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第36話:うらやましいなあ、何がうらやましいんすか
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俺と相棒、二人組の冒険者パーティー。
普段はスライム退治専門のしょぼいパーティーだ。
今日は早めに仕事が終わったんで、ヒマだから宿屋の受付で小説を借りた。
部屋に戻って、ベッドで寝転んで読む。
隣のベッドではいつものように相棒がつまらなそうに横になっている。
「ああ、うらやましいなあ」
「何がうらやましいんすか」
「この小説の主人公、美少女に惚れられるんだ」
「何で惚れられるんすか」
「さえない主人公が山で倒れた爺さんを助けたんで、美少女が惚れちゃうんだよ」
「なんすか、それ。作者の脳みそ腐ってますよ。なんでちょっと人助けしただけで惚れられちゃうんすか。おっさんのしょうもない願望じゃないすかね。読んでると背中がかゆくなりませんすか」
「そういう話なんだからしょうがないだろ」
「ちょっと、その本見せてくださいよ」
相棒がパラパラと本を読む。
「何すか、この小説。どうしようもないすね。話が適当っすよ。唐突にヤクザの集団とか出てくるし。文章もダメ。箇条書きの羅列すか。いいのは表紙のイラストくらいっすね」
「短くて俺は読みやすかったけどな。おっさんになると目が悪くなるんだよ。長い文章が読めない」
「目の悪い人用の小説すか。でも、この作家、途中で面倒になって話を投げましたっすね」
「その作家も疲れたんだろ。途中で嫌になって適当にまとめるのはよくあることらしいぞ。お前だって、時々、スライム退治の仕事を途中で投げ出してるじゃないか」
「スライムを全部退治したら、仕事が無くなるじゃないすか。だから、適当なところでやめてるだけっすよ。それに、リーダーはもう人生を投げ出してるんじゃないすか」
「うるさいぞ。まあ、確かに内容はダメな小説だな。特にヒロインが一人ってのがダメだ」
「なんでヒロインが一人じゃダメなんすか」
「最低でも十人はほしいな」
「そんなにヒロインを出してどうするんすか」
「そりゃ、全員、俺に、じゃなくて主人公に惚れるんだよ」
「また、しょうもない妄想してますね。ハーレムすか。まあ、その主人公がイケメンならあり得るかもしれないすけど、リーダーみたいにブサイクでハゲで出腹のおっさんで、腰痛持ち、肩こり、おまけに貧乏、仕事もスライム退治ばかりじゃあ、無理っすね。ハーレムなんて可能性は全く無いっすね」
「そうだよなあ。ああ、人生つまんねーぞ」
「そっすね」
「あっさり肯定すんな。くそ、ドラゴンはどこにいるんだよ。相手してやるぞ、いつでもかかって来い。後、美少女もよろしく」
「またぼやきですか。いつも同じようなことばかり言ってると冒険者ギルドの運営に怒られますよ。冒険者登録を削除されるんじゃないですか、即行で。三十分もかかりませんっすよ。それも事前通告も無しで」
「何だよ、三十分で削除かよ。こっちは命削ってんのにさあ。まったく冷たい運営だよなあ」
「まあ、いくら文句を言っても、有名冒険者ならともかく、リーダーのような弱小冒険者なんて相手にされないっすよ」
「やれやれ。とにかく、人生つまんねーぞ」
「まあ、人生とはつまらないものっすね」
「だから、あっさり肯定すんなよ。お前は以前もそんなこと言ってただろ。あれ、言ってなかったっけ。ああ、俺の呆けも本格的になってきたな」
「リーダーの呆けは最初からじゃないすか」
「うるさいぞ」
「けど、実際のところ人生はつまらないもんなんすよ。つまらない仕事を毎日毎日繰り返すだけなんす」
「だから、夢の無いこと言うなよ」
「いや、だから、みんな同じように思ってますよ」
確かにいつも似たようにぼやいてばかりだが、しかし、相棒のしらけた返事を聞いて、俺は情けなくなる。
「ああ、本来なら大冒険の末、ドラゴンを退治して、美少女と仲良くなって、いい思いをするはずだったのに」
「またまたいつも通りのリーダーのしょうもない妄想すか、空しくならないすか。そんなことばかり考えていたら、いつの間にかハゲの出腹のおっさんになっていたんだから」
「うるさいぞ」
しかし、確かに妄想ばかりしていたら、いつの間にかおっさんだ。
「俺はいったいどこで間違ったんだろう」
「最初からじゃないすか」
「何だよ、最初からって。嫌なこと言うなよ」
「まあ、人間、一番の幸福はこの世に生まれてこなかったこと、二番は死んでこの世からおさらばすることって話もありますね」
「お前、暗いなあ」
「美少女と仲良くなる妄想ばかりしているリーダーよりは現実的っすよ」
「うるさいぞ」
まあ、確かに現実はつらくてつまらないことばかりだ。
「しかし、じゃあ、どうすりゃいいんだよ」
