33 / 40
第33話 異端として、英雄として
しおりを挟む
ルクシアの勝利から、わずか数分後。
闘技場の熱は、むしろ高まっていた。
「次の試合、準備でき次第開始する!」
司会の声に、観客席がどよめく。
「え、もう次!?」
「休憩なしなのか?」
「一般の部ってこんなに過酷だったか?」
私は控え区画で、水を受け取っていた。
「……ルクシア」
ユリウスがしゃがみこみ、真剣な目で私を見る。
「少しでも違和感があったら、すぐ言え」
「無理は――」
「するわけないでしょ」
私は、小さく笑った。
「ちゃんと、コントロールできてる」
それは強がりじゃない。
本当だった。
胸の奥で、光と闇は静かに並び、互いを侵さない。
――まるで、最初からそうあるべきだったかのように。
***
「一般の部・第二試合!」
次に現れたのは、風術師と雷術師の二人組。
「……子ども相手でも、手加減はしない」
「むしろ全力で行く」
さっきまでの嘲笑は、もうない。
あるのは、明確な警戒。
試合開始と同時に、暴風と雷光が交錯する。
私は、深く息を吸った。
(まとめて……流す)
光が広がり、闇が支える。
相反する力が、衝突せずに“受け皿”となる。
――暴風は逸れ、雷は地面へと吸い込まれた。
「……は?」
次の瞬間。
私は、一歩、踏み出す。
光が走り、闇が縫い止める。
二人は、同時に膝をついた。
「勝者、ルクシア!」
歓声。
――いや、もはや熱狂だった。
「まただ!」
「連勝……!」
「詠唱なし、制御完璧……!」
観客席の一角。
「……見えたか」
低い声。
騎士団長が、腕を組んで闘技場を見つめていた。
「ええ」
その隣で、学院の高位魔導師が眼鏡越しに目を細める。
「光属性だけでは説明がつきません」
「……もう一つ、別の系統が絡んでいる」
騎士団長の視線が、鋭くなる。
「闇、か?」
その言葉に、空気が一瞬、張り詰めた。
***
三戦目。
四戦目。
誰もが、全力で来る。
それでも――
私は、倒れなかった。
光で守り、
闇で抑え、
決して“壊しすぎない”。
(怒らない)
あの時みたいには、ならない。
――守るために使う。
その想いが、力を安定させていた。
「……信じられない」
「一般の部で、ここまで連勝する子が……」
王族席。
王妃は、そっと胸元に手を当てていた。
「この子……本当に、強くなったのですね」
王は、静かに頷く。
「強さだけではない」
「“理性”がある」
それは、王としての評価だった。
***
だが――
五戦目を終えた、その直後。
私は、ほんの一瞬だけ、足元が揺れた。
(……あ)
それを、見逃す者はいなかった。
「ルクシア!」
ユリウスが立ち上がる。
「今の、見た?」
「疲労が……」
リヒトが、即座に私の前に立つ。
「ここまでだ」
「でも――」
「十分だ」
その声は、強かった。
同時に、闘技場の外から重い足音が響く。
――騎士団。
そして、学院の正式な使者。
「ルクシア殿」
騎士団長が、片膝をつく。
「あなたの魔力と戦闘は、王国の想定を超えています」
「安全確保のため、これ以上の出場は――」
観客席が、ざわめく。
「止めるのか?」
「ここまで来て?」
私は、リヒトを見上げた。
彼は、小さく頷く。
「誇っていい」
「君は、もう証明した」
過保護組が、全力で頷いている。
「……十分すぎる」
「心臓に悪い」
「生きててくれたらそれでいい」
私は、ゆっくりと息を吐いた。
「……わかりました」
そして、闘技場を振り返る。
歓声。
視線。
期待と畏怖。
――英雄を見る目と、異端を見る目。
両方が、そこにあった。
私は、深く一礼する。
その瞬間。
拍手が、嵐のように巻き起こった。
年齢も、立場も関係ない。
ただ一人の魔術師として。
ルクシアは、この日、王都に名を刻んだ。
――そして。
学院と騎士団、王族が動いた今。
彼女の日常は、もう“元”には戻らない。
物語は、次の段階へ進む。
守られる存在から、
世界に影響を与える存在へ。
その第一歩は、確かに踏み出された。
闘技場の熱は、むしろ高まっていた。
「次の試合、準備でき次第開始する!」
司会の声に、観客席がどよめく。
「え、もう次!?」
「休憩なしなのか?」
「一般の部ってこんなに過酷だったか?」
私は控え区画で、水を受け取っていた。
「……ルクシア」
ユリウスがしゃがみこみ、真剣な目で私を見る。
「少しでも違和感があったら、すぐ言え」
「無理は――」
「するわけないでしょ」
私は、小さく笑った。
「ちゃんと、コントロールできてる」
それは強がりじゃない。
本当だった。
胸の奥で、光と闇は静かに並び、互いを侵さない。
――まるで、最初からそうあるべきだったかのように。
***
「一般の部・第二試合!」
次に現れたのは、風術師と雷術師の二人組。
「……子ども相手でも、手加減はしない」
