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リヒト
魔法の属性
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デュランは本棚から一冊の本を取り出した。
大きくて重そうだ。
『この本の表紙に手を置いて』
言われるまま、本の上に手を置くと。
本全体が。
眩く光りだした。
『いいよ、手を離して』
本から手を離すと。
光を放ったまま、勝手に本の表紙が開いた。光が強いページと、弱いページがあるようだ。
デュランはそれを見て、納得したように頷いた。
『ああ、やっぱり一番光が強いのは医療魔法だね。次に植物、土、水……。だいたいの魔法は使えるけど、攻撃系はさっぱりだ。あ、通信魔法も取得できそうだよ。良かったね』
†‡†‡†
この本は、魔力の属性を調べるものらしい。
一番光が強いページに記載されている魔法が、最も得意な魔法だという。
通信魔法が使えるってことは、元の世界にいる家族に、連絡可能だってことか。
一番の懸念が解決しそうで、ほっとする。
「……デュランさん、どうしてそんなに嬉しそうなんですか?」
ローブを被ってても、声が嬉しそうだし。
にこにこしてるのがわかった。
『だって。僕の得意分野とは被らないのに、不得意分野が得意な同僚が出来たんだ。そりゃ嬉しいよ』
デュランはこの国で唯一の”魔法使い”だったので。
今まで苦手なことを無理矢理やらされて辟易していたという。
なるほど。
ライバルにはならない同僚が出来たわけか。
僕は素直に喜べないけどね!
デュランは棚から僕が使えそうな魔法の魔導書を数冊抜き出し、渡された。
内容を頭に叩き込めと言われた。
異世界の文字が読めるか心配だったけど。
さすが魔導書というか。
文字はわからないのに、見るだけで内容が頭に入ってくる。不思議だ。
†‡†‡†
『これは、魔法の才能がないと、文字も見えない。クロエはこんなにたくさんの本が読めるのか。凄いな』
ジャンが僕が読んでいる医療魔法の魔導書を覗き込んだ。
「ジャンさんには、どう見えてるのこれ?」
『俺は医療系魔法を少し使えるから、この本なら、少し読める』
「えっそうなの!?」
魔法の才能がある人って、かなりレアっぽいイメージだったけど。
『J・Jは成人してすぐ、名誉ある森林管理人に選ばれたくらいだからね。魔法の才能はあるよ。ちょっとだけね』
デュランはちょっと、の部分を強調して言った。
森林管理人ってこの国じゃ名誉職なの?
教えてよ!
魔法がいくらか使えても、魔法使いになれる訳じゃないのか。
どれか一冊でも、全部のページを読めないと駄目なんて。
ハードル高いな。
不得意とはいうものの。
だいたいの本が読めて、魔法を一通り使えるというデュランは凄い魔法使いみたいだ。
先の戦争でも、前線に出て戦っていた生き残りだっていうし。
今までポンコツ魔法使いだと思ってたデュランの印象が一気に変わったよ。
そこは素直に尊敬しておこう。
『クロエにも何度か治療魔法を使ったが。気づかなかったか?』
そういえば。
転んで足を挫いてたはずなのに、起きたら痛くなかった。
それって、ジャンが治療してくれたからだったんだ。
噛みすぎた首筋や、痣みたいになったキスマークや歯型も消した?
知らないよそんなの!
あと、そういうこと、人前で言うのやめて欲しいんだけど。
†‡†‡†
魔導書はしばらく貸し出してくれるというので。
ジャンに、客室に運んでもらった。
夕食の時間だというので、食堂に呼ばれた。
今日はデュランも同席するようだ。
食事の合間、王様に新たにわかった占いの結果とか、僕が魔法を覚えることとかを報告してる。
『なんと、賢いとは思っていたが、クロエは魔法の才能もあったか。ならば災禍が過ぎたのちはここで働くといい。J・J、城に住居を設けるか? 森へはここから通えばよいだろう』
デュランも住み込みだし。
魔法使いは基本、城に常駐するもののようだ。
王様の誘いに、ジャンは前向きに検討するようなことを答えてた。
かなり楽観的な王様だな。
気が早いよ。
伝染病が、実際どんなものかわからない内は、まだ安心できないんだけど。
絶対に僕がどうにかするだろう、って信頼されてるのかな?