「どうにもならんすね、この世に生まれてきたんだから。まあ、生まれてきた以上、生きていくしかないと」
「けど、いつかは死ぬんだぞ」
「そりゃ、しょうがないすね」
「スライム退治で人生終わりかよ」
「まあ、そうなるんじゃないすか」
「俺は嫌だぞ」
「だから前にも言ったかもしれないすけど、無理するとろくなことにならないっすよ。この前も素人が作った落とし穴に引っかかったリーダーですからね」
「うるさいぞ。だいたい、お前も一緒に落ちたじゃないか」
「そう言えば、そっすね」
ああ、何をやってもうまくいかないなあ、なんとかしたい。
「おい、俺がこのままなにか大成功することはあるのだろうか」
「ないんじゃないすか。しょぼくれたリーダーの人生に合ってないすよ」
「おいおい、はっきり言うな」
「けど、リーダーは、何と言うか、成功とは無縁の顔してますね」
「ふざけんな! くそー、やはり大冒険だ! ドラゴン退治だ! 美少女と仲良くなるんだ!」
「無理っすよ、冷静に考えて行動してくれませんかね。俺っちは巻き添えになりたくないすよ」
「何だよ、巻き添えって」
「スライム退治に行ったら、落とし穴どころか、崖から落ちて死亡するとか。いや、案外、小石につまづいて、スっ転んで、一緒に倒れて二人とも地面に頭を打って死ぬとか。間抜けなリーダーならありうるっすよ」
「うるさいぞ」
ああ、しかし、もう耐えられん。
「よし、今から冒険者ギルドに行って、なんかいい仕事がないか聞いてくるぞ!」
「ちょっと、もうギルドは閉まってますよ」
「いや、ギルドの主人を叩き起こしてなにか面白い仕事を寄こせって言ってくる」
ベッドから飛び起きる俺。
しかし、ベッドの角に足をぶつけてしまった。
「ウギャア!!! 痛い!!! 足の指を思いっ切りぶつけてしまった」
「痛いんですよねえ、足の指をぶつけた時って。単に足をぶつけただけなのに、剣で斬られるより痛い時ってありますよねえ。それにしても、だから言ったじゃないすか。リーダーに大冒険なんて似合わないんだから。大人しくスライム退治してればいいんすよ」
「うるさいぞ」
「けど痛くて良かったじゃないすか」
「俺が痛がっていることのどこがいいんだよ」
「糖尿病とかになると足をぶつけても痛みを感じなくなるみたいすね。そして、いずれは足の先から壊死していくと」
「おいおい、怖い事言うなよ」
「まあ、とりあえず大冒険より、その出腹を何とかする方が先なんじゃないすかね」
「うるさいぞ」
しかし、足の指が痛くて、再びベッドに寝転ぶ俺。
冒険者ギルドに行く気も無くした。
ああ、俺の人生はこれからどうなるんだ。
普段はスライム退治専門のしょぼいパーティーだ。
今日は早めに仕事が終わったんで、ヒマだから宿屋の受付で小説を借りた。
部屋に戻って、ベッドで寝転んで読む。
隣のベッドではいつものように相棒がつまらなそうに横になっている。
「ああ、うらやましいなあ」
「何がうらやましいんすか」
「この小説の主人公、美少女に惚れられるんだ」
「何で惚れられるんすか」
「さえない主人公が山で倒れた爺さんを助けたんで、美少女が惚れちゃうんだよ」
「なんすか、それ。作者の脳みそ腐ってますよ。なんでちょっと人助けしただけで惚れられちゃうんすか。おっさんのしょうもない願望じゃないすかね。読んでると背中がかゆくなりませんすか」
「そういう話なんだからしょうがないだろ」
「ちょっと、その本見せてくださいよ」
相棒がパラパラと本を読む。
「何すか、この小説。どうしようもないすね。話が適当っすよ。唐突にヤクザの集団とか出てくるし。文章もダメ。箇条書きの羅列すか。いいのは表紙のイラストくらいっすね」
「短くて俺は読みやすかったけどな。おっさんになると目が悪くなるんだよ。長い文章が読めない」
「目の悪い人用の小説すか。でも、この作家、途中で面倒になって話を投げましたっすね」
「その作家も疲れたんだろ。途中で嫌になって適当にまとめるのはよくあることらしいぞ。お前だって、時々、スライム退治の仕事を途中で投げ出してるじゃないか」
「スライムを全部退治したら、仕事が無くなるじゃないすか。だから、適当なところでやめてるだけっすよ。それに、リーダーはもう人生を投げ出してるんじゃないすか」
「うるさいぞ。まあ、確かに内容はダメな小説だな。特にヒロインが一人ってのがダメだ」
「なんでヒロインが一人じゃダメなんすか」
「最低でも十人はほしいな」
「そんなにヒロインを出してどうするんすか」
「そりゃ、全員、俺に、じゃなくて主人公に惚れるんだよ」
「また、しょうもない妄想してますね。ハーレムすか。まあ、その主人公がイケメンならあり得るかもしれないすけど、リーダーみたいにブサイクでハゲで出腹のおっさんで、腰痛持ち、肩こり、おまけに貧乏、仕事もスライム退治ばかりじゃあ、無理っすね。ハーレムなんて可能性は全く無いっすね」