「むしろ全力で行く」
さっきまでの嘲笑は、もうない。
あるのは、明確な警戒。
試合開始と同時に、暴風と雷光が交錯する。
私は、深く息を吸った。
(まとめて……流す)
光が広がり、闇が支える。
相反する力が、衝突せずに“受け皿”となる。
――暴風は逸れ、雷は地面へと吸い込まれた。
「……は?」
次の瞬間。
私は、一歩、踏み出す。
光が走り、闇が縫い止める。
二人は、同時に膝をついた。
「勝者、ルクシア!」
歓声。
――いや、もはや熱狂だった。
「まただ!」
「連勝……!」
「詠唱なし、制御完璧……!」
観客席の一角。
「……見えたか」
低い声。
騎士団長が、腕を組んで闘技場を見つめていた。
「ええ」
その隣で、学院の高位魔導師が眼鏡越しに目を細める。
「光属性だけでは説明がつきません」
「……もう一つ、別の系統が絡んでいる」
騎士団長の視線が、鋭くなる。
「闇、か?」
その言葉に、空気が一瞬、張り詰めた。
***
三戦目。
四戦目。
誰もが、全力で来る。
それでも――
私は、倒れなかった。
光で守り、
闇で抑え、
決して“壊しすぎない”。
(怒らない)
あの時みたいには、ならない。
――守るために使う。
その想いが、力を安定させていた。
「……信じられない」
「一般の部で、ここまで連勝する子が……」
王族席。
王妃は、そっと胸元に手を当てていた。
「この子……本当に、強くなったのですね」
王は、静かに頷く。
「強さだけではない」
「“理性”がある」
それは、王としての評価だった。
***
だが――
五戦目を終えた、その直後。
私は、ほんの一瞬だけ、足元が揺れた。
(……あ)
それを、見逃す者はいなかった。
「ルクシア!」
ユリウスが立ち上がる。
「今の、見た?」
「疲労が……」
リヒトが、即座に私の前に立つ。
「ここまでだ」
「でも――」
「十分だ」
その声は、強かった。
同時に、闘技場の外から重い足音が響く。
――騎士団。
そして、学院の正式な使者。
「ルクシア殿」
騎士団長が、片膝をつく。
「あなたの魔力と戦闘は、王国の想定を超えています」
「安全確保のため、これ以上の出場は――」
観客席が、ざわめく。
「止めるのか?」
「ここまで来て?」
私は、リヒトを見上げた。
彼は、小さく頷く。
「誇っていい」
「君は、もう証明した」
過保護組が、全力で頷いている。
「……十分すぎる」
「心臓に悪い」
「生きててくれたらそれでいい」
私は、ゆっくりと息を吐いた。
「……わかりました」
そして、闘技場を振り返る。
歓声。
視線。
期待と畏怖。
――英雄を見る目と、異端を見る目。
両方が、そこにあった。
私は、深く一礼する。
その瞬間。
拍手が、嵐のように巻き起こった。
年齢も、立場も関係ない。
ただ一人の魔術師として。
ルクシアは、この日、王都に名を刻んだ。
――そして。
学院と騎士団、王族が動いた今。
彼女の日常は、もう“元”には戻らない。
物語は、次の段階へ進む。
守られる存在から、
世界に影響を与える存在へ。
その第一歩は、確かに踏み出された。
61
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢ってもっとハイスペックだと思ってた
nionea
恋愛
ブラック企業勤めの日本人女性ミキ、享年二十五歳は、
死んだ
と、思ったら目が覚めて、
悪役令嬢に転生してざまぁされる方向まっしぐらだった。
ぽっちゃり(控えめな表現です)
うっかり (婉曲的な表現です)
マイペース(モノはいいようです)
略してPUMな侯爵令嬢ファランに転生してしまったミキは、
「デブでバカでワガママって救いようねぇわ」
と、落ち込んでばかりもいられない。
今後の人生がかかっている。
果たして彼女は身に覚えはないが散々やらかしちゃった今までの人生を精算し、生き抜く事はできるのか。
※恋愛のスタートまでがだいぶ長いです。
’20.3.17 追記
更新ミスがありました。
3.16公開の77の本文が78の内容になっていました。
本日78を公開するにあたって気付きましたので、77を正規の内容に変え、78を公開しました。
大変失礼いたしました。77から再度お読みいただくと話がちゃんとつながります。
ご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした。
【完結】モブ令嬢としてひっそり生きたいのに、腹黒公爵に気に入られました
22時完結
恋愛
貴族の家に生まれたものの、特別な才能もなく、家の中でも空気のような存在だったセシリア。
華やかな社交界には興味もないし、政略結婚の道具にされるのも嫌。だからこそ、目立たず、慎ましく生きるのが一番——。
そう思っていたのに、なぜか冷酷無比と名高いディートハルト公爵に目をつけられてしまった!?
