150 / 187
20章 虹の国の後継者
4
しおりを挟む
領地譲渡の契約を覆す方法を話すと言ったマリーは、私たちを伴い大神殿に移動した。
大神殿で神官長の前で話して、不当と判断されればその場で殺され、新たに私たちが血の誓約を受けることになる。
私たちがその内容を話せば、マリーと同じように殺されるという訳だ。
そうやって、秘密が公になるまで誓約は続く。
もし、万が一の時に、誓約を受けるのは少人数の方がいい。
私はついて行くと言っていたジュディとアーサーに、大神殿に入る許可を与えなかった。
私ひとりで聞くつもりだ。
大神殿の前までみんなで来て、マリーと2人、中に入ろうとすると、ライリー殿下が私の横になって並んだ。
「ライリー殿下。あなたはランバラルド王国の王太子様です。このようなことに、巻き込まれてはなりません」
私はそう言って、ライリー殿下も大神殿の前で待つように言う。
「ここまできたら一蓮托生だ。そもそも、誓約は他人に話さなければいいんだろ? それならオレもシャーロットと一緒に行くよ」
緊張でガチガチになった私に、ライリー殿下は微笑みかける。
「そういうことであれば、オレも行こう。王子では頭の回らないことも多かろう。無論、オレも他言しない自信がある」
ディリオン様も一歩前に出る。
「オレもオレもー。オレ、態度は軽いけど口は重いよん」
フレッド様も前に出る。
その様子を見て、コンラッド様とジェイミー様も前に出ようとしたけれど、ライリー殿下に止められた。
「オレたち全員が聞く必要はない。リスクは最小限にしたい。何かあった場合は、国に帰りギルバートを鍛えてやってくれ」
コンラッド様はゆっくりと口を開く。
「お前だって、言うなれば他国の問題だ。王太子が行くべきではないのではないか?」
コンラッド様にライリー殿下は困ったような顔を向ける。
「このままではオレの気も済まないんだ。領地譲渡の判断を下したのはオレだし、その責任を持つのもオレの役目だと思ってる。だから、行かせてくれ」
こうして、大神殿の中には、私とマリー、ライリー殿下とディリオン様、フレッド様の5人で入ることになった。
マリーに先導され、奥まで進んで行くと、護衛の神官様が扉の入り口に立っていた。
神殿は、王宮とは別の組織で成り立っているため、中で働く人は全て神官様だ。
城から派遣されている人はひとりもいない。
マリーはその神官様に近付いた。
「神官長様にお伝えください。血の誓約を行使いたしますと」
護衛の神官様は驚いた表情をなさっていたけれど、2人の内1人はすぐに扉の中に入り、もう1人は左の扉を指差し、そこで待つように私たちに言った。
扉を開けて中に入ると、長椅子が二つ向かい合わせに置いてあり、何かの待合室のようだった。
即位の時に使った控室とは趣が違い、とても簡素な部屋で、私は落ち着かない気分で長椅子に座った。
待合室の中の会話はなく、私はただマリーの手を握り、この緊張に耐えていた。
少しすると、神官長様と、神官長様と同じように白髪だけれど、神官長様より少し年若い神官様の2人が部屋にやってきた。
「シャーロット女王陛下。このようなところに足をお運びいただき、ありがとうございます。マリー殿、今まで誓約通り沈黙を貫き、お疲れ様でした。何も知らぬ陛下に言わずにいることは、さぞかし心を痛めたことでしょう」
マリーは立ち上がり腰を折る。
「とんでもございません。姫様のお側で仕えることが、何よりの喜びでごさいました。そのためでしたらわたくしの心など、どうでも良い事でございました」
神官長様は手で合図し、マリーを座らせる。
「では、早速。マリー殿、ここに16年前血判を押した誓約書があります。この誓約書に則り、陛下のご命令で一度だけあなたは真実を話すことができます。あなたが沈黙を破り、陛下に真実を告げる理由をお聞かせください」
神官長がマリーを見つめる。
「わたくしは、シャーロット陛下にコルビー様が本当の国王であったコルビー様と違う証拠をお示ししたいのです。領地譲渡の契約書に書かれたサインはColbyと書かれておりました。あの方の本当のお名前はKolbyとなるはずです。本人の名前でないサインは無効です」
前に聞いた。
私の本当のお父様のお名前と、あの前国王の名前は音が同じでスペルが違うと。
でも、あの前国王が違う人物であると言う証拠はないと言っていたのに。
同じことを思っていたのか、ライリー殿下が口を開く。
「国王が入れ替わったという証拠はないと、以前マリー殿は言っていたと思うが?」
マリーはライリー殿下に向き直り、その問いに答える。
「はい。コルビー前国王が入れ替わった証拠はわたくしには思い当たりません。ですが、奥方様が偽物であるという証拠がございます。そして、奥方様が偽物であることが、コルビー様が偽物であるという証拠に繋がるのです」
