目覚めたら大好きなアニメの悪役令嬢でしたが、嫌われないようにしただけなのに全員から溺愛されています

月影みるく

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第28話 動き出すものたち

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 魔術大会への出場が正式に決定した、その知らせは――
 思っていた以上の速さで、王立魔法学院へと届いた。

 ***

「……は?」

 最初に声を上げたのは、ユリウスだった。

 手にしていた書類を見下ろしたまま、数秒。
 次の瞬間、勢いよく立ち上がる。

「一般の部って……ルクシアが!?」

「ちょ、ちょっと待って。まだ十二歳だよ!?」

 セレスが慌てて言い、ノアが顔を青くする。

「しかも相手は実力者ばかりの一般部門……?」
「危険すぎるだろ……!」

 エリオスはすぐに状況を理解し、低く息を吐いた。

「……王命が絡んでるな、これは」

 その隣で、レオンハルトは一言も発さず、
 ただ書類を握りしめていた。

 ――静かすぎるほどに。

「……行く」

 ぽつりと落とされた声に、全員が振り向く。

「王都へ」

「レオンハルト!?」

「止めても無駄だよ」

 顔を上げたその瞳は、真剣そのものだった。

「ルクシアが一人で戦うなんて、ありえない」

 ユリウスが強く頷く。

「同意だ。あいつは……守られるだけの存在じゃないけど、
 それでも一人で背負わせるつもりはない」

 学院内は、一気にざわついた。

 誰よりも大切な存在が、
 今まさに“戦場”へ向かおうとしているのだから。

 ***

 一方、その頃――王都。

「では、紹介しよう」

 王の言葉とともに、私の前に一人の青年が立った。

 年は二十代前半だろうか。
 長めの黒髪を後ろで結び、切れ長の瞳が印象的な人物。

 どこか影があり、
 でも、目を逸らしたくなるような不思議な存在感がある。

「王国魔術師団所属、
 リヒト・ヴァルツだ」

(……イケメン)

 思わずそう思った次の瞬間。

「今後、魔術大会までの間、
 ルクシアの専属指導を任せる」

「……専属?」

 聞き返すと、青年――リヒトは静かに膝をついた。

「あなたの魔力は、光と闇、どちらも極めて高純度だ」

 低く落ち着いた声。

「制御を誤れば危険だが、
 正しく導けば――王国随一の力になる」

 その視線が、まっすぐ私を捉える。

「安心してください。
 倒れさせませんし、壊させもしない」

 淡々としているのに、不思議と信頼できる。

(……この人)

 父が続ける。

「大会まで、付きっきりでの特訓だ。
 無論、護衛と医師も常に待機させる」

(やっぱり過保護……)

 けれど。

 私は、小さく頷いた。

「……お願いします」

 リヒトは一瞬だけ、驚いたように目を細め、
 それから、ほんのわずかに微笑んだ。

「良い目だ」

 その言葉と同時に、胸の奥で光と闇が静かに呼応する。

 遠く学院では、
 大切な人たちが焦り、動き出している。

 そして王都では、
 新たな師と共に、私は未来へ踏み出そうとしていた。

 ――魔術大会まで、残された時間は少ない
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