スライム退治専門のさえないおっさんの冒険

守 秀斗

文字の大きさ
91 / 162

第91話:雨が降っていなかったらドラゴン退治の依頼を引き受けるはずだったのだ、晴れていてもスライム退治をいつものように依頼されるだけですよ

しおりを挟む
 俺と相棒、二人組の冒険者パーティー。
 普段はスライム退治専門のしょぼいパーティーだ。

 外はまた雨が降っている。
 豪雨だ。

「つまらんなあ。せっかく体調が良くなったというのに。これから華麗なドラゴン退治の冒険へと出発するつもりがいきなり出鼻をくじかれた。俺の人生はいつもそうなんだ」
「何言ってんすか。誰にドラゴン退治を依頼されたんすか」

「うるさいぞ。雨が降っていなかったら、冒険者ギルドでドラゴン退治の依頼がきていてそれを引き受けるはずだったのだ」
「またわけのわからないことを妄想してますね。どうせ、晴れていてもスライム退治をいつものように依頼されるだけですよ」

 確かにそうだ。
 やれやれ。
 こんな雨の中、スライム退治なんてやってられないな。

「全く、久々に体中に力がみなぎっている感じがするのに、この大雨だ。それにしても、やはりあの泉は本当に『水の妖精の泉』なのではないか。そして、妖精が俺にドラゴン退治をするよう運命を託したんだ」

 俺は部屋の中で剣を振り回す。
 うむ、体が軽いぞ。

 ブンブンと剣を振り回す俺を見て、相棒が迷惑そうな顔をしている。

「ちょっと、危ないからやめてくださいよ。だいたいあの泉の水を飲んだ人は体調が悪くなった人が多いのに。そう言えば癌とか怖い病気は一時的に元気になるって聞きますね。そして、その時期が終わると一気に寝たきりになってあの世に逝くと」
「おいおい、怖いこと言うなよ」
「まあ、あまり剣を振って暴れるのはやめてくれますか。それとも外でやってくれませんかね」

 相棒に文句を言われてしまった。
 しかし、この土砂降りの中、外に出る気があまりしないな。

「この前の泉の調査の仕事で普段よりそこそこ高い金を貰ったから、今日は休むとするか」
「ドラゴン退治への冒険に行くんじゃないすか。冒険者は雨が降ろうが槍が降ろうがいつでも行動する気構えがなくてはいかんとか前に言ってませんでしたっけ」
「まあ、多少の休憩も必要だ」

「あれ、考えが変わったんすか」
「そうだ。これからの大冒険に備えて今日は休むとしよう。果報は寝て待てともいうぞ」

「何言ってんすか、雨が降っているから億劫なだけでしょ。もう、リーダーもハゲデブブサイクのおっさんですからね。おっさんになると何事もやる気をなくすようすね」
「うるさいぞ。やる気はある。体調も良くなった。しかし、焦って何かするよりも虎視眈々とチャンスを捉えて行動するのだ」

「何をするんすか」
「とりあえず、横になってくつろぐか」
「何すか、それ。単なるさぼりじゃないすか」

 すっかりあきれ顔の相棒。
 
「うるさいぞ。もしかしたら、突然、扉からサイクロプスが乱入してくるかもしれないぞ。そして、そこから大冒険が始まるんだ。だいたい冒険小説でも最初にいきなり大事件が起きるものなのだ。そうでないと読者がついてこないからな。第一章でスライム退治やっていても誰も読まないぞ」
「何でこの安宿の部屋に巨人のサイクロプスが入って来るんすか。冒険小説と現実を一緒にしないでくださいっすよ。アホらしいっすよ」

 しかし、その相棒もベッドでだらんとしている。

「おい、お前だってさぼってんじゃないか」
「瞑想すよ、瞑想」

 相棒はそう言いながら大あくびをして目を瞑る。
 やる気のない奴だな。
 まあ、俺も今日のところはゆっくりとしていようかな。

 そんな時、扉をトントンと叩く音がする。

「おっと、宿屋の主人かな。そろそろ無料宿泊券の期限が過ぎるころだ。おい、金はあるのか」
「何言ってんすか。この前、屋根裏に忍び込んだスライムを退治して無料宿泊は半年延長になったじゃないすか」
「おお、痴漢魔法使いを捕まえた時のことだな」

「すっかり忘れてますね、リーダー。もう老人呆けっすね。体が元気になったのも頭が呆けて痛み自体を感じなくなったからじゃないすか」
「うるさいぞ。ところで誰が来たんだ、開けてやれよ」
「うぃっす」

