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第44話:俺が指導して立派な冒険者にしてやろうと思っていたんだけど、リーダーに指導されたら出腹になっちゃいますよ
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俺と相棒、二人組の冒険者パーティー。
普段はスライム退治専門のしょぼいパーティーだ。
今日は、この村のドラゴンテーマパーク開園記念のため、集会場で開かれる演劇に出演することになっている。
相棒が珍しくそわそわしている。
「なんだよ、落ち着けよ。お前らしくもない」
「いや、ちゃんとセリフを言えるか緊張してるんすよ」
「いかんなあ、お前には冒険者としての気構えが……いや、この場合は関係ないか……待てよ、演劇くらいモンスター退治にくらべれば大した事ないだろ。死ぬ事は無いんだから」
「けど、普段しない事をするのはやはり緊張しまっすよ。それに観客席はお客さんがいっぱいいるじゃないすか。リーダーは緊張しないんすか」
「別にどうでもいいだろ、演劇なんて。適当にやればいいんだよ」
「うーん、なるほど。リーダーはそうやって適当に生きてきたから、いつの間にかハゲデブ、腰痛持ちで肩こり、膝痛、リュウマチ持ちのスライム退治専門のしょぼい冒険者になってしまったんすね」
「うるさいぞ」
しかし、意外にも観客席は満員になっている。
しょうもないありきたりの内容の劇なんだけどな。
すると、女勇者役の娘さんがやって来た。
村の美少女コンテストの優勝者。
本物の冒険者になりたがっている女の子だ。
冒険服が似合ってるな。
元気に挨拶してきた。
「おはようございます! 冒険者さん」
「おう、おはよう」
この娘の凛とした感じ。
うーん、やっぱり冒険者になる夢をかなえさせてやりたいものだな、演劇ではなく。
「お嬢さんは主役だけど、緊張してないのか」
「いえ、もう大緊張してますよ」
そう言いながらも勇者役をやるのが嬉しくて仕方がない感じだ。
あんまり緊張している感じもない。
この娘、度胸もあるんじゃないのか。
「じゃあ、冒険者さんたち、劇の方、お願いしますよ」
「ああ、まかせておけ」
この娘さんを俺のパーティーに入れるってのはどうだろう。
けど、スライム退治ばかりじゃあ、かわいそうか。
若いのは若い連中と一緒に行動する方がいいもんな。
しょぼくれたおっさんの俺と行動してくれるのは変わり者の相棒だけだな。
そんな相棒が小声で俺に言った。
「そう言えば、脅迫状が来たみたいっすよ。劇をやるなら姫を殺すって」
「なんだよ、脅迫状って。あの娘さんが冒険者になるのを猛反対して、なんか知らんが俺に暴行を加えた父親の仕業かよ」
「さあ、それはわかりませんすけど」
「まあ、なんかのイタズラだろ。だいたい、娘さんは姫役から女勇者役に変更になったんだけどなあ」
さて、劇が始まったが、俺の出番は最後の方なんでそれまで暇だ。
最初はゴブリンとか雑魚を倒しながら、仲間を集めていく。
その後、王国のお姫様が魔王に誘拐されて、それを助けに行くことになる。
そして、中盤、四天王の一人と対決することになるのだが、その最初の四天王の役が相棒だ。
やたらせわしなく舞台袖をウロウロする相棒。
「おい、大丈夫かよ」
「だ、だ、大丈夫っすよ」
普段はだらだら呑気にスライム退治をしていて、立ったまま昼寝したり、俺がこけるとバカにしているのに、こいつでも緊張することがあるのか。
そして、四天王役の相棒の出番。
これが情けない。
セリフが棒読み。
それに口癖の「~すよ」ってのがつい出てしまう。
殺陣もあるが、緊張しているのかヘナヘナ。
おまけに舞台の上で、スっ転んでしまった。
場内、大爆笑。
しかし、その光景を見て、俺は何かおかしいと感じた。
舞台のセットを変更するため、一旦、出演者が舞台袖に戻って来た。
「おい、情けないじゃないか。やっぱりお前には冒険者としての気構えが無いぞ」
「面目ないっす」
そして主役の娘さんにもヘイコラする相棒。
しかし、娘さんが慰めてくれる。
「けっこう受けてましたよ。面白ければいいじゃないですか」
「はあ、すみませんです」
うーむ、性格もいいし、この娘は大成するのではと俺は思う。
さて、お次は、再び冒険の旅。
次々と現れる残りの四天王をバッシ! バッシ! と紙の剣を振り回してやっつける女勇者の娘さん。
