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火の王国編
え、私縁起の悪い話を聞いてる?
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畳の上で猫のように伸びていたり、謎空間から景色を眺めているだけで時間は溶けてしまう。気がつくと仲居さんが温泉へ案内するために訪ねてきていた。
「当館の温泉は、初代火の王アエスタースが冒険者時代に訪れていたことでも有名でございます。伝記によると、この辺りは竜が多く住み苦戦が続いたアエスタースにとって良い思い出はほとんどなかったようです。さらに想いを寄せていた冒険者仲間の女性に別れを告げられた地としても有名です」
「あまり縁起の良い場所じゃないんですね」
仕事でも恋愛でも嫌な思い出のある地と言われると複雑な気にもなる。一階に下り、そこから更に地下へと向かう。その道中で仲居さんは話を続ける。
「そんなアエスタースが唯一手放しで誉めていたのがこの温泉です。当時は村といえるほどではなく、旅館があるだけの休息地といった感じでした。アエスタースはそんなポツンとあった旅館を守るために竜を駆逐したと言われます。どんなに辛い思い出があってもこの温泉だけは後世まで残したかったと伝えられています」
そのような言い方をされると本当に期待してしまう。どんなに辛いことがあっても守りたい場所……それは現世でも少し実感がある。あまり良い思い出の無かった小学校が廃校になると知ったとき、どうにか残ってくれないかと思ったものだ。私が好きだったのは飼育小屋だけだったけど。
「では、ごゆっくりお楽しみください」
銭湯らしい男女別の暖簾。その前で仲居さんが止まって深く頭を下げた。
「じゃあクロード。また後でね」
「はい。私はここで待っております」
「クロードもちゃんと男湯に入って」
「しかし外からの襲撃なども警戒しておかなければ」
「こっちにはメアリーもリラもいるから万が一襲われてもちゃちゃっと返り討ちよ。アリスには2つのエンブレムがあるしね」
「クロード。たまにはあなたも疲れを取りなさい。これは命令よ」
「く……。かしこまりました」
悔しそうなリアクションをしながらもアリスの命令には逆らえなさそうなクロード。
「後で温泉の感想聞くから入ったふりして待ってたら分かるからね」
「レジーナ様。御言葉ですが私はアリス様の命令に背くことはありませんよ?」
そうですか。私の言うことにはよく反抗しますけどね。
「じゃあ、改めて。いってきます」
そう言って私はアリスとリラとメアリーの4人で女湯への暖簾をくぐったのだった。
「当館の温泉は、初代火の王アエスタースが冒険者時代に訪れていたことでも有名でございます。伝記によると、この辺りは竜が多く住み苦戦が続いたアエスタースにとって良い思い出はほとんどなかったようです。さらに想いを寄せていた冒険者仲間の女性に別れを告げられた地としても有名です」
「あまり縁起の良い場所じゃないんですね」
仕事でも恋愛でも嫌な思い出のある地と言われると複雑な気にもなる。一階に下り、そこから更に地下へと向かう。その道中で仲居さんは話を続ける。
「そんなアエスタースが唯一手放しで誉めていたのがこの温泉です。当時は村といえるほどではなく、旅館があるだけの休息地といった感じでした。アエスタースはそんなポツンとあった旅館を守るために竜を駆逐したと言われます。どんなに辛い思い出があってもこの温泉だけは後世まで残したかったと伝えられています」
そのような言い方をされると本当に期待してしまう。どんなに辛いことがあっても守りたい場所……それは現世でも少し実感がある。あまり良い思い出の無かった小学校が廃校になると知ったとき、どうにか残ってくれないかと思ったものだ。私が好きだったのは飼育小屋だけだったけど。
「では、ごゆっくりお楽しみください」
銭湯らしい男女別の暖簾。その前で仲居さんが止まって深く頭を下げた。
「じゃあクロード。また後でね」
「はい。私はここで待っております」
「クロードもちゃんと男湯に入って」
「しかし外からの襲撃なども警戒しておかなければ」
「こっちにはメアリーもリラもいるから万が一襲われてもちゃちゃっと返り討ちよ。アリスには2つのエンブレムがあるしね」
「クロード。たまにはあなたも疲れを取りなさい。これは命令よ」
「く……。かしこまりました」
悔しそうなリアクションをしながらもアリスの命令には逆らえなさそうなクロード。
「後で温泉の感想聞くから入ったふりして待ってたら分かるからね」
「レジーナ様。御言葉ですが私はアリス様の命令に背くことはありませんよ?」
そうですか。私の言うことにはよく反抗しますけどね。
「じゃあ、改めて。いってきます」
そう言って私はアリスとリラとメアリーの4人で女湯への暖簾をくぐったのだった。
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