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J・J
結婚式の準備
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デュランは城に戻り。
インターンの二人も割り当てられた部屋へ戻った。
「今日も色々あって、疲れたね」
午前中は国から国へ移動、報告をし。
午後からは診察と大忙しだった。
自分で自分の首を叩いているクロエの背に手を当て、回復魔法を掛けた。
「ありがと。楽になったよ」
「いや、下心あってのことだ。礼はいい」
疲れているところに無理をさせたくはないだけだ。
回復したようなので。
クロエを引き寄せ、口づけする。
「……ん、」
勃起したものを当ててやると、恥ずかしそうに俯くが。
後ろに指を這わせると、クロエもすでにその気になっているのがわかる。
可愛い俺のツガイ。
つい、年上だという事を忘れてしまうほど愛らしい。
†‡†‡†
クロエを気持ちよくさせて、俺も達した後。
結婚式の話をすることにした。
「約束の時までは挿入するのを待つが。先に結婚式は挙げておきたい」
伝染病の件が落ち着き、ドニが全快するまではしないという約束だ。
来週くらいには全快しそうだという話なので、それまでに式を挙げておきたい。
「こっちの結婚式って、具体的に何をするの?」
「国王の前で生涯を共にするツガイになると宣言し、結婚証明書に記名し、互いを縛る物を贈り合う」
「お互いを縛るものって?」
「手鎖や首輪、指輪など誰が見てもわかるような印になるものだ」
昔は家畜を縛るような枷を嵌めたりもしていたようだが。
さすがにその風習は野蛮だということで廃れたのだ。
しかし、自分のツガイはそれとわかるように示したい。
そこで、揃いの装具を嵌めるようになった。
「俺は獣姿になると今の状態より巨大化する。出来れば指輪や首輪より首飾りのほうがありがたい」
基本、肌身離さずつけていられるものが好ましい。
「僕は手をよく消毒する必要性があるから、指輪じゃないほうがいいなあ」
指と指輪の間に雑菌が残るので、指輪の場合は外さなければならなくなるらしい。
「では、揃いの首飾りにするか?」
診察中は服の中に仕舞っておいてもいい。私服の時は、見せて歩いて欲しいものだが。
「そういうの、どこで手に入れればいいの? あ、そうだ。食材とかも。いつまでもお城から差し入れいただくわけにもいかないだろ?」
この世界を救ったのだから、一生働かずに食っていける身分だと言うのに。
クロエは働き者で真面目過ぎるのだ。
そこも魅力的だが。
「救世主だというのに、遠慮し過ぎだ。諸々の材料は俺が仕入れよう。……城からの差し入れを断るなら、通いで料理人でも雇うか?」
「え、それくらい自分で作るよ」
「料理も作れるのか?」
病人食の試作品はクィズィニエに任せていたので、自分で作れるとは思わなかった。
なら、すぐにでも味わってみたいものだが。
「だが、食事作りはあいつらが帰ってからにしてほしい」
「?」
「ツガイの作った食事を他人に食わせたくない。だからそれまでは城から差し入れさせる」
「独占欲強すぎだよ」
クロエは笑った。
これでも、随分我慢しているのだが。
†‡†‡†
次のディマンシュに結婚式を挙げると決め。
診察の傍ら、ロイにそれを連絡し。
贈り物の材料を集め、首飾りの作成を開始した。
「あっ、通信の魔法で家族に連絡するの忘れてた!」
とクロエが言ったのは。
結婚式の二日前の夜だった。
通信の魔法を習得していたのに、うっかり家族に連絡を入れるのを忘れていたそうだ。
通信の魔法は、話したい相手の名と顔を思い浮かべ、呪文を唱える。
それだけの単純な魔法なので、使える者は多い。デュランは苦手だが。
鏡など、何か媒介があると楽だと伝えると。
クロエは私物の袋から材質不明の小さな黒い板を出した。確か強化プラスチック、というやつだったか。
