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第93話:あれはゴーレムではないか、でもずいぶん小さくないすかね、普通の人間くらいっすよ
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俺と相棒、二人組の冒険者パーティー。
普段はスライム退治専門のしょぼいパーティーだ。
さて、今日も冒険者ギルドに行って、ギルドの主人と口論になる。
「おい、いつもいつもスライム退治ばっかりじゃないか。何の嫌がらせだ。他の仕事を寄こせ!」
「何度も言ってるだろ。あんたの実力を考えるとせいぜいスライム退治くらいだ、依頼できるのは。おまけに体を壊してるんだろ。スライム相手でもつらいんじゃないのか」
「うるさいぞ。最近、体調もだいぶ回復してきた」
「慢性の病気と聞いているんだが。おまけにリュウマチも患ってる。そんな冒険者に危険な仕事を頼めるわけないだろ」
お互いギャーギャー言い合ったあげく、結局、スライム退治で落ち着いた。
「やれやれ。いつも通りだな」
「まあ、しょうがないすよ。いつかはいい仕事の依頼が来るんじゃないすかね」
相棒が慰めてくれるが、しかし俺としては不満でいっぱいだ。
さて、冒険者ギルドから出ようとして、ふと掲示板を見る。
新聞記事が貼ってあった。
「おお、北方の都市に巨大ゴーレムが出現したらしいぞ。ゴーレムと言えば石の塊がいくつかくっついて人型になるモンスターだな。それも山のようにでかい奴だったらしい」
「どうやら王族の分家に悪い奴がいて王室を乗っ取ろうとしたらしいっすね」
「しかし、大勢の冒険者が協力して、ゴーレムを操っていた魔法使いやその陰謀を企んだ分家の奴を倒したようだな」
「事件解決。めでたしめでたしっすね」
俺もこんな巨大ゴーレムを相手に大暴れをしたかったなあと思って記事を読む。
つい先日の事件か。
それも場所はこの村からそんなに離れていない。
「ふむふむ……あれ、倒した冒険者の名前がずらりと載っているけど、けっこう知っている名前が何人かいるぞ。この冒険者ギルドにも出入りしてた人の名前もある」
俺はギルドの主人に聞いた。
「おい、あのゴーレム退治の件の記事だが、このギルドからも何人か冒険者が派遣されているんだな」
「そうだが。それがどうした」
「俺は全然知らなかったぞ」
「そりゃ、あんたを派遣するわけないだろ。足手まといになってかえって邪魔になるだけだ」
「足手まといとはなんだ、ふざけんな、この野郎!」
ついに喧嘩になってお互いの胸倉を掴んで罵倒し合う。
何とか相棒に止められた。
……………………………………………………
「全く、けしからん。あのギルドの主人の野郎め」
「でも、悪い人じゃないすよ。リーダーの体のことを心配してくれてるじゃないすか」
「足手まといとかバカにしやがったんだぞ」
「実際、俺っちらが行っても、巨大ゴーレムには敵わなかったんじゃないすか」
「お前、夢がないなあ。もしかした乾坤一擲で倒せたかもしれんぞ」
「その安物の剣でゴーレムと戦ったところで、ハゲデブブサイクの歯抜けのリーダーは一瞬で踏みつぶされて終わりじゃないすかね」
「うるさいぞ」
確かに相手は山のような大きさのゴーレム。
ちょっと無理か。
「ああ、でも残念だなあ。俺も参加したかったぞ」
「無能で勤勉な奴は邪魔になるとか前に言ってませんでしたっけ」
「うるさいぞ。邪魔はせん。しかし、多少は力になったのではないかな」
「無理っすよ」
「お前、やる気ないなあ」
「無能でぐうたらなんすよ。でも、邪魔にはならないんすよね」
やれやれ。
これじゃあ、俺たちは一生スライム退治で終わりか。
さて、指定された場所。
山の中腹。
岩がゴロゴロとそこら辺にある荒れ地だ。
そこかしこにスライムがいる。
「こんな荒れ地なんて誰もこないじゃないか。そこにいるスライムを退治したところで大した意味はないんじゃないか」
「だからリーダーに依頼したんじゃないすか。歯抜け爺さんは適当に働かせておけって感じで」