 相棒がだるそうにベッドから立ち上がると部屋の扉を開ける。
 すると小さい女の子がいた。
 花がいっぱい入った籠を持っている。

「あの、よろしければお花を一つ買っていただけませんでしょうか」

 花売りか。

「どうします、リーダー」
「うーん、一つ買ってやれ」
「でも、俺っちらも貧乏なんすけど」
「一つくらいいいだろ」

 相棒が花を一本買ってやる。嬉しそうにお金を受け取りながらお礼を言って出て行く少女。

「なかなかきれいな花っすけど、これ山に入ればそこら中に咲いている花っすよ。かなり、ぼったくりしてますよ、あの女の子」
「まあ、許してやれ。こんな雨の中、いろんな家に周って花売りをしている。ベッドでぐうたらしているお前よりよっぽど働いているではないか」
「偉そうに言ってるリーダーもさぼってるじゃないすか」

「いや、これがきっかけになるんだよ。その花をきっかけにドラゴン退治への冒険が始まるのだ」
「何言ってんすか。なんで花売りの女の子とドラゴン退治がつながるんすか」
「冗談だ。おい、ガラス瓶に花をさしてやれ。殺風景な部屋だが、多少は潤いもほしくなったぞ」

「きれいな花とハゲデブブサイクの歯抜けリーダーとは全然似合いませんね」
「うるさいぞ」

 しかし、今はきれいな花でもすぐしぼんでしまうだろうなあ。

「ああ、命短し恋せよ乙女~♪」
「何すか、その変な歌は」

「昔流行った歌だ。著作権切れなんでそのままだぞ。意味はそのまま、人生は短いから、今のうちに恋をたくさんしろってことだ。ブランコに乗りたくなったぞ」
「なんでブランコに乗るんすか」

「それはどうでもいい。そして、恋愛だけでなく人生を積極的に生きろという意味も込められてるんだ。お前もベッドのうえでゴロゴロしているヒマはないぞ」
「リーダーの場合は、命が終わるあきらめろおっさん~♪って感じっすね」
「うるさいぞ」

 けど、相棒の言う通り何もかも終焉に向かっているような気がする。
 今は体調がいいが、まさにロウソクは消える時が一番輝くって感じだ。

「しかし、俺はまだ生きている。まだ諦めんぞ!!!」
「うるさいっすね。じゃあ、今から冒険者ギルドに行きますか」

「雨が止んだら行くとするか」
「当分止みそうにないすけど」

「じゃあ、飯でも食いに行くか」
「なんすか、全然やる気ないじゃないすか」
「まあ、少し考えているんだ」

 実際のところ、あまり展望が無いのも事実なんだよな。
 なんとかしたいのだが。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

日本国 召喚獣管理省 関東庁 召喚獣総合事案即応科。

wakaba1890
ファンタジー
召喚獣。 それは向こう側とされる所から、10歳を迎えた日本人の子供の下に召喚されるモンスターのことである。 初代天皇・神武天皇が日本を建国した際に書かれた絵画には彼は金鵄と呼ばれる金色に輝く鵄(とび)と契約したのが原初となっている。 そして、縄文、弥生、古墳、飛鳥、平安、戦国時代から近代から今に至るまで、時代を動かしてきた人物の側には確かに召喚獣は介在していた。 また、奇妙な事に、日本国に限り、齢10歳を迎えた日本在住の日本人にのみ体のどこかから多種多様な紋章が発現し、当人が念じると任意の場所から召喚陣が現れ、人ならざるモンスターを召喚される。 そして、彼らモンスターは主人である当人や心を許した者に対して忠実であった。 そのため、古来の日本から、彼ら召喚獣は農耕、治水、土木、科学技術、エネルギー、政治、経済、金融、戦争など国家の基盤となる柱から、ありとあらゆる分野において、今日に至るまで日本国とアジアの繁栄に寄与してきた。 そして、建国から今まで、国益の基盤たる彼ら数万種類以上をも及ぶ召喚獣を取り締まり管理し、2600年以上と脈々と受け継がれてきた名誉ある国家職がーーーーー国家召喚獣管理官である。

