スライム退治専門のさえないおっさんの冒険

守 秀斗

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第97話:カラスに助けられる冒険者って情けなくないすか、うるさいぞ

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 俺と相棒、二人組の冒険者パーティー。
 普段はスライム退治専門のしょぼいパーティーだ。

 前回の仕事のせいで俺は両足首がうまく動かなくなった。
 治るまでは宿屋のベッドで寝ているしかない。

「やれやれ。えらいことになった。ところで村役場は補償金を出してくれるんだろうな。あの水車小屋が潰れたのは無茶な水道工事が原因だぞ」
「それが自然現象なんで関係ない、補償金なんて出さないって言ってますね」

「なんだと、全くろくでもない連中だ。アホらしいドラゴンテーマパーク関連には大金を湯水のごとく使ってるくせに。多分、業者とつるんで中抜きもしてるぞ。やれやれ。仕事が出来ん。これではまた食事はパンの端切れじゃないか」
「まあ、役所なんてそんなもんすよ。実際のところ、ハゲデブブサイクの歯抜けのおっさんのリーダの体重で地盤沈下したんじゃないすか」

「そんなことあるわけないだろ」
「冗談すよ。それにケガの方も大したことはないんすよね」
「まあ、少し寝てればまた歩けるだろう」

 しかし、ヒマだ。
 相棒にお願いする。

「おい、悪いがまた受付に行って本でも借りてきてくれないか」
「どんな小説すか」

「冒険小説だな」
「主人公がただ宿屋のベッドで寝ていて、痛い痛いとわめくだけの冒険小説すか」

「なんだ、それは。そんな小説を書く作家は頭が悪いかそれともよっぽどのヒマ人のどっちかだな。アホらしい」
「たまにはそういうアホらしい小説を書きたくなることもあるんじゃないすか。主人公が頓死して別世界に行って、意味も無く無双してあっさり英雄になるとか、そんな小説ばかり書いてきて飽きてきたんすよ」

「作家のことなんて、どうでもいい。とにかく主人公がかっこよく大活躍する小説を借りてきてくれ」
「うぃっす」

 相棒が本を借りてきた。

「じゃあ、俺っちは冒険者ギルドに行ってきますよ。一人でも出来る仕事もあるっしょ」
「うむ、すまんな」

 そんなわけで、俺は今ベッドで本を読んでいる。主人公は最初はスライム退治、そこからどんどんレベルアップして最後にはドラゴン退治して王国の姫と結婚。めでたしめでたしと。

 やれやれ。
 俺もそんな人生を夢見ていたのだが。

 現実はスライム退治ばかり。
 今や体を壊して安宿のベッドで寝転がっているだけだ。
 なんだか空しくなってきたな。

 頭がボーっとしてくるが、眠ることはない。
 両足首が痛いし、他にも体のいろんな場所が故障しているからなあ。

 ちょっと気分を変えたくなった。
 のそのそと歩きながら窓を開ける。

 すると突然、黒い物体が入ってきた。
 なんだ、モンスターかとびっくりしているとカラスだった。

 でも、何で急に入ってきたのかと思ったら、おっと、鷲が上空を旋回しているのが見えた。このカラスを狙っていたのか。俺がボーっと鷲を見ていると、しばらくしてどっかに飛んでいった。

「おい、鷲はどっかへ行ったぞ。お前ももう大丈夫だぞ。さっさと出て行ったらどうだ」

 しかし、カラスは窓際で外の様子を伺っている。
 うむ、鷲がまた襲って来ないか警戒しているようだ。

 カラスってのはかなり頭がいいっていうからな。
 これがハトならさっさと出て行って鷲の餌食か。
 まあ、別にカラスが居ようがどうでもいい。

 俺はまたベッドに寝転ぶ。
 依然としてカラスは窓際にいる。
 窓際のカラスを眺める。

 ふむ、カラスってのは羽は真っ黒かと思いきや、よく見ると少し青みがかったきれいな色をしているな。
 俺は食べ残したパンくずを床に放ってやる。
 するとカラスがそれをうまそうに食べている。