「……なぜ私なんですか?」
「君は実に興味深い。そんなふうにおとなしくしていると、余計に手を伸ばしたくなる」
ーーそんなこと言われても困ります!
目立たずモブとして生きたいのに、公爵様はなぜか私を執拗に追いかけてくる。
しかも、いつの間にか甘やかされ、独占欲丸出しで迫られる日々……!?
「君は俺のものだ。他の誰にも渡すつもりはない」
逃げても逃げても追いかけてくる腹黒公爵様から、私は無事にモブ人生を送れるのでしょうか……!?
悪役令嬢に転生したので地味令嬢に変装したら、婚約者が離れてくれないのですが。
槙村まき
恋愛
スマホ向け乙女ゲーム『時戻りの少女~ささやかな日々をあなたと共に~』の悪役令嬢、リシェリア・オゼリエに転生した主人公は、処刑される未来を変えるために地味に地味で地味な令嬢に変装して生きていくことを決意した。
それなのに学園に入学しても婚約者である王太子ルーカスは付きまとってくるし、ゲームのヒロインからはなぜか「私の代わりにヒロインになって!」とお願いされるし……。
挙句の果てには、ある日隠れていた図書室で、ルーカスに唇を奪われてしまう。
そんな感じで悪役令嬢がヤンデレ気味な王子から逃げようとしながらも、ヒロインと共に攻略対象者たちを助ける? 話になるはず……!
第二章以降は、11時と23時に更新予定です。
他サイトにも掲載しています。
よろしくお願いします。
25.4.25 HOTランキング(女性向け)四位、ありがとうございます!
生まれ変わりも楽じゃない ~生まれ変わっても私はわたし~
こひな
恋愛
市川みのり 31歳。
成り行きで、なぜかバリバリのキャリアウーマンをやっていた私。
彼氏なし・趣味は食べることと読書という仕事以外は引きこもり気味な私が、とばっちりで異世界転生。
貴族令嬢となり、四苦八苦しつつ異世界を生き抜くお話です。
※いつも読んで頂きありがとうございます。誤字脱字のご指摘ありがとうございます。
虚弱体質?の脇役令嬢に転生したので、食事療法を始めました
たくわん
恋愛
「跡継ぎを産めない貴女とは結婚できない」婚約者である公爵嫡男アレクシスから、冷酷に告げられた婚約破棄。その場で新しい婚約者まで紹介される屈辱。病弱な侯爵令嬢セラフィーナは、社交界の哀れみと嘲笑の的となった。
大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!
古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。
その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。
『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』
昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。
領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。
一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――
〘完〙前世を思い出したら悪役皇太子妃に転生してました!皇太子妃なんて罰ゲームでしかないので円満離婚をご所望です
hanakuro
恋愛
物語の始まりは、ガイアール帝国の皇太子と隣国カラマノ王国の王女との結婚式が行われためでたい日。
夫婦となった皇太子マリオンと皇太子妃エルメが初夜を迎えた時、エルメは前世を思い出す。
自著小説『悪役皇太子妃はただ皇太子の愛が欲しかっただけ・・』の悪役皇太子妃エルメに転生していることに気付く。何とか初夜から逃げ出し、混乱する頭を整理するエルメ。
すると皇太子の愛をいずれ現れる癒やしの乙女に奪われた自分が乙女に嫌がらせをして、それを知った皇太子に離婚され、追放されるというバッドエンドが待ち受けていることに気付く。
訪れる自分の未来を悟ったエルメの中にある想いが芽生える。
円満離婚して、示談金いっぱい貰って、市井でのんびり悠々自適に暮らそうと・・
しかし、エルメの思惑とは違い皇太子からは溺愛され、やがて現れた癒やしの乙女からは・・・
はたしてエルメは円満離婚して、のんびりハッピースローライフを送ることができるのか!?
記憶を失くして転生しました…転生先は悪役令嬢?
ねこママ
恋愛
「いいかげんにしないかっ!」
バシッ!!
わたくしは咄嗟に、フリード様の腕に抱き付くメリンダ様を引き離さなければと手を伸ばしてしまい…頬を叩かれてバランスを崩し倒れこみ、壁に頭を強く打ち付け意識を失いました。
目が覚めると知らない部屋、豪華な寝台に…近付いてくるのはメイド? 何故髪が緑なの?
最後の記憶は私に向かって来る車のライト…交通事故?
ここは何処? 家族? 友人? 誰も思い出せない……
前世を思い出したセレンディアだが、事故の衝撃で記憶を失くしていた……
前世の自分を含む人物の記憶だけが消えているようです。
転生した先の記憶すら全く無く、頭に浮かぶものと違い過ぎる世界観に戸惑っていると……?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる