スライム退治専門のさえないおっさんの冒険

守 秀斗

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第82話:事務員に転職するのは自分の満足する仕事を終えてからの話しだ、満足ってドラゴン退治に美少女姫救出すか

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 俺と相棒、二人組の冒険者パーティー。
 普段はスライム退治専門のしょぼいパーティーだ。

 朝、宿屋の窓から外を見ると空が曇っている。

「どうしたんすか、リーダー。ぼんやりとして」
「うーむ、どうやら今日は大雨だぞ」

「なんでわかるんすか」
「膝が痛い。だいたい膝が痛くなると雨が降るってことがわかってきたんだ」

「天気病すかね」
「うむ、今日は中止するか」

「でも、食費代はどうすんすか」
「そうだよなあ。腹がへっては何にも出来ない。仕方が無いから、冒険者ギルドへ行くしかないな。簡単な仕事でも貰ってくるか」

 相棒とだらだらと歩きながら冒険者ギルドへ向かう。
 俺は途中でよろけてしまう。

「膝の調子はどうすか、リーダー」
「うーん、あんまり調子が良くないな」

 やれやれ。
 もう老人だな。
 いつまでこんな生活を続けるのか。

 さて、冒険者ギルドへ到着して掲示板を見ると、『冒険者年金事務講習会』のポスターが貼ってあった。どうやらこの村で開催されるらしい。

「この講習会、無料で受けられるようだな」
「どうやらこの冒険者年金制度って評判悪くて、年金を納付する冒険者も少ないし、そもそも事務員も集まらないようっすね。ギルド本部も焦って、いろいろと催しものを開催してるようっすね」

 俺と相棒が話していると、冒険者ギルドの主人が後ろから話しかけてきた。

「お、ようやくあんたも転職することにしたのか」

 ふざけんな!
 と返事しようと思ったのだが、今の俺は弱気になっている。

「今なら無料で受けられるぞ。昼食も出る。あんたもそろそろ引退して、事務員になったらどうだ」
「まだ冒険者を引退するつもりはない。後、これを受けたらすぐに事務員にならなければいけないことにはならないんだろ」
「そうだな。でも、この講習会を受ければ事務員になるとき有利だぞ」

 やたら冒険者ギルドの主人が勧めてくる。
 やれやれ。
 所詮、冒険者ギルドの主人から見ると、俺はもうロートル冒険者。使い物にならないと思われているらしい。くやしいが体の調子は良くない。

「うーむ、ちょっと受けてみるか」

 俺の返事を聞いて、冒険者ギルドの主人が嬉しそうに申込書を持って来る。
 しかし、いまいちやる気が起きないんだよなあ。

……………………………………………………

 講習会場は村役場の集会場だ。
 なぜか相棒もついてきた。

「あれ、お前も転職する気なのか」
「いや、昼飯が無料で食えるっていうから参加っす」
「なんだよ、タダ飯狙いかよ」

 しょうがない奴だなあと思いながら周りを見ると、座っているのは冴えない顔をした人たちばかりだ。

「なんだか冴えない人生を送っているような人たちばかりだなあ」
「リーダーもその一人じゃないすか。つーかこの中で一番冴えない感じっすよ」
「うるさいぞ」

 しかし、確かにそうなんだよな。情けない。若い頃はドラゴンを倒して英雄になるつもりだったのに、いつの間にかおっさん。そして、今、座り心地の悪い硬い椅子に座ってつまらない研修を受けている。全く人生おもろーないぞ。研修と言っても、講師の先生の話しを聞いてるだけだし。

 ふと、隣に座っている相棒を見ると目をつぶっている。こいつ講習なんて聞く気はないらしい。いい加減な奴だ。起こす気にもならないな。

 お、雨が降ってきた。
 ああ、膝が痛い。
 膝が痛くて居眠りをする気にもならないな。

……………………………………………………

 あっという間に三日間の講習会も終わり。冒険者ギルドに行くと主人から研修済の証明書を渡された。

「さあ、これであんたも事務員になれる。奥の部屋にギルド本部の分室があるんだ。どうだい、明日から働くか」
「いや、ちょっと待ってくれ」

「おいおい、往生際が悪いぞ」
「すぐに事務員になる必要はないだろ」
「まあ、そうだが今は人手不足なんだ。簡単に転職できるぞ」

 たぶんこのギルドの主人は心根は悪い奴ではないんだろう。
 そして、このまま事務員になって過ごした方が生活は安定するだろう。

「でも、それは嫌なんだ!」

 思わず大声を出す俺。
 目の前のギルドの主人も後ろに立っていた相棒もびっくりしている。

「ちょっと、リーダー、みんなが驚いてますよ、いきなり叫ばないで下さいよ」
「わかってる。しかし、やはりこのままでは納得いかんのだ、この自分の人生に」

 そう、何か一つでもいいから大きな仕事をしたい。
 ギルドの主人に頼み込む。

「ちょっと待ってくれないか。自分の満足する仕事を一つでもやってからにしてほしいんだ」
「うーん、まあ、しょうがないな。でも、このギルドではその満足出来る仕事は紹介できそうもないけどなあ」

……………………………………………………

 俺は相棒を連れて宿屋に帰る。

「いいんすか。せっかく講習会を受けたのに」
「うむ、このままでは人生不完全燃焼なんだ。とにかく大物を倒したいんだ」

「そんないろんな病気持ちのハゲデブブサイクなおっさんが妙な夢を見るとろくなことにならないっすよ」
「うるさいぞ」

 とにかく引退する時期は自分で決めるぞ。

「なんでもいい。自分の満足する仕事を終えてからの話しだ、事務員に転職は」
「満足って、またドラゴン退治に美少女姫救出すか」

「うるさいぞ。ドラゴンのような大物じゃなくてもよい。別にスライムでもいいんだ」
「スライムなら毎日倒してるじゃないすか」

「違う。もしかしたら狂暴で強いスライムがいるかもしれないじゃないか。そいつを倒したら満足できるのではないか。自分が納得できる大きな仕事をして引退したい」
「そんなこと言って、結局、ドラゴンやら亡国の姫救出とか言い出すんですよね、リーダーは」
「うるさいぞ」

 とにかく自分の人生は自分で決めるのだ。
 しかし、狂暴なスライムっているのだろうか?
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