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第94話:ハゲデブブサイクのリーダーだとゾンビのメイクをしても滑稽に見えるんじゃないすか、うるさいぞ
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俺と相棒、二人組の冒険者パーティー。
普段はスライム退治専門のしょぼいパーティーだ。
夜中。
俺はゾンビになった。
ボロボロの服装に青白い顔。
ここは村の近くにある寺院。
小さいランプが灯っているだけでほぼ真っ暗だ。
お、三人組の子供たちが近づいてきたぞ。
寺院の敷地内の建物の前まで来た。
「ウガー!」
子供たちの前に突然現れる俺。
しかし、ガキどもはゲラゲラ笑って紙の剣で俺に襲いかかって来る。
袋叩きにされる。
「おい、痛い、やめろ」
俺をポカポカ殴るのに飽きたのか、難なく子供たちは持参してきた果物を建物入口前に置いた。
「やあ、君たちおめでとう」
大きい翼を背中に付けたガーゴイルの格好をした相棒がドラゴンのデザインされたメダルを子供たちに渡している。
「ところでガーゴイル。何でゾンビとガーゴイルが共闘しているんだよ」
「さあ、村役場にガーゴイルの格好を指定されたんで。設定は適当なんじゃないすか」
ガーゴイルの格好をした相棒がヘラヘラしながら答えた。
「それにしても、冒険者がゾンビの格好して子供を驚かせなるなんてしょぼい仕事するとは情けないなあ。しかも、全然、驚かないじゃないか。それどころかガキどもはふざけて襲いかかって来るし。笑いものにされてるだけだぞ」
「しょうがないんじゃないすか。本来、ゴーレムの被り物を着た村民の役割だったんすけど、リーダーがケガさせちゃったじゃないすか」
「うむ、あれは悪い事をしたと思っている」
「まあ、その代わりってことっすね。ところでゾンビってもっと痩せてないすかね。ハゲデブブサイクの歯抜けのリーダーだとゾンビのメイクをしても滑稽に見えるんじゃないすか」
「うるさいぞ」
やれやれ。
村役場主催のドラゴンテーマパークに関係する肝試し大会。この寺院は森の中にある。村から細い道を歩いていくとこの寺院があって、子供たちはお供え物を置いていく代わりにドラゴンメダルを貰えるわけだ。
その後も何人もの子供たちが来たので、俺は驚かせようとするが笑われるだけだ。
情けない。
「リーダー、メダルが無くなりましたっすよ」
「じゃあ、今のガキどもで終了か。アホらしい仕事だったなあ」
「でも、これで報酬を貰えるんでいいじゃないすか。楽な仕事っすよ」
「俺は殴られたり蹴られたりしたんだぞ、ガキどもに。冒険者の仕事ではないなあ」
俺はおっさんになったというのにこんな仕事で糊口をしのがなくていけないとは、やはり情けない。
「さて帰るか」
「そうっすね」
山を下りる途中、分かれ道になっている。
どっちを通っても村には戻れる。
「おい、こっちの細い道を通るとするか。確か近道だぞ」
「けもの道じゃないすか。やぶ蚊とかが多いから気が進みませんね」
「蚊ぐらいで嫌がるな。とても冒険者とは思えない発言だぞ」
「今はガーゴイルっすよ」
「くだらん。とにかくこの細い道を通って帰るぞ。アホらしい行事で正直疲れてる。さっさと宿屋に帰って眠りたいのだ、俺は」
そんなわけで細いけもの道を下って行く俺と相棒。
すると、目の前に何者かの気配を感じた。
「うん? 何かいるぞ」
俺は携帯ランプを向ける。
ランプの光で目が光った。
すわ、モンスターかと思ったらイノシシだった。
「なんだ、イノシシか。強いモンスターでも出現すれば面白かったのに」
「モンスターでもって、リーダー、剣は持ってるんすか」
「おお、そう言えば宿屋に置いたままだ。ゾンビが剣を持っていたらおかしいだろ」
「まずいっすね。イノシシが襲ってきたら」
「しかし、イノシシってのは元来臆病な動物なのだ。人間には向かってこないぞ。ここはイノシシをじっとにらみつけるのだ。そうすればイノシシの方から退散するだろう」
