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第十二章
第222話 アポロン
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「では、この国にも神殿を建てて敬うから加護が欲しいと言うのだな?」
「それって、逆の発想よね。本来は敬う実績を作った民に、私たちが何らかの恩恵をもたらすかもしれない。そういうレベルの話しよ。」
「で、ですが、いきなり神様だと言っても、民は神様方を敬うというのは少し……」
「どうも、国の祭りごとを行う方というのは打算的ですね。別に私たちはこの国で信仰を得ようとは思っていません。昨日だって盲目の少女を治療しましたけど、対価など求めておりませんよ。」
「それは……」
「こうしたら、こう返ってくるのが当たり前だ。ヒト同士の意識を、神との関係に持ち込もうとする時点で間違いですよね。」
「だが、それがヒトの本心だろう。」
「そんな者に敬われたくはないな。確かに信仰心は足りていないが、それは魔力で補えると分かった。信仰心も、ジェルバで祈ってくれればそのうち戻るであろうよ。」
「そんな……」
「別に加護を与えずとも、これこの程度は知識と魔法でできてしまう。」
アポロンは自分で作ったワイングラスをテーブルに並べていった。
「こ、これは……」
「物質の性質を知っていれば、このように様々な色のガラスが生みだせるんだ。これは加護とか必要としない。単に知識があれば可能な技術だ。」
「濃い緑のガラスを作る技術は伝わっているが、青やムラサキ、赤などはどうやって……」
「これが神などに頼らない、ヒトの研究と知識だよ。ほら、ここまで透明度の高いグラスなど、君たちの技術じゃムリなんじゃないかな。」
「そ、その技術をお譲りいただく事は……」
「俺を信仰してくれる者から頼まれれば、教えない事もない。だが、お前たちは対価で手に入れようとするのだろう。そういう国に留まる事すら気分が悪い。」
「ではどうすれば?」
「自分たちで研究してみれば良いだろう。何年もかけて色々な方法を試せば良いだけの事。」
「いや、他から教えてもらえるのなら、その方が手っ取り早いじゃないですか。」
「まあ、好きにすればよいだろう。俺も、まぐれで誰かに教えるやもしれん。」
こうして、話し合いは終わり、レイミたちはボルダーの町を楽しんでいる。
「おっ、竪琴か久しいな。」
「そういえば、アポロン様は音楽の神でもありましたよね。」
「そうね。詩歌や医術の神でもあったわね。」
「医術ってのは、たまたま転んだ子供の怪我を癒してやった時に関連付けられただけだ。」
「私だって、純潔の女神とかいうくせに、豊穣と出産の女神とか呼ばれるし、ホントにいい加減なものですわ。」
「でも、久しぶりにアポロンの歌を聞いてみたいですね。」
「うっ、そんな期待をするな……」
「ほう、面白そうじゃな。どれ、一つワシが買ってやろう。」
「や、やめろ爺さん。即興で弾くっつっても、チューニングが大変なんだよ。」
「あら、チューニングの済んでいるモノもございましてよ。」
「えっ?」
「試しにお手に取ってみてくださいな。」
アポロンは店の店員に連れ込まれてしまった。
娘から手渡された竪琴をアポロンは端から弦を鳴らして調律を確認する。
「調律が多少違うが、まあ、これなら弾けるだろう。1節だけだからな。」
そう言うとアポロンは竪琴をポロンポロンと奏ではじめた。
「あっ、カノンね。」
「ああ。この主旋律にはまって、ひところこればかり弾いていたな。」
アポロンの弾く竪琴に惹かれ、店の前で通行人が立ち止まり、いつのまにか聴衆が集まっていた。
その演奏が、突然終わりを告げる。
聴衆から湧き起る大きな拍手。
アポロンは聴衆に向かって軽くアタマを下げた。
「素晴らしいです!こんな演奏は聞いたことがありません!」
「あ、あの、良かったらもっといいハープを調弦しておきますから、またおいでいただけませんか!」
「まあ、気が向いたらな。」
「お待ちしています!」
「あら、買わないの?」
「今のは、初心者が手にするような代物だ。もっとちゃんとしたのを用意してくれるというのだから、次の時にしようじゃないか。」