「ったく、ふざけたギルドだ。後、俺はまだ爺さんではないぞ」
しかし、依頼を受けた以上、そぼそぼとスライムを退治する俺と相棒。
ああ、つまらん。
「ほとんどスライムもいないじゃないか」
「そうすね。もう帰りますかね」
やれやれ。
さて、宿屋に帰ろうとしたその時。
「おい、四角い岩が動いているぞ」
「本当っすね。何すかね、あれ」
「おまけにいくつかの岩が人型を作っているではないか。あれはゴーレムではないか。この前に退治されたとかいう巨大ゴーレムの魔法の力が残っていて、それが新たに動き出したのだ」
「うーん、でもずいぶん小さくないすかね。普通の人間くらいっすよ」
「いや、今から巨大化するに違いない。よし、退治してやるぞ」
「ちょ、ちょっと待ってくださいよ、リーダー」
相棒が止めるのも聞かずに剣を振りかざしてゴーレムに近づく俺。
「覚悟しろ! ゴーレム」
その俺の剣幕に、そのゴーレムは腰を抜かして崖をゴロゴロと落ちていく。
「ゴーレムの奴、逃げやがったな」
「ちょっと待ってくださいっすよ。あれはゴーレムじゃないすよ。人間の足が見えましたよ」
「なんだと」
崖の下まで降りて観察すると、岩じゃなくて木の箱をつなげた被り物をした人間だった。
……………………………………………………
「ゴーレムの着ぐるみを被っていた村人に襲いかかったんだってな。だから、あんたはもう冒険者なんてやめろよ」
「うるさいぞ。だいたいなんであの男はあんなヘンテコな格好をしてたんだ」
「子供たちの肝試し大会が行われるんだ。それでゴーレムの格好になるのを思い付いたんだが、木の箱に岩の色を塗るための参考に、あの荒れ地の岩を見に行ったらしい。そこを呆けた冒険者のおっさんに襲われて崖から落ちてケガ。捻挫程度で済んだのは不幸中の幸いだったな。治療代にあてるから今回のスライム退治の報酬はあんたらには無しだ」
「なんだと! 呆けたおっさんとはなんだ!」
「呆けてるだろが」
また冒険者ギルドの主人と大喧嘩。
相棒に何とか仲裁される。
すごすごと冒険者ギルドから出る俺と相棒。
「だいたい、あんな荒れ地であんな変な格好してたら不審に思うに決まってるだろ」
「まあ、岩の色とかリアルさをもとめたらしいっすね。でも、事情も聞かずにいきなり襲いかかるリーダーも不審人物っすよ」
「うるさいぞ」
しかし、今回は失態だったなあとも思う俺であった。
普段はスライム退治専門のしょぼいパーティーだ。
さて、今日も冒険者ギルドに行って、ギルドの主人と口論になる。
「おい、いつもいつもスライム退治ばっかりじゃないか。何の嫌がらせだ。他の仕事を寄こせ!」
「何度も言ってるだろ。あんたの実力を考えるとせいぜいスライム退治くらいだ、依頼できるのは。おまけに体を壊してるんだろ。スライム相手でもつらいんじゃないのか」
「うるさいぞ。最近、体調もだいぶ回復してきた」
「慢性の病気と聞いているんだが。おまけにリュウマチも患ってる。そんな冒険者に危険な仕事を頼めるわけないだろ」
お互いギャーギャー言い合ったあげく、結局、スライム退治で落ち着いた。
「やれやれ。いつも通りだな」
「まあ、しょうがないすよ。いつかはいい仕事の依頼が来るんじゃないすかね」
相棒が慰めてくれるが、しかし俺としては不満でいっぱいだ。
さて、冒険者ギルドから出ようとして、ふと掲示板を見る。
新聞記事が貼ってあった。
「おお、北方の都市に巨大ゴーレムが出現したらしいぞ。ゴーレムと言えば石の塊がいくつかくっついて人型になるモンスターだな。それも山のようにでかい奴だったらしい」
「どうやら王族の分家に悪い奴がいて王室を乗っ取ろうとしたらしいっすね」
「しかし、大勢の冒険者が協力して、ゴーレムを操っていた魔法使いやその陰謀を企んだ分家の奴を倒したようだな」
「事件解決。めでたしめでたしっすね」
俺もこんな巨大ゴーレムを相手に大暴れをしたかったなあと思って記事を読む。
つい先日の事件か。
それも場所はこの村からそんなに離れていない。
