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第96話:勝手に車椅子が移動したんだ、これは悪の魔法使いの陰謀じゃないのか、何で冴えないおっさんの車椅子を移動させるんすか
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俺と相棒、二人組の冒険者パーティー。
普段はスライム退治専門のしょぼいパーティーだ。
朝、起き上がろうとしたのだが、左足首がすごく痛い。
「どうしたんすか、リーダー」
「ううむ、例の捻挫がうまく治らん」
「だいたい年寄りはケガして二、三日後に痛みが強くなるって言いますね」
「うるさいぞ。俺はまだ爺さんではない」
「年寄りじゃなくて、ハゲデブブサイクの歯抜けのおっさんでしたね」
「うるさいぞ」
「で、今日はどうするんすか。休みますか」
「いや、仕事にいくぞ。俺はまだ寝たきり老人になったわけではない」
そういうわけで、俺は剣を杖代わりにして部屋の中をひょこひょこと歩く。
「リーダー、なんだかその姿、本当に情けないすんけど」
「うるさいぞ。俺はまだ元気だ、おっと」
ちょっと前方よろける。
どうも前のめりになってしまうなあ。
「ほら、剣を杖にしても安定感がないっすよ。確かこの宿屋に車椅子があったじゃないすか。それを支えにすればいいんじゃないすか」
「うむ。それはいい考えだ」
俺は車椅子を宿屋の主人に借りて、それを押しながら村道を歩く。
「なかなか具合がいいぞ。足首にあまり負担をかけないで上手く歩ける。でも、これ爺さんみたいだなあ。よく爺さん婆さんが手押し車で歩いているのを見かけるがそれに似ているぞ。ちと恥ずかしいなあ」
「リーダーは今さら外見を気にする必要がないほど、ハゲデブブサイクの歯抜けの情けないおっさんじゃないすか」
「うるさいぞ。これでもまだ現役の冒険者だぞ」
「しょうがないすね。なら、俺っちがその車椅子に座りましょう。ケガ人を運んでいる立派な冒険者って感じじゃないすか」
「おお、それはいい考えだ」
そんなわけで俺は相棒を車椅子に座らせて冒険者ギルドに向かう。
相棒は機嫌よさそうにしているのだが。
うん? おかしいぞ。
「おい! 何で元気なお前が車椅子に座ってケガ人の俺がそれを押してるんだよ。ふざけんな!」
「あはは、冗談すよ、冗談」
相棒は立ち上がって、車椅子に水筒やらロープやらいつも持って行く道具を置いた。
「まあ、これで一応荷物を運んでいるってことでいいんじゃないすかね」
「たいした荷物ではないが、まあ、仕方が無いか」
さて、冒険者ギルドに向かうのだが、車椅子を押しているので少し遠回りしながら平坦な道を進む。
すると変なドラゴンの像とその周りには人工の噴水広場みたいなものがある。
また村役場主催のドラゴンテーマパーク関連か。
「あれ、あのドラゴンの像見たことがあるぞ」
「以前、俺っちらが警備員を引き受けた疑似ダンジョンの入口に置いてあったドラゴン像すね。ダンジョンイベントは終了したんで、この噴水に置いたみたいすね」
「確か、口から水を噴き出すんだよな。本当は炎を出してたんだけど危ないとかクレームがついて」
「そうすね」
「でも、今は口からだらだらと少し水が出ているだけだぞ。なんだか情けない。ドラゴンが抗議に来襲しても知らんぞ」
「変すね。壊れたんすかね」
「しょぼくれてるなあ。口から涎を垂れ流しているだけのドラゴンって。観光客も喜ばないだろ」
「まあ、村役場も赤字に苦しんでいて何とか再利用しようとしてるんじゃないすか」
さて、そのしょぼいドラゴン噴水場を横目に冒険者ギルドに向かう。
「ちょっと車椅子はお前にまかせる」
「どうしたんすか。捻挫が治ったんすか」
「いや、あの性格の悪い冒険者ギルドの主人が窓から見ていたら、車椅子を頼りに歩いている俺をバカにするにちがいないからな」
「そんなに悪い人とは思えないすけどねえ」
さて、そんなわけで冒険者ギルドに到着。
そして、依頼されたのはいつも通りのスライム退治だ。
やれやれ。
「おもろーないぞ」
「しょうがないじゃないすか。依頼されただけましっすよ。剣を杖にしているリーダーを見て仕事くれたんだからいい人じゃないすか、ギルドの主人は」
「まあ、大した仕事じゃないからな」
さて、仕事の場所は村の中を流れている用水路。
その横に建っている水車小屋。
「この用水路の水車小屋にスライムが住みついたんで、その退治が仕事っすね」
「なんでこんな場所に水車小屋があるんだ」
「水車が水を汲んで、人工の水路を通じてあのドラゴン噴水場までつながっているんすよ。今はスライムが出現したんで少ししか動かしてないみたいすね」
「ああ、だからあのドラゴン像からは水が噴き出ることもなく涎みたいな感じになってたわけか」
さて、小屋の中に入ろうとしたら、外にもけっこうスライムがいた。
「二手に別れるか。俺は水車小屋の中。外のスライムはお前が退治してくれ」
「うぃっす」
俺は水車小屋に車椅子を押しながら入る。
水を汲む水車の機械の裏を見ると、うむ、奥の方にスライムが何匹かいるぞ。
バシッ! バシッ! バシッ!
