スライム退治専門のさえないおっさんの冒険

守 秀斗

文字の大きさ
77 / 162

第77話:今度はどこが調子悪いんすか、リーダー、全身が調子悪い、全く動けないぞ

しおりを挟む
 俺と相棒、二人組の冒険者パーティー。
 普段はスライム退治専門のしょぼいパーティーだ。

 朝から雨がザーザー降っている。
 今日は土砂降りだな。

 俺は安宿のベッドの上で横になって唸っている。

「うーん、うーん」
「どうしたんすか。今度はどこが調子悪いんすか、リーダー」

「何て言うか、全身が調子悪い。頭痛はするし、肩が痛い。背中も腰もお腹も痛い。膝が痛いし腕の肘も痛い。体が重い。全く動けないぞ」
「例の慢性膵炎の症状すかねえ」
「わからん」

 ああ、すっかり調子が悪くなってしまったなあ。

「このまま体が動かなくなって、死ぬんじゃないのか、俺は」
「でも養生しながら生活すれば、後三十年は生きられるって医者に言われたんすよね」
「まあ、そうなんだが、うーん、体が動かん」

「今日は雨っすからね」
「雨がどうした」
「天気病すよ。雨が降ると、頭痛や肩こり、全身倦怠感、関節痛、気分の落ち込みとかの症状が起きる病気っすね」
「そんな病気があるのか。確かに雨が降ると憂鬱な気分になるよなあ。それに俺はリュウマチで慢性膵炎だ。ああ、俺はこのまま体が動かなくなって死ぬんだ」
「大げさじゃないすか」

 隣のベッドでのんびりと寝転んでいる相棒。

「おい、仕事がさぼりたくての演技じゃないぞ。本当に調子が悪いんだぞ」
「別に疑ってないすよ。まあ、この大雨じゃあ、仕事にならないから今日は休みにしますか」
「うむ、そうするしかないな」

 俺と相棒は、ただぼんやりとベッドで横になっている。
 ヒマだ。

「おい」
「なんすか」
「これはもう冒険者とは言えないな。寝たきり老人じゃないか」
「しょうがないんじゃないすか。この大雨の中、スライム退治やってもしょうがないすよ」

「しかし、食費も足りなくなってきた状況だろ」
「この前、取ってきた山菜がまだ残ってますよ」

「山菜料理か。やれやれ。何なんだ、この人生は。本当ならドラゴン倒して英雄になってウハウハの豪勢な生活をしているはずだったのに。今や安宿で、ベッドの上で横になって体も動かせずに、ただ痛みを我慢する生活。つまらんぞ」
「つーか、最初からそんな華麗な人生なんてなかったんじゃないすか、リーダーには。ハゲでデブでブサイクだし」
「うるさいぞ。何度も言うがハゲデブブサイクは関係ないぞ」

 ああ、横になっているとまた眠くなってきた。雨音もなんだかうるさいというより心地よい気分にさせていく。

 しかし、冴えない人生だなあと思っていると、なにやら不気味な雰囲気に襲われる。何だろうと思っていると外から騒ぎ声が聞こえてきた。

「おい、なんか騒ぎが起きているぞ」
「ちょっと外を見てみますね」

 相棒が窓を開けて外を見た。

「大変すよ! ゾンビの集団が暴れてますよ」
「何だと!」

 俺は素早くベッドから起き上がり、剣を掴んだ。窓から外を見てみる。おお、いつの間にか大量のゾンビがそこら中で村人たちを襲っているぞ。いつ発生したんだ、こいつらは。

「よし、ここは俺たち冒険者の出番だぞ」
「しかし、敵が多過ぎっすよ。この部屋に立て籠もったほうがいいんじゃないすか」
「何言ってんだ、村人たちが襲われているんだ。助けなくては」

 俺は二階の窓からさっと地上に飛び降りる。

「かかってこい、ゾンビども」

 片っ端からゾンビどもを斬り倒す。しかし、次から次へとゾンビたちが襲って来た。相棒もやって来たが苦しい戦いだ。

「ウグ!」
「どうしたんすか、リーダー」
「クソ! ゾンビに噛まれた!」

 しまった、ゾンビに噛まれてしまった。俺もすぐにゾンビになってしまう。するとすぐ近くに真っ黒なローブを着た怪しげな男が立っているのが見えた。うむ、あいつがゾンビどもを操っているにちがいない。

「よし、俺はあの魔法使いに特攻するぞ! どうせ俺は死ぬんだ、お前は逃げろ!」
「そんなリーダーを見捨てられませんよ」
「いや、俺はゾンビに噛まれた。ゾンビになるなら、その前にあの悪党を倒して死んでやる!」