 ヒマなんで、残っているのは全部あげた。
 また、食堂で貰ってくればいいからなあ。

「おい、パンはもう全部あげた。もうないぞ」

 俺がカラスに声をかけると、そのカラスは窓から出て行った。
 人間の言葉がわかるのか。
 はあ~それにしてもヒマだなあ。

 いや、これではいかん。
 捻挫もだいぶよくなってきたのだ。

 多少は歩行訓練するか。
 体がなまってしまう。

 俺はのそのそと部屋を出る。
 一階まで剣を杖の代わりにして下りていく。

 まるで爺さんだが仕方が無い。
 一階まで下りる。

 なんだか疲れた。
 少し休むか。

 さて、一階のロビーでくつろぐ。
 ヒマだ。

 しかし、人生これでいいのだろうか。
 ヒマだと頭も呆けていくばかりだ。
 やはり冒険者年金事務所に転職すべきであろうか。

 なんてことを考えていると、宿屋の前の道でなにやら騒ぎが起きている。

 のそのそと歩きながら宿屋の玄関を出るとお爺さんが、なにやらチンピラっぽい連中に絡まれてるぞ。

「おい、今、肩をぶつけやがって。慰謝料出せよ」
「わしの方からじゃなくて、あんたがぶつかってきたんじゃないか!」

 よくある平凡なカツアゲの光景だな。
 まあ、ここは冒険者たる俺が助けてやるか。

「おい、お前ら、何をしている」

 ドスドスと足音を立てて近づく。
 顔つきだけは怖い俺。

 チンピラどもが警戒している。
 ふむ、俺の冒険者たる貫禄に怖気づいたか、情けない奴らだ。

「年寄りは大事にしろ。さっさと立ち去らないとこの剣の錆びにしてやるぞって……ウォ!」

 腰に激痛。
 うう、ぎっくり腰だ。
 思わず、地面に転んでしまう。

「何だ、このおっさんは。見掛け倒しが。ボコってやろうぜ」

 チンピラどもが俺を袋叩きにする。
 くそ、この腰の痛みがなければこんな連中あっと言う間にボコボコにしてやれるのに。
 すると、チンピラどもが悲鳴をあげる。

「ウワア!」

 なんだ、急に攻撃がおさまった。
 チンピラどもが何やら騒いでいる。

「なんだ、このカラスどもは」

 大勢のカラスがチンピラの頭めがけてくちばしで何度も攻撃しているぞ。
 たまらなくなったのかチンピラたちが逃げて行った。

「おい、あんた、大丈夫かい」

 爺さんに支えられて何とか立ち上がる。
 カラスたちは去っていく。

 その時、一羽のカラスが俺の方を向いて鳴いた。
 あれ、さっき俺の部屋に入ってきたカラスか。
 カラスって区別つかないけど。

「まあ、とにかくチンピラどもは逃げてった。助かったよ。あんたはカラスを操れる魔法使いかなんかなのか」
「ああ、いやあ……」
「まあ、とにかく助けてくれてありがとう」

 老人は俺にお礼を言って去って行った。

……………………………………………………

 仕事を終えて戻ってきた相棒にさきほどの件を話す。

「カラスってかなり頭がいいみたいっすね。ある村人が一羽のカラスを虐めてついには木に吊るして殺しちゃったんすよ。原因は家の周りに糞を落とすのに腹を立てたってことみたいっすけど。そしたら、翌日から大量のカラスが復讐に来たみたいっすよ。それもそのカラスを殺した村人しか攻撃しない。人間の顔を覚えられるみたいっすね」
「ふむ、では逆の場合もありえるわけか。エサをあげた俺のことを覚えていて仲間を呼んで助けてくれたのか。これはカラスたちに感謝しなくてはいかんな」

「しかし、カラスに助けられる冒険者って情けなくないすか」
「うるさいぞ」

 とは言うものの情けないことは確かだな。
 この体の故障、何とかならんかな。
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