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#014 『散歩する靴』
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現役女子中学生・美園さんの通う中学校の用務員室には、一足の―― 女物のとても古い靴が保存されている。
そして、用務員さんが学校に来て一番はじめにする仕事は、〝この靴がいつもの棚の中にきちんと収まっているか〟を確かめることなのである。
だいたい一週間に一回、この靴は忽然と姿を消している。
用務員さんは靴の紛失を確認すると、慌てて校舎裏の、現在使用禁止になっている焼却炉へと走る。すると必ず、焼却炉の真ん前に、この靴は ちょこんと並んで揃っているのだ。
それを回収して、また棚の中に直し込む。
直した後は、静かに合掌して「どうか安らかに」と切に念じるのだという。
「なぁに、それ!きもっ!!」
「そんな呪いの靴なんかさぁ、それこそ焼却炉で燃やしちゃえば良くね?」
用務員さんからこの靴の奇妙ないわれを聞いた美園さんとその友達は、「古くさい学校怪談的な作り話」だと思い、わざと露骨な憎まれ口を叩いてみせた。
オドオドした大人しい性格の用務員さんだったので、二人は暇を見つけては用務員室に入り浸り、彼をからかっていたのだ。
どうせ今回も、いつものおかまっぽい仕草で俯いて、困った顔をするだろうと見越してのことだった。
しかし、予想に反して。用務員さんはキッときつい視線で二人を射た。
「そんなことを言っちゃいけない。靴が怒るぞ」
彼は毅然とした声でそう言うと、「君たちだって、きもいとか死ねばいいとか言われればいい気がしないだろう。あの靴はもの凄く長い間、この学校で生き続けているんだ。人間と同じ心が宿っているんだ」と、つらつら続けた。
「さ、靴に謝りなさい」
これほど堂々として怖い顔をする用務員さんは はじめて見たので、完全に気圧されした彼女らは少し涙ぐみながら、棚越しの靴に「ごめんなさい」と謝った。
用務員さんも、黙って目を閉じ、長く合掌していた。
「強く言っちゃってごめんね」と、最後に用務員さんは二人へ困ったような笑顔を向けて頭を下げた。
「僕も〝彼女〟には早く安らかに眠ってほしいと思ってるんだけど・・・まだ散歩する癖が抜けないみたいだ。ハハハ・・・ 悲しい靴なんだよ、あれは」
美園さんはその時、〝用務員さんと この古い女物の靴との間には、何か深い因縁のようなものがあるのかも知れない〟と直感した。
だが、それを追求することは 何故かとても残酷なような気がしたので、これまでの非礼を贖う意味も込めて深く頭を下げ、そのまま黙って用務員室を後にしたという。
そして、用務員さんが学校に来て一番はじめにする仕事は、〝この靴がいつもの棚の中にきちんと収まっているか〟を確かめることなのである。
だいたい一週間に一回、この靴は忽然と姿を消している。
用務員さんは靴の紛失を確認すると、慌てて校舎裏の、現在使用禁止になっている焼却炉へと走る。すると必ず、焼却炉の真ん前に、この靴は ちょこんと並んで揃っているのだ。
それを回収して、また棚の中に直し込む。
直した後は、静かに合掌して「どうか安らかに」と切に念じるのだという。
「なぁに、それ!きもっ!!」
「そんな呪いの靴なんかさぁ、それこそ焼却炉で燃やしちゃえば良くね?」
用務員さんからこの靴の奇妙ないわれを聞いた美園さんとその友達は、「古くさい学校怪談的な作り話」だと思い、わざと露骨な憎まれ口を叩いてみせた。
オドオドした大人しい性格の用務員さんだったので、二人は暇を見つけては用務員室に入り浸り、彼をからかっていたのだ。
どうせ今回も、いつものおかまっぽい仕草で俯いて、困った顔をするだろうと見越してのことだった。
しかし、予想に反して。用務員さんはキッときつい視線で二人を射た。
「そんなことを言っちゃいけない。靴が怒るぞ」
彼は毅然とした声でそう言うと、「君たちだって、きもいとか死ねばいいとか言われればいい気がしないだろう。あの靴はもの凄く長い間、この学校で生き続けているんだ。人間と同じ心が宿っているんだ」と、つらつら続けた。
「さ、靴に謝りなさい」
これほど堂々として怖い顔をする用務員さんは はじめて見たので、完全に気圧されした彼女らは少し涙ぐみながら、棚越しの靴に「ごめんなさい」と謝った。
用務員さんも、黙って目を閉じ、長く合掌していた。
「強く言っちゃってごめんね」と、最後に用務員さんは二人へ困ったような笑顔を向けて頭を下げた。
「僕も〝彼女〟には早く安らかに眠ってほしいと思ってるんだけど・・・まだ散歩する癖が抜けないみたいだ。ハハハ・・・ 悲しい靴なんだよ、あれは」
美園さんはその時、〝用務員さんと この古い女物の靴との間には、何か深い因縁のようなものがあるのかも知れない〟と直感した。
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