オタク眼鏡が救世主として異世界に召喚され、ケダモノな森の番人に拾われてツガイにされる話。

篠崎笙

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リヒト

僕の可愛い灰色熊

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「……んっ、あっ、あっ、」

さすがにお湯の中でのは駄目だろうと言ったら。
上半身を湯船から出した状態で。腰を打ち付けてくる。

ただ、太ももを擦られてるだけなのに。

何でこんなに、感じてしまうんだろう。
ツガイになったからか?

変な分泌液出るし。
ちょっと触られただけでも濡れるとか。

どうなってるんだよ。


身体だけじゃなく、心まで。
ジャンのツガイ仕様に変わっちゃったのかもしれない。

ジャンが、たまらなく愛おしくて。


自分でも、どうしちゃったんだって、不思議に思うくらい。
この気持ちは。

恋、なのかな?


†‡†‡†


「は、……やぁ、あっ」
『俺の可愛いミニョンプティ小鳥オワゾー。もっとその愛らしい鳴き声を聞かせてくれ……』

耳が火傷しそうなほど、熱い囁き。

こんな恥ずかしいセリフを言うのは、役者くらいかと思ってた。
口説き文句とか、甘い囁きなんて絶対言わないタイプだと思ってたって、パーシヴァルも言ってたっけ。

むしろ普段は無口で不愛想だって。
最初見たようなひげ面でそれだったら、怖いかも。

でも、僕にはよく話してくれるし。
笑ってくれる。

口説き文句も言いまくる。

色々と説明不足なことはあるけど。
本人的には頑張ってアピールしてるんだろうと思う。

僕のことが好きだって、全身で伝えてくる。


勝手にツガイにされて。
元の世界にも戻れない、おかしな身体にされちゃって。

怒ってたはずなのに。

いつの間にか。
ほだされちゃってたみたいだ。


自分を実験台にすればいい、なんて。

自分を殺せばツガイを解消できるなんて言って。
ふざけるなって思った。

責任もって、一緒にいろよって怒った。


ジャンは自分のことを語りたがらない。

強かったみたいだし。戦功だってありそうなのに。
それを自慢したりしない。

僕よりも年下なのに。

戦争とか、色々な経験をしてきて。
傷ついてきたんだ。

身体だけじゃなく、心も。


もし、まだ傷ついているなら、僕がそうできるなら。
癒してあげたいと思う。


僕だけの、可愛い灰色熊。


†‡†‡†


後ろは、分泌液でぐちゃぐちゃになるほど慣らされて。
前は、出なくなるまで絞られてしまった。

いい加減のぼせてぐったりしたのを、お姫様抱っこで運ばれて風呂場から出たら。


風呂まで案内してくれた騎士が、真っ赤な顔して立っていた。

部屋に案内する役も仰せつかっていた、とかなんとか。
恥ずかしそうに言った。

とんだ長湯ですみませんでした!!


『護衛も兼ねてるようだが、あんなへろへろして腰が引けていては頼りにならないな』
ジャンは小声で僕に言った。

彼が前屈みになってたのは、が聞こえちゃったせいじゃないの? まだ若そうだし。
男しかいない世界だ。反応してしまってもしょうがないと思う。


部屋に案内される途中でも、兵士とか使用人とかの視線をビシバシ感じた。

クマみたいな大男にお姫様抱っこされてる、ぐったりした子供だもんね。
何事かと思って見ちゃうよね。


しかも、鳴かせすぎたか、とか。
お前が可愛いからつい止められなかった、とか言ってるし。

無駄にいい声してるからもう。
みんな見るだろ!

そんな恥ずかしいセリフを延々と聞かされる、案内役の騎士の身にもなってやって欲しい。
そういうのは、部屋について、二人っきりになってからでいいから!

もういいから黙ってて、と。
口を塞ごうとしたら、手のひらを舐めるし。

甘い、じゃないっての。
このエロクマ!


ジャンは終始平気そうな顔をしていたけど。
僕は無茶苦茶恥ずかしかった。

伏せた顔を上げられなかった。

だいたい、人が待ってるなら、もっと早くお風呂から出たのに。
ジャンも気配で外に人がいるの知ってたなら、言えよ!!


せっかくの温泉だから、じっくり堪能したかったとか。

バカじゃないの!?
前言撤回。


このクマ、少しも可愛くない!!


†‡†‡†


翌朝。
ジェローム王と朝食をご一緒して。

ルロイ王への親書を受け取り、お別れを告げた。


送迎の馬車の前には、若い医者が二人待っていた。
本当に若い。

二人とも、18歳だそうだ。
日本じゃインターンの終わった医者は、若くても26歳くらいだもんな。


『ルイです。本日よりご指導、よろしくお願いします』
くるくる巻き毛の金髪に、青い目の笑顔が可愛い青年が名乗った。

『ベルナールです。勉強させていただきます』
赤茶の髪に緑の目にそばかすが散った愛嬌のある顔をした青年も、腰を折った。


背も高いし。
顔も、大人っぽいというか。

二人とも、僕より年上に見える……。

もういいや。
人種の違いと諦めよう。


馬車の中で少し話を聞いてみたところ。
覚えられる医療魔法は一通り覚えたけど。使いどころがわからなかったり、診断に自信がないようだ。


「そういうのは場数を踏めば何とかなるよ。初心者じゃなかった人なんてこの世にいないんだから」
僕だって、医療魔法を覚えたのはこっちに来てからだし。


†‡†‡†


元々は薬学が専門だったと話したら。

『薬、ですか』
『今は失われた知識だそうですが……』

困ったように、互いに見合っている。


医療はほぼ医療魔法に頼っているので、薬の知識は廃れてしまったようだ。
まあ、便利だもんな、魔法。

といっても、使える魔力には限度があるけど。


ただでさえ、医療魔法の使い手は少ないんだ。
魔力切れした後に重症患者が来たら、目も当てられない。

なるべく副作用の少ない薬も併せて、使っていきたいところだ。
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