スコップは多分武器ではない……

モモん

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第一章

第11話 足が生えたって……カエルじゃありませんから!

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 ギルマスに挨拶をと思ったが、不在だった。
 商業ギルドにも寄って、買取の代金を受け取る。
 これで、マジックバッグの中の金貨は1万枚を楽に超えている。
「もう、城の仕事はやめてよさそうだな。」
 だが、仕事らしい仕事はしていない。
「そっちの仕事も少しやっておくか。」

 俺は第二小隊と第三小隊を訪れ、小隊長に面会を頼んだ。
 仮設宿舎の会議室には、両方の小隊長と各3名の班長が集まってくれた。
「急に押しかけてすみません。」
「まあ、今のところ出動要請は来ていないので大丈夫ですよ。」
「ですが、国務大臣の補佐官様が何のご用ですかね?」
「実は、武器となる魔道具を開発したのでお試しいただこうと思いまして。」
 俺はマジックバッグから人数分の自動小銃を取り出して手渡した。
 マジックバッグについても簡単に説明しておいた。
「ちょっと強力な武器ですので、取り扱いには十分注意してください。」
「補佐官殿は大袈裟ですな。」
 アハハとほかの同席者も賛同する。
 俺は、Aランクの冒険者カードを提示した。
「10日程前に初めて冒険者登録をした俺が、女性の冒険者と二人でレアルのB6ダンジョンに潜って現在はAランクになっています。魔物の討伐には、ほとんどこの自動小銃を使いました。」
 同席者の侮蔑したような笑みが消えた。
「サイクロプスやアトラス、オーク・オーガ、上級悪魔のアギラス程度はこれで撃退しました。」
「まさか……。」
「Aランク冒険者のパーティーで討伐するレベルだぞ。」
「同行した女性冒険者というのは、俺と同じ内務大臣付きのライラというエルフのスタッフです。」
「ライラなら知っているが……。」
「その二人でB6は無理だろ、どう考えても。」
「昨日、B6ダンジョンで討伐した魔物をギルドで買い取ってもらいましたから、数日のうちにアークドラゴンの肉が出回ると思いますよ。」
「アークドラゴンまでこれで?」
「装甲の堅いところは弾かれてしまいましたが、目とか口の中、腹などの柔らかい箇所はこれでいけますね。」
「それは、二人でこの威力を確認してきたという……。」
「そういうことです。」
「だが、なぜ第一小隊には?」
「皆さんの方が前線に出ることが多いと聞きましたので、第一小隊にはまだ話していません。」
「それは、事実だが……。」
「第一小隊に何か言われても無視していいですよ。あくまでも、私からの試験的な貸与という形をとりますからね。」
「そんなことをして大丈夫なのか?」
「国と契約してはいますが、特に具体的な内容は決まっていません。国にメリットがあれば何の問題もありませんよ。クビになっても冒険者で生活できますからね。」
「Aランクならそうなるだろうが……。」
「しかも、開発にあたって国の資源は一切使っていないですからね。」
「個人で魔道具を……開発?」
「室内では危険なので、外で試射しましょうか。」
 俺は全員を引き連れて外に出た。
 操作はいたって簡単である。火か氷をレバーで選択し、ロックを外して引き金を引くだけだ。
 訓練施設内にある太さ50cmほどの木に向かって引き金を引く。
 パシュッパシュッと発射された氷の小さな塊は、連射によって簡単に幹を削り倒壊した。
「「「す、すげえ!」」」全員の歓声が重なる。
「打ち終わったらすぐにロックをして、決して銃口を人に向けないこと。これだけは徹底してください。」
 両小隊に、残り6丁の自動小銃を渡して俺は訓練場を辞した。
 これがどう展開するか楽しみである。