救世主だから?
プレッシャー半端ないわ!
僕はまだ、学生なんだってば!
「とりあえず、明日は森の植物を見てみたいと思ってます。薬になりそうな草とかを探したいので」
散策には、森林管理人のジャンと。
護衛として、パーシヴァルが一緒についてきてくれるそうだ。
明日も城内を案内したかったメイベルは残念そうだったけど。
国の危機を回避するためなので我慢する、と言った。
『僕たちも、協力できることはいくらでもお手伝いするから、何でも言ってね?』
「ありがとう。その時は遠慮なくお願いするね」
『薬作りには僕も協力するよ。というか、異世界の薬の作り方とか見たいし』
デュランが手を挙げた。
それはありがたい。
†‡†‡†
「あ、そういえば毒薬について、ちょっと尋ねたいことが……」
毒も使いようによっては薬になる。
蛇の毒から血清を作ったりするし、神経毒も少量なら痛み止めになったりする、という話をした。
『へえ、毒にも平和的な使い方があるんだねえ』
デュランは感心している様子で言った。
ええ……。
今まで、平和的じゃない使い方しかしてなかったのか……。
猛毒細菌界トップ3に入るボツリヌス菌ですら、ボトックスとかいって美容に利用したり。
毒物の平和的活用法は色々あるんだ。
今は倫理的に許されていない、人体実験・動物実験など。
たくさんの犠牲の上で、現代の医療は成り立ってる。
理論的に成分を分析して、効能を予想できても、実際に誰かが試さないと本当の効能はわからないものだ。数年たって副作用が現れるものだってある。
年齢や体格によっても許容量は変わるし、アレルギー、体質などの問題もある。
麻酔薬ができる前までなんて、麻酔なしで手術をしていたんだよな。
今でも投薬で失敗することはあるし。
麻酔がどうして効くのかも、まだ理論的に証明されてはいないんだ。
大きくて重そうだ。
『この本の表紙に手を置いて』
言われるまま、本の上に手を置くと。
本全体が。
眩く光りだした。
『いいよ、手を離して』
本から手を離すと。
光を放ったまま、勝手に本の表紙が開いた。光が強いページと、弱いページがあるようだ。
デュランはそれを見て、納得したように頷いた。
『ああ、やっぱり一番光が強いのは医療魔法だね。次に植物、土、水……。だいたいの魔法は使えるけど、攻撃系はさっぱりだ。あ、通信魔法も取得できそうだよ。良かったね』
†‡†‡†
この本は、魔力の属性を調べるものらしい。
一番光が強いページに記載されている魔法が、最も得意な魔法だという。
通信魔法が使えるってことは、元の世界にいる家族に、連絡可能だってことか。
一番の懸念が解決しそうで、ほっとする。
「……デュランさん、どうしてそんなに嬉しそうなんですか?」
ローブを被ってても、声が嬉しそうだし。
にこにこしてるのがわかった。
『だって。僕の得意分野とは被らないのに、不得意分野が得意な同僚が出来たんだ。そりゃ嬉しいよ』
デュランはこの国で唯一の”魔法使い”だったので。
今まで苦手なことを無理矢理やらされて辟易していたという。
なるほど。
ライバルにはならない同僚が出来たわけか。
僕は素直に喜べないけどね!
デュランは棚から僕が使えそうな魔法の魔導書を数冊抜き出し、渡された。
内容を頭に叩き込めと言われた。
異世界の文字が読めるか心配だったけど。
さすが魔導書というか。
文字はわからないのに、見るだけで内容が頭に入ってくる。不思議だ。
†‡†‡†
『これは、魔法の才能がないと、文字も見えない。クロエはこんなにたくさんの本が読めるのか。凄いな』
ジャンが僕が読んでいる医療魔法の魔導書を覗き込んだ。
「ジャンさんには、どう見えてるのこれ?」
『俺は医療系魔法を少し使えるから、この本なら、少し読める』
「えっそうなの!?」
魔法の才能がある人って、かなりレアっぽいイメージだったけど。
『J・Jは成人してすぐ、名誉ある森林管理人に選ばれたくらいだからね。魔法の才能はあるよ。ちょっとだけね』
デュランはちょっと、の部分を強調して言った。
森林管理人ってこの国じゃ名誉職なの?
