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20章 虹の国の後継者
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ライリー殿下も少し戸惑っていたようだけれど、コルビー前国王に向かい、説明する。
「大神殿の神官長の証明により、契約書のサインが本人のものでないということがわかった。よって、この契約は無効。川の貯水池は水を元に戻し、水の販売も停止する」
淡々と言うライリー殿下に、もっと反論すると思っていたコルビー前国王は目を閉じて聞いていた。
「サインが本人のものでないって、そんなわけないでしょう。ちゃんと、この人が目の前で記入したのを、あなたたちは見ていたんじゃないの」
諦めない前王妃が扇を握った手を震わせて、ライリー殿下に言った。
「ええ。もちろん、見ていましたよ。その時は、偽物のサインだと思わずに。しかし、コルビー国王が本物ではないと、証言を得ました。コルビー前国王、あなたは本物のコルビー様ではない。弟の方の、コルビー様ですね? あなたの本当の名前でサインをするならば、スペルはKでなくてはならない」
ライリー殿下の言葉を聞き、前王妃は目を見開く。
そして、コルビー前国王は目を開けてライリー殿下を見つめた。
「そこまで調べたんだな…」
「あなたっ!」
「いや、もう無理だよ。デリラ、ここまでだ」
前王妃は顔を真っ赤にする。
「わ、わたくしの名前はエレノアよ! あなた何を言ってらっしゃるの。ライリー殿下、言い掛かりにも程がありますわ。こちらはコルビー前国王で、わたくしは前王妃です」
私は前王妃、いいえデリラの顔を見た。
吊り上がった目は、棺の中で見たお母様とは似ても似つかない。
こんな人が、お母様を名乗るなんて、許せない。
「あなたはお母様じゃないわ。お母様の名を名乗るのはやめてください!」
デリラは狼狽えながらも私を睨んだ。
「何を言うの、シャーロット。今まであなたを育てたお母様じゃないの」
「いいえ。あなたはお母様じゃないわ。それに、あなたは母親を名乗っていただけで、私を育ててくれたのはマリーよ!」
デリラは冷めた目で私を見る。
「バカなことを……。一体、何を寝ぼけたことを言っているのかしら」
「寝ぼけているのはあなたよ。あなたがしている紛い物の指輪、それの本物がここにあるわ」
私はずっと握っていた手のひらをデリラに見せた。
そこには、お母様がはめていらした七色の指輪が乗っていた。
「この指輪は、国王の伴侶にしかはめられない指輪よ。この七色は削っても取れることはないわ。でも、あなたの指輪は削ればメッキが剥がれるはずよ! あなたが本物だというなら、指輪を見せてよ!」
デリラは自分の指輪を押さえて、私を鼻で笑った。
「ふざけたことを。指輪なんて同じでしょ。この指輪はちゃんと王宮で作られたものよ」
「違います。この指輪は大神殿の神官長からしかもらえないものです」
私たちが言い争っていると、ライリー殿下がデリラに冷たく言い放つ。
「本物だと主張するなら、見せてみればいかがですか? メッキが剥がれるかどうか、それでわかるでしょう」
「くっ、」
デリラは悔しそうに顔を歪めた。
「それなら、せめてセリーヌはライリー殿下の妃にしてください。あの娘は間違いなく王家の血を引いているわ。このコルビーの娘ですもの」
コルビー前国王が王妃の肩を叩く。
「デリラ、やめなさい。セリーヌを嫁がせたらお前も付いて行く気だろう。わたしちは王の名を語った罪人だ。セリーヌは無実だとしても、わたしたちは罪を償わなければならない」
その言葉を聞いて、デリラは私に向けていた鋭い眼差しをコルビー前国王に向けた。
「は! 今さら何を……。罪を償う? どうやって? 王の名を語ったことがわかれば、わたしたちは死罪よ。死ぬだけよ!」
コルビー前国王は穏やかに言う。
「それでも、だ」
「それじゃ、一体なんのために国王を殺してまで」
デリラが小さい声でつぶやく。
その声は、他の誰にも聞かれていないようだった。
でも、私の耳にははっきりとその言葉が届いた。
「今、なんて言ったの……。国王を殺した……?」
デリラがはっと、口を扇で隠す。
「隠しても無駄よ。私には聞こえたわ。お父様を殺したのはあなたなの!?」
私は堪え切れず、デリラに掴みかかった。
「お父様を、殺したのはあなたなのっ」
でも、伸ばした手はデリラに届かず、ライリー殿下に止められた。
それでも、精一杯デリラへと伸ばす手を、ライリー殿下は私の肩を抱えて止める。
「なんでっ! どうして命まで奪って、どうしてっ」
あとから後から涙が溢れる。
もう、前が滲んで見えないくらい。
コルビー前国王は、デリラの肩を掴み、自分の方にデリラを向けた。
「お前が兄貴を殺したのかっ!」
コルビー前国王はデリラを揺さぶる。
「ちょっと、やめてよ。そうよ、あたしが殺したのよ。だって、国王が死ななきゃ、あんたは国王になれないじゃないの」
「義姉さんを殺したのも……」
「そうよ。あたしよ。国王に毒を仕込むよりそっちの方が大変だったわ。助けに誰も行かないように、人払いをしてから油を撒いて火をつけて。危なくあたしも火傷しちゃうところだった」
デリラが笑いながら言うその言葉は、一種異様な呪いのようだった。
次の瞬間、パシッとコルビー前国王がデリラの頬を叩く音が響いた。
「お前がっ、お前が兄貴をっ!」
コルビー前国王はデリラの腕を掴む。
「アーサー、何をしているっ! すぐに捕縛しろっ」
「はっ!」