「その板は何だ?」
「ああこれ? 通信装置だよ」
あちらの世界では、この小さな板に電波というものを受け、遠くの者と交信するようだ。
それは便利そうだ。
アンリが聞けば喜ぶだろう。
「Je veux communiquer avec vous……」
クロエが呪文を唱えてしばらくして、板から微かな声が聞こえた。
「あ、母さん? 理人だけど」
一番話したい相手は、母親だったようだ。
語調からして、相手は怒っている。
突然息子が連絡もなく居なくなったのだから当然か。
ましてやこのような賢く愛らしい息子だ。心配でたまらなかっただろう。
「ごめん、今そっちは何月何日?」
どうやら、向こうの世界では二日しか経っていなかったようだ。
異世界では時間の流れが違うのだろうか。
では、それほど長い間心配させたわけではなさそうだ。
「話すと長くなりそうなんで、まず要約するけど。異世界に召喚されて、今医者になってるんだ」
クロエは今まであったことを話した。
クロエの口から聞くのと、自分で感じたことが少々違うのが面白い。
「あ、そうそう。それで明後日、結婚式を挙げるんだ。相手は男だけどね。あははは」
母親の怒っているような声が聞こえた。
それもそうだろう。まさか可愛い息子が俺のような男に奪われるとは思ってもみなかったに違いない。
クロエが元の世界に帰れなくなったのは、俺が勝手にクロエをツガイにしたからだ。
†‡†‡†
「言葉は通じないかもしれないけど、声、聞いてみる? ……ジャン、ちょっと来てー」
黒い板を渡される。
「こんにちは。初めまして、お……私の名はジャン=ジャック・フォスター。森林管理人兼医療助手をしています。息子さんのことは一生幸せにするので、どうか、安心して任せてください」
そう言って、板を返す。
聞こえる声は、好意的なものだったが。
元々、女の居る世界で。
クロエは学生として好きな研究をし、何不自由なく暮らしていたのに。
百年近く戦争もないような、平和そうな世界に帰れなくしたのは、この俺だ。
インターンの二人も割り当てられた部屋へ戻った。
「今日も色々あって、疲れたね」
午前中は国から国へ移動、報告をし。
午後からは診察と大忙しだった。
自分で自分の首を叩いているクロエの背に手を当て、回復魔法を掛けた。
「ありがと。楽になったよ」
「いや、下心あってのことだ。礼はいい」
疲れているところに無理をさせたくはないだけだ。
回復したようなので。
クロエを引き寄せ、口づけする。
「……ん、」
勃起したものを当ててやると、恥ずかしそうに俯くが。
後ろに指を這わせると、クロエもすでにその気になっているのがわかる。
可愛い俺のツガイ。
つい、年上だという事を忘れてしまうほど愛らしい。
†‡†‡†
クロエを気持ちよくさせて、俺も達した後。
結婚式の話をすることにした。
「約束の時までは挿入するのを待つが。先に結婚式は挙げておきたい」
伝染病の件が落ち着き、ドニが全快するまではしないという約束だ。
来週くらいには全快しそうだという話なので、それまでに式を挙げておきたい。
「こっちの結婚式って、具体的に何をするの?」
「国王の前で生涯を共にするツガイになると宣言し、結婚証明書に記名し、互いを縛る物を贈り合う」
「お互いを縛るものって?」
「手鎖や首輪、指輪など誰が見てもわかるような印になるものだ」
昔は家畜を縛るような枷を嵌めたりもしていたようだが。
さすがにその風習は野蛮だということで廃れたのだ。
しかし、自分のツガイはそれとわかるように示したい。
そこで、揃いの装具を嵌めるようになった。
「俺は獣姿になると今の状態より巨大化する。出来れば指輪や首輪より首飾りのほうがありがたい」
基本、肌身離さずつけていられるものが好ましい。
「僕は手をよく消毒する必要性があるから、指輪じゃないほうがいいなあ」
指と指輪の間に雑菌が残るので、指輪の場合は外さなければならなくなるらしい。