大神殿で神官長の前で話して、不当と判断されればその場で殺され、新たに私たちが血の誓約を受けることになる。
私たちがその内容を話せば、マリーと同じように殺されるという訳だ。
そうやって、秘密が公になるまで誓約は続く。
もし、万が一の時に、誓約を受けるのは少人数の方がいい。
私はついて行くと言っていたジュディとアーサーに、大神殿に入る許可を与えなかった。
私ひとりで聞くつもりだ。
大神殿の前までみんなで来て、マリーと2人、中に入ろうとすると、ライリー殿下が私の横になって並んだ。
「ライリー殿下。あなたはランバラルド王国の王太子様です。このようなことに、巻き込まれてはなりません」
私はそう言って、ライリー殿下も大神殿の前で待つように言う。
「ここまできたら一蓮托生だ。そもそも、誓約は他人に話さなければいいんだろ? それならオレもシャーロットと一緒に行くよ」
緊張でガチガチになった私に、ライリー殿下は微笑みかける。
「そういうことであれば、オレも行こう。王子では頭の回らないことも多かろう。無論、オレも他言しない自信がある」
ディリオン様も一歩前に出る。
「オレもオレもー。オレ、態度は軽いけど口は重いよん」
フレッド様も前に出る。
その様子を見て、コンラッド様とジェイミー様も前に出ようとしたけれど、ライリー殿下に止められた。
「オレたち全員が聞く必要はない。リスクは最小限にしたい。何かあった場合は、国に帰りギルバートを鍛えてやってくれ」
コンラッド様はゆっくりと口を開く。
「お前だって、言うなれば他国の問題だ。王太子が行くべきではないのではないか?」
コンラッド様にライリー殿下は困ったような顔を向ける。
「このままではオレの気も済まないんだ。領地譲渡の判断を下したのはオレだし、その責任を持つのもオレの役目だと思ってる。だから、行かせてくれ」
こうして、大神殿の中には、私とマリー、ライリー殿下とディリオン様、フレッド様の5人で入ることになった。
マリーに先導され、奥まで進んで行くと、護衛の神官様が扉の入り口に立っていた。
神殿は、王宮とは別の組織で成り立っているため、中で働く人は全て神官様だ。
城から派遣されている人はひとりもいない。
マリーはその神官様に近付いた。
「神官長様にお伝えください。血の誓約を行使いたしますと」
護衛の神官様は驚いた表情をなさっていたけれど、2人の内1人はすぐに扉の中に入り、もう1人は左の扉を指差し、そこで待つように私たちに言った。
扉を開けて中に入ると、長椅子が二つ向かい合わせに置いてあり、何かの待合室のようだった。
即位の時に使った控室とは趣が違い、とても簡素な部屋で、私は落ち着かない気分で長椅子に座った。
待合室の中の会話はなく、私はただマリーの手を握り、この緊張に耐えていた。
少しすると、神官長様と、神官長様と同じように白髪だけれど、神官長様より少し年若い神官様の2人が部屋にやってきた。
「シャーロット女王陛下。このようなところに足をお運びいただき、ありがとうございます。マリー殿、今まで誓約通り沈黙を貫き、お疲れ様でした。何も知らぬ陛下に言わずにいることは、さぞかし心を痛めたことでしょう」
マリーは立ち上がり腰を折る。
「とんでもございません。姫様のお側で仕えることが、何よりの喜びでごさいました。そのためでしたらわたくしの心など、どうでも良い事でございました」
神官長様は手で合図し、マリーを座らせる。
「では、早速。マリー殿、ここに16年前血判を押した誓約書があります。この誓約書に則り、陛下のご命令で一度だけあなたは真実を話すことができます。あなたが沈黙を破り、陛下に真実を告げる理由をお聞かせください」
神官長がマリーを見つめる。
「わたくしは、シャーロット陛下にコルビー様が本当の国王であったコルビー様と違う証拠をお示ししたいのです。領地譲渡の契約書に書かれたサインはColbyと書かれておりました。あの方の本当のお名前はKolbyとなるはずです。本人の名前でないサインは無効です」
前に聞いた。
私の本当のお父様のお名前と、あの前国王の名前は音が同じでスペルが違うと。
でも、あの前国王が違う人物であると言う証拠はないと言っていたのに。
同じことを思っていたのか、ライリー殿下が口を開く。
「国王が入れ替わったという証拠はないと、以前マリー殿は言っていたと思うが?」
マリーはライリー殿下に向き直り、その問いに答える。
「はい。コルビー前国王が入れ替わった証拠はわたくしには思い当たりません。ですが、奥方様が偽物であるという証拠がございます。そして、奥方様が偽物であることが、コルビー様が偽物であるという証拠に繋がるのです」
5
あなたにおすすめの小説
王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!
