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第一章
第9話 不可侵協定
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「おまっ、何を作ってんのじゃ!」
子爵邸に、かつてないほどの叫び声があがった。
「えっ、自走車、そんなのがあったら便利だって、お父様も同意してくださったじゃないですか。」
「……確かに言った。子供の玩具くらいにしか考えていなかった俺の責任かもしれんが……」
「このところ、家で魔道具を作っていなかったから油断していましたわ。」
「だが、ここまでのものを作るにはカネだってかかっただろう……」
「あっ、それはお爺様が研究費を出してくださいましたから大丈夫です。」
「なにぃ!」
「シャワーをご紹介したときに、周りを気にしないで好きなものを作ってみろとおっしゃって。」
「まあ、お父様ったら、いつの間に……」
「……それで、性能的にはどうなんだ?」
「えっと、道を走る時は時速10kmと時速20kmで走れます。」
「ま、まあ、そこは常識の範疇だな。」
「あと、空を飛ぶ時には、最高で300mまで上昇して、時速200kmで飛べます。」
「なに?」
「高度300mで時速200kmくらい……」
「おまっ、それがどういう事か分かっているのか!」
「デカルト帝国の伯爵家まで10時間くらいで行けるかと……」
「……まあ、計算上はそうなるのだろう。だがな、こんなものを世に出したら、戦が変わってしまうのだぞ!」
「それは考えました。上空300mから攻撃すれば、一方的に相手を蹂躙できます。」
「そうだ。」
「でも、そういう力を持てば、周辺国への牽制になると思いませんか?」
「うっ……」
「それに、各領地まで半日で往復できます。急な災害にも迅速に対応できるし、領主だって頻繁に領地へ行けるようになるじゃないですか。」
「メリットの方が大きいというのか……」
「はい。それと、できればデカルト帝国と正式に友好条約を結んで、両国で周辺への牽制ができれば、万一の事態に供えられると思います。」
「お前、ホントに9才なのか?子供の発想とは思えないぞ……」
「できれば、この発明権は他者の使用制限をかけてもらって、技術の流出を防止した方がいいと思います。」
「……バスチャ伯爵への報告は?」
「まだです。」
「明後日、伯爵家まで一緒に行こう。俺は明日、宰相に会って、今お前が言った事を伝えてくる。」
「はい。お願いします。」
子爵家の執事が宰相との面会を調整した結果、その日の夜に会談が行われた。
「なにぃ!空を飛ぶ車だと!」
「はい。高度300mまで上昇して、時速200kmで飛行する事が可能です。」
「それをまた、デカルト帝国の伯爵家と共同開発したというのだな。」
「はい。軍事的な利用価値は高いと思いますが、それは他国への抑止力として、国内の連絡手段としてうまく活用し、帝国と共に発展していけたら良いと考えます。」
「子爵が、そこまで国政に口出しするか……」
「その確約が頂けないのであれば、自走車の知識と技術は秘匿し、私も帝国に逃げます。」
「ふう……まさかお前がそこまで強気に出てくるとはな。」
「この技術を悪用させる訳にはいきません。特に、私利私欲に満ちたどこかの家には。」
「そういう意味でも、帝国の後ろ盾があるのは強いな。……わかった、陛下の了解はとっておく。それで、試乗はできるのか?」
「明後日帝国に行ってまいります。調整後戻ってきましたら日程を詰めさせていただきたいと思いますが、仮に7日後で。」
「7日後だな。分かった。バスチャ伯爵にもよろしく伝えてくれ。」
2日後、レイミは子爵と二人で帝国に向かった。
どれだけの速度が出ているのか正確には分からなかったが、直線距離で向かうと帝国は意外と近かった。
「1ヵ月以上かかる行程がおよそ8時間か。まったくとんでもない代物だな。」
少し離れた場所で地上に降り、そこからは陸路で移動する。
伯爵家の通行手形があるため、門の通過もスムーズだ。
当然、自走車について色々聞かれたが、おそらく翌日になれば伯爵が城へ説明に行くだろう。
伯爵家本邸に着くと、家の者が駆け寄ってくる。
「1年ぶりです。お爺様はおられるかしら?」
「ああ、レイミ様でしたか。そちらは?」
「わたくしのお父様よ。」
「こ、これは失礼いたしました。当主は書斎におられますので、応接でお待ちくださいませ。」
応接で少し待つと、当主がやってきた。
「おお、ベルナール子爵か、久しいな。というか、国を離れて大丈夫なのか?」
「はい。本日はレイミの新しい発明品のご案内と、両国のこれからについてご相談に伺いました。」
「ほう、大きく出たな。それほど影響のある魔道具という事だな。」
「そういう事です。実は、今日の朝屋敷を出発して、この時間に帝国まで来ることができました。」
「なにぃ!」
ベルナール子爵からバスチャ伯爵へと説明がされ、伯爵は考え込んだ。
「また、とんでもないものを作ってくれおったな。」