 俺はゾンビを操っている魔法使いに突進した。

「覚悟しろ! この野郎!」

……………………………………………………

 そこで目が覚める。
 なんだ、夢か。

「どうしたんすか、リーダー。なにを覚悟するんすか」
「ああ、夢の話しだ。ゾンビ軍団と戦う夢を見たんだよ。でも、夢の中で俺はさっと窓から飛び降りて、ゾンビを軽やかにバッタバッタと斬り倒していた。まるで若い頃に戻ったようだったぞ。ああ、昔に戻りたいなあ」

「本当に若い頃は軽やかに動いてたんすか。昔からのそのそとしか動けなかったから、スライム退治専門みたいな冒険者になったんじゃないすか、リーダーは」
「うるさいぞ。まあ、確かに冴えない冒険者ではあったな、若い頃も。しかし、腹は出てなかったし、髪の毛もフサフサだった」
「ブサイクは若い頃からっすかね」
「うるさいぞ。しかし、ブサイクなりにロマンスもあったもんだ。ああ、ホント若い頃に戻りたいよ。今や、ベッドの上で全く動けない体になってしまうなんて」

「全然動かせないんすか」
「ああ、痛くてなあ。もう全く動けないぞ。ゾンビが襲ってきても、少しも動けずに食われてしまうだろう。情けない。人生はつらいなあ」
「そんなことばっかり言ってると本当に動けなくなりまっすよ。おっと、そろそろ山菜料理でも食べますか」
「いや、食欲もない。ああ、このまま寝たきりで俺は死んでいくのだ」
「やれやれ。まあ、リーダーが腹をすかすまでちょっと待ちますかね」

 再び、俺と相棒は漫然とベッドの上で横になっているだけ。
 雨はますます降っている。

 うーん、雨音がちょっとうるさいな。
 眠れやしない。

 俺はただ目をつぶりじっとベッドの上で横になっている。
 ああ、つまらんなあと思っていると、突然、俺のハゲ頭にモノが落ちてきた。

「うわあ!」

 びっくりして、ベッドから飛び起きる。

「どうしたんすか」
「なんだか知らんが、突然、頭に攻撃を受けたぞ」

 びびっている俺をしらけた顔で見ている相棒。

「天井を見て下さいよ」
「うん? なんだ」

 俺が部屋の天井を見上げると水が垂れてきている。なんだ、雨漏りで水が頭に落ちてきただけか。

「どうやら雨漏りっすね。安宿ですからね。宿屋の主人に言っておきますか。それにしても全く体が動かせないって言ってたわりには、ずいぶんと素早く立ち上がりましたね。水滴がハゲ頭に落ちたくらいで。全然、元気じゃないすか」
「ううむ、面目ない。しかし、びっくりすると痛みを忘れるもんなんだなあ。おっと、また体中が痛くなってきた」

「まあ、とにかく、飯にしますか」
「そうだな、体は痛いがせっかく起きたことだし」
「じゃあ、また食堂に行ってきます」

 相棒が山菜を持って調理場へ行った。
 
 しかし、体調が悪いのは事実なんだよな。
 ああ、俺の人生はこれからどうなるのだろう。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

日本国 召喚獣管理省 関東庁 召喚獣総合事案即応科。

wakaba1890
ファンタジー
召喚獣。 それは向こう側とされる所から、10歳を迎えた日本人の子供の下に召喚されるモンスターのことである。 初代天皇・神武天皇が日本を建国した際に書かれた絵画には彼は金鵄と呼ばれる金色に輝く鵄(とび)と契約したのが原初となっている。 そして、縄文、弥生、古墳、飛鳥、平安、戦国時代から近代から今に至るまで、時代を動かしてきた人物の側には確かに召喚獣は介在していた。 また、奇妙な事に、日本国に限り、齢10歳を迎えた日本在住の日本人にのみ体のどこかから多種多様な紋章が発現し、当人が念じると任意の場所から召喚陣が現れ、人ならざるモンスターを召喚される。 そして、彼らモンスターは主人である当人や心を許した者に対して忠実であった。 そのため、古来の日本から、彼ら召喚獣は農耕、治水、土木、科学技術、エネルギー、政治、経済、金融、戦争など国家の基盤となる柱から、ありとあらゆる分野において、今日に至るまで日本国とアジアの繁栄に寄与してきた。 そして、建国から今まで、国益の基盤たる彼ら数万種類以上をも及ぶ召喚獣を取り締まり管理し、2600年以上と脈々と受け継がれてきた名誉ある国家職がーーーーー国家召喚獣管理官である。

