目覚めたら大好きなアニメの悪役令嬢でしたが、嫌われないようにしただけなのに全員から溺愛されています

月影みるく

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第9話 小さな綱引き

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月日は流れ、私は三歳を迎えた。

 相変わらず毎日は賑やかで、静かな時間の方が少ないくらいだ。
 そんなある日、ノクティス家全員が王宮へと招かれた。

 目的は、ただ一つ。

 ――私の、光属性について。

 広間には、王と王妃、そしてレオンハルト王子の姿もある。
 大人たちは難しい顔をして向かい合い、真剣な話し合いを始めていた。

(うぅ……空気が重い……)

 とはいえ、私はその輪の中心には入れない。
 代わりに――

「ルクシア、こっちおいで」

 そう言って手を差し出してくるのは、兄――ユリウス・ノクティス。

「だめだよ。ルクシアはボクのとなり」

 すぐさま割って入るのは、レオンハルト王子だった。

(……始まった)

 大人たちの話し合いが白熱する一方で、
こちらでは別の意味で静かな戦いが始まっていた。

「ルクシアは俺の妹なんだから、俺と手をつなぐに決まってるだろ」

 ユリウスは胸を張ってそう言う。

「ちがうよ。ルクシアは将来、ボクのおよめさんになるんだ。だから、ボクがつなぐ」

 レオンハルト王子も、まったく引く気がない。

(ちょっと待って!? 将来って何!?)

 私は二人の間に立たされ、左右から手を引かれていた。

「いたっ……」

「ほら、ルクシア、こっち来いって」

「だめ。ルクシア、こっち」

(いや、私は物じゃないんですが……!)

 三歳児の頭では、情報量が多すぎる。

「……二人とも」

 低く、よく通る声が割って入った。

 その瞬間、空気が変わる。

 そこに立っていたのは、騎士団長――アルベルト・グランツ。

(……うわ)

 条件反射で身構えた私とは裏腹に、
彼は困ったように小さくため息をついた。

「ルクシア様が困っておられますよ」

「……あ、ごめんねルクシア。お兄ちゃんが悪かった」

「……ごめんね。ルクシア」

 二人は、驚くほど素直に手を離した。

(効き目すご……)

 アルベルトはそのまま、私に視線を落とす。

「……」

 じっと見つめられる。

(え、なに、処刑フラグ……?)

 ――と思った次の瞬間。

「……本当に、可愛らしいですね」

(……はい?)

 思わず瞬きをする。

 その視線は冷たさとは程遠く、
どこか柔らかく、穏やかだった。

 やがて話し合いが終わり、父と母に呼ばれる。

「ルクシア。こっちへおいで。王様からお話があるそうだよ」

 王様は、優しく微笑んで私を見下ろした。

「君がルクシアだね。噂は聞いているよ。
 君は光属性という、特別な存在だ。何かあったら、すぐにこの王である私に言いなさい」

「あいっ!!」

 元気よく返事をすると、周囲から小さな笑いが漏れた。

 ――私は今日も、確かに守られていた。
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