スキル買います

モモん

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第三章

第33話 ドーモー

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「という訳で、私が暫定的に二つの領を任される事になったんだが、君のいう自治領という体制はどうやって作ればいい?」

「はあ、それはいいんですけど、何でこんなに大勢に見られながら宰相様と差し向かいで話さなければならないんですか?」

「それは、みんな興味があるからだろう。大丈夫だ、余計な口は挟ませない。」

「……分かりましたよ。えっと、多分どちらの領も首長という存在が何人かおられますよね。」

「クビ長というのは、部落長とかギルド長とかそういうのかね。」

「何でもいいので、そういう方をできるだけ大勢集めてください。」

「それで?」

「領主から私財を没収するという事でしたので、2年間はそこから国税に引き当ててもらって、その間は税を半額にしましょう。」

「それは可能だと思うが。」

 宰相は皇帝を見てクビの動きで内諾を得た。

「集めた人達にそれを説明して、これから町ををどうすればいいのか考えてもらうのよ。あっ、最初は町の名前をかんがえてもらいましょう。」

「だが、素人の集団だぞ。」

「最初の話し合い前に、8人でグループを作ってもらうの。そこに城からある程度予算とか組めるレベルの人を派遣してもらって、フォローしてもらえれば時間はかかるでしょうが指導できると思いますよ。」

「城の職員によるフォローというかサポートだな。うむ。」

「できれば、総括局と会計局・産業局あたりでしょうか。それで話し合ううちに適性が見えてくるでしょうから、今度は適性ごとに集まってもらって、そこでリーダーを決めてもらいます。」

「城でいう局長や部長みたいな存在だな。」

「はい。そしたら、そのリーダーの中から、まとめ役と補佐してもらう人を決めてもらって、その人に2年間の暫定代表になってもらいます。領主というよりも、町長って感じですね。」

「町の組織はそれで進めるとして、町の活性化はどうしたらいい?」

「当面は鳥の受け入れ設備を作ってもらうのと、鳥のエサとなる穀物類や果樹園をつくってもらいます。課税免除の2年間で下準備を進めて、2年後から本格的に動いてもらいますけど、クモ糸のスキルを10人くらいに持たせてもらいましょうか。」

「クモ糸のスキル?」

「私の知っているお婆さんがそういう露店をやっているんですよ。クモ糸のスキル20人くらいなら頼めると思いますよ。」

 皇帝・皇子・生活向上局長など、事情を知っているモノはレイミの自作自演だなと確信していた。

「その露店の事は君の父上から報告を受けているが、そんな事を頼めるのかね?」

「スキル魔石を時々納品しているので、その程度なら頼めますよ。」

「そ、その方に、もっと色々なスキルを頼むことは……」

「欲張っちゃダメですよ。町の産業を鳥の飼育にするなら一番必要なスキルですし、色々と使い道の多いスキルなんですから。」

「そうか、分かった。」

 こうして、帝国にサンシャインとムーンライトという二つの自治区が誕生した。
 そして、レイミの計画通り首長会議が行われ、初代町長が選出される。

 そういった政治的な部分は城から派遣された職員に任せ、レイミはスキル付与の対象者を選定し、ふたつの領から対象者を集めてクモ糸のスキルを付与。
 そして、20名に対するスキルの指導を飼育員のミイとアレーラ工房長に来てもらって訓練してもらう。

