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リヒト
ツガイの心得
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メイベルが僕に、内密に相談があるといって。
部屋に呼ばれた。
二人だけで話したいそうだ。なんだろう?
ジャンは、メイベルなら襲われる心配はないし大丈夫だろう、としぶしぶ手を離してくれた。
どういう意味だ。
メイベルじゃなくても、襲ってきたりしないってば。
ジャンじゃあるまいし。
『実は、ずっと悩んでたんだけど。今まで、他の誰にも聞けなくて困ってたんだ……』
メイベルは、恥ずかしそうにもじもじしながら、上目遣いで僕を見た。
男だってわかってても可愛いな。
だからって、ときめいたりはしないけど。
でも、ジャンに微笑まれるとドキドキしちゃうんだよな。
不思議だ。
恋って、理屈じゃないんだな。
などと色ボケてる場合じゃない。
ちゃんと、悩みを聞いてあげないと。
メイベルの友人として、そして医者として。どっちでも。
†‡†‡†
「どうしたの? 僕でよければ相談に乗るよ?」
『ありがとう、クロエ。ええとね、実は僕、来年になったら、プリマット国の王妃になるんだけど……』
プリマット国……?
すごく聞き覚えのある国名だ。
「ええっ!? メイベルの嫁ぎ先って、ジェローム王のとこだったの!?」
確か現在独身で、子供もいなかったはず。
戦争で失ったのかな、と思ってたけど。未婚だったのか。
でも、年齢差ありすぎじゃない!?
え、ジェローム王、36歳なのか。意外と若かった。
いや、それでもだいぶ年上じゃないか。
ロリコン!?
「で、ジェローム王と会った感想とか、プリマット国の客観的な印象とか聞きたいの?」
僕なら先日見てきたばかりだし。
さすがに、兵士とかルロイ王からは聞きにくいのかな? ジャンに聞くより、年が近いと思ってる僕にって思ったのかも。
『あ、一応、お見合い的なことはしたんだ。ロイ兄様からもお話を聞いてるし、ジェローム陛下のお顔や、人となりは知ってるつもりだから、大丈夫』
メイベルは、ほんのりと頬を染めている。
その様子から見て。
ジェローム王と結婚すること自体は、まんざらでもないようだ。
まあ、男前だったけど。
メイベルの好みだったのかな?
メイベルからしたら、かなりオッサンだろうに。渋い趣味だな。
ひとのことは言えないけど。
でも、政略結婚で望まない嫁入りではなくて、本人がお嫁に行くのに積極的なら良かった。
メイベルには幸せになってもらいたい。いい子だし。
……何だか妹を嫁にやるお兄ちゃんみたいな感覚だ。
お嫁に行ったら、寂しくて泣いちゃいそう。
†‡†‡†
メイベルは赤くなった頬を、気合を入れるようにぺしぺし叩いて。
真剣な顔で僕に向き合った。
『異世界の救世主としてでも、医者としてでもなく。J・Jのツガイとしてのクロエに、聞きたいことがあるんだ』
他でもない、ジャンのツガイとしての僕に?
何だろう。
メイベルは真っ赤になりながら、僕の耳に顔を寄せて。
『あの、……はじめての時って、どうだった?』
え!?
まさかの下ネタ!?
「どどど、どうって!?」
『……痛かったりした?』
メイベルが、不安そうな顔をしているのに気づいた。
ああ、そうか。
男相手に、そういうことをされるのが、怖いんだ。
そりゃそうだ。
三男以降だからって、生まれながらに役割を決められて。お嫁に行かされることは理解してるっていっても。まだ、15歳なんだし。不安のほうが大きいか。
お嫁に行った兄……姉さんたちにも手紙を出して聞いてみたけど。
大人になったらわかるよ、って言われただけだったそうだ。
まあ、まだ子供な妹に、そういった夫婦のあれこれを説明するのも困るよな……。
身内なだけに、余計話しにくいか。
その気持ちはよくわかる。
「うーん、でも、ジェローム王は人間だし、僕の場合とは、ちょっと違うかも。やっぱり”ツガイの儀式”ってするの?」
『ツガイの儀式? ええとね、最初の夜に、相手の左手の小指の根元を噛みなさい、って言われてる』
獣人側が受け身の場合とか、立場が違うと噛む場所も違うのかな?
僕は有無を言わせず受け身側にされちゃったけど。
でも、役割を交代したいか、と問われても。
無理かな……。
ジャンは好きだけど。
突っ込みたいとは思えない。
†‡†‡†
「僕がジャンに噛まれたの、首なんだよね。ほら、」
首筋のしるしを見せる。
自分じゃ見えないけど、触れるとわかるくらいの痕が残ってる。
『あ、これが花嫁側につけられる”ツガイのしるし”なんだ? 痛そうだね』
花嫁、って言い方なのか。
お互い獣人な場合は、首筋と小指を噛み合うのかな?
「確かに、これは痛かった……」
噛まれたことによって、細胞が変化したからかな?
強いお酒を飲んだような酩酊感があって。
気が付いたら、ここの言葉が通じるようになっていた。
気絶している間に、この世界に馴染む身体に変化したらしいんだけど。
自覚はないんだよね。
まだ子供なメイベルに尋ねるのは忍びないと思って、今まで訊かなかったけど。
これを訊かないと、話が進まないだろう。
「メイベルは魔法で子供が生める身体になったんだよね? どう変化したか、聞いていいかな?」
『はう。えっと、診察する?』
メイベルは真っ赤になってあわあわしている。
あ、そうだった。
僕は医者でもあったんだ。
「じゃ、”解析”の魔法使って、診てもいい?」
部屋に呼ばれた。
二人だけで話したいそうだ。なんだろう?