「お爺様が開発費をくださり、好きなものを作ってみろと背中を押してくださったからですわ。」
「それにしたって、こんな国政に影響するようなものを作り出すとは思わなんだぞ。」
「えへへっ。」
「私は軍事利用される事しか考えられませんでしたが、レイミはそれすらも他国への抑制になると言いました。ただ、それを実現するには、両国トップの理解が必須。親としては、その理想を叶えてやりたいと思います。」
「まったく、この娘は誰に似たのかな……。ふう、レイミよ、わしの自走車はどれくらいで出来る?」
「私にしか用意できないものがありますので、1ヵ月は必要ですね。」
「その後も月に1台ペースか。」
「シャーシとかを帝国でも作ってもらえれば月に2台まで増やせると思います。」
「だが、半年後には学園の入学か……」
「私は今更なんですけど……」
「レイミ、学園は勉強だけではないのだよ。将来的な人脈を作るのも学園でしかできないんだ。」
「ならば、聖女にでも認定してしまうか。そうすれば奉仕活動として授業を抜け出せるだろう。」
「ですが、聖女となると教会が煩いんですよ。王国では教会の権威は意外と……いや、聖女見習いならば教会もそこまで縛れないか。」
「あっ、私光属性がありますから、治癒は使えます。」
「「なにぃ!」」
「バカな、お前は水属性なのだろう?」
「はい、水と光です。ですから、ライティングの魔法を編み出す事ができました。」
「……そういう事か。ならば、本当に聖女見習いになれるという事だな。」
「いや、それは伏せたままで……お前はアルミの埋まっている場所が分かるのだったよな。」
「はい。多分、あれを見つけられるのは私だけだと思います。」
「きっとそれは、神の啓示を受けているからなのだ。」
「おお、確かにその理屈なら、光魔法なしでも聖女見習い認定の根拠足り得るな。」
バスチャ伯爵はそのまま城へ出向き、ローズレア王国との協定について皇帝陛下の合意をとってしまった。
協定の締結調印は伯爵家の自走車引き渡しのローズレア国王が同行して署名する事に決まり、1ヵ月の間、子爵とレイミは忙しく両国を行き来する事になる。
この決定を受け、デカルト帝国ではバスチャ伯爵の侯爵叙爵が決まり、王国でも子爵を伯爵に推す声が広まったのだが、これに強く反対する一派があった。
当然、王妃を擁するマグワイラ伯爵家だ。
マグワイラ伯爵は帝国との協定自体に反対しており、自走車を帝国には渡さずに王国独自の戦力とするよう強く訴えており、魔法局長などそれなりの支持を集めている。
子爵自身も陞爵は望んでおらず、この件は一旦白紙に戻された。
【あとがき】
マグワイラ家の陰謀。
子爵邸に、かつてないほどの叫び声があがった。
「えっ、自走車、そんなのがあったら便利だって、お父様も同意してくださったじゃないですか。」
「……確かに言った。子供の玩具くらいにしか考えていなかった俺の責任かもしれんが……」
「このところ、家で魔道具を作っていなかったから油断していましたわ。」
「だが、ここまでのものを作るにはカネだってかかっただろう……」
「あっ、それはお爺様が研究費を出してくださいましたから大丈夫です。」
「なにぃ!」
「シャワーをご紹介したときに、周りを気にしないで好きなものを作ってみろとおっしゃって。」
「まあ、お父様ったら、いつの間に……」
「……それで、性能的にはどうなんだ?」
「えっと、道を走る時は時速10kmと時速20kmで走れます。」
「ま、まあ、そこは常識の範疇だな。」
「あと、空を飛ぶ時には、最高で300mまで上昇して、時速200kmで飛べます。」
「なに?」
「高度300mで時速200kmくらい……」
「おまっ、それがどういう事か分かっているのか!」
「デカルト帝国の伯爵家まで10時間くらいで行けるかと……」
「……まあ、計算上はそうなるのだろう。だがな、こんなものを世に出したら、戦が変わってしまうのだぞ!」
「それは考えました。上空300mから攻撃すれば、一方的に相手を蹂躙できます。」
「そうだ。」
「でも、そういう力を持てば、周辺国への牽制になると思いませんか?」
「うっ……」
「それに、各領地まで半日で往復できます。急な災害にも迅速に対応できるし、領主だって頻繁に領地へ行けるようになるじゃないですか。」
「メリットの方が大きいというのか……」
「はい。それと、できればデカルト帝国と正式に友好条約を結んで、両国で周辺への牽制ができれば、万一の事態に供えられると思います。」
「お前、ホントに9才なのか?子供の発想とは思えないぞ……」
「できれば、この発明権は他者の使用制限をかけてもらって、技術の流出を防止した方がいいと思います。」
「……バスチャ伯爵への報告は?」
「まだです。」
「明後日、伯爵家まで一緒に行こう。俺は明日、宰相に会って、今お前が言った事を伝えてくる。」
「はい。お願いします。」
子爵家の執事が宰相との面会を調整した結果、その日の夜に会談が行われた。
「なにぃ!空を飛ぶ車だと!」