俺は腕組みをして仁王立ちになり、はたっとイノシシをにらみつける。
あっさりと退散するイノシシ。
「どうだ、俺の一流でベテラン冒険者としての迫力のおかげだぞ。ひとにらみであっさりとイノシシ撃退した」
「何言ってんすか。ゾンビメイクでハゲデブブサイクの歯抜けのリーダーが薄気味悪いんでイノシシもさっさと逃げて行ったんじゃないすか」
「うるさいぞ」
しかし、その直後、後ろから妙な鼻息が聞こえてきた。
振り向くとさきほどとは違うイノシシがいる。
至近距離だ。
それも、すげーバカでかい。
そこらのモンスターよりも強そうなイノシシだ。
え、これはやばいな。
「おい、お前はナイフを持ってきたのか」
「いやあ、宿屋に置いてきたっす。きもだめし大会にナイフはいらんでしょ」
「じゃあ、武器は無いのか」
「でも、イノシシは臆病な動物じゃないんすか」
「いや逆ギレして突っ込んでくることがあるぞ」
「じゃあ、リーダーのベテラン冒険者としての迫力で追い返してくださいよ」
「うむ、わかった」
俺はまたイノシシをはたっとにらみつけようとしたら、イノシシが猛然と突進してきた。
「おい、逃げろ」
けもの道を焦って逃げる俺と相棒。
「ちょっと、リーダー! 一流でベテラン冒険者としての迫力はどこにいったんすか。イノシシくらい退治してくださいよ」
「うるさいぞって、武器がないんだからしょうがないじゃないか。素手で戦うのには慣れてない。おい、追いつかれそうだ。よし、二手に分かれよう。同時にお互い左右の脇の草原に飛び込むんだ」
「うぃっす」
俺と相棒は同時にけもの道の脇に飛び込んだ。
その間を猛然と走り去るイノシシ。
「ふう、危なかったな。大丈夫か」
俺は相棒に声をかける。
「大丈夫っすよ」
相棒の元気な答えが返ってきた。
しかし、俺は立ち上がろうとして足を滑らせてしまう。
「ウワー!」
「ちょっと、大丈夫すか、リーダー」
崖のようになっていた場所に逃げてしまったようだ。俺はゴロゴロと転がって下に落ちた。
慌てて、相棒が降りてくる。
「うーん、左足が痛い」
「どうやら捻挫のようすっね。歩けますか」
相棒に助けられながらなんとか立ち上がる。
「イテテ、こりゃ左足首の捻挫だな」
「しかし、イノシシ程度に追われる冒険者って、とてもドラゴン退治はできそうにもないっすね」
「うるさいぞ」
とは言うものの、なんとも情けないことになったなあ。
結局、その日は相棒におんぶされて宿屋に帰った。
……………………………………………………
さて、翌日。
「ケガの方は大丈夫すか」
「うむ、どうやら大したことはないようだ。今日は仕事に行くぞ」
「無理に張り切るとかえって悪化しませんすかね」
「大丈夫だ。最近、俺は割と調子がいいのだ」
しかし、ちょっと痛いな。
剣を杖にして、冒険者ギルドに向かう。
「なんか情けないすね、本当に爺さんみたいっすよ」
「うるさいぞ。こんな痛みは冒険者としての気合でなんとかなるものだ」
「気合でなんとかなるなら、スライム退治の人生なんて送ってないんじゃないすか、歯抜けのリーダーは」
「うるさいぞ」
確かに気合ではどうにもならない時もあるなあ。
「本当に足首の方は大丈夫なんすか」
「なんとか大丈夫だ。それにどうせ今日もスライム退治だろ、依頼されるのは」
さて、足をひきずりながらもギルドに到着。
そして、またスライム退治かと思いきや、興味深い依頼をされた。
「おい、ガーゴイルの目撃情報があったらしい。その調査をギルドからまかされたぞ」
「ガーゴイルなんて、この辺鄙な村に現れますかねえ。魔王の使い魔って呼ばれてますけど。こんな村には用はないっすよ」
「いや、勇者の情報を聞きつけて魔王がガーゴイルを偵察に派遣したのだ。そして、その勇者こそ俺のことなのだ」
「また妄想に入ってますね、リーダーは」
「うるさいぞ。とにかく現場に行こう。俺は張り切っているぞ」
「へいへい」
やる気無さそうな相棒を引きつれて意気揚々と現場へ行く俺。
さて、指定された場所。
昨夜の肝試し大会が開催された寺院の近くだ。
「さあ、ガーゴイル! 出てこい、俺が成敗してやる」