ジャンは、メイベルなら襲われる心配はないし大丈夫だろう、としぶしぶ手を離してくれた。
どういう意味だ。
メイベルじゃなくても、襲ってきたりしないってば。
ジャンじゃあるまいし。
『実は、ずっと悩んでたんだけど。今まで、他の誰にも聞けなくて困ってたんだ……』
メイベルは、恥ずかしそうにもじもじしながら、上目遣いで僕を見た。
男だってわかってても可愛いな。
だからって、ときめいたりはしないけど。
でも、ジャンに微笑まれるとドキドキしちゃうんだよな。
不思議だ。
恋って、理屈じゃないんだな。
などと色ボケてる場合じゃない。
ちゃんと、悩みを聞いてあげないと。
メイベルの友人として、そして医者として。どっちでも。
†‡†‡†
「どうしたの? 僕でよければ相談に乗るよ?」
『ありがとう、クロエ。ええとね、実は僕、来年になったら、プリマット国の王妃になるんだけど……』
プリマット国……?
すごく聞き覚えのある国名だ。
「ええっ!? メイベルの嫁ぎ先って、ジェローム王のとこだったの!?」
確か現在独身で、子供もいなかったはず。
戦争で失ったのかな、と思ってたけど。未婚だったのか。
でも、年齢差ありすぎじゃない!?
え、ジェローム王、36歳なのか。意外と若かった。
いや、それでもだいぶ年上じゃないか。
ロリコン!?
「で、ジェローム王と会った感想とか、プリマット国の客観的な印象とか聞きたいの?」
僕なら先日見てきたばかりだし。
さすがに、兵士とかルロイ王からは聞きにくいのかな? ジャンに聞くより、年が近いと思ってる僕にって思ったのかも。
『あ、一応、お見合い的なことはしたんだ。ロイ兄様からもお話を聞いてるし、ジェローム陛下のお顔や、人となりは知ってるつもりだから、大丈夫』
メイベルは、ほんのりと頬を染めている。
その様子から見て。
ジェローム王と結婚すること自体は、まんざらでもないようだ。
まあ、男前だったけど。
メイベルの好みだったのかな?
メイベルからしたら、かなりオッサンだろうに。渋い趣味だな。
ひとのことは言えないけど。
でも、政略結婚で望まない嫁入りではなくて、本人がお嫁に行くのに積極的なら良かった。
メイベルには幸せになってもらいたい。いい子だし。
……何だか妹を嫁にやるお兄ちゃんみたいな感覚だ。
お嫁に行ったら、寂しくて泣いちゃいそう。
†‡†‡†
メイベルは赤くなった頬を、気合を入れるようにぺしぺし叩いて。
真剣な顔で僕に向き合った。
『異世界の救世主としてでも、医者としてでもなく。J・Jのツガイとしてのクロエに、聞きたいことがあるんだ』
他でもない、ジャンのツガイとしての僕に?
何だろう。
メイベルは真っ赤になりながら、僕の耳に顔を寄せて。
『あの、……はじめての時って、どうだった?』
え!?
まさかの下ネタ!?
「どどど、どうって!?」
『……痛かったりした?』
メイベルが、不安そうな顔をしているのに気づいた。
ああ、そうか。
男相手に、そういうことをされるのが、怖いんだ。
そりゃそうだ。
三男以降だからって、生まれながらに役割を決められて。お嫁に行かされることは理解してるっていっても。まだ、15歳なんだし。不安のほうが大きいか。
お嫁に行った兄……姉さんたちにも手紙を出して聞いてみたけど。
大人になったらわかるよ、って言われただけだったそうだ。
まあ、まだ子供な妹に、そういった夫婦のあれこれを説明するのも困るよな……。
身内なだけに、余計話しにくいか。
その気持ちはよくわかる。
「うーん、でも、ジェローム王は人間だし、僕の場合とは、ちょっと違うかも。やっぱり”ツガイの儀式”ってするの?」
『ツガイの儀式? ええとね、最初の夜に、相手の左手の小指の根元を噛みなさい、って言われてる』
獣人側が受け身の場合とか、立場が違うと噛む場所も違うのかな?
僕は有無を言わせず受け身側にされちゃったけど。
でも、役割を交代したいか、と問われても。
無理かな……。
ジャンは好きだけど。
突っ込みたいとは思えない。
†‡†‡†
「僕がジャンに噛まれたの、首なんだよね。ほら、」
首筋のしるしを見せる。
自分じゃ見えないけど、触れるとわかるくらいの痕が残ってる。
『あ、これが花嫁側につけられる”ツガイのしるし”なんだ? 痛そうだね』
花嫁、って言い方なのか。
お互い獣人な場合は、首筋と小指を噛み合うのかな?
「確かに、これは痛かった……」
噛まれたことによって、細胞が変化したからかな?
強いお酒を飲んだような酩酊感があって。
気が付いたら、ここの言葉が通じるようになっていた。
気絶している間に、この世界に馴染む身体に変化したらしいんだけど。
自覚はないんだよね。
まだ子供なメイベルに尋ねるのは忍びないと思って、今まで訊かなかったけど。
これを訊かないと、話が進まないだろう。
「メイベルは魔法で子供が生める身体になったんだよね? どう変化したか、聞いていいかな?」
『はう。えっと、診察する?』
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