悪役令嬢の居場所。

葉叶

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いつから歪んだのか。

真斗side

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「る………り…………?」

消えていく
彼女が消えてしまう
少しずつだけど確実に…彼女が、消えていく……

「母さん!!起きて!起きてよっ……!!」

瑠璃を抱き締め泣く息子を見ても
俺は現実を受け入れたくなかった
やっと取り戻した
やっとまた俺の手の中に帰ってきてくれた
なのに、どうして…?
どうして、瑠璃は俺から離れていくんだろう

昔からそうだった
瑠璃は俺を信じてはくれなかった
いつか俺が瑠璃に飽きる日が来ると思っていた
それでも、良かった
それでもいつかは俺を見てくれると思ったから
俺が瑠璃に好かれるよう頑張っていけば良かっただけだったから。

けど、あの日。
俺の前で、瑠璃が轢かれたあの日。
血塗れになりながら泣く俺を慰めようとする瑠璃を見たあの日。
俺の手の中で息絶えたあの日、全てが壊れた
何をしたってまた瑠璃に会いたかった
何をしたってまた瑠璃に笑ってほしかった

瑠璃に、幸せに……なって欲しかった


ただそれだけだった願いは、いつから歪んでしまったんだろう。
いつから……?

「父さん!!母さんがっ…!母さんが死んじゃうっ!!
俺じゃ何も出来ないっ…
母さんをっ…助けてよ!!」

俺だって助けたい
居なくなってほしくなんてない。
だけど、どうにも出来ない
どんな力を持ってても瑠璃の意思で瑠璃の力で作られた剣は瑠璃の意思で瑠璃の魂を刺した。
瑠璃が持っている能力がそれを現実にする

予言。
予知。
例え方は色々とある。
瑠璃が一度だけ使える力。
そこに俺が介入出来たとして…
瑠璃は…今の瑠璃のままなのだろうか
無理に介入すれば瑠璃を壊してしまうかもしれない
介入しなければ瑠璃はもう二度と俺の前に現れてはくれない。
俺に微笑む事も名前を呼ぶ事も
……俺を覚えていてもくれない。
憎まれたってよかった
忘れられるより憎まれている方が良かった
だって…そうしたら……俺の事を忘れないじゃないか

「止まれ!!止まれ!!止まれよっ……!!
何で……母さん!俺まだ母さんと話したい事沢山あるよ!
母さんとやりたい事だって…まだ沢山ある…
だからお願いだよ……死なないで……」

瑠璃にすがりつく骸を呆然と見る事しかできなかった

どうしたらいい
どうすればいい
いつも……こんな時俺を導いてくれたのは瑠璃だった
そっちの道は駄目だよって
優しく手を引いてくれるのは瑠璃だった
瑠璃が居ない今どうしたらいい?
何が正解だ?
瑠璃が望んでした事を俺が、邪魔をしていいのか……?

「何でっ…!何で父さんは何もしないんだよ!
父さんは母さんを沢山傷つけてそれで終わりでいいのかよ!!
母さんの最後が…っ……こんな悲しげな顔でっ……いいのかよっ…!」

「……っぅ」

泣く骸の顔が昔よく泣いていた瑠璃の顔と重なる
その顔を見たら、気づけば体が動いていた

何が正解かもわからない
どうしたら瑠璃を救えるのかまだわからない
本当にこれでいいのかわからない

だけど、動かずに…居られなかった

「骸、僕が今から言う事ちゃんと聞いて
大丈夫。何をしても瑠璃は助けるから」

瑠璃、僕は君に沢山のモノを貰ったよ
いつも我儘ばかりで君を困らせていたよね
それでも君は少し困った顔をして受け入れてくれたね

僕は少しでも……君に貰った物……返せたかな?


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