剣をブンブンと振り回す俺。
「ちょっと、何を興奮してるんすか。足のケガも治ってないし。それに、またぎっくり腰になりますよ。俺っちらに任されたの単なる調査っすよ。退治しろとは言われてないすよ」
「うるさいぞ。調査してたらガーゴイルが現れたんで仕方なく倒したってこともあるかもしれないじゃないか」
「ハゲデブブサイクの歯抜けの足首捻挫しているリーダーにはガーゴイルは倒せないないんじゃないすか」
「うるさいぞ」
しかし、ガーゴイルを退治したらそれなりに賞賛されるのではないか。
俺の冒険者引退への花道になるかも。
「よし、これが俺の人生最後の戦いになるかもしれんぞ」
しかし、相棒が少し考えている。
「あれ、ちょっと待って下さいよ。もしかしてガーゴイルの目撃情報って、昨夜の俺っちのガーゴイルのコスプレの見間違いじゃないすか」
「それがなあ、新種らしいんだ」
「新種って?」
「顔の上にさらに顔があって、それがものすごく醜くてこの世のものとは思えない狂暴な顔をしてたらしい。双頭のガーゴイルだぞ」
俺の答えを聞いて急にしらけた顔をする相棒。
「帰りますか」
「なんだよ、まだ全然調査してないぞ」
「昨夜、ケガしたリーダーを俺っちがおぶったじゃないすか。それを見られたんすよ」
「なんだと!」
しかし、冷静に考えてみれば顔の上に顔があるガーゴイルなんて聞いた事が無いな。
「そうか、俺たちを目撃した村人がモンスターと見間違えただけか」
がっくりする俺。
「それにしても、何だよ、ものすごく醜くてこの世のものとは思えない狂暴な顔って。俺はそんな顔をしてるのかよ」
「そりゃ、ゾンビのメイクしてましたっすからね」
「やれやれ。昨夜、本当にガーゴイルが現れたら成敗してやったものなんだがなあ」
「何言ってんすか。武器も持ってなかったじゃないすか」
「それもそうか。やれやれ。情けない。今日はこれが俺の最後の戦いになるかと思ったんだが。ガーゴイルを倒して賞賛されて引退のはずだったのに」
「当分、最後は無さそうっすね。だいたいイノシシに追い回される冒険者。修行が足りないっすよ」
「うるさいぞ」
しかし、イノシシ程度に追い回されたあげく足を捻挫する冒険者とはあらためて情けないと俺は思った。
普段はスライム退治専門のしょぼいパーティーだ。
夜中。
俺はゾンビになった。
ボロボロの服装に青白い顔。
ここは村の近くにある寺院。
小さいランプが灯っているだけでほぼ真っ暗だ。
お、三人組の子供たちが近づいてきたぞ。
寺院の敷地内の建物の前まで来た。
「ウガー!」
子供たちの前に突然現れる俺。
しかし、ガキどもはゲラゲラ笑って紙の剣で俺に襲いかかって来る。
袋叩きにされる。
「おい、痛い、やめろ」
俺をポカポカ殴るのに飽きたのか、難なく子供たちは持参してきた果物を建物入口前に置いた。
「やあ、君たちおめでとう」
大きい翼を背中に付けたガーゴイルの格好をした相棒がドラゴンのデザインされたメダルを子供たちに渡している。
「ところでガーゴイル。何でゾンビとガーゴイルが共闘しているんだよ」
「さあ、村役場にガーゴイルの格好を指定されたんで。設定は適当なんじゃないすか」
ガーゴイルの格好をした相棒がヘラヘラしながら答えた。
「それにしても、冒険者がゾンビの格好して子供を驚かせなるなんてしょぼい仕事するとは情けないなあ。しかも、全然、驚かないじゃないか。それどころかガキどもはふざけて襲いかかって来るし。笑いものにされてるだけだぞ」
「しょうがないんじゃないすか。本来、ゴーレムの被り物を着た村民の役割だったんすけど、リーダーがケガさせちゃったじゃないすか」
「うむ、あれは悪い事をしたと思っている」
「まあ、その代わりってことっすね。ところでゾンビってもっと痩せてないすかね。ハゲデブブサイクの歯抜けのリーダーだとゾンビのメイクをしても滑稽に見えるんじゃないすか」
「うるさいぞ」
やれやれ。
村役場主催のドラゴンテーマパークに関係する肝試し大会。この寺院は森の中にある。村から細い道を歩いていくとこの寺院があって、子供たちはお供え物を置いていく代わりにドラゴンメダルを貰えるわけだ。