なかなかお客さんにも受けている。
そして物語も終盤へ。
さて、ようやく俺の出番だ。
魔王の役。
大げさな魔王の格好をする。
リハーサルではロープで吊って空中に浮かんだが、結局、危ないと言うことでそれは中止になった。
ドラゴンも出てこない。
着ぐるみでは迫力ないとこれも取り止めになった。
俺は舞台袖から囚われのお姫様を連れて、木製の魔法の杖を持って登場する。
お姫様役は村の美少女コンテストの準優勝の娘さん。
こっちはそわそわして緊張気味だ。
そして、女勇者たちと直接対決。
「ハハハハハ、かかってこい勇者たちよ。私を楽しまさせてくれたまえ」
「覚悟しなさい、魔王!」
チャンバラごっこをやって、場を盛り上げる。
すると、四天王だったけど改心して勇者の仲間になった相棒が俺の顔面を紙の剣でぶっ叩く。
俺は小声で文句を言った。
「おい、痛いじゃないか」
「いや、思わず叩いてしまったっす」
「なんか俺に恨みでもあるのかよ」
「いや、単なる勢いっすよ。役にハマってしまったんすよ」
本当かよ。
まあいいや。
そして、女勇者役の娘さんが秘宝の剣を使って俺にとどめを刺す。
「うう、やられたあ!」
俺は舞台の真ん中で倒れる。
そして、女勇者がお姫様を解放して、めでたしめでたしと。
お客さんには受けてるな。
しかし、俺は横になりながら、周囲に目を配る。
すると、突然、若い男が客席から舞台に乱入してきた。
「キャア!」
お姫様役の娘さんにナイフで襲いかかる。
しかし、俺は先程から目をつけていたので、焦ることなくさっと立ちあがると、そいつの首の後ろを木製の魔法の杖で叩く。あっさりと舞台に昏倒する男。
集会場はちょっと混乱状態になるが、村人たちによってそいつは縛り上げられた。
観客からは、なぜか俺に大拍手。
うむ、こんなに盛大に拍手を貰ったのは、人生初めてじゃないかな。
「冒険者さん、すごいですね」
勇者役の村娘さんが目を輝かせて俺を見る。
俺は少し自慢気に言う。
「大したことはない。冒険者はいついかなる時でも瞬時に行動できなくてはいけないのだ」
それを聞いた相棒が俺にささやいた。
「いつもはのそのそと動くリーダーにしては素早く動きましたっすね。俺っちは呆然としてましたよ」
「さっき、お前が舞台でスッ転んだ時、お客さんはみんな笑ってたけど、あいつだけムスッとして様子がおかしかったんだ。だから、ずっと見張ってたんだよ」
「今回はハゲデブのおっさんのリーダーにはふさわしくない活躍でしたね」
「うるさいぞ。つーか、なんだよ、あの男は」
「お姫様役の娘さんに振られた腹いせに襲いかかったらしいっすね。脅迫状もあの男が出したようっす」
つまらん色恋沙汰か。
やれやれ。
しかし、一応、ハプニングはあったが劇も無事終了と。
お客さんの評判もなかなかいいらしい。
多少、ハプニングがあったほうが面白いもんな。
さて、俺と相棒は宿屋に戻る。
「リーダー、大拍手を受けてたじゃないすか」
「うーん、でも、あんなしょうもないストーカー男じゃなくて、ドラゴン退治で賞賛を受けたいものだなあ」
「それは無理っすよ。スライム退治名人コンテストで優勝すれば賞賛されるんじゃないすか」
「そんなのあるわけねーだろ」
そして、数日後。
冒険者ギルドに向かう途中、あの勇者役の娘さんに偶然出会った。
農器具を持っている。
「やあ、勇者。じゃなくて、お嬢さん、こんにちは。あれから、どうしたんだ。親父を説得できたのか」
「冒険者になる件ですよね。諦めました」
「え、何で」
「この前、舞台で男がナイフを持って乱入してきたじゃないですか。私、その時、あの男の怖い顔を見て、足がすくんで動けなかったんです。これは冒険者に向いてないなあって思ったんです」
「けど、お嬢さんは本物のワイバーンやスライムを倒したじゃないか」
「うーん、モンスター相手なら平気だったんですけど、なぜか人間相手ではすごく怖かったんです。自分にはやっぱり農業の方が向いているなあって、考え直しました」
そうか、でも、何だか惜しいような気もする。
娘さんと別れて俺は思う。
「もったいない気がするんだけどなあ。あの娘には冒険者の素質がある気がしたんだけど」
「本人が決めたんだからいいんじゃないすか。農家の方が堅実すよ」
「俺が指導して、立派な冒険者にしてやろうかなあとも思っていたんだけど」
「リーダーに指導されたら、出腹になっちゃいますよ」