 夕方になり、薬屋へ戻った俺を恭しく迎えてくれたのはイライザだった。
「お帰りなさいませ、ご主人様。」
「どうしたんですか一体。」
「約束通り、一生ご主人様にお仕えいたします。」
「やめてくださいよ。冗談なんですから。」
「いった通りでしょ、お姉ちゃん。」
「いえ、エルフは自分の言葉に責任を持たなくてはなりません。」
「じゃあ、奴隷を解放します。これでいいでしょ。」
「ホントに?」
「はい。二言はありません。」
「私は奴隷でもいいんだけどな。」
「よくありません!というか、足は生えたんですね。」
「その言い方……、カエルみたいで嫌かも。」
「ススム、つま先まで完成したのよ。さっきまで二人で抱き合ってたの。泣きながら。」
「それよりも、いったいどういう事なの?マジックバッグにナイフにこのシート。常識的にはあり得ないことだわ。」
「それをいったら、この世界には常識的にあり得ないことが沢山起きていますよ。」
「えっ?」
「何もないところに、世界の元となる物質が生まれたこと。それが集まって、数多くの元素が生まれたこと。太陽が程よい温度であること。」
「でも、それって神様が……。」
「では、これらも神様が与えてくれた奇跡だと考えればいいんじゃないでしょうか。」
「ホントなの?」
「きっかけを作ったのは俺かもしれませんが、与えてくれたのは神様だと思いますよ。」
「うん。私もススムのいう通りだと思うな。」
「もう一度、歩き出すための足を……神様が……。」
 そう、きっかけや理由なんてどうでもいいのかもしれない。大切なのは現実を受け入れること……なんだと思う。
 エルフの姉妹は、その夜何度も抱き合って泣いていた。

 ああ、カレーが……カレーライスが食べたい。
 唐突に浮かんだ欲求だった。
 野菜はある。肉もある。ルーと米は掘り出せば手に入る。
 48時間我慢すれば実現可能な欲求なのだが、なぜだかそれを実行することに抵抗があった。
 ナンもどきにすれば、ルーだけで事足りるし、スープにしてもよいのだ。だから、ルーだけあればいい。

 だが、翌朝掘り出したのは空を飛ぶキックボードが20台入った木箱だった。
「何なの、これは?」
「フライングキックボード。空を飛ぶ靴の代わりだよ。」
「速度はどれくらい出るのかな?」
「最高で時速40kmに設定してある。」
「何に使うの?」
「森に薬草を採りに行ったり、町の中を移動したりするのに便利かなって。」
「町の中で乗り回したりできるのかな?僕ちゃん。」
「大騒ぎになるかもしれませんね。お姉さん。」
「少なくとも、町から町へ移動するような乗り物ではありませんね。」
「エルフの里って、どれくらい離れてるの?」
「そうね、馬車で一日くらいで着くかしら。」
「そうなると400kmくらいか……、これじゃあちょっと無理っぽいな。」
「そうね。」
「まあ、使う機会があるかもしれないから、マジックバッグに入れておいてよ。」
 ああ、カレールーにしておけばよかった。

 その次の日には、空飛ぶ魔導車にしておいた。
 前回掘り出したものと比べて、クッション性を高めて、座り心地をよくしてある。
 下面で重力を制御して浮かび上がり、風魔法で前進する。最高速度は時速900km。
 音速を超えると、衝撃波とか空気の圧縮による発熱とかいろいろと問題があると聞いたので、そこは抑えてある。
 ただ、風魔法による加速なので、最高速度に達するのに少し時間がかかったりする。
 少しでも噴出の力を大きくするため、車両後部にジェットエンジン並みの噴出孔を二つ設置してある。当然、結界と破壊不能も付与している。
 なにわともあれ、これでエルフの里へ行く手段ができた。

「じゃあ、明日出かけようか。」
「どこへですか?」
「君たちの故郷へ。」
「なんで?」
「将来的な移住について相談しに。」
「エルフは封建的だから、土地を捨てるのは無理だと思うけどな。」
「家屋や畑も持っていけるから、土地を捨てるのとは違うと思うけど。それに東にある島だから、海の幸が豊富にある。」
「エルフは山の民だよ。」
「新しい植物に出会うことができる。」
「だから、保守的なんだってば。」
「うううっ、……フルーツの王様ともいうべき、メロンに出会うことができる。」
「なにそれ?」

【あとがき】
 エルフにはメロンが似合うと思うんですよね。私だけでしょうか。
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