その後も何人もの子供たちが来たので、俺は驚かせようとするが笑われるだけだ。
情けない。
「リーダー、メダルが無くなりましたっすよ」
「じゃあ、今のガキどもで終了か。アホらしい仕事だったなあ」
「でも、これで報酬を貰えるんでいいじゃないすか。楽な仕事っすよ」
「俺は殴られたり蹴られたりしたんだぞ、ガキどもに。冒険者の仕事ではないなあ」
俺はおっさんになったというのにこんな仕事で糊口をしのがなくていけないとは、やはり情けない。
「さて帰るか」
「そうっすね」
山を下りる途中、分かれ道になっている。
どっちを通っても村には戻れる。
「おい、こっちの細い道を通るとするか。確か近道だぞ」
「けもの道じゃないすか。やぶ蚊とかが多いから気が進みませんね」
「蚊ぐらいで嫌がるな。とても冒険者とは思えない発言だぞ」
「今はガーゴイルっすよ」
「くだらん。とにかくこの細い道を通って帰るぞ。アホらしい行事で正直疲れてる。さっさと宿屋に帰って眠りたいのだ、俺は」
そんなわけで細いけもの道を下って行く俺と相棒。
すると、目の前に何者かの気配を感じた。
「うん? 何かいるぞ」
俺は携帯ランプを向ける。
ランプの光で目が光った。
すわ、モンスターかと思ったらイノシシだった。
「なんだ、イノシシか。強いモンスターでも出現すれば面白かったのに」
「モンスターでもって、リーダー、剣は持ってるんすか」
「おお、そう言えば宿屋に置いたままだ。ゾンビが剣を持っていたらおかしいだろ」
「まずいっすね。イノシシが襲ってきたら」
「しかし、イノシシってのは元来臆病な動物なのだ。人間には向かってこないぞ。ここはイノシシをじっとにらみつけるのだ。そうすればイノシシの方から退散するだろう」
俺は腕組みをして仁王立ちになり、はたっとイノシシをにらみつける。
あっさりと退散するイノシシ。
「どうだ、俺の一流でベテラン冒険者としての迫力のおかげだぞ。ひとにらみであっさりとイノシシ撃退した」
「何言ってんすか。ゾンビメイクでハゲデブブサイクの歯抜けのリーダーが薄気味悪いんでイノシシもさっさと逃げて行ったんじゃないすか」
「うるさいぞ」
しかし、その直後、後ろから妙な鼻息が聞こえてきた。
振り向くとさきほどとは違うイノシシがいる。
至近距離だ。
それも、すげーバカでかい。
そこらのモンスターよりも強そうなイノシシだ。
え、これはやばいな。
「おい、お前はナイフを持ってきたのか」
「いやあ、宿屋に置いてきたっす。きもだめし大会にナイフはいらんでしょ」
「じゃあ、武器は無いのか」
「でも、イノシシは臆病な動物じゃないんすか」
「いや逆ギレして突っ込んでくることがあるぞ」
「じゃあ、リーダーのベテラン冒険者としての迫力で追い返してくださいよ」
「うむ、わかった」
俺はまたイノシシをはたっとにらみつけようとしたら、イノシシが猛然と突進してきた。
「おい、逃げろ」
けもの道を焦って逃げる俺と相棒。
「ちょっと、リーダー! 一流でベテラン冒険者としての迫力はどこにいったんすか。イノシシくらい退治してくださいよ」
「うるさいぞって、武器がないんだからしょうがないじゃないか。素手で戦うのには慣れてない。おい、追いつかれそうだ。よし、二手に分かれよう。同時にお互い左右の脇の草原に飛び込むんだ」
「うぃっす」
俺と相棒は同時にけもの道の脇に飛び込んだ。
その間を猛然と走り去るイノシシ。
「ふう、危なかったな。大丈夫か」
俺は相棒に声をかける。
「大丈夫っすよ」
相棒の元気な答えが返ってきた。
しかし、俺は立ち上がろうとして足を滑らせてしまう。
「ウワー!」
「ちょっと、大丈夫すか、リーダー」
崖のようになっていた場所に逃げてしまったようだ。俺はゴロゴロと転がって下に落ちた。
慌てて、相棒が降りてくる。
「うーん、左足が痛い」
「どうやら捻挫のようすっね。歩けますか」
相棒に助けられながらなんとか立ち上がる。
「イテテ、こりゃ左足首の捻挫だな」
「しかし、イノシシ程度に追われる冒険者って、とてもドラゴン退治はできそうにもないっすね」