アーサーはコルビー前国王の声で弾かれたように動き出し、デリラを後ろ手に締め上げた。
こうして、長い間野放しにされていた国王暗殺犯が捕まったのだった。
「大神殿の神官長の証明により、契約書のサインが本人のものでないということがわかった。よって、この契約は無効。川の貯水池は水を元に戻し、水の販売も停止する」
淡々と言うライリー殿下に、もっと反論すると思っていたコルビー前国王は目を閉じて聞いていた。
「サインが本人のものでないって、そんなわけないでしょう。ちゃんと、この人が目の前で記入したのを、あなたたちは見ていたんじゃないの」
諦めない前王妃が扇を握った手を震わせて、ライリー殿下に言った。
「ええ。もちろん、見ていましたよ。その時は、偽物のサインだと思わずに。しかし、コルビー国王が本物ではないと、証言を得ました。コルビー前国王、あなたは本物のコルビー様ではない。弟の方の、コルビー様ですね? あなたの本当の名前でサインをするならば、スペルはKでなくてはならない」
ライリー殿下の言葉を聞き、前王妃は目を見開く。
そして、コルビー前国王は目を開けてライリー殿下を見つめた。
「そこまで調べたんだな…」
「あなたっ!」
「いや、もう無理だよ。デリラ、ここまでだ」
前王妃は顔を真っ赤にする。
「わ、わたくしの名前はエレノアよ! あなた何を言ってらっしゃるの。ライリー殿下、言い掛かりにも程がありますわ。こちらはコルビー前国王で、わたくしは前王妃です」
私は前王妃、いいえデリラの顔を見た。
吊り上がった目は、棺の中で見たお母様とは似ても似つかない。
こんな人が、お母様を名乗るなんて、許せない。
「あなたはお母様じゃないわ。お母様の名を名乗るのはやめてください!」
デリラは狼狽えながらも私を睨んだ。
「何を言うの、シャーロット。今まであなたを育てたお母様じゃないの」
「いいえ。あなたはお母様じゃないわ。それに、あなたは母親を名乗っていただけで、私を育ててくれたのはマリーよ!」
デリラは冷めた目で私を見る。
「バカなことを……。一体、何を寝ぼけたことを言っているのかしら」
「寝ぼけているのはあなたよ。あなたがしている紛い物の指輪、それの本物がここにあるわ」
私はずっと握っていた手のひらをデリラに見せた。
そこには、お母様がはめていらした七色の指輪が乗っていた。
「この指輪は、国王の伴侶にしかはめられない指輪よ。この七色は削っても取れることはないわ。でも、あなたの指輪は削ればメッキが剥がれるはずよ! あなたが本物だというなら、指輪を見せてよ!」
デリラは自分の指輪を押さえて、私を鼻で笑った。
「ふざけたことを。指輪なんて同じでしょ。この指輪はちゃんと王宮で作られたものよ」
「違います。この指輪は大神殿の神官長からしかもらえないものです」
私たちが言い争っていると、ライリー殿下がデリラに冷たく言い放つ。
「本物だと主張するなら、見せてみればいかがですか? メッキが剥がれるかどうか、それでわかるでしょう」
「くっ、」
デリラは悔しそうに顔を歪めた。
「それなら、せめてセリーヌはライリー殿下の妃にしてください。あの娘は間違いなく王家の血を引いているわ。このコルビーの娘ですもの」
コルビー前国王が王妃の肩を叩く。
「デリラ、やめなさい。セリーヌを嫁がせたらお前も付いて行く気だろう。わたしちは王の名を語った罪人だ。セリーヌは無実だとしても、わたしたちは罪を償わなければならない」
その言葉を聞いて、デリラは私に向けていた鋭い眼差しをコルビー前国王に向けた。
「は! 今さら何を……。罪を償う? どうやって? 王の名を語ったことがわかれば、わたしたちは死罪よ。死ぬだけよ!」
コルビー前国王は穏やかに言う。
「それでも、だ」
「それじゃ、一体なんのために国王を殺してまで」
デリラが小さい声でつぶやく。
その声は、他の誰にも聞かれていないようだった。
でも、私の耳にははっきりとその言葉が届いた。
「今、なんて言ったの……。国王を殺した……?」
デリラがはっと、口を扇で隠す。
「隠しても無駄よ。私には聞こえたわ。お父様を殺したのはあなたなの!?」
私は堪え切れず、デリラに掴みかかった。
「お父様を、殺したのはあなたなのっ」
でも、伸ばした手はデリラに届かず、ライリー殿下に止められた。
それでも、精一杯デリラへと伸ばす手を、ライリー殿下は私の肩を抱えて止める。
「なんでっ! どうして命まで奪って、どうしてっ」
あとから後から涙が溢れる。
もう、前が滲んで見えないくらい。
コルビー前国王は、デリラの肩を掴み、自分の方にデリラを向けた。
「お前が兄貴を殺したのかっ!」
コルビー前国王はデリラを揺さぶる。
「ちょっと、やめてよ。そうよ、あたしが殺したのよ。だって、国王が死ななきゃ、あんたは国王になれないじゃないの」
「義姉さんを殺したのも……」
「そうよ。あたしよ。国王に毒を仕込むよりそっちの方が大変だったわ。助けに誰も行かないように、人払いをしてから油を撒いて火をつけて。危なくあたしも火傷しちゃうところだった」
デリラが笑いながら言うその言葉は、一種異様な呪いのようだった。
次の瞬間、パシッとコルビー前国王がデリラの頬を叩く音が響いた。
「お前がっ、お前が兄貴をっ!」
コルビー前国王はデリラの腕を掴む。
「アーサー、何をしているっ! すぐに捕縛しろっ」
「はっ!」
アーサーはコルビー前国王の声で弾かれたように動き出し、デリラを後ろ手に締め上げた。
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