簡単な仕事だな。
あっさりとスライムを退治して終わった。
さて、戻ろうとしたら、あれ、車椅子がないぞ。
まさかスライムが盗んだのかと思ったら、いつのまにか小屋の端っこに移動していた。
そんなところに相棒も小屋に入ってきた。
「外のスライムの退治完了したっすよ。あれ、どうしたんすか」
「いや、勝手に車椅子が移動したんだ。おかしいぞ。これは悪の魔法使いの陰謀じゃないのか」
「また妄想モードに入ってますね。職業『悪の魔法使い』の人がいたとして、何でスライム退治ばっかりやってる冴えないハゲデブブサイクの歯抜けの足首捻挫しているおっさんの車椅子を移動させるんすか」
「未来の勇者になる俺に対する嫌がらせじゃないか」
「アホらしいっすね。もう未来なんかないおっさんのくせに」
「うるさいぞ。まだ人生は終わってないぞ」
「スライム退治している時、自分で移動させたんじゃないすか」
「いや、スライムは小屋の奥の方にいたんだよ。車椅子は中に入って、入口の近くに置いておいたんだ」
相棒は小屋の中を見回している。
「あれ、おかしいっすね」
「どうした」
相棒が車椅子を入口近くに置いた。
すると少しずつ移動していく。
「おい、勝手に動いたじゃないか。やっぱり悪の魔法使いの仕業じゃないのか」
「違いますよ、やばいっすよ。さっさと小屋から出ましょう」
相棒が車椅子と一緒に小屋を出て行く。
「どうしたんだよ」
「小屋が斜めになってんすよ。おかしいっすよ。地盤沈下じゃないすかね」
「そうか、悪の魔法使いの仕業ではないのか。つまらん」
俺がのそのそと小屋の外に出ようとすると、突然、入口が上に上がる。いや、小屋全体が斜めになった。
「ウワー!」
小屋の端っこに滑っていく俺。
「大丈夫すか。今、ロープを投げますんで」
相棒が入口からロープを投げ込む。必死になってそれに手を伸ばして掴む俺。何とか引っ張り上げてもらうが、何か重い物が俺の右足首に落ちた。
「イテテ」
どうにかこうにか水車小屋から逃げ出す俺。
水車小屋は地響きをあげて、陥没した土地に飲み込まれていく。
間一髪助かった。
「ふう、危ないとこだった。悪の魔法使いの仕業どころではないな」
「人工の地下水路なんて作ったんで地盤が緩んだんじゃないすかね」
「全く、村役場もドラゴンテーマパーク関連で大赤字だからって、適当に工事しやがって。ウォ!」
「どうしたんすか」
「いや、さっき右足首に物が落ちてきたんだよ、痛いぞ」
「左足首に続いて、右足首もケガっすか」
「やれやれ。俺は不幸だよ」
「まあ、命があったからよかったじゃないすか」
「全く、村役場に文句を言ってやる」
さて、とりあえず宿屋に戻ろうとしたが両足首が痛い。
「しょうがないすね。でも、よかったじゃないすか、車椅子を持ってきて」
俺は相棒が押す車椅子に座って帰ることにした。
何とも情けないことになったものだ。
帰りにドラゴン噴水広場を見る。
口からはもう涎どころか全く水を出してないな。
「やれやれ。水車小屋が壊れて水も来ないし、あのドラゴン像も立ってるだけだ。だいたい、もし勢いよく口から水を噴き出していても面白くないんじゃないか。なんだかどっかの国にそういう像があって有名なんだけど、実際見るとがっかりするって聞いた事があるぞ。このドラゴン像はもう引退させてやったらどうだ」
「そうすね。ついでに両足首ケガしたリーダーも一緒に引退してドラゴンと一緒に年金事務所に勤めたらどうすか」
「なんでドラゴンと机を並べて事務仕事しなきゃならんのだ。まだ、引退はしない。俺はまだ頑張るぞ」
相棒と下らない会話もしつつの、またケガをしてしまったなあと思ってしまう。
この先不安になる俺であった。
普段はスライム退治専門のしょぼいパーティーだ。
朝、起き上がろうとしたのだが、左足首がすごく痛い。
「どうしたんすか、リーダー」
「ううむ、例の捻挫がうまく治らん」
「だいたい年寄りはケガして二、三日後に痛みが強くなるって言いますね」
「うるさいぞ。俺はまだ爺さんではない」
「年寄りじゃなくて、ハゲデブブサイクの歯抜けのおっさんでしたね」
「うるさいぞ」
「で、今日はどうするんすか。休みますか」
