スキル買います

モモん

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第八章

第103話 姉として

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「名前はマリアでいいのね?」

「はい。」

「それで、何故襲われたの?」

 マリアは俯いて首を横に振った。
 分からないのならば言葉にするだろう。
 つまり、言えない、もしくは言いたくないのだろう。

「うん、言えないのならば別にいいわ。ただね、ここにいるレナード店長は危険を冒してあなたを保護し、治療したの。それは理解して欲しいところね。」

「……はい。ありがとうございます。」

 少女は俯いたまま礼をいう。

「それで、帰る場所はあるのかしら?身なりもボロボロだったみたいだけど。」

「それは、仲間が……」

「夕べ、あちこちで襲撃事件があったみたいよ。一人で出歩いて大丈夫なの?」

「……分かりません。」

「なあマリアちゃん。あんたを襲ったのは貴族の多分息子たちだろう。」

「……」

「このレイミ・ベルナール様は確かにお貴族様だけどな、そもそもがこの国の人じゃないんだよ。」

「えっ?」

「ほら、南の山の向こうの国、デカルト帝国の人なんだよ。だから嬢ちゃんがこの国の貴族と何かあったとしても、そんなのは関係ない。気にしなくていいんだぜ。」

「それは……」

「そこは後で考えてもらえばいいわ。ねえマリア、あなたって妹とかいないかしら?」

「えっ?」

「年齢は6才くらいなんだけど、あなたによく似た女の子がいるの。イブっていうんだけど、奴隷だったから本当の名前なのかは分からないわ。」

「イブ……」

 呟いたマリアの目に涙が浮かび、それは一気に溢れて頬を伝う。

「思い当る子がいるみたいね。」

「こ、ここにいるんですか?」

「まだ寝ているのよ。あなたと同じで、昨日襲撃にあったの。」

「えっ!大丈夫なんですか?」

「命に別条はないわ。ただね、奴隷として運ばれていた時に魔物に襲われたの。生きていたのが奇蹟だと思ったくらいよ。」

「そんな……」

「その時に両目と左腕を失ってしまったの。やっと、普通に暮らせるくらいにはなったんだけど、見て驚かないであげてね。」

「どうして……」

 再び、マリアの目から涙が溢れてくる。

「奴隷商によれば、オオカミ型の魔物に襲われたらしいわ。」

 5分ほど泣いていたマリアだったが、落ち着きを取り戻して自分の事を話し出した。

「妹の名前はイーヴィといいます。別れてしまったのは3才の時で、うまく発音の出来なかった妹は、自分の事をイブと呼んでいました。」

「ウフフッ、イブが正しい名前じゃなかったのね。」

「私とイーヴィは北にあるヤーマ族のトカラという村に生まれました。」

「トカラ?聞いたことがないわね。」

「4年前にラーザン伯爵の襲撃を受け、私たちの両親を含めて多くの人たちが殺され、残った者たちは捕まって奴隷にされたんです。」

「最近までそんな事をしていたなんて知らなかったわ。もっと前の事だと思ってた。本当にヒラヤマ一族はどうしようもないわね。」

「……今年、レイミ様が皇帝の所業を咎めてくださり、新しい政府も立ち上げてくださいました。それは、本当に感謝しています。おかげで、私を始めとして多くの同胞が奴隷の呪縛から開放されました。本当にありがとうございます。」

「なるほど。奴隷開放の呼びかけに応じてくれた貴族もいたんですね。」

「はい。……でも、まだラーザン領やこの王都には多くの同胞が開放されず、奴隷として縛られたままなんです。それだけではなく、開放されたヤーマ族を良く思わない貴族も多くて……」

「えっ、まさかそれで殺されそうになったの?」

「……私にはヤーマ族の巫女としてのスキルがあるんです。このスキルを使いこなせるようになれば、幻想の巨人を呼び出せるようになって、同胞を守る力にできるらしいんです。多分、それを知られて殺されようと……」