「はい。高度300mまで上昇して、時速200kmで飛行する事が可能です。」
「それをまた、デカルト帝国の伯爵家と共同開発したというのだな。」
「はい。軍事的な利用価値は高いと思いますが、それは他国への抑止力として、国内の連絡手段としてうまく活用し、帝国と共に発展していけたら良いと考えます。」
「子爵が、そこまで国政に口出しするか……」
「その確約が頂けないのであれば、自走車の知識と技術は秘匿し、私も帝国に逃げます。」
「ふう……まさかお前がそこまで強気に出てくるとはな。」
「この技術を悪用させる訳にはいきません。特に、私利私欲に満ちたどこかの家には。」
「そういう意味でも、帝国の後ろ盾があるのは強いな。……わかった、陛下の了解はとっておく。それで、試乗はできるのか?」
「明後日帝国に行ってまいります。調整後戻ってきましたら日程を詰めさせていただきたいと思いますが、仮に7日後で。」
「7日後だな。分かった。バスチャ伯爵にもよろしく伝えてくれ。」
2日後、レイミは子爵と二人で帝国に向かった。
どれだけの速度が出ているのか正確には分からなかったが、直線距離で向かうと帝国は意外と近かった。
「1ヵ月以上かかる行程がおよそ8時間か。まったくとんでもない代物だな。」
少し離れた場所で地上に降り、そこからは陸路で移動する。
伯爵家の通行手形があるため、門の通過もスムーズだ。
当然、自走車について色々聞かれたが、おそらく翌日になれば伯爵が城へ説明に行くだろう。
伯爵家本邸に着くと、家の者が駆け寄ってくる。
「1年ぶりです。お爺様はおられるかしら?」
「ああ、レイミ様でしたか。そちらは?」
「わたくしのお父様よ。」
「こ、これは失礼いたしました。当主は書斎におられますので、応接でお待ちくださいませ。」
応接で少し待つと、当主がやってきた。
「おお、ベルナール子爵か、久しいな。というか、国を離れて大丈夫なのか?」
「はい。本日はレイミの新しい発明品のご案内と、両国のこれからについてご相談に伺いました。」
「ほう、大きく出たな。それほど影響のある魔道具という事だな。」
「そういう事です。実は、今日の朝屋敷を出発して、この時間に帝国まで来ることができました。」
「なにぃ!」
ベルナール子爵からバスチャ伯爵へと説明がされ、伯爵は考え込んだ。
「また、とんでもないものを作ってくれおったな。」
「お爺様が開発費をくださり、好きなものを作ってみろと背中を押してくださったからですわ。」
「それにしたって、こんな国政に影響するようなものを作り出すとは思わなんだぞ。」
「えへへっ。」
「私は軍事利用される事しか考えられませんでしたが、レイミはそれすらも他国への抑制になると言いました。ただ、それを実現するには、両国トップの理解が必須。親としては、その理想を叶えてやりたいと思います。」
「まったく、この娘は誰に似たのかな……。ふう、レイミよ、わしの自走車はどれくらいで出来る?」
「私にしか用意できないものがありますので、1ヵ月は必要ですね。」
「その後も月に1台ペースか。」
「シャーシとかを帝国でも作ってもらえれば月に2台まで増やせると思います。」
「だが、半年後には学園の入学か……」
「私は今更なんですけど……」
「レイミ、学園は勉強だけではないのだよ。将来的な人脈を作るのも学園でしかできないんだ。」
「ならば、聖女にでも認定してしまうか。そうすれば奉仕活動として授業を抜け出せるだろう。」
「ですが、聖女となると教会が煩いんですよ。王国では教会の権威は意外と……いや、聖女見習いならば教会もそこまで縛れないか。」
「あっ、私光属性がありますから、治癒は使えます。」
「「なにぃ!」」
「バカな、お前は水属性なのだろう?」
「はい、水と光です。ですから、ライティングの魔法を編み出す事ができました。」
「……そういう事か。ならば、本当に聖女見習いになれるという事だな。」
「いや、それは伏せたままで……お前はアルミの埋まっている場所が分かるのだったよな。」
「はい。多分、あれを見つけられるのは私だけだと思います。」
「きっとそれは、神の啓示を受けているからなのだ。」
「おお、確かにその理屈なら、光魔法なしでも聖女見習い認定の根拠足り得るな。」
バスチャ伯爵はそのまま城へ出向き、ローズレア王国との協定について皇帝陛下の合意をとってしまった。
協定の締結調印は伯爵家の自走車引き渡しのローズレア国王が同行して署名する事に決まり、1ヵ月の間、子爵とレイミは忙しく両国を行き来する事になる。
この決定を受け、デカルト帝国ではバスチャ伯爵の侯爵叙爵が決まり、王国でも子爵を伯爵に推す声が広まったのだが、これに強く反対する一派があった。
当然、王妃を擁するマグワイラ伯爵家だ。
マグワイラ伯爵は帝国との協定自体に反対しており、自走車を帝国には渡さずに王国独自の戦力とするよう強く訴えており、魔法局長などそれなりの支持を集めている。
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