gacchi(がっち)
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ?
王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。
国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから!
12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。
侯爵家の婚約者
やまだごんた
恋愛
侯爵家の嫡男カインは、自分を見向きもしない母に、なんとか認められようと努力を続ける。
7歳の誕生日を王宮で祝ってもらっていたが、自分以外の子供を可愛がる母の姿をみて、魔力を暴走させる。
その場の全員が死を覚悟したその時、1人の少女ジルダがカインの魔力を吸収して救ってくれた。
カインが魔力を暴走させないよう、王はカインとジルダを婚約させ、定期的な魔力吸収を命じる。
家族から冷たくされていたジルダに、カインは母から愛されない自分の寂しさを重ね、よき婚約者になろうと努力する。
だが、母が死に際に枕元にジルダを呼んだのを知り、ジルダもまた自分を裏切ったのだと絶望する。
17歳になった2人は、翌年の結婚を控えていたが、関係は歪なままだった。
そんな中、カインは仕事中に魔獣に攻撃され、死にかけていたところを救ってくれたイレリアという美しい少女と出会い、心を通わせていく。
全86話+番外編の予定
結婚してるのに、屋敷を出たら幸せでした。
恋愛系
恋愛
屋敷が大っ嫌いだったミア。
そして、屋敷から出ると決め
計画を実行したら
皮肉にも失敗しそうになっていた。
そんな時彼に出会い。
王国の陛下を捨てて、村で元気に暮らす!
と、そんな時に聖騎士が来た
【完結】見返りは、当然求めますわ
楽歩
恋愛
王太子クリストファーが突然告げた言葉に、緊張が走る王太子の私室。
この国では、王太子が10歳の時に婚約者が二人選ばれ、そのうちの一人が正妃に、もう一人が側妃に決められるという時代錯誤の古いしきたりがある。その伝統に従い、10歳の頃から正妃候補として選ばれたエルミーヌとシャルロットは、互いに成長を支え合いながらも、その座を争ってきた。しかしーー
「私の正妃は、アンナに決めたんだ。だから、これからは君たちに側妃の座を争ってほしい」
微笑ながら見つめ合う王太子と子爵令嬢。
正妃が正式に決定される半年を前に、二人の努力が無視されるかのようなその言葉に、驚きと戸惑いが広がる。
※誤字脱字、勉強不足、名前間違い、ご都合主義などなど、どうか温かい目で(o_ _)o))
働きませんわ。それでも王妃になります
鷹 綾
恋愛
「私は働きませんわ」
そう宣言して、王太子から婚約破棄された公爵令嬢エルフィーナ。
社交もしない。慈善もしない。政務にも口を出さない。
“怠け者令嬢”と陰で囁かれる彼女を、王太子アレクシスは「王妃に相応しくない」と切り捨てた。
――だが彼は知らなかった。
彼女が動かないからこそ、王家は自力で立つことを覚えたのだということを。
エルフィーナは何もしない。
ただ保証を更新せず、支援を継続せず、静かに席を外すだけ。
その結果――
王家は自らの足で立つことを強いられ、王太子は“誰の力にも頼らない王”へと変わっていく。
やがて外圧が王国を揺らしたとき、彼は気づく。
支配でも依存でもなく、並んで立てる存在が誰だったのかを。
「君と並びたい」
差し出されたのは、甘い救済ではない。
対等という選択。
それでも彼女の答えは変わらない。
「私は働きませんわ」
働かない。
支配しない。
けれど、逃げもしない。
これは――
