目覚めたら大好きなアニメの悪役令嬢でしたが、嫌われないようにしただけなのに全員から溺愛されています

月影みるく

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第33話 異端として、英雄として

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ルクシアの勝利から、わずか数分後。

 闘技場の熱は、むしろ高まっていた。

「次の試合、準備でき次第開始する!」

 司会の声に、観客席がどよめく。

「え、もう次!?」
「休憩なしなのか?」
「一般の部ってこんなに過酷だったか?」

 私は控え区画で、水を受け取っていた。

「……ルクシア」

 ユリウスがしゃがみこみ、真剣な目で私を見る。

「少しでも違和感があったら、すぐ言え」
「無理は――」

「するわけないでしょ」

 私は、小さく笑った。

「ちゃんと、コントロールできてる」

 それは強がりじゃない。
 本当だった。

 胸の奥で、光と闇は静かに並び、互いを侵さない。

 ――まるで、最初からそうあるべきだったかのように。

 ***

「一般の部・第二試合!」

 次に現れたのは、風術師と雷術師の二人組。

「……子ども相手でも、手加減はしない」
「むしろ全力で行く」

 さっきまでの嘲笑は、もうない。

 あるのは、明確な警戒。

 試合開始と同時に、暴風と雷光が交錯する。

 私は、深く息を吸った。

(まとめて……流す)

 光が広がり、闇が支える。

 相反する力が、衝突せずに“受け皿”となる。

 ――暴風は逸れ、雷は地面へと吸い込まれた。

「……は?」

 次の瞬間。

 私は、一歩、踏み出す。

 光が走り、闇が縫い止める。

 二人は、同時に膝をついた。

「勝者、ルクシア!」

 歓声。

 ――いや、もはや熱狂だった。

「まただ!」
「連勝……!」
「詠唱なし、制御完璧……!」

 観客席の一角。

「……見えたか」

 低い声。

 騎士団長が、腕を組んで闘技場を見つめていた。

「ええ」

 その隣で、学院の高位魔導師が眼鏡越しに目を細める。

「光属性だけでは説明がつきません」
「……もう一つ、別の系統が絡んでいる」

 騎士団長の視線が、鋭くなる。

「闇、か?」

 その言葉に、空気が一瞬、張り詰めた。

 ***

 三戦目。
 四戦目。

 誰もが、全力で来る。

 それでも――

 私は、倒れなかった。

 光で守り、
 闇で抑え、
 決して“壊しすぎない”。

(怒らない)

 あの時みたいには、ならない。

 ――守るために使う。

 その想いが、力を安定させていた。

「……信じられない」
「一般の部で、ここまで連勝する子が……」

 王族席。

 王妃は、そっと胸元に手を当てていた。

「この子……本当に、強くなったのですね」

 王は、静かに頷く。

「強さだけではない」
「“理性”がある」

 それは、王としての評価だった。

 ***

 だが――

 五戦目を終えた、その直後。

 私は、ほんの一瞬だけ、足元が揺れた。

(……あ)

 それを、見逃す者はいなかった。

「ルクシア!」

 ユリウスが立ち上がる。

「今の、見た?」
「疲労が……」

 リヒトが、即座に私の前に立つ。

「ここまでだ」

「でも――」

「十分だ」

 その声は、強かった。

 同時に、闘技場の外から重い足音が響く。

 ――騎士団。

 そして、学院の正式な使者。

「ルクシア殿」

 騎士団長が、片膝をつく。

「あなたの魔力と戦闘は、王国の想定を超えています」
「安全確保のため、これ以上の出場は――」

 観客席が、ざわめく。

「止めるのか?」
「ここまで来て?」

 私は、リヒトを見上げた。

 彼は、小さく頷く。

「誇っていい」
「君は、もう証明した」

 過保護組が、全力で頷いている。

「……十分すぎる」
「心臓に悪い」
「生きててくれたらそれでいい」

 私は、ゆっくりと息を吐いた。

「……わかりました」

 そして、闘技場を振り返る。

 歓声。
 視線。
 期待と畏怖。

 ――英雄を見る目と、異端を見る目。

 両方が、そこにあった。

 私は、深く一礼する。

 その瞬間。

 拍手が、嵐のように巻き起こった。

 年齢も、立場も関係ない。

 ただ一人の魔術師として。

 ルクシアは、この日、王都に名を刻んだ。

 ――そして。

 学院と騎士団、王族が動いた今。

 彼女の日常は、もう“元”には戻らない。

 物語は、次の段階へ進む。

 守られる存在から、
 世界に影響を与える存在へ。

 その第一歩は、確かに踏み出された。
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