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水の王国編
え、私全部飲んで良いの?
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待つこと5分ほど。酒蔵の扉を開けたティードの後ろにはなんの変哲もない大きさだけが特徴的な壺を持ったメアリー。そして何故か同行してきた酒場のマスター。
「元は国宝ということで返していただくことになりました。大切に保管してくれていたことに対する相応の謝礼はお渡ししますが……」
ティードは私にこそっと耳打ちをする。
「やっぱり私からも何か……」
「いえ。そもそも国宝を紛失させた我々が悪いのでそのようなお気遣いは不要です。むしろ見つける手助けをしてくださったレジーナ様にも何か礼をしなくてはならないくらいです」
「まあ、それは清酒作りに清浄の壺を使わせてもらうということで」
そう言ったところでティードは少し渋るように言葉をもらす。
「しかし、やはり国宝を酒造りに使うのは……」
「偉い人の許可とか必要かしら?」
「普通は……。はい」
というとやっぱりアウラ王子かな? でも……
「アウラ王子に許可を取りに行くとして……」
私がそう言うと、続く言葉を酒蔵の職人たちが声を揃えるようにして代弁する。
「あいつがダメって言うわけないだろ」
「飲み仲間の俺たちが言うんだから間違いない」
「むしろ良い酒作れって尻叩いて来そうなもんだ」
「それに可愛い女の子の頼みだしよ!」
「あ! ずるいぞ鶴旗の! 俺だってレジーナちゃんに可愛いって言いたい!」
「誰が可愛いって?」
幸水の酒蔵の職人は突然現れた奥さんに耳をつままれて引っ張り倒された。
水神殺しの職人さんが呼んでいたらしい。なんとも楽しい足の引っ張り合いだ。私は可愛いって言われてるだけだから良いけど。現世では言われたことがなかったから不思議な気持ちだけど。
「はあ……。あの馬鹿王子なら事後報告でいいか……」
苦労人ティードはため息と共に頭を抱える。え、これは使って良い流れよね?
「じゃあ、絞ったお酒をガンガン濾過して行きましょう!」
私の鶴の一声で一気に盛り上がる。
我先にと生酒を濾過にかける職人たち。
清浄の壺はなんの抵抗もなく注いだ酒を濾過していく。まるでそこになにも無いかのように注いだ先から濾過されていく。壺なのに中に何も貯まらないというのはおかしなものだけど、壺の底から清流のようなお酒が流れ出る様を見ていると、この為に存在しているんじゃないかと思える。
清酒を作るためにこの壺はあるんだと。
「この壺はベンネスの湖の水が飲めないほど汚染されていた時代に当時の魔法使いたちが命を削って作ったとされています。このおかげで今の国があるという伝承もあります」
「……ごめんなさい」
ティードの話につい謝ってしまう。罰当たりなことをしてごめんなさい。でもやめられないの。
「まあ、こうしてまたこの国の恩人に喜んでもらえるのなら清浄の壺も本望でしょう」
小さなため息が聞こえたけど、ティードは少し嬉しそうに頬を緩ませていた。
「さあレジーナちゃん! 俺たちが作った最高の清酒を召し上がれ!」
職人たちが並んで私に酒瓶を差し出す。透明な清酒が美しく見える透明な酒瓶。中に何も入っていないと言われても信じてしまうほどの透明度。
しかし少し離れていても分かる日本酒独特の芳醇な香り。
清浄の壺は清酒の旨味は不純物として認識していない。それが分かる。なんと素晴らしいご都合主義! これだからゲームの世界は素敵!
「え、全部……全部飲んで良いの?」
もう嬉しすぎて涙が出そう。
「はい。レジーナ様の為のお酒です」
隣でティードが言う。
私はおちょこに注がれた日本酒をそっと喉に通した。
ああ……
ここから先の記憶は、この清らかな酒に溶けて消えてしまうだろう……
「元は国宝ということで返していただくことになりました。大切に保管してくれていたことに対する相応の謝礼はお渡ししますが……」
ティードは私にこそっと耳打ちをする。
「やっぱり私からも何か……」
「いえ。そもそも国宝を紛失させた我々が悪いのでそのようなお気遣いは不要です。むしろ見つける手助けをしてくださったレジーナ様にも何か礼をしなくてはならないくらいです」
「まあ、それは清酒作りに清浄の壺を使わせてもらうということで」
そう言ったところでティードは少し渋るように言葉をもらす。
「しかし、やはり国宝を酒造りに使うのは……」
「偉い人の許可とか必要かしら?」
「普通は……。はい」
というとやっぱりアウラ王子かな? でも……
「アウラ王子に許可を取りに行くとして……」
私がそう言うと、続く言葉を酒蔵の職人たちが声を揃えるようにして代弁する。
「あいつがダメって言うわけないだろ」
「飲み仲間の俺たちが言うんだから間違いない」
「むしろ良い酒作れって尻叩いて来そうなもんだ」
「それに可愛い女の子の頼みだしよ!」
「あ! ずるいぞ鶴旗の! 俺だってレジーナちゃんに可愛いって言いたい!」
「誰が可愛いって?」
幸水の酒蔵の職人は突然現れた奥さんに耳をつままれて引っ張り倒された。
水神殺しの職人さんが呼んでいたらしい。なんとも楽しい足の引っ張り合いだ。私は可愛いって言われてるだけだから良いけど。現世では言われたことがなかったから不思議な気持ちだけど。
「はあ……。あの馬鹿王子なら事後報告でいいか……」
苦労人ティードはため息と共に頭を抱える。え、これは使って良い流れよね?
「じゃあ、絞ったお酒をガンガン濾過して行きましょう!」
私の鶴の一声で一気に盛り上がる。
我先にと生酒を濾過にかける職人たち。
清浄の壺はなんの抵抗もなく注いだ酒を濾過していく。まるでそこになにも無いかのように注いだ先から濾過されていく。壺なのに中に何も貯まらないというのはおかしなものだけど、壺の底から清流のようなお酒が流れ出る様を見ていると、この為に存在しているんじゃないかと思える。
清酒を作るためにこの壺はあるんだと。
「この壺はベンネスの湖の水が飲めないほど汚染されていた時代に当時の魔法使いたちが命を削って作ったとされています。このおかげで今の国があるという伝承もあります」
「……ごめんなさい」
ティードの話につい謝ってしまう。罰当たりなことをしてごめんなさい。でもやめられないの。
「まあ、こうしてまたこの国の恩人に喜んでもらえるのなら清浄の壺も本望でしょう」
小さなため息が聞こえたけど、ティードは少し嬉しそうに頬を緩ませていた。
「さあレジーナちゃん! 俺たちが作った最高の清酒を召し上がれ!」
職人たちが並んで私に酒瓶を差し出す。透明な清酒が美しく見える透明な酒瓶。中に何も入っていないと言われても信じてしまうほどの透明度。
しかし少し離れていても分かる日本酒独特の芳醇な香り。
清浄の壺は清酒の旨味は不純物として認識していない。それが分かる。なんと素晴らしいご都合主義! これだからゲームの世界は素敵!
「え、全部……全部飲んで良いの?」
もう嬉しすぎて涙が出そう。
「はい。レジーナ様の為のお酒です」
隣でティードが言う。
私はおちょこに注がれた日本酒をそっと喉に通した。
ああ……
ここから先の記憶は、この清らかな酒に溶けて消えてしまうだろう……
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