ。もっと高位な存在のような気がする。俺は相棒と相談した。

「ここはとりあえず、冒険者ギルドか村役場に報告するか」
「そうっすね、俺っちらには敵いそうもない雰囲気を醸し出している相手ですしね」

 俺はその男に呼び掛けた。

「わかった。とにかく、ここでイベントを開くのはやめるよう村役場に報告する」
「そうか。では、お前たちに依頼したい、この土地で死んだ者たちを慰めてやることだ。そうしないと、いつまでたってもこの土地は荒れたままだろう」

 そう言って、黒いローブを着た男はすっと消えた。
 青い霧も消えていく。

……………………………………………………

 俺たちは冒険者ギルドに戻って、自分たちが経験したことを報告した。
 すると、ギルドの主人が言った。

「うーん、そう言えば、すごい大津波が来て、あの辺りまで津波がやって来たって昔話を聞いたことがあるなあ」
「じゃあ、あの黒いローブを着た男の言ったことは本当だったのか。すると、ドラゴンテーマパークなんてイベントはあの場所でやるのはよくないんじゃないか」
「うむ、この件は村役場にも報告しよう」

 俺と相棒は宿屋に戻る。

「どうやら、村役場も計画を変更するらしい。あの場所には慰霊碑を立てるようだな」
「何だか今回はシリアス展開でしたっすねえ。俺っちらに似合わず」
「まあ、いつもコントをしていても仕方が無いしな」

「でも、明日からはまたスライム退治でコントみたいことするんじゃないすかねえ」
「そうならないよう願いたいものだ」

 そう、人生はコントではない。
 早く、シリアスモードでドラゴンテーマパークではなく、本物のドラゴン退治をしたいものだと俺は思った。
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