オタク眼鏡が救世主として異世界に召喚され、ケダモノな森の番人に拾われてツガイにされる話。

篠崎笙

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リヒト

伝染病の原因は

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ボール村の住民にも、軽く風邪は引いたが、治ったという人が数人いて。
やはり看病を手伝いたいという。

感染の心配さえなければ、猫の手でも借りたいところだ。


「では皆さん、このマスクを着けて。手を消毒して、シャワーを浴び、服も新しく清潔なものに交換してください。新たな感染を防ぐためです」

それと、理由を説明して、血液の提供もお願いした。
みんな、快く応じてくれた。


隣村の生き残りに、最初にこの病気に罹ったのは誰だか覚えているか、聞いてみた。
最初は話すのを躊躇していたけど。

原因解明のためだと言ったら、渋々話してくれた。


†‡†‡†


躊躇した意味は、すぐにわかった。

その男は、をする趣味があることで、ある意味有名だったという。
家畜相手にしか、性的興奮を覚えない。

つまり、日常的に獣姦を好む性癖を持っていた。

おそらく避妊具など使用しなかったのだろう。昔から、獣姦によって未知の病気に罹る症例は多い。
性病のいくつかは、動物と性交した船乗りから世界中に蔓延したと言われている。

ニワトリやハトなど、鳥も真菌など色々な病原菌を持ってる。
鳥は総排泄口。性交するのも卵を産むのも排泄するのも同じ穴だ。故に動物よりも危険だったりする。


宗教などでタブーとされていることには、何かしら理由があるのだ。
しかし、この国ではそれはタブーとされていない。

これが初の症例なのか。
それとも、今までは村単位で全滅していたので、表沙汰にならなかったかはわからない。


患者を広い部屋のある、公民館のような家に集め。
まとめて看病することにした。

そして、その間に患者のいた家を念入りに消毒する。


詳しく調べてみたところ、床に落ちたりドアなどに付着したウイルスの生存時間は、インフルエンザウイルスよりは短かった。
しかし、湿気に弱いインフルエンザとは違い、湿気を好む性質があるので、水気の多いところではなかなか死なない。

耐性を持った人の血から抗体を抽出し、患者に注射する。
抗体といっても、劇的に効く訳ではない。

後は熱が上がりすぎないか様子を見つつ、栄養のある食事をとらせて経過をみていくだけだ。
作ったワクチンは、まだ罹患していない村人やゾシメにも打っておく。


「とりあえず、これで処置は終わりです。後は回復を待ってください」

看病は、生き残りの人や耐性が付いた人たちでするというので。
マスクのストックや、栄養食のレシピと生理食塩水、消毒薬などを置いていく。

患者のいる部屋から出たら、再感染を防ぐために消毒を徹底することを念押しして。


†‡†‡†


『ありがとうございます……!』
両親が助かると知ったゾシメは、涙ながらに跪いた。

「あ、間違っても消毒しない手で目を擦らないでね。粘膜からウイルスが入るから」

通常は涙で流れるといっても、ウイルスがついた手で目を擦ってはさすがに危険かと思って注意すると。
皆緊張した顔になった。


脅かしすぎたかな?
でも感染力の高いウイルスの場合、このくらいの認識でいたほうが安全だ。

隣村の生き残りの人には、もっと早くあなたに報せていれば、自分の村人も助かっていたのかもしれないのに、と。
残念そうに言われた。

この村が助かったのは、ドニが命がけで助けを求めに獣人の国まで来たからだ。


ドニも、僕の存在を知っていたわけじゃない。
偶然、親切な獣人が見つけて。診療所に運ばれてきたんだから。

でも、死なずに済んだなら、それに越したことはなかった。
もし可能なら、一人の犠牲も出すことなく、全員助けたかった。


やっぱり僕は、医者には向いていない。
伝染病の危険性を知らしめるには必要な犠牲だったとか、しょうがなかったなんて割り切れないよ。


「この村の人が助かったら、それはあなたの血で作った抗体が役立ったということです。ご協力、感謝します」

『ありがとうございます。そう言っていただけたら、気持ちが慰められます』

しつこいほど、消毒の必要性を話したため。
ボール村にこの病気が感染したのは、自分たち生き残りのせいだと気づいたのだろう。

精一杯看病します、と頭を下げられた。


決して、この人のせいじゃない。
運悪く、本来は罹るはずのない病気を伝染させられた被害者なのだから。

原因の男は真っ先に死んでいる。
咎める相手はいない。


知り得ないことを知らないのは、決して罪じゃない。

だけど。
やるせない気持ちになる。


†‡†‡†


消毒を済まし、ボール村を出ると。


騎馬隊が並んでいて。
プリマット国王からの使いが待っていた。

隊長だという人に、自分たちはもう消毒済みで伝染の危険はないこと。
とりあえず処置は終わったけど、現在ウイルスに耐性の出来てる人が看病しているので、完治するまでは入らないよう伝えた。

治りかけでうろうろすると、抗体も効かないウイルスが誕生してしまうこともある。


『了解しました。あの、陛下が申されるには、先生に事態の説明をしていただきたいそうですが……』
「はい。僕も予防のために、お話ししておきたいことがあるので。助かります」

ジャンも人型になって。
白衣を羽織って、用意された馬車に乗り込んだ。


この隊の人は獣人を驚かなかった。
その代わり、あんまり良い感情は見えなかったけど。

荷台は、この国の兵たちが診療所まで戻しておいてくれるそうだ。
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