「何じゃ、そりゃ。うるさいぞ」
しかし、指導と言っても、結局、俺がしているのってスライム退治だけだもんなあ、役に立たないかなとも俺は思った。
普段はスライム退治専門のしょぼいパーティーだ。
今日は、この村のドラゴンテーマパーク開園記念のため、集会場で開かれる演劇に出演することになっている。
相棒が珍しくそわそわしている。
「なんだよ、落ち着けよ。お前らしくもない」
「いや、ちゃんとセリフを言えるか緊張してるんすよ」
「いかんなあ、お前には冒険者としての気構えが……いや、この場合は関係ないか……待てよ、演劇くらいモンスター退治にくらべれば大した事ないだろ。死ぬ事は無いんだから」
「けど、普段しない事をするのはやはり緊張しまっすよ。それに観客席はお客さんがいっぱいいるじゃないすか。リーダーは緊張しないんすか」
「別にどうでもいいだろ、演劇なんて。適当にやればいいんだよ」
「うーん、なるほど。リーダーはそうやって適当に生きてきたから、いつの間にかハゲデブ、腰痛持ちで肩こり、膝痛、リュウマチ持ちのスライム退治専門のしょぼい冒険者になってしまったんすね」
「うるさいぞ」
しかし、意外にも観客席は満員になっている。
しょうもないありきたりの内容の劇なんだけどな。
すると、女勇者役の娘さんがやって来た。
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本物の冒険者になりたがっている女の子だ。
冒険服が似合ってるな。
元気に挨拶してきた。
「おはようございます! 冒険者さん」
「おう、おはよう」
この娘の凛とした感じ。
うーん、やっぱり冒険者になる夢をかなえさせてやりたいものだな、演劇ではなく。
「お嬢さんは主役だけど、緊張してないのか」
「いえ、もう大緊張してますよ」
そう言いながらも勇者役をやるのが嬉しくて仕方がない感じだ。
あんまり緊張している感じもない。
この娘、度胸もあるんじゃないのか。
「じゃあ、冒険者さんたち、劇の方、お願いしますよ」
「ああ、まかせておけ」
この娘さんを俺のパーティーに入れるってのはどうだろう。
けど、スライム退治ばかりじゃあ、かわいそうか。
若いのは若い連中と一緒に行動する方がいいもんな。
しょぼくれたおっさんの俺と行動してくれるのは変わり者の相棒だけだな。
そんな相棒が小声で俺に言った。
「そう言えば、脅迫状が来たみたいっすよ。劇をやるなら姫を殺すって」
「なんだよ、脅迫状って。あの娘さんが冒険者になるのを猛反対して、なんか知らんが俺に暴行を加えた父親の仕業かよ」
「さあ、それはわかりませんすけど」
「まあ、なんかのイタズラだろ。だいたい、娘さんは姫役から女勇者役に変更になったんだけどなあ」
さて、劇が始まったが、俺の出番は最後の方なんでそれまで暇だ。
最初はゴブリンとか雑魚を倒しながら、仲間を集めていく。
その後、王国のお姫様が魔王に誘拐されて、それを助けに行くことになる。
そして、中盤、四天王の一人と対決することになるのだが、その最初の四天王の役が相棒だ。
やたらせわしなく舞台袖をウロウロする相棒。
「おい、大丈夫かよ」
「だ、だ、大丈夫っすよ」
普段はだらだら呑気にスライム退治をしていて、立ったまま昼寝したり、俺がこけるとバカにしているのに、こいつでも緊張することがあるのか。
そして、四天王役の相棒の出番。
これが情けない。
セリフが棒読み。
それに口癖の「~すよ」ってのがつい出てしまう。
殺陣もあるが、緊張しているのかヘナヘナ。
おまけに舞台の上で、スっ転んでしまった。
場内、大爆笑。
しかし、その光景を見て、俺は何かおかしいと感じた。
舞台のセットを変更するため、一旦、出演者が舞台袖に戻って来た。
「おい、情けないじゃないか。やっぱりお前には冒険者としての気構えが無いぞ」
「面目ないっす」
そして主役の娘さんにもヘイコラする相棒。
しかし、娘さんが慰めてくれる。
「けっこう受けてましたよ。面白ければいいじゃないですか」
「はあ、すみませんです」
うーむ、性格もいいし、この娘は大成するのではと俺は思う。
さて、お次は、再び冒険の旅。
次々と現れる残りの四天王をバッシ! バッシ! と紙の剣を振り回してやっつける女勇者の娘さん。
なかなかお客さんにも受けている。
そして物語も終盤へ。
さて、ようやく俺の出番だ。
魔王の役。
大げさな魔王の格好をする。