「では、揃いの首飾りにするか?」
診察中は服の中に仕舞っておいてもいい。私服の時は、見せて歩いて欲しいものだが。
「そういうの、どこで手に入れればいいの? あ、そうだ。食材とかも。いつまでもお城から差し入れいただくわけにもいかないだろ?」
この世界を救ったのだから、一生働かずに食っていける身分だと言うのに。
クロエは働き者で真面目過ぎるのだ。
そこも魅力的だが。
「救世主だというのに、遠慮し過ぎだ。諸々の材料は俺が仕入れよう。……城からの差し入れを断るなら、通いで料理人でも雇うか?」
「え、それくらい自分で作るよ」
「料理も作れるのか?」
病人食の試作品はクィズィニエに任せていたので、自分で作れるとは思わなかった。
なら、すぐにでも味わってみたいものだが。
「だが、食事作りはあいつらが帰ってからにしてほしい」
「?」
「ツガイの作った食事を他人に食わせたくない。だからそれまでは城から差し入れさせる」
「独占欲強すぎだよ」
クロエは笑った。
これでも、随分我慢しているのだが。
†‡†‡†
次のディマンシュに結婚式を挙げると決め。
診察の傍ら、ロイにそれを連絡し。
贈り物の材料を集め、首飾りの作成を開始した。
「あっ、通信の魔法で家族に連絡するの忘れてた!」
とクロエが言ったのは。
結婚式の二日前の夜だった。
通信の魔法を習得していたのに、うっかり家族に連絡を入れるのを忘れていたそうだ。
通信の魔法は、話したい相手の名と顔を思い浮かべ、呪文を唱える。
それだけの単純な魔法なので、使える者は多い。デュランは苦手だが。
鏡など、何か媒介があると楽だと伝えると。
クロエは私物の袋から材質不明の小さな黒い板を出した。確か強化プラスチック、というやつだったか。
「その板は何だ?」
「ああこれ? 通信装置だよ」
あちらの世界では、この小さな板に電波というものを受け、遠くの者と交信するようだ。
それは便利そうだ。
アンリが聞けば喜ぶだろう。
「Je veux communiquer avec vous……」
クロエが呪文を唱えてしばらくして、板から微かな声が聞こえた。
「あ、母さん? 理人だけど」
一番話したい相手は、母親だったようだ。
語調からして、相手は怒っている。
突然息子が連絡もなく居なくなったのだから当然か。
ましてやこのような賢く愛らしい息子だ。心配でたまらなかっただろう。
「ごめん、今そっちは何月何日?」
どうやら、向こうの世界では二日しか経っていなかったようだ。
異世界では時間の流れが違うのだろうか。
では、それほど長い間心配させたわけではなさそうだ。
「話すと長くなりそうなんで、まず要約するけど。異世界に召喚されて、今医者になってるんだ」
クロエは今まであったことを話した。
クロエの口から聞くのと、自分で感じたことが少々違うのが面白い。
「あ、そうそう。それで明後日、結婚式を挙げるんだ。相手は男だけどね。あははは」
母親の怒っているような声が聞こえた。
それもそうだろう。まさか可愛い息子が俺のような男に奪われるとは思ってもみなかったに違いない。
クロエが元の世界に帰れなくなったのは、俺が勝手にクロエをツガイにしたからだ。
†‡†‡†
「言葉は通じないかもしれないけど、声、聞いてみる? ……ジャン、ちょっと来てー」
黒い板を渡される。
「こんにちは。初めまして、お……私の名はジャン=ジャック・フォスター。森林管理人兼医療助手をしています。息子さんのことは一生幸せにするので、どうか、安心して任せてください」
そう言って、板を返す。
聞こえる声は、好意的なものだったが。
元々、女の居る世界で。
クロエは学生として好きな研究をし、何不自由なく暮らしていたのに。
百年近く戦争もないような、平和そうな世界に帰れなくしたのは、この俺だ。
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