シスターヴレイヴ!~上司に捨て駒にされ会社をクビになり無職ニートになった俺が妹と異世界に飛ばされ妹が勇者になったけど何とか生きてます~

尾山塩之進
ファンタジー
鳴鐘 慧河(なるがね けいが)25歳は上司に捨て駒にされ会社をクビになってしまい世の中に絶望し無職ニートの引き籠りになっていたが、二人の妹、優羽花(ゆうか)と静里菜(せりな)に元気づけられて再起を誓った。 だがその瞬間、妹たち共々『魔力満ちる世界エゾン・レイギス』に異世界召喚されてしまう。 全ての人間を滅ぼそうとうごめく魔族の長、大魔王を倒す星剣の勇者として、セカイを護る精霊に召喚されたのは妹だった。 勇者である妹を討つべく襲い来る魔族たち。 そして慧河より先に異世界召喚されていた慧河の元上司はこの異世界の覇権を狙い暗躍していた。 エゾン・レイギスの人間も一枚岩ではなく、様々な思惑で持って動いている。 これは戦乱渦巻く異世界で、妹たちを護ると一念発起した、勇者ではない只の一人の兄の戦いの物語である。 …その果てに妹ハーレムが作られることになろうとは当人には知るよしも無かった。 妹とは血の繋がりであろうか? 妹とは魂の繋がりである。 兄とは何か? 妹を護る存在である。 かけがいの無い大切な妹たちとのセカイを護る為に戦え!鳴鐘 慧河!戦わなければ護れない!

通販で買った妖刀がガチだった ~試し斬りしたら空間が裂けて異世界に飛ばされた挙句、伝説の勇者だと勘違いされて困っています~

日之影ソラ
ファンタジー
ゲームや漫画が好きな大学生、宮本総司は、なんとなくネットサーフィンをしていると、アムゾンの購入サイトで妖刀が1000円で売っているのを見つけた。デザインは格好よく、どことなく惹かれるものを感じたから購入し、家に届いて試し切りをしたら……空間が斬れた!  斬れた空間に吸い込まれ、気がつけばそこは見たことがない異世界。勇者召喚の儀式最中だった王城に現れたことで、伝説の勇者が現れたと勘違いされてしまう。好待遇や周りの人の期待に流され、人違いだとは言えずにいたら、王女様に偽者だとバレてしまった。  偽物だったと世に知られたら死刑と脅され、死刑を免れるためには本当に魔王を倒して、勇者としての責任を果たすしかないと宣言される。 「偽者として死ぬか。本物の英雄になるか――どちらか選びなさい」  選択肢は一つしかない。死にたくない総司は嘘を本当にするため、伝説の勇者の名を騙る。

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ

ちかず
ファンタジー
久しぶりの早帰りの金曜日の夜(但し、矢作基準)ラッキーの連続に浮かれた矢作の行った先は。 見た事のない空き地に1人。異世界だと気づかない矢作のした事は? 異世界アニメも見た事のない矢作が、自分のスキルに気づく日はいつ来るのだろうか。スキル【備蓄】で異世界に騒動を起こすもちょっぴりズレた矢作はそれに気づかずマイペースに頑張るお話。 鈍感な主人公が降り注ぐ困難もナンノソノとクリアしながら仲間を増やして居場所を作るまで。

幼馴染達と一緒に異世界召喚、だけど僕だけ別な場所に飛ばされた先は異世界の不思議な無人島だった。

アノマロカリス
ファンタジー
よくある話の異世界召喚… スマホのネット小説や漫画が好きな少年、洲河 愽(すが だん)。 いつもの様に幼馴染達と学校帰りの公園でくっちゃべっていると地面に突然魔法陣が現れて… 気付くと愽は1人だけ見渡す限り草原の中に突っ立っていた。 愽は幼馴染達を探す為に周囲を捜索してみたが、一緒に飛ばされていた筈の幼馴染達は居なかった。 生きていればいつかは幼馴染達とまた会える! 愽は希望を持って、この不思議な無人島でサバイバル生活を始めるのだった。 「幼馴染達と一緒に異世界召喚、だけど僕の授かったスキルは役に立つものなのかな?」 「幼馴染達と一緒に異世界召喚、だけど僕は幼馴染達よりも強いジョブを手に入れて無双する!」 「幼馴染達と一緒に異世界召喚、だけど僕は魔王から力を授かり人類に対して牙を剥く‼︎」 幼馴染達と一緒に異世界召喚の第四弾。 愽は幼馴染達と離れた場所でサバイバル生活を送るというパラレルストーリー。 はたして愽は、無事に幼馴染達と再会を果たせるのだろうか?

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

処理中です...