「巫女ねえ……あらっ?スキルって共有じゃないの。これが巫女のスキル?」

「はい。私の家は巫女の家系で、殆どの女にはこの能力が備わるそうです。」

「そうなのね。それならば、このスキルはイブも持っているから、あなたの妹で間違いないかもしれないわね。」

「ほ、本当ですか!」

「でも、イブには家族の記憶はないみたいなの。だから、あなたの事を思い出せなくてもガッカリしないであげてね。」

「勿論です!」

「あとは幻想の巨人ね。他に分かっている事はないのかしら?」

「……レイミ様は私たちの命の恩人。それに、同胞たちも救って頂きました。他には話さないでくれますか?」

「勿論よ。何かあるのね!」

 マリアはレイミに近づいて耳打ちした。

「幻想の巨人を呼び出すには、この精霊石を使うのだと聞いています。」

 マリアはクビにかけていたヒモを外してレイミにみせた。
 そこには2cm程の白い勾玉がぶら下がっていた。

「母はこの精霊石とスキルを使って、イフリート様という炎の巨人を呼び出したと聞いています。」

「共有のスキル……精霊石……イフリート。なんとなく仕組みが見えてきたわね。」

「えっ?」

「でも、あなたは何年も奴隷だったんでしょ。よくそんな宝石を持っていられたわね?」

「母様の持っていた精霊石は多分盗られてしまったと思います。これは、今年一緒になった同胞が渡してくれたんです。」

「そうだったのね。お母様の精霊石って、もう少し緑色じゃなかった?」

「っ!何故ご存じなんですか!」

「と、特別な勾玉っていうのはそういうモノなのよ。」

 記憶にあるのはヒスイの勾玉なのだとは言えない。

「でも、鑑定したけど、これは大理石でできた勾玉よ。しかも最近作られたモノね。」

「えっ?」

「それにコレ、呪いがかかっているわよ。」

「エエッ!」

「どこに逃げても見つかるとか感じた事はないのかな?」

「……」

 マリアは小さく頷いた。

「やっぱりね。ちょっと待って……」

 レイミはヒスイの勾玉と精霊石というワードをイメージして探査+を発動した。

「うん、貴族街の中にいくつか精霊石らしいのがあるわね。」

「えっ?」

「城の……ここって宝物庫かな。あとは貴族の屋敷にも1つ、いえ2つあるわね。」

「何でそんな事が分かるんですか?」

「探査っていうスキルで、周囲の魔物とかモノを探す事ができるのよ。まあいいわ。とりあえずこれ、解呪しちゃうわね。」

「そんな事までできるんですか!」

「イブにも色々なスキルを覚えさせてあるのよ。だから、目が視えなくても周りの様子は分かるし、左手が使えなくてもそこまで不便には感じていないと思うのよね。」

「何でそんな事が……」

「これ、スキル魔石っていうんだけど、魔石の中にスキルの情報が封じ込められているの。これを錬金のスキルで開放してやると、そのスキルを覚える事ができるのよ。便利でしょ。」

「便利っていうか、そんなものが流通したら、世の中が代わっちゃうんじゃないですか!」

「でも、そう簡単には手に入らないのよね。」

「それはそうでしょ!私、聞いたことありませんし、お屋敷の坊ちゃんとか、そんなのがあったら人生変わってますよ!望むスキルがないからって、どれだけ苦しんでおられたか……」

「そうでしょうね。スキルがあれば仕事に就くのも有利だし、可能性は広がるわよね。でも、邪な考えをもった人が、強いスキルを持ったらどうかしら?例えば夕べの襲撃者が、強力な斬撃のスキルを持っていたら。」

「私……死んでました……」

「まあ、死なないようにスキルや魔道具で身を守る事もできるし、そういうのはどんどん普及させたいと思うんだけど、悪いヤツが身を守るのに使うと被害が広がっちゃうのよね。だから、相手をよく見て、与える力も厳選しないとね。」

「何だか、私には想像できません……」


【あとがき】
 有難いことにハートが1000超えました。
 心からお礼と感謝を申し上げます。 
 次回、姉妹の再会です。
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