こうして、アポロンの演奏は聴衆を満足させる事ができた。
【あとがき】
19弦のライアーハープでしょうか……
「それって、逆の発想よね。本来は敬う実績を作った民に、私たちが何らかの恩恵をもたらすかもしれない。そういうレベルの話しよ。」
「で、ですが、いきなり神様だと言っても、民は神様方を敬うというのは少し……」
「どうも、国の祭りごとを行う方というのは打算的ですね。別に私たちはこの国で信仰を得ようとは思っていません。昨日だって盲目の少女を治療しましたけど、対価など求めておりませんよ。」
「それは……」
「こうしたら、こう返ってくるのが当たり前だ。ヒト同士の意識を、神との関係に持ち込もうとする時点で間違いですよね。」
「だが、それがヒトの本心だろう。」
「そんな者に敬われたくはないな。確かに信仰心は足りていないが、それは魔力で補えると分かった。信仰心も、ジェルバで祈ってくれればそのうち戻るであろうよ。」
「そんな……」
「別に加護を与えずとも、これこの程度は知識と魔法でできてしまう。」
アポロンは自分で作ったワイングラスをテーブルに並べていった。
「こ、これは……」
「物質の性質を知っていれば、このように様々な色のガラスが生みだせるんだ。これは加護とか必要としない。単に知識があれば可能な技術だ。」
「濃い緑のガラスを作る技術は伝わっているが、青やムラサキ、赤などはどうやって……」
「これが神などに頼らない、ヒトの研究と知識だよ。ほら、ここまで透明度の高いグラスなど、君たちの技術じゃムリなんじゃないかな。」
「そ、その技術をお譲りいただく事は……」
「俺を信仰してくれる者から頼まれれば、教えない事もない。だが、お前たちは対価で手に入れようとするのだろう。そういう国に留まる事すら気分が悪い。」
「ではどうすれば?」
「自分たちで研究してみれば良いだろう。何年もかけて色々な方法を試せば良いだけの事。」
「いや、他から教えてもらえるのなら、その方が手っ取り早いじゃないですか。」
「まあ、好きにすればよいだろう。俺も、まぐれで誰かに教えるやもしれん。」
こうして、話し合いは終わり、レイミたちはボルダーの町を楽しんでいる。
「おっ、竪琴か久しいな。」
「そういえば、アポロン様は音楽の神でもありましたよね。」
「そうね。詩歌や医術の神でもあったわね。」
「医術ってのは、たまたま転んだ子供の怪我を癒してやった時に関連付けられただけだ。」
「私だって、純潔の女神とかいうくせに、豊穣と出産の女神とか呼ばれるし、ホントにいい加減なものですわ。」
「でも、久しぶりにアポロンの歌を聞いてみたいですね。」
「うっ、そんな期待をするな……」
「ほう、面白そうじゃな。どれ、一つワシが買ってやろう。」
「や、やめろ爺さん。即興で弾くっつっても、チューニングが大変なんだよ。」
「あら、チューニングの済んでいるモノもございましてよ。」
「えっ?」
「試しにお手に取ってみてくださいな。」
アポロンは店の店員に連れ込まれてしまった。
娘から手渡された竪琴をアポロンは端から弦を鳴らして調律を確認する。
「調律が多少違うが、まあ、これなら弾けるだろう。1節だけだからな。」
そう言うとアポロンは竪琴をポロンポロンと奏ではじめた。
「あっ、カノンね。」
「ああ。この主旋律にはまって、ひところこればかり弾いていたな。」
アポロンの弾く竪琴に惹かれ、店の前で通行人が立ち止まり、いつのまにか聴衆が集まっていた。
その演奏が、突然終わりを告げる。
聴衆から湧き起る大きな拍手。
アポロンは聴衆に向かって軽くアタマを下げた。
「素晴らしいです!こんな演奏は聞いたことがありません!」
「あ、あの、良かったらもっといいハープを調弦しておきますから、またおいでいただけませんか!」
「まあ、気が向いたらな。」
「お待ちしています!」
「あら、買わないの?」
「今のは、初心者が手にするような代物だ。もっとちゃんとしたのを用意してくれるというのだから、次の時にしようじゃないか。」
こうして、アポロンの演奏は聴衆を満足させる事ができた。
【あとがき】
19弦のライアーハープでしょうか……
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