スライム退治専門のさえないおっさんの冒険

守 秀斗

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第106話:おお、宝箱だ……って、違うな、ただの木の箱だな、なんか入ってるんすか

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 俺と相棒、二人組の冒険者パーティー。
 普段はスライム退治専門のしょぼいパーティーだ。

 俺は最近、体調不良で清掃や警備員なんぞをやっていたが、今日は調子がいいぞ。

「よし、今日は冒険に出るぞ」
「でも、結局スライム退治じゃないすかね」

「まあ、これが偉大な冒険への第一歩なのだ」
「また、同じ事を言ってますね。人生の最後の第一歩って感じっすけどね、リーダーは」
「うるさいぞ」

 さて、今日の仕事の場所は村の近くの丘にあるダンジョンだ。

「よし、久々のダンジョンだ! 冒険だぞ! やる気が出るぞ!」

 俺はダンジョンの入口の前で剣をブンブンと振り回す。

「ちょっと、危険だからやめて下さいすっよ、それ。ハゲデブブサイクのおっさんがカッコ悪く剣を振り回していて、不審人物として通報されそうっすよ」
「うるさいぞ。とにかく今日の俺は元気なのだ。スライム、ゴブリン、コボルト、オークにオーガ、片っ端からダンジョンで倒してやるぞ」
「何言ってんすか。何で村のすぐ近くにそんなに大勢のモンスターが出現するダンジョンがあるんすか」

 しかし、目の前にはあまり大きくないけど、穴が開いている。

「とにかく入るぞ。いいか、冒険者たるもの一瞬の気の緩みが死に直結するんだ。常に緊張して周りを注意しながら進んでいくぞ」
「リーダーの場合、緊張し過ぎで脳内出血であっさり死にそうっすけどね」
「うるさいぞ」

 さて、ダンジョンに一歩入ると、さっそくスライムが襲って来た。

 バシッ!

 あっさりとスライムを叩きのめす。

「どうだ、俺はまだ冒険者としてやっていけるぞ」
「まあ、相手はスライムっすけどねえ」

「スライムだろうが何だろうがモンスターだ。よし、次はゴブリンか……って、おいおい、五歩くらい歩いたら行き止まりだぞ」
「だから村の近くにダンジョンなんてあるわけないっしょ」

 携帯ランプで中を照らすがさっきのスライムが一匹いただけだ。

「なんだよ、あの性格の悪い冒険者ギルドの主人め。また俺をからかいやがったのか。いや、まてよ、実はあいつがラスボスじゃないのか。勇者の俺に下らない仕事をさせて精神的にまいらせようという計画ではないのか」
「なにが勇者なんすか。ハゲデブブサイクの腰痛膝痛肩こり歯抜けのリュウマチ持ちの慢性膵炎を患ってるおっさんのくせに」

「うるさいぞ。しかし、あのギルドの主人なんだが、いかにも悪そうな顔をしているぞ。ラスボスの魔王にぴったりだ」
「悪人顔はリーダーも負けてませんよって、前にも言いましたっすね。それも話しの序盤で勇者に絡むチンピラであっさり成敗されるなさけない役どころっすね」
「うるさいぞ」

「要するにリハビリの一環としてスライム退治をまかせただけじゃないすか、ギルドの主人は。あんな怖い顔してますけど、リーダーのことは心配してんすよ。いつ倒れるかわからないから楽な仕事を回してくれてんすよ」
「うるさいぞ。俺はまだ現役バリバリの冒険者なのだ。おっと……イテテ」

 膝に痺れが。
 思わず、ダンジョンだか単なる土の穴かしらんが手を壁についてしまう。

「ほら、まだ体調は万全じゃないすよ」
「ううむ。ベッドで寝てばかりだったので、少し筋肉が落ちているだけだ、時期に回復する……あれ、なんかおかしいぞ」

 壁が柔らかい。

「おい、誰かがここに何か隠しているぞ。まさか宝箱か」
「だから、何で村の近くのなんてこともない穴に宝箱があるんすか」
「いや、わざと村の近くに隠す。灯台下暗しってわけだ」

 俺は壁の土を剣の鞘で彫ってみる。

「おお、宝箱だ……って、違うな、ただの木の箱だな」
「なんか入ってるんすか」

 俺が箱を開けてみる。

「うわ、骨がどっさりだ。おい、これはモンスターではなく誰か村に猟奇殺人者がいて、この骨は犠牲者のものじゃないのか」

 思わず盛り上がる俺。
 相手がモンスターではなくても、犯罪者なら冒険者として捕まえなくてはならない。

「うむ、この猟奇事件が大冒険へとつながるのだな」
「またアホな妄想をしてますね。よくその骨を見て下さいよ。ニワトリの骨っすよ」
「なんだよ、ニワトリの骨を捨てただけかよ。あれ、敷き紙が巻きついているな」

 それを見ると村の中にあるレストランの名前が書いてあった。
 
「なんでこんなとこに隠したんだろう」
「宿屋の主人に聞いたんすけど、最近、ゴミの回収にお金がかかるようになったみたいっすね」

「なんだと。おいおい、ちゃんと村役場に税金はおさめてんだろ。それとは別にまた金を取るのかよ」
「例のドラゴンテーマパークの失敗で村役場も財政難みたいっすね」
「だからこんなことに捨てたんだな。せこいぞ、レストラン。不法投棄だぞ……って、あれ」

 俺は穴の中をそこかしこ調べる。

「おいおい、どんどんいろんなゴミが出てきたぞ」
「どうやらみんなゴミ回収料金を出すのが嫌でここに捨ててるようっすね」

「つーか、山の奥に捨てる奴もいるんじゃないのか」
「ゴミ回収料金徴収は失敗じゃないすかね。これじゃあ、村の周りはゴミだらけになりまっすよ」
「うむ、村役場へ連絡するか」

……………………………………………………

 後日。

「何だか、例のゴミ回収料金徴収はやめたみたいっすね」
「当たり前だ。全く、くだらんこと新たに実施したりするからかえって世の中おかしくなるのだ」

「考えた職員は『くっきりした姿が見えているわけではないけど、おぼろげに浮かんできたんです。ゴミ回収料金という文字が』とか言ってたみたいっすね」
「何言ってるかわからんが、本人はいいアイデアを思い付いたと働いているつもりだったんだろ」

「無能な働き者が村役場にいたんすかね」
「そうだろうな」

「俺っちらも無能なんで妙に働くのはよした方がいいっすね」
「おいおい、働かなきゃ餓死するだろが」

「そうすね。まあ、スライム退治程度でいいんじゃないすかね。妙にドラゴンを退治とか妄想するのは無能な働き者ってことすかね」
「うるさいぞ。嫌味を言うな」

 そう、俺は有能な働き者になってやるぞ。
 そして、ドラゴンを退治するのだ。
 って、無理かな。

 いや、まだあきらめんぞ。
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