シスターヴレイヴ!~上司に捨て駒にされ会社をクビになり無職ニートになった俺が妹と異世界に飛ばされ妹が勇者になったけど何とか生きてます~

尾山塩之進
ファンタジー
鳴鐘 慧河(なるがね けいが)25歳は上司に捨て駒にされ会社をクビになってしまい世の中に絶望し無職ニートの引き籠りになっていたが、二人の妹、優羽花(ゆうか)と静里菜(せりな)に元気づけられて再起を誓った。 だがその瞬間、妹たち共々『魔力満ちる世界エゾン・レイギス』に異世界召喚されてしまう。 全ての人間を滅ぼそうとうごめく魔族の長、大魔王を倒す星剣の勇者として、セカイを護る精霊に召喚されたのは妹だった。 勇者である妹を討つべく襲い来る魔族たち。 そして慧河より先に異世界召喚されていた慧河の元上司はこの異世界の覇権を狙い暗躍していた。 エゾン・レイギスの人間も一枚岩ではなく、様々な思惑で持って動いている。 これは戦乱渦巻く異世界で、妹たちを護ると一念発起した、勇者ではない只の一人の兄の戦いの物語である。 …その果てに妹ハーレムが作られることになろうとは当人には知るよしも無かった。 妹とは血の繋がりであろうか? 妹とは魂の繋がりである。 兄とは何か? 妹を護る存在である。 かけがいの無い大切な妹たちとのセカイを護る為に戦え!鳴鐘 慧河!戦わなければ護れない!

通販で買った妖刀がガチだった ~試し斬りしたら空間が裂けて異世界に飛ばされた挙句、伝説の勇者だと勘違いされて困っています~

日之影ソラ
ファンタジー
ゲームや漫画が好きな大学生、宮本総司は、なんとなくネットサーフィンをしていると、アムゾンの購入サイトで妖刀が1000円で売っているのを見つけた。デザインは格好よく、どことなく惹かれるものを感じたから購入し、家に届いて試し切りをしたら……空間が斬れた!  斬れた空間に吸い込まれ、気がつけばそこは見たことがない異世界。勇者召喚の儀式最中だった王城に現れたことで、伝説の勇者が現れたと勘違いされてしまう。好待遇や周りの人の期待に流され、人違いだとは言えずにいたら、王女様に偽者だとバレてしまった。  偽物だったと世に知られたら死刑と脅され、死刑を免れるためには本当に魔王を倒して、勇者としての責任を果たすしかないと宣言される。 「偽者として死ぬか。本物の英雄になるか――どちらか選びなさい」  選択肢は一つしかない。死にたくない総司は嘘を本当にするため、伝説の勇者の名を騙る。

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ

ちかず
ファンタジー
久しぶりの早帰りの金曜日の夜(但し、矢作基準)ラッキーの連続に浮かれた矢作の行った先は。 見た事のない空き地に1人。異世界だと気づかない矢作のした事は? 異世界アニメも見た事のない矢作が、自分のスキルに気づく日はいつ来るのだろうか。スキル【備蓄】で異世界に騒動を起こすもちょっぴりズレた矢作はそれに気づかずマイペースに頑張るお話。 鈍感な主人公が降り注ぐ困難もナンノソノとクリアしながら仲間を増やして居場所を作るまで。

幼馴染達と一緒に異世界召喚、だけど僕だけ別な場所に飛ばされた先は異世界の不思議な無人島だった。

アノマロカリス
ファンタジー
よくある話の異世界召喚… スマホのネット小説や漫画が好きな少年、洲河 愽(すが だん)。 いつもの様に幼馴染達と学校帰りの公園でくっちゃべっていると地面に突然魔法陣が現れて… 気付くと愽は1人だけ見渡す限り草原の中に突っ立っていた。 愽は幼馴染達を探す為に周囲を捜索してみたが、一緒に飛ばされていた筈の幼馴染達は居なかった。 生きていればいつかは幼馴染達とまた会える! 愽は希望を持って、この不思議な無人島でサバイバル生活を始めるのだった。 「幼馴染達と一緒に異世界召喚、だけど僕の授かったスキルは役に立つものなのかな?」 「幼馴染達と一緒に異世界召喚、だけど僕は幼馴染達よりも強いジョブを手に入れて無双する!」 「幼馴染達と一緒に異世界召喚、だけど僕は魔王から力を授かり人類に対して牙を剥く‼︎」 幼馴染達と一緒に異世界召喚の第四弾。 愽は幼馴染達と離れた場所でサバイバル生活を送るというパラレルストーリー。 はたして愽は、無事に幼馴染達と再会を果たせるのだろうか?

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

処理中です...