悪役令嬢の居場所。

平和は突然に壊れる

骸side

突然姫様が倒れてから1週間経った
医者は過労だろうと言っていたけど
1週間も起きないものなんだろうか？

「骸さん、俺が見てるから休憩してきなよ
流石に何か食べないと起きた時ティアナが心配する」

そう言うランも酷い顔をしている。

「俺は平気。お前こそちゃんと寝とけ。
ほれ、部屋まで送ってやるから」

ランの背中を押しながらランの部屋まで送る
ランを送り届け姫様の部屋に戻る途中にある鏡にうつった自分の顔はとても酷い顔をしていた。

「ハッ…あいつの事言えねぇな」

自分の顔を見て、つい鼻で笑ってしまった

ガチャッ

姫様が眠る部屋へ戻るとベットには眠っている筈の姫様が居なかった

「！？姫様！？」

慌ててお風呂場や洗面所
繋がっている俺の部屋を探すと

「姫…様…？」

泣きながら窓枠に足をかける姫様の姿を見つけた。

「っ！？姫様！！！！」

俺が呆然としている間にも姫様は動き続けていた

トンっと姫様が飛ぼうとした瞬間俺は慌てて姫様に駆け寄りギリギリの所で姫様の手を掴んだ

「っ！姫様！」

「私は…操り人形…操り…人形…」

姫様は視点のあってない目でブツブツとそう呟くだけ

「クソッ！''強化''！！」

身体に魔力を浸透させ姫様を引き上げる。

「姫様！どうしてこんな事を…っ！」

少なくとも倒れる前まで姫様は楽しそうだった。
細い体を抱き締めても前の様な温もりはない。

「操り人形…操り…人形…私は…操り…人形…」

ブツブツとそう呟く事しか姫様はしなかった。
そんな姫様を見て抱きしめていた手が緩んだ。
その瞬間手を振り払いまた窓辺へ向かおうとする姫様を慌てて引き寄せ強く抱きしめる

「っ…何があったんだよっ」

まるで壊れたラジオの様に同じことをひたすら呟き涙を流す姫様を見ていると胸が強く痛む。

「姫様っ…戻って来てっ…」

感情が消えた顔じゃなく、また笑顔を見せてほしい。