人質姫と忘れんぼ王子

雪野 結莉

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最終章 人質でなくなった王女と忘れない王太子

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翌日、私とライリー殿下達が執務室に集まり、今後のことを話し合った。
ディリオン様がメガネをくいっと上げながら、事もなげにこう言った。
「先日、戦争の賠償金は受け取った。ランバラルドの戦争によるマイナスはそれで埋まるので、帝国に支払ったボナールの奴隷の支払いと、復興に必要なだけ国債を発行し、それをランバラルドで買おう」

「あの、結構な額になりますが、よろしいのですか?」
ライリー殿下だけでなく、ディリオン様もそれでいいと言ってくれたことにびっくりする。
「資金を渡すと言ったのではない。国債を買うと言ったのだ。それなら返済が終わるまで利息が付く。債券であるので、王子が老衰で死んでも後継者に権利は譲渡され、きちんと全額返してもらえる。よって、問題はないと解釈しているが? シャーロット陛下は不満なのか?」
「いえ、そういう訳では……。大丈夫ならいいです。ぜひ、お願いしたいです」

続いて、フレッド様が手を上げる。
「オレからもちょっと提案があるんだけど」
「なんだ?」
「共和制に移行するのは、すぐには難しそうなんだ。法改正をして、首相を決めるところまで話は進んでいるんだけど、慣れないことで大臣達が戸惑ってる。コルビーさん、どんだけワンマンだったんだって話だけど。だから、しばらくはシャーロットちゃんが女王だと国外にもきちんとした形で知らせた方がいいと思うんだ」

ライリー殿下が首を傾げる。
「フレッド、即位の時に各国に通知とお披露目会の招待状を送ってるだろ? きちんと知らせていると思うが?」
「うん。でも招待した国が隣国だけだったから。ちゃんと主要国は招待した方がいい。まだ間に合うなら追加で送ってよ」
「そうだな。もう少し規模を広げよう」

ライリー殿下達の話の早さについていけない……。
なんか、どんどん話が決まっているけれど、お披露目パーティーの規模を大きくすると、それだけ費用も嵩むのよ!
あぁ、どんどん借金が嵩んでいく……。

国債の利息もどれくらいになるのかと青くなっていると、急に話を振られた。
「シャーロット、シャーロットはランバラルドでも家庭教師をつけて勉強してもらっていたが、諸外国と対面するマナーをボナールでも家庭教師をつけて学んで欲しい。家庭教師に心当たりはある?」
「あ、ええと、セリーヌ様が受けられていたマナーの先生がいらしたと思います。あとで叔父様に聞いてみますわ」

私の言葉にコンラッド様が怪訝そうな顔をする。
「シャーロット陛下はコルビー殿と交友を持っておられるのか? 危なくないか?」
その問いにディリオンさまが答える。
「牢の中で精神鑑定を受けてもらったところ、多少の疾患が見えた。本物の国王やエレノア王妃の死で、精神に負担がかかっていたらしい。残酷な政策を気にせず実施したが、そのあとで死ぬほど苦しんでいたりしたようだ。その疾患の原因であるデリラは捕まって事件は解決したし、カウンセリングでかなり改善したとドクターからは聞いているので、大きな問題はないだろう」

そうなのだ。
お父様の死は、叔父様にかなりな負担を掛けたようで、とても素晴らしい政治を行っていた裏で、税を上げてデリラに言われるがままだったりという、不安定な気持ちがこのところ落ち着いており、叔父様の表情はとても穏やかだ。
税金が高くて国民が苦しんでいたけれど、飢えて亡くなる民がいなかったのは、素晴らしい政治を行なっていた部分があるからだった。

今は、たまに面会に行くと、小さい頃のお父様のお話し等も聞かせてくれる。

「では、家庭教師は問題ないな。復興資金の問題もクリアしたから、あとはそれぞれそれに向けて準備だな」
ライリー殿下のその声に合わせて、今日の仕事は一旦終わりになった。

私の執務室から、ゾロゾロとみんなが出て行く。
最後に、ライリー殿下が部屋を出る前に、くるっと私の方を向いた。

何か用があるのかなと思って、ライリー殿下の側まで行くと、ライリー殿下は私の耳元で囁いた。
「明日、ちょっとオレとデートしようよ。朝、シャーロットの部屋まで迎えに行く。なんとかジュディをまいといて」
それだけ言って、ライリー殿下はにこやかに部屋を出て行った。


……デート?
この忙しい時に?
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