「いや、仕事にいくぞ。俺はまだ寝たきり老人になったわけではない」
そういうわけで、俺は剣を杖代わりにして部屋の中をひょこひょこと歩く。
「リーダー、なんだかその姿、本当に情けないすんけど」
「うるさいぞ。俺はまだ元気だ、おっと」
ちょっと前方よろける。
どうも前のめりになってしまうなあ。
「ほら、剣を杖にしても安定感がないっすよ。確かこの宿屋に車椅子があったじゃないすか。それを支えにすればいいんじゃないすか」
「うむ。それはいい考えだ」
俺は車椅子を宿屋の主人に借りて、それを押しながら村道を歩く。
「なかなか具合がいいぞ。足首にあまり負担をかけないで上手く歩ける。でも、これ爺さんみたいだなあ。よく爺さん婆さんが手押し車で歩いているのを見かけるがそれに似ているぞ。ちと恥ずかしいなあ」
「リーダーは今さら外見を気にする必要がないほど、ハゲデブブサイクの歯抜けの情けないおっさんじゃないすか」
「うるさいぞ。これでもまだ現役の冒険者だぞ」
「しょうがないすね。なら、俺っちがその車椅子に座りましょう。ケガ人を運んでいる立派な冒険者って感じじゃないすか」
「おお、それはいい考えだ」
そんなわけで俺は相棒を車椅子に座らせて冒険者ギルドに向かう。
相棒は機嫌よさそうにしているのだが。
うん? おかしいぞ。
「おい! 何で元気なお前が車椅子に座ってケガ人の俺がそれを押してるんだよ。ふざけんな!」
「あはは、冗談すよ、冗談」
相棒は立ち上がって、車椅子に水筒やらロープやらいつも持って行く道具を置いた。
「まあ、これで一応荷物を運んでいるってことでいいんじゃないすかね」
「たいした荷物ではないが、まあ、仕方が無いか」
さて、冒険者ギルドに向かうのだが、車椅子を押しているので少し遠回りしながら平坦な道を進む。
すると変なドラゴンの像とその周りには人工の噴水広場みたいなものがある。
また村役場主催のドラゴンテーマパーク関連か。
「あれ、あのドラゴンの像見たことがあるぞ」
「以前、俺っちらが警備員を引き受けた疑似ダンジョンの入口に置いてあったドラゴン像すね。ダンジョンイベントは終了したんで、この噴水に置いたみたいすね」
「確か、口から水を噴き出すんだよな。本当は炎を出してたんだけど危ないとかクレームがついて」
「そうすね」
「でも、今は口からだらだらと少し水が出ているだけだぞ。なんだか情けない。ドラゴンが抗議に来襲しても知らんぞ」
「変すね。壊れたんすかね」
「しょぼくれてるなあ。口から涎を垂れ流しているだけのドラゴンって。観光客も喜ばないだろ」
「まあ、村役場も赤字に苦しんでいて何とか再利用しようとしてるんじゃないすか」
さて、そのしょぼいドラゴン噴水場を横目に冒険者ギルドに向かう。
「ちょっと車椅子はお前にまかせる」
「どうしたんすか。捻挫が治ったんすか」
「いや、あの性格の悪い冒険者ギルドの主人が窓から見ていたら、車椅子を頼りに歩いている俺をバカにするにちがいないからな」
「そんなに悪い人とは思えないすけどねえ」
さて、そんなわけで冒険者ギルドに到着。
そして、依頼されたのはいつも通りのスライム退治だ。
やれやれ。
「おもろーないぞ」
「しょうがないじゃないすか。依頼されただけましっすよ。剣を杖にしているリーダーを見て仕事くれたんだからいい人じゃないすか、ギルドの主人は」
「まあ、大した仕事じゃないからな」
さて、仕事の場所は村の中を流れている用水路。
その横に建っている水車小屋。
「この用水路の水車小屋にスライムが住みついたんで、その退治が仕事っすね」
「なんでこんな場所に水車小屋があるんだ」
「水車が水を汲んで、人工の水路を通じてあのドラゴン噴水場までつながっているんすよ。今はスライムが出現したんで少ししか動かしてないみたいすね」
「ああ、だからあのドラゴン像からは水が噴き出ることもなく涎みたいな感じになってたわけか」
さて、小屋の中に入ろうとしたら、外にもけっこうスライムがいた。
「二手に別れるか。俺は水車小屋の中。外のスライムはお前が退治してくれ」
「うぃっす」
俺は水車小屋に車椅子を押しながら入る。
水を汲む水車の機械の裏を見ると、うむ、奥の方にスライムが何匹かいるぞ。
バシッ! バシッ! バシッ!