「そうだよなあ。ああ、人生つまんねーぞ」
「そっすね」
「あっさり肯定すんな。くそ、ドラゴンはどこにいるんだよ。相手してやるぞ、いつでもかかって来い。後、美少女もよろしく」
「またぼやきですか。いつも同じようなことばかり言ってると冒険者ギルドの運営に怒られますよ。冒険者登録を削除されるんじゃないですか、即行で。三十分もかかりませんっすよ。それも事前通告も無しで」
「何だよ、三十分で削除かよ。こっちは命削ってんのにさあ。まったく冷たい運営だよなあ」
「まあ、いくら文句を言っても、有名冒険者ならともかく、リーダーのような弱小冒険者なんて相手にされないっすよ」
「やれやれ。とにかく、人生つまんねーぞ」
「まあ、人生とはつまらないものっすね」
「だから、あっさり肯定すんなよ。お前は以前もそんなこと言ってただろ。あれ、言ってなかったっけ。ああ、俺の呆けも本格的になってきたな」
「リーダーの呆けは最初からじゃないすか」
「うるさいぞ」
「けど、実際のところ人生はつまらないもんなんすよ。つまらない仕事を毎日毎日繰り返すだけなんす」
「だから、夢の無いこと言うなよ」
「いや、だから、みんな同じように思ってますよ」
確かにいつも似たようにぼやいてばかりだが、しかし、相棒のしらけた返事を聞いて、俺は情けなくなる。
「ああ、本来なら大冒険の末、ドラゴンを退治して、美少女と仲良くなって、いい思いをするはずだったのに」
「またまたいつも通りのリーダーのしょうもない妄想すか、空しくならないすか。そんなことばかり考えていたら、いつの間にかハゲの出腹のおっさんになっていたんだから」
「うるさいぞ」
しかし、確かに妄想ばかりしていたら、いつの間にかおっさんだ。
「俺はいったいどこで間違ったんだろう」
「最初からじゃないすか」
「何だよ、最初からって。嫌なこと言うなよ」
「まあ、人間、一番の幸福はこの世に生まれてこなかったこと、二番は死んでこの世からおさらばすることって話もありますね」
「お前、暗いなあ」
「美少女と仲良くなる妄想ばかりしているリーダーよりは現実的っすよ」
「うるさいぞ」
まあ、確かに現実はつらくてつまらないことばかりだ。
「しかし、じゃあ、どうすりゃいいんだよ」
「どうにもならんすね、この世に生まれてきたんだから。まあ、生まれてきた以上、生きていくしかないと」
「けど、いつかは死ぬんだぞ」
「そりゃ、しょうがないすね」
「スライム退治で人生終わりかよ」
「まあ、そうなるんじゃないすか」
「俺は嫌だぞ」
「だから前にも言ったかもしれないすけど、無理するとろくなことにならないっすよ。この前も素人が作った落とし穴に引っかかったリーダーですからね」
「うるさいぞ。だいたい、お前も一緒に落ちたじゃないか」
「そう言えば、そっすね」
ああ、何をやってもうまくいかないなあ、なんとかしたい。
「おい、俺がこのままなにか大成功することはあるのだろうか」
「ないんじゃないすか。しょぼくれたリーダーの人生に合ってないすよ」
「おいおい、はっきり言うな」
「けど、リーダーは、何と言うか、成功とは無縁の顔してますね」
「ふざけんな! くそー、やはり大冒険だ! ドラゴン退治だ! 美少女と仲良くなるんだ!」
「無理っすよ、冷静に考えて行動してくれませんかね。俺っちは巻き添えになりたくないすよ」
「何だよ、巻き添えって」
「スライム退治に行ったら、落とし穴どころか、崖から落ちて死亡するとか。いや、案外、小石につまづいて、スっ転んで、一緒に倒れて二人とも地面に頭を打って死ぬとか。間抜けなリーダーならありうるっすよ」
「うるさいぞ」
ああ、しかし、もう耐えられん。
「よし、今から冒険者ギルドに行って、なんかいい仕事がないか聞いてくるぞ!」
「ちょっと、もうギルドは閉まってますよ」
「いや、ギルドの主人を叩き起こしてなにか面白い仕事を寄こせって言ってくる」
ベッドから飛び起きる俺。
しかし、ベッドの角に足をぶつけてしまった。
「ウギャア!!! 痛い!!! 足の指を思いっ切りぶつけてしまった」
「痛いんですよねえ、足の指をぶつけた時って。単に足をぶつけただけなのに、剣で斬られるより痛い時ってありますよねえ。それにしても、だから言ったじゃないすか。リーダーに大冒険なんて似合わないんだから。大人しくスライム退治してればいいんすよ」
「うるさいぞ」
「けど痛くて良かったじゃないすか」
「俺が痛がっていることのどこがいいんだよ」
「糖尿病とかになると足をぶつけても痛みを感じなくなるみたいすね。そして、いずれは足の先から壊死していくと」
「おいおい、怖い事言うなよ」
「まあ、とりあえず大冒険より、その出腹を何とかする方が先なんじゃないすかね」
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