スキル買います

モモん

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第四章

第38話 ガルーダ王国

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「こちら、シャワーとトイレットになります。」

 レイミは二つの魔道具について操作方法を説明した。

「ライトとコンロは相当数普及していると聞きましたので、今日はこの二つをお持ちしました。皇帝より輸出の許可も得ていますので、ご用命いただければ出荷する事も可能です。」

「それは有難いのだが、自走車は輸出せんのかね?」

「あれは、軍事利用可能な魔道具ですので、国外へ出すつもりはありません。」

「だが、わが国には飛竜がおる。今更飛行手段が増えたところで、武力にはさほど影響はしないぞ。」

「畏れながら、私は野生のワイバーンしか知りませんが、飛行速度・乗車人員・操作性・航続距離、どれをとっても自走車が凌駕しております。」

「なにぃ!飛竜軍団を愚弄するつもりか!」

「まあ待て、国防大臣よ。」

「勿論、飛竜をそこまで手懐け、騎士を訓練するのは並大抵の事ではないでしょう。それは敬服しております。」

 レオはそこで間を置いた。

「自走車最大のメリットは、そこまで訓練しなくとも操作できるし、人でも荷物でも楽に運べる点にあります。しかも、辺境の地であっても、日のあるうちに往復できてしまう。天候にもほぼ左右されないし、毎日安定した運行ができています。」

「だったらなおの事、それを世に広めるべきであろう!」

「では、この国は飛竜を広めようとしたのですか?」

「そ、それは……」

「自分のものは渡さないけど、人のモノは欲しい。まるで子供のようですね。」

「くっ……」

「まあ、そう言わないでくれ。それだけ帝国の魔道具には注目しているのだよ。特に、最近運用の始まった鉄道だな。これも妃殿の発明と聞くが、これは他国への展開は考えているのかね。」

「秘匿する技術はありますが、前向きに検討していきたいと考えています。」

「うむ、よろしく頼む。」

「あっ、陛下、私からお願いがございます。」

「何かな?」

「明日からの視察ですが、偏見のない方に対応いただくようお願いできないでしょうか。」

「偏見とは?」

「こちらにお集まりの多くの方が、私をバカにした目で見られていますよね。」

「い、いや、そのような事は……」

「まあ、確かに若輩ですので、知識をお持ちの方にそういう目で見られるのは結構ですが、知識や実務能力のない方と話すのは時間のムダでしかありません。」

「そ、その辺は大臣に任せておるが……」

「えっ、ここにいる人たちって、殆ど爵位とコネだけで出世したような人たちですよね。そうですね、食品とか畜産を担当されているのはどなたですか?」

「それだと農林大臣と産業大臣になるかな。ほら、そこの二人だ。」

「では、お二人にお伺いいたします。」

 レイミはポケットから取り出したように店ながら、収納からヤナイのタマゴを2つ取り出し、その二人に手渡した。

「な、なんだこれは……」

「これは今朝採取してきた鳥のタマゴです。これを手にして何を感じますか?」

「と、鳥のタマゴならば、アヒルであろう。」

「そうですな。一つ、銀貨5枚程度であろうか。」

「それだけですか?」

「こんなタマゴ程度で、何を言えというのかね。」

「じゃあ、えっと、アナタとアナタ、ちょっと前に出てきてください。」

 レイミは大臣の後ろに立っていた二人を指名して前に引っ張り出した。
 女性の文官と、メガネをかけた男性の文官にそのタマゴを渡す。

「どうでしょう。お二人の感想は?」

「……アヒルよりも少し小さいですね。殻も少し薄い感じがしませ。でも、何でこの時期に鳥のタマゴがあるんですか!」

「そうですね。産卵のシーズンから考えれば3ケ月以上経っているハズです。でも、腐っているようには見えないし、古い感じもしません。どういう事なんですか?」

「そう。実務を担当されている方なら、この時期に鳥のタマゴが存在する事に違和感を感じるんですよね。こちらの大臣相手だと、私はそこから説明しなければなりません。」

「わ、私だってそれくらいは……」

「言い訳は結構です。このタマゴはヤナイという地走り系の鳥のタマゴです。」

「ヤナイですか。聞いたことはありますが……」

「アヒルよりも一回り小柄な鳥で、帝国における研究で繁殖期以外でも産卵させる事に成功しました。これにより、年に4回程の産卵と孵化が可能となり、現在では1万羽以上のヤナイが育っています。」

「そ、それは食肉用ですか?」

「メインはタマゴの出荷が目的です。タマゴは栄養価が高いうえに、多少は保存もできますからね。それに、肉と違って色々な使い道があります。茹でたり焼いたりする以外に、パン生地やクッキー生地に混ぜたりスイーツにも使えますからね。」

「それ、興味あります!」

「どうやって産卵させているんですか!」

「ほら、ここまで情報を出すと、さっきまで蔑んだ目をしていたのに、お金になりそうだっていうギラついた視線に変わったでしょ。私は、この国の生活向上のために知識を提供するつもりでいますけど、貴族を儲けさせるために来たわけじゃないんですよ。ですから、この二人のように、実務ベースで話しのできる人を用意してください。」

 その夜は歓迎パーティーが企画されていたが、レイミはドレスを用意してこなかったと出席を断った。

「ひでえなぁ。俺一人に押し付けるのかよ。」

「だって、昼間の貴族ったら、ろくなものではありませんでしたよ。」

「いや、役に就いていないベルナール子爵のような人がいるかもしれないだろ。」

「はあ、仕方ありませんわね。」

 レイミは髪色にあわせたスカーレットのカクテルドレスに着替えた。
 胸から上はレースで出来ており、ロングの裾はタイトでスリットが入っている。
 この時代に一般的なパニエを履いて裾を広げるような事はしていないし、あくまでもスマートな装いだ。

「はあ、こんなドレスを着られるのは君だけだよ。」

「でも、コルセットで締め上げていませんので、一人で着られますし食事だってできますのよ。」

「これ、ずり落ちてこないのかい?」

「ウフフッ、実は透明なクモ糸を肩ひもにしてありますの。よく見ないと気付かれないと思いますわ。」

 二人がパーティーホールへ入ると、会場はざわめきに包まれた。

「陛下、このような宴を催していただきありがとうございます。」

「いや、妃殿はドレスをお持ちでないと聞いたが、魅力的な装いではないか。」

「簡略的な装いですので、お目汚しでしょうがお許しくださいませ。」

「て、帝国ではそのようなドレスが流行っているのかね?」

「いえ、主にプライベートのパーティー等で着ております。本来は公式のパーティーで着るドレスではありませんが、形だけでも参加させていただこうと想い参加させていただきました。」

 肩を出すのはともかく、この世界では貴族の女性が足を見せるのは恥ずかしい事だとされている。
 会場でも「はしたない」とか「娼婦のよう」などの声が、これみよがしに囁かれている。

 だが、当のレイミは魔道具職人であるし、狩りもする。
 一般的な貴族女性とはかけ離れた存在なのだ。

「あらあら、この国の淑女は陰口を囁き合うのがマナーなのかしら。そのような下品な事、私にはできそうにありませんわ。」

 わざと周囲に聞こえるように言い、レオにもたれかかる。

「いやいや、コルセットなしでは出歩けない体形なのだろう。君のように身体のラインを見せるドレスなど着る事ができないのだと思うよ。」

 女性とは違い、男性陣はレイミに興味津々のようだ。
 足を魅せるのだから、赤い革ひもとレースで作られたシューズが際立ち、宝石を使わないドレスでも十分に美しさを演出できていた。


【あとがき】
 第四章です。
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