簡単な仕事だな。
あっさりとスライムを退治して終わった。
さて、戻ろうとしたら、あれ、車椅子がないぞ。
まさかスライムが盗んだのかと思ったら、いつのまにか小屋の端っこに移動していた。
そんなところに相棒も小屋に入ってきた。
「外のスライムの退治完了したっすよ。あれ、どうしたんすか」
「いや、勝手に車椅子が移動したんだ。おかしいぞ。これは悪の魔法使いの陰謀じゃないのか」
「また妄想モードに入ってますね。職業『悪の魔法使い』の人がいたとして、何でスライム退治ばっかりやってる冴えないハゲデブブサイクの歯抜けの足首捻挫しているおっさんの車椅子を移動させるんすか」
「未来の勇者になる俺に対する嫌がらせじゃないか」
「アホらしいっすね。もう未来なんかないおっさんのくせに」
「うるさいぞ。まだ人生は終わってないぞ」
「スライム退治している時、自分で移動させたんじゃないすか」
「いや、スライムは小屋の奥の方にいたんだよ。車椅子は中に入って、入口の近くに置いておいたんだ」
相棒は小屋の中を見回している。
「あれ、おかしいっすね」
「どうした」
相棒が車椅子を入口近くに置いた。
すると少しずつ移動していく。
「おい、勝手に動いたじゃないか。やっぱり悪の魔法使いの仕業じゃないのか」
「違いますよ、やばいっすよ。さっさと小屋から出ましょう」
相棒が車椅子と一緒に小屋を出て行く。
「どうしたんだよ」
「小屋が斜めになってんすよ。おかしいっすよ。地盤沈下じゃないすかね」
「そうか、悪の魔法使いの仕業ではないのか。つまらん」
俺がのそのそと小屋の外に出ようとすると、突然、入口が上に上がる。いや、小屋全体が斜めになった。
「ウワー!」
小屋の端っこに滑っていく俺。
「大丈夫すか。今、ロープを投げますんで」
相棒が入口からロープを投げ込む。必死になってそれに手を伸ばして掴む俺。何とか引っ張り上げてもらうが、何か重い物が俺の右足首に落ちた。
「イテテ」
どうにかこうにか水車小屋から逃げ出す俺。
水車小屋は地響きをあげて、陥没した土地に飲み込まれていく。
間一髪助かった。
「ふう、危ないとこだった。悪の魔法使いの仕業どころではないな」
「人工の地下水路なんて作ったんで地盤が緩んだんじゃないすかね」
「全く、村役場もドラゴンテーマパーク関連で大赤字だからって、適当に工事しやがって。ウォ!」
「どうしたんすか」
「いや、さっき右足首に物が落ちてきたんだよ、痛いぞ」
「左足首に続いて、右足首もケガっすか」
「やれやれ。俺は不幸だよ」
「まあ、命があったからよかったじゃないすか」
「全く、村役場に文句を言ってやる」
さて、とりあえず宿屋に戻ろうとしたが両足首が痛い。
「しょうがないすね。でも、よかったじゃないすか、車椅子を持ってきて」
俺は相棒が押す車椅子に座って帰ることにした。
何とも情けないことになったものだ。
帰りにドラゴン噴水広場を見る。
口からはもう涎どころか全く水を出してないな。
「やれやれ。水車小屋が壊れて水も来ないし、あのドラゴン像も立ってるだけだ。だいたい、もし勢いよく口から水を噴き出していても面白くないんじゃないか。なんだかどっかの国にそういう像があって有名なんだけど、実際見るとがっかりするって聞いた事があるぞ。このドラゴン像はもう引退させてやったらどうだ」
「そうすね。ついでに両足首ケガしたリーダーも一緒に引退してドラゴンと一緒に年金事務所に勤めたらどうすか」
「なんでドラゴンと机を並べて事務仕事しなきゃならんのだ。まだ、引退はしない。俺はまだ頑張るぞ」
相棒と下らない会話もしつつの、またケガをしてしまったなあと思ってしまう。
この先不安になる俺であった。
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