リハーサルではロープで吊って空中に浮かんだが、結局、危ないと言うことでそれは中止になった。
ドラゴンも出てこない。
着ぐるみでは迫力ないとこれも取り止めになった。
俺は舞台袖から囚われのお姫様を連れて、木製の魔法の杖を持って登場する。
お姫様役は村の美少女コンテストの準優勝の娘さん。
こっちはそわそわして緊張気味だ。
そして、女勇者たちと直接対決。
「ハハハハハ、かかってこい勇者たちよ。私を楽しまさせてくれたまえ」
「覚悟しなさい、魔王!」
チャンバラごっこをやって、場を盛り上げる。
すると、四天王だったけど改心して勇者の仲間になった相棒が俺の顔面を紙の剣でぶっ叩く。
俺は小声で文句を言った。
「おい、痛いじゃないか」
「いや、思わず叩いてしまったっす」
「なんか俺に恨みでもあるのかよ」
「いや、単なる勢いっすよ。役にハマってしまったんすよ」
本当かよ。
まあいいや。
そして、女勇者役の娘さんが秘宝の剣を使って俺にとどめを刺す。
「うう、やられたあ!」
俺は舞台の真ん中で倒れる。
そして、女勇者がお姫様を解放して、めでたしめでたしと。
お客さんには受けてるな。
しかし、俺は横になりながら、周囲に目を配る。
すると、突然、若い男が客席から舞台に乱入してきた。
「キャア!」
お姫様役の娘さんにナイフで襲いかかる。
しかし、俺は先程から目をつけていたので、焦ることなくさっと立ちあがると、そいつの首の後ろを木製の魔法の杖で叩く。あっさりと舞台に昏倒する男。
集会場はちょっと混乱状態になるが、村人たちによってそいつは縛り上げられた。
観客からは、なぜか俺に大拍手。
うむ、こんなに盛大に拍手を貰ったのは、人生初めてじゃないかな。
「冒険者さん、すごいですね」
勇者役の村娘さんが目を輝かせて俺を見る。
俺は少し自慢気に言う。
「大したことはない。冒険者はいついかなる時でも瞬時に行動できなくてはいけないのだ」
それを聞いた相棒が俺にささやいた。
「いつもはのそのそと動くリーダーにしては素早く動きましたっすね。俺っちは呆然としてましたよ」
「さっき、お前が舞台でスッ転んだ時、お客さんはみんな笑ってたけど、あいつだけムスッとして様子がおかしかったんだ。だから、ずっと見張ってたんだよ」
「今回はハゲデブのおっさんのリーダーにはふさわしくない活躍でしたね」
「うるさいぞ。つーか、なんだよ、あの男は」
「お姫様役の娘さんに振られた腹いせに襲いかかったらしいっすね。脅迫状もあの男が出したようっす」
つまらん色恋沙汰か。
やれやれ。
しかし、一応、ハプニングはあったが劇も無事終了と。
お客さんの評判もなかなかいいらしい。
多少、ハプニングがあったほうが面白いもんな。
さて、俺と相棒は宿屋に戻る。
「リーダー、大拍手を受けてたじゃないすか」
「うーん、でも、あんなしょうもないストーカー男じゃなくて、ドラゴン退治で賞賛を受けたいものだなあ」
「それは無理っすよ。スライム退治名人コンテストで優勝すれば賞賛されるんじゃないすか」
「そんなのあるわけねーだろ」
そして、数日後。
冒険者ギルドに向かう途中、あの勇者役の娘さんに偶然出会った。
農器具を持っている。
「やあ、勇者。じゃなくて、お嬢さん、こんにちは。あれから、どうしたんだ。親父を説得できたのか」
「冒険者になる件ですよね。諦めました」
「え、何で」
「この前、舞台で男がナイフを持って乱入してきたじゃないですか。私、その時、あの男の怖い顔を見て、足がすくんで動けなかったんです。これは冒険者に向いてないなあって思ったんです」
「けど、お嬢さんは本物のワイバーンやスライムを倒したじゃないか」
「うーん、モンスター相手なら平気だったんですけど、なぜか人間相手ではすごく怖かったんです。自分にはやっぱり農業の方が向いているなあって、考え直しました」
そうか、でも、何だか惜しいような気もする。
娘さんと別れて俺は思う。
「もったいない気がするんだけどなあ。あの娘には冒険者の素質がある気がしたんだけど」
「本人が決めたんだからいいんじゃないすか。農家の方が堅実すよ」
「俺が指導して、立派な冒険者にしてやろうかなあとも思っていたんだけど」
「リーダーに指導されたら、出腹になっちゃいますよ」
「何じゃ、そりゃ。うるさいぞ」
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