過労死社畜は悪役令嬢に転生して経済革命を起こす

色部耀

文字の大きさ
65 / 66
火の王国編

え、私縁起の悪い話を聞いてる?

しおりを挟む
 畳の上で猫のように伸びていたり、謎空間から景色を眺めているだけで時間は溶けてしまう。気がつくと仲居さんが温泉へ案内するために訪ねてきていた。

「当館の温泉は、初代火の王アエスタースが冒険者時代に訪れていたことでも有名でございます。伝記によると、この辺りは竜が多く住み苦戦が続いたアエスタースにとって良い思い出はほとんどなかったようです。さらに想いを寄せていた冒険者仲間の女性に別れを告げられた地としても有名です」
「あまり縁起の良い場所じゃないんですね」

 仕事でも恋愛でも嫌な思い出のある地と言われると複雑な気にもなる。一階に下り、そこから更に地下へと向かう。その道中で仲居さんは話を続ける。

「そんなアエスタースが唯一手放しで誉めていたのがこの温泉です。当時は村といえるほどではなく、旅館があるだけの休息地といった感じでした。アエスタースはそんなポツンとあった旅館を守るために竜を駆逐したと言われます。どんなに辛い思い出があってもこの温泉だけは後世まで残したかったと伝えられています」

 そのような言い方をされると本当に期待してしまう。どんなに辛いことがあっても守りたい場所……それは現世でも少し実感がある。あまり良い思い出の無かった小学校が廃校になると知ったとき、どうにか残ってくれないかと思ったものだ。私が好きだったのは飼育小屋だけだったけど。

「では、ごゆっくりお楽しみください」

 銭湯らしい男女別の暖簾。その前で仲居さんが止まって深く頭を下げた。

「じゃあクロード。また後でね」
「はい。私はここで待っております」
「クロードもちゃんと男湯に入って」
「しかし外からの襲撃なども警戒しておかなければ」
「こっちにはメアリーもリラもいるから万が一襲われてもちゃちゃっと返り討ちよ。アリスには2つのエンブレムがあるしね」
「クロード。たまにはあなたも疲れを取りなさい。これは命令よ」
「く……。かしこまりました」

 悔しそうなリアクションをしながらもアリスの命令には逆らえなさそうなクロード。

「後で温泉の感想聞くから入ったふりして待ってたら分かるからね」
「レジーナ様。御言葉ですが私はアリス様の命令に背くことはありませんよ?」

 そうですか。私の言うことにはよく反抗しますけどね。

「じゃあ、改めて。いってきます」

 そう言って私はアリスとリラとメアリーの4人で女湯への暖簾をくぐったのだった。
しおりを挟む
感想 19

あなたにおすすめの小説

追放された私の代わりに入った女、三日で国を滅ぼしたらしいですよ?

タマ マコト
ファンタジー
王国直属の宮廷魔導師・セレス・アルトレイン。 白銀の髪に琥珀の瞳を持つ、稀代の天才。 しかし、その才能はあまりに“美しすぎた”。 王妃リディアの嫉妬。 王太子レオンの盲信。 そして、セレスを庇うはずだった上官の沈黙。 「あなたの魔法は冷たい。心がこもっていないわ」 そう言われ、セレスは**『無能』の烙印**を押され、王国から追放される。 彼女はただ一言だけ残した。 「――この国の炎は、三日で尽きるでしょう。」 誰もそれを脅しとは受け取らなかった。 だがそれは、彼女が未来を見通す“預言魔法”の言葉だったのだ。

悪役令嬢の父は売られた喧嘩は徹底的に買うことにした

まるまる⭐️
ファンタジー
【第5回ファンタジーカップにおきまして痛快大逆転賞を頂戴いたしました。応援頂き、本当にありがとうございました】「アルテミス! 其方の様な性根の腐った女はこの私に相応しくない!! よって其方との婚約は、今、この場を持って破棄する!!」 王立学園の卒業生達を祝うための祝賀パーティー。娘の晴れ姿を1目見ようと久しぶりに王都に赴いたワシは、公衆の面前で王太子に婚約破棄される愛する娘の姿を見て愕然とした。 大事な娘を守ろうと飛び出したワシは、王太子と対峙するうちに、この婚約破棄の裏に隠れた黒幕の存在に気が付く。 おのれ。ワシの可愛いアルテミスちゃんの今までの血の滲む様な努力を台無しにしおって……。 ワシの怒りに火がついた。 ところが反撃しようとその黒幕を探るうち、その奥には陰謀と更なる黒幕の存在が……。 乗り掛かった船。ここでやめては男が廃る。売られた喧嘩は徹底的に買おうではないか!! ※※ ファンタジーカップ、折角のお祭りです。遅ればせながら参加してみます。

婚約者に毒を飲まされた私から【毒を分解しました】と聞こえてきました。え?

こん
恋愛
成人パーティーに参加した私は言われのない罪で婚約者に問い詰められ、遂には毒殺をしようとしたと疑われる。 「あくまでシラを切るつもりだな。だが、これもお前がこれを飲めばわかる話だ。これを飲め!」 そう言って婚約者は毒の入ったグラスを渡す。渡された私は躊躇なくグラスを一気に煽る。味は普通だ。しかし、飲んでから30秒経ったあたりで苦しくなり初め、もう無理かも知れないと思った時だった。 【毒を検知しました】 「え?」 私から感情のない声がし、しまいには毒を分解してしまった。私が驚いている所に友達の魔法使いが駆けつける。 ※なろう様で掲載した作品を少し変えたものです

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

悪役令嬢と弟が相思相愛だったのでお邪魔虫は退場します!どうか末永くお幸せに!

ユウ
ファンタジー
乙女ゲームの王子に転生してしまったが断罪イベント三秒前。 婚約者を蔑ろにして酷い仕打ちをした最低王子に転生したと気づいたのですべての罪を被る事を決意したフィルベルトは公の前で。 「本日を持って私は廃嫡する!王座は弟に譲り、婚約者のマリアンナとは婚約解消とする!」 「「「は?」」」 「これまでの不始末の全ては私にある。責任を取って罪を償う…全て悪いのはこの私だ」 前代未聞の出来事。 王太子殿下自ら廃嫡を宣言し婚約者への謝罪をした後にフィルベルトは廃嫡となった。 これでハッピーエンド。 一代限りの辺境伯爵の地位を許され、二人の幸福を願ったのだった。 その潔さにフィルベルトはたちまち平民の心を掴んでしまった。 対する悪役令嬢と第二王子には不測の事態が起きてしまい、外交問題を起こしてしまうのだったが…。 タイトル変更しました。

国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします。

樋口紗夕
恋愛
公爵令嬢ヘレーネは王立魔法学園の卒業パーティーで第三王子ジークベルトから婚約破棄を宣言される。 ジークベルトの真実の愛の相手、男爵令嬢ルーシアへの嫌がらせが原因だ。 国外追放を言い渡したジークベルトに、ヘレーネは眉一つ動かさずに答えた。 「国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします」

卒業パーティでようやく分かった? 残念、もう手遅れです。

ファンタジー
貴族の伝統が根づく由緒正しい学園、ヴァルクレスト学院。 そんな中、初の平民かつ特待生の身分で入学したフィナは卒業パーティの片隅で静かにグラスを傾けていた。 すると隣国クロニア帝国の王太子ノアディス・アウレストが会場へとやってきて……。

処理中です...