教えてよ!
魔法がいくらか使えても、魔法使いになれる訳じゃないのか。
どれか一冊でも、全部のページを読めないと駄目なんて。
ハードル高いな。
不得意とはいうものの。
だいたいの本が読めて、魔法を一通り使えるというデュランは凄い魔法使いみたいだ。
先の戦争でも、前線に出て戦っていた生き残りだっていうし。
今までポンコツ魔法使いだと思ってたデュランの印象が一気に変わったよ。
そこは素直に尊敬しておこう。
『クロエにも何度か治療魔法を使ったが。気づかなかったか?』
そういえば。
転んで足を挫いてたはずなのに、起きたら痛くなかった。
それって、ジャンが治療してくれたからだったんだ。
噛みすぎた首筋や、痣みたいになったキスマークや歯型も消した?
知らないよそんなの!
あと、そういうこと、人前で言うのやめて欲しいんだけど。
†‡†‡†
魔導書はしばらく貸し出してくれるというので。
ジャンに、客室に運んでもらった。
夕食の時間だというので、食堂に呼ばれた。
今日はデュランも同席するようだ。
食事の合間、王様に新たにわかった占いの結果とか、僕が魔法を覚えることとかを報告してる。
『なんと、賢いとは思っていたが、クロエは魔法の才能もあったか。ならば災禍が過ぎたのちはここで働くといい。J・J、城に住居を設けるか? 森へはここから通えばよいだろう』
デュランも住み込みだし。
魔法使いは基本、城に常駐するもののようだ。
王様の誘いに、ジャンは前向きに検討するようなことを答えてた。
かなり楽観的な王様だな。
気が早いよ。
伝染病が、実際どんなものかわからない内は、まだ安心できないんだけど。
絶対に僕がどうにかするだろう、って信頼されてるのかな?
救世主だから?
プレッシャー半端ないわ!
僕はまだ、学生なんだってば!
「とりあえず、明日は森の植物を見てみたいと思ってます。薬になりそうな草とかを探したいので」
散策には、森林管理人のジャンと。
護衛として、パーシヴァルが一緒についてきてくれるそうだ。
明日も城内を案内したかったメイベルは残念そうだったけど。
国の危機を回避するためなので我慢する、と言った。
『僕たちも、協力できることはいくらでもお手伝いするから、何でも言ってね?』
「ありがとう。その時は遠慮なくお願いするね」
『薬作りには僕も協力するよ。というか、異世界の薬の作り方とか見たいし』
デュランが手を挙げた。
それはありがたい。
†‡†‡†
「あ、そういえば毒薬について、ちょっと尋ねたいことが……」
毒も使いようによっては薬になる。
蛇の毒から血清を作ったりするし、神経毒も少量なら痛み止めになったりする、という話をした。
『へえ、毒にも平和的な使い方があるんだねえ』
デュランは感心している様子で言った。
ええ……。
今まで、平和的じゃない使い方しかしてなかったのか……。
猛毒細菌界トップ3に入るボツリヌス菌ですら、ボトックスとかいって美容に利用したり。
毒物の平和的活用法は色々あるんだ。
今は倫理的に許されていない、人体実験・動物実験など。
たくさんの犠牲の上で、現代の医療は成り立ってる。
理論的に成分を分析して、効能を予想できても、実際に誰かが試さないと本当の効能はわからないものだ。数年たって副作用が現れるものだってある。
年齢や体格によっても許容量は変わるし、アレルギー、体質などの問題もある。
麻酔薬ができる前までなんて、麻酔なしで手術をしていたんだよな。
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