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#011 『古暦』
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沼田さんがまだ学生だった、12年前のことである。
ある日の夜中、床に就こうと布団の中に潜り込んだ直後、不意に〝キャンキャン、キャンキャン〟と子犬が鳴くような声が聞こえた。
びっくりして飛び起き、耳を澄ますとどうやら自室の押し入れの中からくだんの声はする。
不穏に思いながらも電気をつけて、ガラリと押し入れを開けた。
声は止んだ。
いったい何の動物の声だったんだ?そう思ってしばらく中を眺め回していると、異なものを見つけた
古ぼけた、風景画のプリントされたカレンダーだった。
いつのものだろうと取り出して確認してみると、1991年とある。
91年!! 14年前。そんな昔のカレンダーが、何故、こんなところに?
いろいろ腑に落ちないことはあったが、明日も早いので寝ることにした。カレンダーはテレビの上に置いておくことにし(当時、沼田さんの部屋のテレビはまだ薄型ではなかった。彼には、読みかけの本とか未見のビデオなどををテレビの上に置く癖があった)――再び床に就いた。
子犬の声は、もう聞こえなくなっていた。
※ ※ ※ ※
翌日。
〝ギャォーン、キャンキャン、アォゥーン!!〟
もの凄い断末魔のような鳴き声で、沼田さんは目を覚まされた。
反射的に時計を見れば、まだ朝の五時。
ハッと思ってテレビの上を確認してみれば、何と昨日置いた筈のカレンダーがなくなっている。
胸騒ぎを感じて部屋を出、なくなったカレンダーを探して家の中をうろうろしていると、居間でお茶を啜っているお父さんと目が合った。
え、お父さん、何でこんなに早起きしてるの!
呆気にとられていると、お父さんは沼田さんの顔をまじまじと見るや、「ふぅ」の一息。
「おいおい、お前。あんまり変なもの見つけるんじゃない」
「え?あっ、あのカレンダー、お父さんが持ってったの?ていうか、こんなに朝早く俺の部屋で何やってたんだ?!」
「そんなことより、お父さんと約束しなさい。もうあんなもの引っ張り出さないってな」
カレンダーはどうしたんだと聞くと、今し方、ハサミでチョンチョンに切ってゴミ箱の中にぶち込んだところだ、との答え。
何でそんな捨て方すんの、いやむしろ何でソッコー捨てる必要あんの?と矢継ぎ早に質問するが、お父さんは涼しい顔。慣れない手つきで、急須にお湯を足している。
「長く生きてりゃ、いろいろあるもんだ。まだ朝も早い。お前も、もう少し部屋で寝てなさい」
にべもなく言われ、部屋へ戻るしか無かったという。
いまだに、あの時の出来事の仔細をお父さんは話してくれないらしい。
蒸し返すたびに、「そんな下らないこと、早く忘れろ」と言われるというが、
腑に落ちないことオンパレードの出来事だったから、もう死ぬまで忘れられないだろう。 ――沼田さんは大嘆息と共にそう零した。
ある日の夜中、床に就こうと布団の中に潜り込んだ直後、不意に〝キャンキャン、キャンキャン〟と子犬が鳴くような声が聞こえた。
びっくりして飛び起き、耳を澄ますとどうやら自室の押し入れの中からくだんの声はする。
不穏に思いながらも電気をつけて、ガラリと押し入れを開けた。
声は止んだ。
いったい何の動物の声だったんだ?そう思ってしばらく中を眺め回していると、異なものを見つけた
古ぼけた、風景画のプリントされたカレンダーだった。
いつのものだろうと取り出して確認してみると、1991年とある。
91年!! 14年前。そんな昔のカレンダーが、何故、こんなところに?
いろいろ腑に落ちないことはあったが、明日も早いので寝ることにした。カレンダーはテレビの上に置いておくことにし(当時、沼田さんの部屋のテレビはまだ薄型ではなかった。彼には、読みかけの本とか未見のビデオなどををテレビの上に置く癖があった)――再び床に就いた。
子犬の声は、もう聞こえなくなっていた。
※ ※ ※ ※
翌日。
〝ギャォーン、キャンキャン、アォゥーン!!〟
もの凄い断末魔のような鳴き声で、沼田さんは目を覚まされた。
反射的に時計を見れば、まだ朝の五時。
ハッと思ってテレビの上を確認してみれば、何と昨日置いた筈のカレンダーがなくなっている。
胸騒ぎを感じて部屋を出、なくなったカレンダーを探して家の中をうろうろしていると、居間でお茶を啜っているお父さんと目が合った。
え、お父さん、何でこんなに早起きしてるの!
呆気にとられていると、お父さんは沼田さんの顔をまじまじと見るや、「ふぅ」の一息。
「おいおい、お前。あんまり変なもの見つけるんじゃない」
「え?あっ、あのカレンダー、お父さんが持ってったの?ていうか、こんなに朝早く俺の部屋で何やってたんだ?!」
「そんなことより、お父さんと約束しなさい。もうあんなもの引っ張り出さないってな」
カレンダーはどうしたんだと聞くと、今し方、ハサミでチョンチョンに切ってゴミ箱の中にぶち込んだところだ、との答え。
何でそんな捨て方すんの、いやむしろ何でソッコー捨てる必要あんの?と矢継ぎ早に質問するが、お父さんは涼しい顔。慣れない手つきで、急須にお湯を足している。
「長く生きてりゃ、いろいろあるもんだ。まだ朝も早い。お前も、もう少し部屋で寝てなさい」
にべもなく言われ、部屋へ戻るしか無かったという。
いまだに、あの時の出来事の仔細をお父さんは話してくれないらしい。
蒸し返すたびに、「そんな下らないこと、早く忘れろ」と言われるというが、
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