スライム退治専門のさえないおっさんの冒険

守 秀斗

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第87話:ここは『ドラゴンの泉』っすね、もしかして例の村主催のドラゴンテーマパーク関連かよ

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 俺と相棒、二人組の冒険者パーティー。
 普段はスライム退治専門のしょぼいパーティーだ。

 最近、わりと大物モンスターのトレントを倒した俺。
 しかし、ギルドで頼まれたのはまたスライム退治他だ。

 俺は主人に文句を言った。

「おい、もっと面白い仕事はないのかよ」
「あんたもトレントを倒したんだから、もう引退したらどうだ」
「うるさいぞ。トレント程度ではまだ不完全燃焼だ。もっと大物モンスターを倒してからだ、引退するのは」

「あんたはもう完全に燃えつきたって感じに見えるがなあ」
「うるさいぞ。仕事を寄こせ!」

 そんなわけで、依頼されたのは結局いつも通りのスライム退治。
 場所は村の近くの山。

「さて、今回の指定場所は洞窟の中か。一応、冒険しているな」
「でも、この洞窟は一本道っすよね。かなり長くて深いけど。それにモンスターが出たって話はあまり聞かないんすよね」
「そうなんだよなあ。しかも何度も他の冒険者たちが入ったこともあるし、村人も普通に入るし、俺も入ったことがあるんだよなあ」

 長い洞窟でかなり地上から深い場所の最終地点には確か水が湧いていたなあと俺は思い出す。それほど大きくない泉だな。きれいな泉だった。『水の妖精の泉』と呼ばれていたなあ。

 そして、その泉がある場所に到着すると、何だか泉周辺にきらびやかな青い石がたくさん置いてあるではないか。

「おお、なんだこれは。泉のまわりに青い綺麗な石がたくさんあるぞ。前に来たときはただの泉に過ぎなかったのに」
「ここは『ドラゴンの泉』っすね」
「は? 確か『水の妖精の泉』じゃなかったか。おいおい、もしかして例の村主催のドラゴンテーマパーク関連かよ」

「そうっす。この泉の水を『ドラゴンの水』として販売するつもりっすね、村役場は」
「確かにきれいな水だけど、単なる水だぞ。いいのかよ」

「ドラゴンの力が宿っていて飲むと元気が出るって話っすね。嘘っぱちすけどね。まあ、村役場も大変なんすよ。例のドラゴンテーマパーク、かなりの赤字みたいで焦ってるみたいっす」
「おいおい、ドラゴンが俺たちにも分け前よこせって言ってきても知らんぞ。それにしてもこんな綺麗な石をいっぱい置いて盗まれたらどうすんだ……って、なんかこの石、安っぽいな」

「そりゃガラス玉製だからっすねえ。盗まれても全然大丈夫っす。村役場も予算不足らしいっすねえ」
「しょうもないなあ」

 全くいい加減にもほどがあるな。

「で、肝心のスライム退治だが、全然見当たらないな」
「依頼されたのはスライム退治他っすよ。『他』。つまりこの『ドラゴンの泉』をきれいに清掃しろって依頼っすね。まあ、スライムも出ないわけではないってことですかね」

「ふざけんな! 前にもそんな依頼があったぞ、あの主人は俺に嫌がらせしてんのか」
「暗に引退しろって言いたいんじゃないすかね」

 ふざけてやがる! と怒っていても仕方が無い。
 俺たちは泉周辺のゴミを拾っていく。

「冒険じゃなくてゴミ回収業者じゃねーか。全く、おもろーないぞ」
「まあまあ、これも仕事っすよ。おまけに命の危険が一切無いんだから楽でいいじゃないすか」

「楽ばっかしてたらろくなもんにならないぞ。若いうちは金払ってでも苦労を買えって言葉があるぞ」
「リーダーは苦労したんすか」

 うーん、なんだかいろいろとドタバタ働いたつもりだったんだがなあ。

「苦労はしたぞ。目的地までつらい旅の冒険もあったぞ。それで倒したのはスライムだったがなあ」
「何だ、苦労したあげくにスライム退治専門冒険者、いや、今や単なるゴミ回収などをするしょぼいなんでも屋になるとは、若い頃の苦労を全然活かせなかったってことっすね、リーダーは」
「うるさいぞ」

 しかし、相棒の言うこともあたってるなあ。

「昔の仲間にはうまくやって成功した奴もいるんだがなあ。最初は同様の仕事をしていたのに。今の俺との違いは何なんだろう」
「それは才能、それに運、後は本人のやる気や要領の良さって感じっすかね。ハゲデブブサイクのリーダーは要領悪そうっすもんねえ。今の現状も仕方が無いって感じっすね」
「うるさいぞ」

 やれやれ。
 俺は才能も無いし、運も無いし、要領も悪かったんだな。
 仕方が無いか。

 と俺が憂鬱な気分になっていると後ろから何か近づいてくる気配がする。
 振り向くとスライムがいた。

「何だ、スライムか」

 スライムが飛び掛かって来る。

 バシッ!

 難なく退治する俺。
 
「やれやれ。今日もこのスライム一匹分かよ、報酬は」
「いや清掃代もくれるはずっすよ」

 こりゃ本当に清掃員だな。モンスターも一匹スライムだけ。つまらんなあ。おっと、スライムを倒したのだが、そのスライムが飛び掛かる時にぶつかって何個か例のガラス玉の青い石を泉に落としてしまった。

「おい、泉に落ちたあのガラス玉は回収する必要があるだろうか」
「うーん、でも水の中にある方がきれいに見えますね、あのガラス玉は」

「まあ、村役場にまかすか。もう帰ろう」
「うぃっす」

 帰ろうとする俺にまたもやいつもの痛みが走る。

「ウォ!」
「どうしたんすか」

「膝に痛みが走った。やれやれ。本当に冴えない人生だ」
「ちょっと元気出してくださいっすよ」
「うむ、とにかく宿に帰ろう」

 帰るため洞窟を歩く途中、相棒にまた聞かれる。

「さっきの話しっすけど、それで、その成功した昔の仲間はどうなったんすか」
「うーん、それが大成功したんだが、その後さんざん暴飲暴食して、それが原因なのか病気で死んだって風の便りで聞いたなあ」
「死んだら終わりっすねえ。スライム退治専門でも生きてるリーダーは、考えを変えれば成功者じゃないすか。さっきの泉に落ちたガラス玉のように。普通に見るとガラス玉でも別の方向から見たらきれいな宝石のように見えると」

 うーん、相棒は俺を励まそうとしているのであろうか。
 でも、所詮、ガラス玉はガラス玉なのだ。

 俺は本物の宝石のように成功したいのだ。
 無理であろうか。
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