「ふむふむ……あれ、倒した冒険者の名前がずらりと載っているけど、けっこう知っている名前が何人かいるぞ。この冒険者ギルドにも出入りしてた人の名前もある」
俺はギルドの主人に聞いた。
「おい、あのゴーレム退治の件の記事だが、このギルドからも何人か冒険者が派遣されているんだな」
「そうだが。それがどうした」
「俺は全然知らなかったぞ」
「そりゃ、あんたを派遣するわけないだろ。足手まといになってかえって邪魔になるだけだ」
「足手まといとはなんだ、ふざけんな、この野郎!」
ついに喧嘩になってお互いの胸倉を掴んで罵倒し合う。
何とか相棒に止められた。
……………………………………………………
「全く、けしからん。あのギルドの主人の野郎め」
「でも、悪い人じゃないすよ。リーダーの体のことを心配してくれてるじゃないすか」
「足手まといとかバカにしやがったんだぞ」
「実際、俺っちらが行っても、巨大ゴーレムには敵わなかったんじゃないすか」
「お前、夢がないなあ。もしかした乾坤一擲で倒せたかもしれんぞ」
「その安物の剣でゴーレムと戦ったところで、ハゲデブブサイクの歯抜けのリーダーは一瞬で踏みつぶされて終わりじゃないすかね」
「うるさいぞ」
確かに相手は山のような大きさのゴーレム。
ちょっと無理か。
「ああ、でも残念だなあ。俺も参加したかったぞ」
「無能で勤勉な奴は邪魔になるとか前に言ってませんでしたっけ」
「うるさいぞ。邪魔はせん。しかし、多少は力になったのではないかな」
「無理っすよ」
「お前、やる気ないなあ」
「無能でぐうたらなんすよ。でも、邪魔にはならないんすよね」
やれやれ。
これじゃあ、俺たちは一生スライム退治で終わりか。
さて、指定された場所。
山の中腹。
岩がゴロゴロとそこら辺にある荒れ地だ。
そこかしこにスライムがいる。
「こんな荒れ地なんて誰もこないじゃないか。そこにいるスライムを退治したところで大した意味はないんじゃないか」
「だからリーダーに依頼したんじゃないすか。歯抜け爺さんは適当に働かせておけって感じで」
「ったく、ふざけたギルドだ。後、俺はまだ爺さんではないぞ」
しかし、依頼を受けた以上、そぼそぼとスライムを退治する俺と相棒。
ああ、つまらん。
「ほとんどスライムもいないじゃないか」
「そうすね。もう帰りますかね」
やれやれ。
さて、宿屋に帰ろうとしたその時。
「おい、四角い岩が動いているぞ」
「本当っすね。何すかね、あれ」
「おまけにいくつかの岩が人型を作っているではないか。あれはゴーレムではないか。この前に退治されたとかいう巨大ゴーレムの魔法の力が残っていて、それが新たに動き出したのだ」
「うーん、でもずいぶん小さくないすかね。普通の人間くらいっすよ」
「いや、今から巨大化するに違いない。よし、退治してやるぞ」
「ちょ、ちょっと待ってくださいよ、リーダー」
相棒が止めるのも聞かずに剣を振りかざしてゴーレムに近づく俺。
「覚悟しろ! ゴーレム」
その俺の剣幕に、そのゴーレムは腰を抜かして崖をゴロゴロと落ちていく。
「ゴーレムの奴、逃げやがったな」
「ちょっと待ってくださいっすよ。あれはゴーレムじゃないすよ。人間の足が見えましたよ」
「なんだと」
崖の下まで降りて観察すると、岩じゃなくて木の箱をつなげた被り物をした人間だった。
……………………………………………………
「ゴーレムの着ぐるみを被っていた村人に襲いかかったんだってな。だから、あんたはもう冒険者なんてやめろよ」
「うるさいぞ。だいたいなんであの男はあんなヘンテコな格好をしてたんだ」
「子供たちの肝試し大会が行われるんだ。それでゴーレムの格好になるのを思い付いたんだが、木の箱に岩の色を塗るための参考に、あの荒れ地の岩を見に行ったらしい。そこを呆けた冒険者のおっさんに襲われて崖から落ちてケガ。捻挫程度で済んだのは不幸中の幸いだったな。治療代にあてるから今回のスライム退治の報酬はあんたらには無しだ」
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