「うるさいぞ」
とは言うものの、なんとも情けないことになったなあ。
結局、その日は相棒におんぶされて宿屋に帰った。
……………………………………………………
さて、翌日。
「ケガの方は大丈夫すか」
「うむ、どうやら大したことはないようだ。今日は仕事に行くぞ」
「無理に張り切るとかえって悪化しませんすかね」
「大丈夫だ。最近、俺は割と調子がいいのだ」
しかし、ちょっと痛いな。
剣を杖にして、冒険者ギルドに向かう。
「なんか情けないすね、本当に爺さんみたいっすよ」
「うるさいぞ。こんな痛みは冒険者としての気合でなんとかなるものだ」
「気合でなんとかなるなら、スライム退治の人生なんて送ってないんじゃないすか、歯抜けのリーダーは」
「うるさいぞ」
確かに気合ではどうにもならない時もあるなあ。
「本当に足首の方は大丈夫なんすか」
「なんとか大丈夫だ。それにどうせ今日もスライム退治だろ、依頼されるのは」
さて、足をひきずりながらもギルドに到着。
そして、またスライム退治かと思いきや、興味深い依頼をされた。
「おい、ガーゴイルの目撃情報があったらしい。その調査をギルドからまかされたぞ」
「ガーゴイルなんて、この辺鄙な村に現れますかねえ。魔王の使い魔って呼ばれてますけど。こんな村には用はないっすよ」
「いや、勇者の情報を聞きつけて魔王がガーゴイルを偵察に派遣したのだ。そして、その勇者こそ俺のことなのだ」
「また妄想に入ってますね、リーダーは」
「うるさいぞ。とにかく現場に行こう。俺は張り切っているぞ」
「へいへい」
やる気無さそうな相棒を引きつれて意気揚々と現場へ行く俺。
さて、指定された場所。
昨夜の肝試し大会が開催された寺院の近くだ。
「さあ、ガーゴイル! 出てこい、俺が成敗してやる」
剣をブンブンと振り回す俺。
「ちょっと、何を興奮してるんすか。足のケガも治ってないし。それに、またぎっくり腰になりますよ。俺っちらに任されたの単なる調査っすよ。退治しろとは言われてないすよ」
「うるさいぞ。調査してたらガーゴイルが現れたんで仕方なく倒したってこともあるかもしれないじゃないか」
「ハゲデブブサイクの歯抜けの足首捻挫しているリーダーにはガーゴイルは倒せないないんじゃないすか」
「うるさいぞ」
しかし、ガーゴイルを退治したらそれなりに賞賛されるのではないか。
俺の冒険者引退への花道になるかも。
「よし、これが俺の人生最後の戦いになるかもしれんぞ」
しかし、相棒が少し考えている。
「あれ、ちょっと待って下さいよ。もしかしてガーゴイルの目撃情報って、昨夜の俺っちのガーゴイルのコスプレの見間違いじゃないすか」
「それがなあ、新種らしいんだ」
「新種って?」
「顔の上にさらに顔があって、それがものすごく醜くてこの世のものとは思えない狂暴な顔をしてたらしい。双頭のガーゴイルだぞ」
俺の答えを聞いて急にしらけた顔をする相棒。
「帰りますか」
「なんだよ、まだ全然調査してないぞ」
「昨夜、ケガしたリーダーを俺っちがおぶったじゃないすか。それを見られたんすよ」
「なんだと!」
しかし、冷静に考えてみれば顔の上に顔があるガーゴイルなんて聞いた事が無いな。
「そうか、俺たちを目撃した村人がモンスターと見間違えただけか」
がっくりする俺。
「それにしても、何だよ、ものすごく醜くてこの世のものとは思えない狂暴な顔って。俺はそんな顔をしてるのかよ」
「そりゃ、ゾンビのメイクしてましたっすからね」
「やれやれ。昨夜、本当にガーゴイルが現れたら成敗してやったものなんだがなあ」
「何言ってんすか。武器も持ってなかったじゃないすか」
「それもそうか。やれやれ。情けない。今日はこれが俺の最後の戦いになるかと思ったんだが。ガーゴイルを倒して賞賛されて引退のはずだったのに」
「当分、最後は無さそうっすね。だいたいイノシシに追い回される冒険者。修行が足りないっすよ」
「うるさいぞ」
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