男の娘と暮らす

守 秀斗

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第9話:一乗寺君に抱き着かれて眠るだけ

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 その夜。

 食事が終わって、いつもように一乗寺君が俺のベッドに入って来る。
 もう、全然気にならない。
 すっかり慣れた。

 すぐに寝ようとすると、一乗寺君が俺の腕に抱き着きながら話しかけてきた。

「……あの、さっきの母のことについて話していいですか」
「ああ、いいけど」

 でも、また黙ってしまう一乗寺君。

「うーん、話したくないなら、無理に話さなくていいけど」
「……いえ、聞いて下さい。あの、母がおかしくなったのって、僕と兄と父の関係のせいなんです」
「どういう関係なんだ」

「……あの、小学生の頃、毎日、高校生の兄と父に乱暴されていて」
「乱暴って、殴られてたの。家庭内暴力か」

 また黙ってしまう一乗寺君。
 なかなか、喋ろうとしない。

 どうしたのかなあと思っていると、ようやく話し始めた。

「乱暴って、その、性行為です」
「は? レイプされてたってことか」
「……そうです」

 小学生の弟を、父と兄がレイプって。
 そんなことあるのか。

「その……兄とはどれくらい年が離れてたの」
「五才です」

「高校生の兄貴と親父が君を乱暴してたのか。つーか、普通、親父は止めないか」
「いえ、二人に同時に乱暴されました」

「え、同時って?」
「僕が裸で四つん這いになって、後ろの穴は兄、口は父が、その乱暴してきて、それ以外にもいろんなことされました」

 その光景を想像する。
 ありえるのかねえ。

 AVとかではそうゆうプレイがあるけど、あれは商売だからなあ。
 実際の家族の間でそんなことするのか。

 本当なのかなあ。

「あの、君、話を作ってないよねえ」
「こんなこと作れませんよ」

 一乗寺君がちょっと怒ったような感じで言った。

「お母さんは止めに入らなかったの」
「最初は止めに入ったんですけど、父に殴られて、後はぼんやりと見てました」

「それいつ頃の話しなんだ」
「小学五年生からです。毎日のように乱暴されてました。もう、嫌で仕方が無かったです。ただ、小学六年の時に父の運転する自動車が事故を起こして、同乗していた兄と一緒に亡くなって、そんなことは終わったんです」

 まだ、十八才の一乗寺君の壮絶な人生を聞いて、言葉も出ないなあ。

「……うーん、でも、乱暴していた父と兄がいなくなって、とりあえず平穏になったってことかな」
「いえ、母は僕のことを恨んでました」

「何で君のことを恨むんだよ」
「僕が父と兄をおかしくさせたんだって。僕の方から誘ったとか言うようになったんです。父を僕が寝取ったって言い始めました」

 そんなNTRモノは聞いた事がないぞ。
 そして、一乗寺君が涙を流し始める。

「僕は母に嫌われていたんですよ。産むつもりなんかなかった、避妊に失敗したんだって言われました。男のくせに女みたいで気持ち悪いとか、お前を産んだから家庭がメチャクチャになったんだって。交通事故もお前が父の頭をおかしくさせたからってなじるんです。父が死んで経済的にも苦しくなったって。さっさと死ねって言われたんです」

「いや、それは本心ではないんじゃないの。その……あまりにも衝撃的な光景を見たんで、何て言うか、お母さんはおかしくなったって言うか」
「……そうでしょうか……でも、今日もなじられたし……」

 うーん、それは君が睡眠薬を盗んだからじゃないのって言おうとしたが、一乗寺君が泣いているのでやめた。

 とにかく可哀想すぎるなあ。
 俺の家庭環境とはえらい違いだよなあ。

 こんなひどい目に遭ってる小学生もいたわけだ。
 人生いろいろだ。

 でも、一乗寺君、そんなひどい目に遭ってるわりには、素直でいい女の子なんだよなあ。
 いや、男の娘か。

「えーと、けど、とりあえずお母さんについては、その、病院にまかせて、少しでも治っていくのを期待するしかないと思うよ。いずれは落ち着くのでは。そう考えるしかないんじゃないかな」
「そうなんですけど、悪い方へいく場合もありますよね」

「うーん、そうなんだけど」
「……もう、僕はひとりぼっちなんです。清水さんも友人だけど、女性の恋人がいるし、それに清水さんの家族には嫌われてるし。もう、僕には頼れる人がいないんですよ。あの、それで……」

「それで、なに」
「お願いです、当分の間、この家に居候したいんです。僕、一人だと不安でしょうがないんです。お願いいたします、山本さん」

 泣きながら俺の腕に抱き着いてくる一乗寺君。
 うーん、これが女性ならなあ。

 すごい美人ではあるし。
 でも、男の娘かあ。

 かわいそうではあるがなあ。
 でも、一乗寺君が居ても、今のところ特に困ったことはないなあ。

 美味しい料理を作ってくれて、掃除や洗濯もしてくれるし。
 本人もちゃんとバイトしているようだしね。

 面倒なことは佐島って奴に殴られたくらいか。
 その佐島も病院送りになったし。

「うーん……まあ、わかったよ。当分、この家に居てもいいよ」
「ありがとうございます……あの、このまま抱き着いていいですか」
「ああ、いいよ」

 いつもはちょっと腕を掴むくらいなのだが、今夜はぎゅうっと体を押し付けてくる感じ。
 まあ、しょうがないかと思っていると、腕に一乗寺君のなんか胸のあたりから軟らかい感触が。そう言えば、最初の日、裸の一乗寺君の胸が少し大きかったような気がしたなあ。

「あの、失礼なことを聞くようだけど、君は、その、女性ホルモン剤みたいなのとか打ってるのか。そういうの、俺、詳しくないけどさあ」
「いえ、何もしてません」

「なんて言うか、その、君は胸が少しあるみたいだけど」
「ああ、これ中学生くらいから少し大きくなっていったんです。ほんの少しですけど。自分でもよくわからないです。ホルモンバランスの異常なのかどうかも。同級生にからかわれて嫌な思いをしました」
「ふーん、まあ、俺もそこら辺、よくわからないけど」

 一乗寺君って、なんだか体つきが女性っぽいんだよなあ。
 そして、顔はすごい美人。
 女に生まれてくればよかったのにと、また思ってしまった。

「あ、あの、やっぱり邪魔ですか……眠りの邪魔に」
「えーと、いや、いいよ、そのままで」

 そして、目を瞑った一乗寺君の顔を見ると、本当に美人だと思ってしまうなあ。
 男でいるのはもったいないくらいだな。

 女性だったら、俺、どうなっていただろう。

 でも、俺はEDだしな。
 どうなってもないな。

 あれ、何かまた下半身が少し疼いたぞ。
 え、相手は男の娘だぞ、いいのか、俺。

 でも、すぐにしぼんだ。
 やれやれだね。

 でも、やっぱり俺はあちらの世界の住民ではないってことかな。
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