 そうこうするうちに、タマゴが孵化しひな鳥がピヨピヨと歩き回り始める。
 少しして、ひな鳥がエサを食べ始めた頃、親鳥たちは次のタマゴを産み始める。

「どうやら、5時から19時の点灯でいいみたいですね。」

「ええ。この設定で行きましょう。」

「でも、ドーダーも同じ習性だったなんて驚きよね。」

「私としては、レイミ様がどこからその知識を得たのか、そちらの方が興味ありますわ。」

「うーん、多分ローズレアの学園図書室で読んだ本に書いてあったと思うんですけどね。」

「そんな大変な発見をされたのに、学会で発表されず本だけお残しになるなんて変わった研究者ですよね。」

「……ほら、以前はライトもなかったし、重要な発見とは思わなかったんじゃないかしら。」

「うーん、それにしても疑問ですよね。私なら真っ先に気温が影響してるんじゃないかって思っちゃいますよ。」

「それも試したんじゃないかしら。」

「そんないくつもの実験をしてたどり着いた結果なら、余計発表しないのは納得できませんよ。私なら喜びすぎてすぐ周りに吹聴しちゃいますけどね。」

「そ、そうなのかな……。きっと、注目されるのがイヤだったんだよ。」

「でも、この国ではまったく知られていない事ですから、今回の研究結果は絶対に論文にして学会に発表しましょう。レイミ様のお名前で!」

「わ、私もこれ以上注目されるのは……」

「ダメです!これは食糧事情の改善だけでなく、絶滅危惧種であるドーダーの救済でもあるんですからね。僅か30羽しか残っていなかったんですよね。そんな希少種のヒナが、人工飼育下で繁殖できているんですよ。ドーダーのヒナったらもう可愛くて、私の後をついてくる子もいるんですよ。」

「えっ……、まさか孵化した時に最初に見ちゃったりした?」

「何で分かるんですか。ちょうど親がエサに出た時に孵った子がいたんですよ。」

「あ……あ、刷り込みね……」

「何ですか、スリコギって?」

「ス・リ・コ・ミよ。鳥って、孵化した時に最初に目にした動くモノを親だと認識しちゃうの。」

「えーっ!それも聞いたことがないですよ!じゃあ、私、あの子の親になっちゃったんですか!」

「そういう事よ。」

「それって、……私、この職場から離れられないって事じゃないですか!」

「いやいや、ミイさんはその子を子供として認識する必要はないですよ。」

「私、一方的な気持ちとかイヤなんです。あの子が慕ってくれるなら、その想いに応えてあげないと!」

「そ、そうなの。頑張ってね。」

「はい!それで、ちゃんと記録に残して、いつか論文として発表します。そうだ、名前をつけてあげないと。」

「ま、まあ、ドーダーはオスとメスで鳴き声が違うから、性別が分かったらね。」

「でも、あの子”モー”って鳴くんですよね。」

「牛ッ!」

 ドーダーは本当に人懐っこく、好奇心も旺盛である。
 ミイが面白半分で作った滑り台等の遊具で遊ぶし、5m程の高さに張った糸に乗ってバランス遊びなどをしている。
 そしてミイ名づけのモーちゃんがメスだという事も判明する。

 オスの”ドーッ”という啼きかけに”モーッ”と反応したのだ。

「本当にモーッって鳴いてるわね。」

「そうなんですよ。ドーッ・モーッなんて笑っちゃいますよね。スタッフたちも爆笑ですよ。」

「ところでアレは何かしら?」

「高いところで成鳥が遊んでるのをモーちゃんが羨ましそうに見ていたので、低いところにも糸を張ってあげたんですよ。」

「そりゃあ、クモ糸は弾力があるけど、あの黄色いヒナ達は何でビヨンビヨンって勢いをつけて、そこから飛び上がって宙がえりなんかしているのかしら?何匹も……。あっちの子達は、糸の上で交互に飛び跳ねてるし。」

「どんどん新しい遊びを考えるんですよ。知能が高いんだと思います。」

「まいったわね。知能が高くて人懐っこいとか……、この状況を知られたら、食肉はムリじゃないかな……」

「私……出荷とか耐えられません……」

「タマゴなら、ギリ許せるってところかしら。」

「そうですね。」

「だったら、タマゴと羽毛に切り替えね。」

「羽毛?」

「羊の代わりって事よ。」

 レイミは皇帝と王妃、それと父親を飼育施設の視察に誘い、ドーダーを食肉対象から外す確約をとりつけた。


【あとがき】
  鳥の羽……
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