働かないまま王妃になる、公爵令嬢の静かなざまあ恋愛譚。
優雅で、合理的で、そしてどこまでも強い。
“何もしない”という最強の選択が、王国を変えていく。
死を望まれた王女は敵国で白い結婚を望む。「ご安心ください、私もあなたを愛するつもりはありません」
千紫万紅
恋愛
次期女王として王位継承が内定していたフランツェスカ。
だが戦況の悪化を理由に父王に争いの最前線に送られた。
それから一年、命からがら王都へ戻った彼女を待っていたのは労いの言葉ではなく、敵国・シュヴァルツヴァルトの王太子への輿入れ命令。
しかも父王は病弱な異母妹アリーシアを王妃に据え、フランツェスカの婚約者レナードを王にするという。
怒りと絶望の中フランツェスカはかつて敵将であったシュヴァルツヴァルト王太子・フリードのもとへお飾りの妻として嫁ぐことを決意する。
戦地での過去を封じ、王族としての最後の務めを果たすために。
【完結】私はいてもいなくても同じなのですね ~三人姉妹の中でハズレの私~
紺青
恋愛
マルティナはスコールズ伯爵家の三姉妹の中でハズレの存在だ。才媛で美人な姉と愛嬌があり可愛い妹に挟まれた地味で不器用な次女として、家族の世話やフォローに振り回される生活を送っている。そんな自分を諦めて受け入れているマルティナの前に、マルティナの思い込みや常識を覆す存在が現れて―――家族にめぐまれなかったマルティナが、強引だけど優しいブラッドリーと出会って、少しずつ成長し、別離を経て、再生していく物語。
※三章まで上げて落とされる鬱展開続きます。
※因果応報はありますが、痛快爽快なざまぁはありません。
※なろうにも掲載しています。
【完結】さようなら。毒親と毒姉に利用され、虐げられる人生はもう御免です 〜復讐として隣国の王家に嫁いだら、婚約者に溺愛されました〜
ゆうき
恋愛
父の一夜の過ちによって生を受け、聖女の力を持って生まれてしまったことで、姉に聖女の力を持って生まれてくることを望んでいた家族に虐げられて生きてきた王女セリアは、隣国との戦争を再び引き起こした大罪人として、処刑されてしまった。
しかし、それは現実で起こったことではなく、聖女の力による予知の力で見た、自分の破滅の未来だった。
生まれて初めてみた、自分の予知。しかも、予知を見てしまうと、もうその人の不幸は、内容が変えられても、不幸が起こることは変えられない。
それでも、このまま何もしなければ、身に覚えのないことで処刑されてしまう。日頃から、戦争で亡くなった母の元に早く行きたいと思っていたセリアだが、いざ破滅の未来を見たら、そんなのはまっぴら御免だと強く感じた。
幼い頃は、白馬に乗った王子様が助けに来てくれると夢見ていたが、未来は自分で勝ち取るものだと考えたセリアは、一つの疑問を口にする。
「……そもそも、どうして私がこんな仕打ちを受けなくちゃいけないの?」
初めて前向きになったセリアに浮かんだのは、疑問と――恨み。その瞬間、セリアは心に誓った。自分を虐げてきた家族と、母を奪った戦争の元凶である、隣国に復讐をしようと。
そんな彼女にとある情報が舞い込む。長年戦争をしていた隣国の王家が、友好の証として、王子の婚約者を探していると。
これは復讐に使えると思ったセリアは、その婚約者に立候補しようとするが……この時のセリアはまだ知らない。復讐をしようとしている隣国の王子が、運命の相手だということを。そして、彼に溺愛される未来が待っていることも。
これは、復讐を決意した一人の少女が、復讐と運命の相手との出会いを経て、幸せに至るまでの物語。
☆既に全話執筆、予約投稿済みです☆
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる